青年の旗 1987年10月1日 第128号
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【主張】 INF削減合意支持!平和原水禁運動再統一の一歩ヘ!
九日十八日、ソ米外相合談は「共同声明」を発表して三日間の日程を終了した。
「声明」では、①米ソ両国外相はINFに関する条約締結で原則的に合意に至った。②首脳会談の日程決定の為、十月に両国外相がモスクワで会談する、③秋(十一月)に米国でソ米首脳合談を開催する、④両国は戦略核兵器の五〇%削減に向けて努力する、⑤核実験に関する問題ついて十二月までに交渉を開始する⑥両国協力に関する八七~八八年の作業計画に合意する等が一致点として確認された。
今回の合意は最終文書に示されている様に、核兵器のが初めて、使われずに削減される可能性を現実のものとした。削減される核弾頭は全体の四~五%にすぎないものの、戦略核の五○%削減、核実験の全面禁止への方向性も明示された画期的なものである。
「核兵器の出現以来、初めて二種類の核兵器の廃絶に合意することが可能になった。これは始まりにすぎず、これが、続くことを望んでいる」 (ソ連シユワルナゼ外相)又、ソ米間で基本的に合意に達したSALTⅡが米では未だ批准されていないことも指摘し、「我々の懸念は協定がきちんと批准されるかどうかだ」 (同外相)にある様に、今後の平和勢力の闘いにかかっているのである。
<未だSDIに固執するアメリカ帝国主義>
米国務長官シェルツは、SDIに関して「SDIの推進をむずかしくする様なさまぎまな規制に米国は同意することはできない」と述べ、SDIをあくまで強行する方針を変えていない。
事実、時を同じく十八日、米国防長官ワインバーガーはSDIの研究水準を開発水準にまで高めることをねらいとした、新計画を発表している。
その主な研究内容は①敵の核ミサイルと弾頭をブースト段階で迎撃するロケット砲を発射する宇宙戦闘基地、②敵ミサイルを識別・追尾しその弾頭が本物か囮かを判断するシステム、③地上の監視・追尾システム④SDIの柱である高速コンピュータによる戦闘管理システム、等である。SDIを更に一歩進めたものとなっている。
アメリカ帝国主義は、INFの全世界への展開を一九七九年以来進めて来た。核戦争を限定地域で展開し、且つ勝利する=「眼定核戦争戦略」に基づいたものであった。この″使える”(欲求にかられる)核兵器INFにより、世界の緊張は激化してきた。この先制核使用と眼定核戦争戦略が、米核戦略の中心に位置し、進められてきたのである。今回のINFの全廃は米核戦略の根幹の部分が破綻したことを意味する。そうであるが由に、レーガンにとっては「SDI」は絶対にゆずれない最終ラインなのである。
<日本の軍拡政策転換へ SSDⅢに向けた出発点に>
既に欧州では、INF交渉の成否が焦点化されつつある。巡航ミサイルの二度にわたる延期を克ち取っているオランダでは、八八年末までの巡航ミサイル四十八基の配備について、「米ソ交渉の行方を見定めてから」という立場を政府に取らせている。又、既に十六基の巡航ミサイルが配備されているベルギーもINF全廃条約を批准した場合、来年の追加配備分の三十二基を配備中止すると発表している。INF交渉の進展が他の軍縮へと大きく左右する条件となっている。
一方、日本においては、先の中曽根の「INFアラスカ配備」も焦点化されていない。現実にアメリカの核戦略の中心がSDIに移行し、アメリカの帝国主義内部での相対的力関係が低下している中で、日本の役割はより明確に且つ重要になっている。一方、主体の側でも平和原水禁運動の戦線も分断されたままである。国際的な有利な核軍縮の流れをSSDⅢを目標に国内で展開し、又、その力を逆に国際的核軍縮闘争に環元するのかが重要となっている。
かかる中、とりわけ今期国際軍縮週間での日本の平和原水禁運動に問われている任務は以下の二点に集約されてくる。
第一に、相対的に日本の安全保障の位置付けが変化し、その在り方をめぐって、職場・地域でこれを議論し得る(すベき)状況になりつつあり、他方、主体の側においては、平和原水禁運動が共通の課題・スローガンを掲げつつも分裂し、総評は三年後に解体する方向性を打ち出している中での、運動の存り方、進むべき方向性を打ち出すことにある。
第二に、前述の第一の議論の下に、来年に予定されるSSDⅢに向けた国内での統一行動、日本の平和原水禁運動の再統一に向けた行動を作り出していく出発点としていくことである。