【投稿】政治とかかわろう
<政治はおもしろくない?>
東京都下では都議選とのダブル選挙となった今回の衆院選挙だが、投票行動では思いのほかかんばしくなかったことが、まず印象にある。先行した都議選は史上最低の51.43%、衆議院選でも都下では60.21%である。投票率の推移は回を重ねるごとに上下はあるが最低記録だけは更新しつづけている。都議選では国政選挙の波に飲み込まれたこともあるが、半数の人しか投票していないという事実は重大である。さらに不思議なのは衆議院選挙で政権交代も現実的問題とされながらも投票率が史上最低を記録したことだ。
とくに東京、千葉、埼玉、神奈川、名古屋、京都、大阪など都市部における投票率のおちこみは大きい。いずれもサラリーマンが多く、浮動票もおおい地域である。しかし、このことは生活レベルで考えると当然とも思える。それは政治とのかかわりがないからである。商店主や自営業者は商売がら結構敏感であるが、都会のサラリーマンは地域とのかかわりもなく、労働組合もない人が圧倒的であるのだから、政治とのかかわりはないに等しい(特に独身者や若者)。政治を「語る」場もなければ、政治を「感じる」場もないし、政治に「未来」を託すこともない。せいぜい、テレビを見て一票いれるのがやっとであろう。意識的な棄権者も多いとの指摘もあったが、実態はどうであろうか?
政治改革も制度だけでなく主権者の「政治とのかかわり」を増加させる手だても考えるべきだと思う。と同時に、われわれ一人一人が具体的な政治とのかかわりをどのように生活の中に持っているかも検討すべきことだ。政治とのかかわりが、もし「一票」を投ずることしかないのなら、政治をもっと楽しもうではないか!様々な社会運動はもちろん、身を投じて選挙活動をする人もいるだろう、とにかく会社などで働くこと以外で<社会生活を自ら作る時間と空間>を持とうではないか。
自民党は野党転落とはいえ、解散前の議席を維持しているのはなぜなのか? このことに無関心では連合政権は長続きしないだろう。家業を継ぐために地元へ帰った友人がいうには、商工会や地元の会合には自民党の人しかいないという。これまで野党だった人は、どんどんこれらの会合にも顔を出トて新政権を売り込むことも重要だ。
<合意形成なしには民主主義はない!>
非自民7党の政策大網にはいろいろの議論があろうが、合意形成抜きに政権ができないということ、政治的安協と民主主義とのバランスが今度の連合政権の中での大きな成果だと思う。自民党、政財官界の癒着が中央から地方にいたるまではびこってしまったこの日本で、新しい人心でこれらを一掃するため、この流れを地方でも実現することも重要であろう。
この点でのキャスティングボードは日本新党であり、細川氏であろうが、細川氏が選挙直前に「非自民政権に必ずしも参加せず、一線を画す」といった無責任な態度をとったことは残念でならない。もちろん選挙向けの発言とはいえ、やはりおおくの人の落胆と政治的な無関心を呼び起こしただろう。
選挙公約である政治改革は、現政権の最重要課題であり、これを取りまとめること自体至難の事業だろうが、このことを抜きに次はない。何のために連立し、何が重要なのか?問題をきちんと設定した政治が問われてきている。その次の課題は、景気対策、日米関係、行政改革(規制緩和、地方分権、情報公開)、予算、貿易、国連改革、税制改革などが上げられている。
<新連立政権で大いに学び改革しよう>
政権が交代し、政党はもちろん行政、財界などあらゆるレベルで新しい対応を迫られている。実は私のかかわっている地域ユニオンの運動がらみでも政権交代は予想外の出来事を引き起こしているのでお伝えしよう。解散前の国会でパート労働法が駆け足通過したことをお伝えしたことを覚えている方もいよう。その経過をふまえ今月24、25日にコミュニティユニオン全国交流集会が東京で開催されるのであるが、その全国行動の一環として政府交渉が企画されている。計画段階では、パート法策定に向けた指針の具体的内容をつめることや派遣労働、外国人労働者問題などで政府側姿勢を正す予定であった。ところが、ふたを開けてみたら、いままで野党側で折衝にあたってくれた議員がほとんど落選したり、または大臣や政務次官となってしまったのである。もちろん担当議員は非常にこころよく折衝を受諾してくれたものの、今度はスケジュールがあわない。なんでも政府として海外で会合があるとのこと。政府委月としての非常に忙しい日々が始まっているのだ。それに今度は社会党のみならず連立与党すべてに同様の働きかけが必要になってきたわけで、事務局ではてんやわんやである。
そんなわけで、法案ひとつ作るにも、いままではかやの外であったわけだが、今度はいままで以上に「参加」できる可能性がでてきたこと、あるいはそのためにも「合意」形成がかなり時間を要して必要な事態になってきている。確かに、これはひとつの運動する側にとっても政治と運動団体との新しい関係をつくっていくチャンスでもある。こうした積み重ねが、様々な形で、「東西冷戦構造」「55年体制」を乗り越えて実践されるべき時代の幕開けであろう。で、あるがゆえにみんなで「政治を楽しもう」という時代へと進んでいきたい。 (東京 R)
【出典】 青年の旗 No.190 1993年9月15日