【投稿】院内感染で医療崩壊・都政崩壊そして政府崩壊-後手後手の新型コロナウイルス対応―

【投稿】院内感染で医療崩壊・都政崩壊そして政府崩壊-後手後手の新型コロナウイルス対応―
                                                                                            福井 杉本達也

1 院内感染の拡大で東京都の医療は危機的状況に
東京都の救急医療体制は新型コロナウイルスの院内感染で危機的状況にある。ジャーナリストの山岡淳一郎氏の取材によれば「4月12日時点では、26カ所の救急センターのうち7カ所で院内に感染者が出て、救急受け入れ停止や、外来初診、入院受け入れの中止、手術の延期など大幅な診療制限が行われていた。3日後の15日、さらに2つの基幹医療施設で職員や患者の感染が判明し、その数は9に増え」、広尾の日本赤十字医療センター(渋谷区)では看護師1人の感染が判明、救急は、小児以外は停止。都区西南部(渋谷・世田谷・目黒)の二次医療圏をカバーし、昼間人口は数百万人にのぼり、首都救急の要が機能不全。都立墨東病院は(墨田区)の患者・職員合わせて7人の感染判明、第一種感染指定医療機関でもあり、新型コロナ対応の主力中の主力。慶應義塾大学病院(新宿区)、東京慈恵会医科大学附属病院(港区)、順天堂大学医学部附属順天堂医院(文京区)、東京医科歯科大学医学部附属病院(文京区)も診療を制限し、都中心部の主要病院が壊滅。さらに杏林大学医学部付属病院(三鷹市)、順天堂大学医学部附属順天堂医院、東京医科歯科大学医学部附属病院(文京区)、公立昭和病院(小平市)、国立がん研究センター中央病院(中央区)でも医師や医療スタッフなどが感染し診療を制限している(山岡:BUSINESS INSIDE:2020.4.17)。また、基幹病院ではないものの、永寿総合病院(台東区)では職員69人、患者94人の163人が感染しうち20人が死亡するという最悪の状況に陥った。また中野江古田病院(中野区)では患者ら92人が感染したが、4月1日に看護師が感染したにもかかわらず「経営判断」で公表せず感染を広げた。永寿総合病院に医師を派遣し、患者を受け入れていた慶応大病院でも院内感染が発生した。まさに医療崩壊ドミノの状況にある。こうした中で、「新型コロナ疑い患者 救急搬送で110か所から受け入れ拒否」実に10時間も受け入れ先が決まらず、自宅のある台東区から40キロも離れた八王子市の救急指定病院まで運んだ例も出てきている(NHK:2020.4.15)。 東京医療従事者の感染を防ぐにはPCR検査の徹底しかない。症状があるなしにかかわらず医療関係者と患者は定期的検査が行わなければならない(上昌弘氏:東京新聞:4月15日)。

2 ウイルスという「見えない敵を捕まえる」にはPCR検査しかない
ところが、NHKが東京23区の保健所に、PCR「検査が必要と判断してから実際に行うまでにどのくらい時間がかかっているか尋ねたところ、長い場合には、『4、5日程度』かかっているという自治体が複数あり、最長で1週間程度かかったという自治体もある」(NHK:2020.4.17)とし、東京都内ではほとんど検査ができていない。安倍首相は1日2万件の検査をできる体制を整えたというが、4月13日はその1/4の5,205件しかできていない。病床が満杯になることを考慮して検査を制限しているのである。それを図らずも裏付けたのは、4月10日の、さいたま市の元厚労省医系技官の西田道弘保健所長の「病院があふれるのが嫌で(検査対象の選定を)厳しめにやっていた」との言葉である。また、東京都のPCR検査の陽性率が56.1%と、10人を検査すれば6人が的中するという異常に高い確率であることからも明らかである。
小池百合子東京都知事は「ロックダウン」などという都民への脅し言葉を使い、自らの無能ぶりを隠している。感染症病床を4,000床確保するといいながら、新宿区では187人の感染者に対し自宅待機が120人という恐ろしい状況が続いており、結果として家族や市中にウイルスをまき散らし、感染を拡大している。何の対策も打たず「外出自粛」「自分の命は自分で守れ」というのは新自由主義の「自己責任」論でしかない。ノーベル賞受賞者の本庶佑教授は「感染予防というのは、ウイルスを撒き散らす側がどこにいるか。それを捕らえないと防御対策ができないわけです。私はまず、忍者との戦いだけど、忍者がどこにいるか分からないのに防備を固めることはできないわけです。まずそれをきちんと捕らえる。 全体の忍者の数が減ってくれば、ターゲットが見えてくる。全包囲の戦いはできない。やはり決まったターゲットに絞るために感染を減らし、そして実態をきちんとマッピング」すべきだと述べている(「羽鳥慎一モーニングショー」:2020.4.16)。

3 小池知事に愛想をつかし、独自に立ち上がる新宿区・東京都医師会など
都が全くあてにならない中、新宿区は15日、独自に区医師会、国立国際医療研究センター病院(同区)などと連携し、区民らがPCR検査を受けられる「区新型コロナ検査スポット」を設けると発表した。感染疑いのある人が検査を受けやすくするとともに、保健所や病院の負担を減らして、重症者への対応に専念しやすい環境を目指す、いわゆる「新宿方式」を始めた。陽性者の入院先の調整は保健所と同センター病院、都が連携・協力してあたる。重症者は区内の大規模病院に、中等症・軽症の感染者は中規模病院に振り分ける。軽症者はホテルや自宅で療養してもらいながら区医師会などが患者のケアにあたり、病状が悪化した場合には病院に搬送する(東京新聞:2020.4.15)。
また、東京都医師会の尾崎治夫は4月17日、記者会見し、新型コロナウイルスの「感染のスピードがこれ収まらないと、いくら病床を用意して、宿泊施設を用意して、我々がいくら軽症者を自宅で診るような事態になって頑張っても追いついていけない」とし、「コロナ(感染者)と思う患者がいても、相談センターに連絡しても電話がつながらないし、新型コロナ外来の病院にお願いしても病床が満杯で、PCRもできないことになっている」「感染している疑いのある人を拾い上げてきちっと交通整理しないと感染の予防もできない。」「ここは我々が立ち上がってPCRセンターをつくって、混とんとした状態を良くしていきたい」、「これ以上東京はもちません」と悲壮な決意を語っている(Yahooニュース:2020.4.17)。

4 「医療の東西格差」-元々首都圏は医療資源が不足している
「医療の東西格差」ということが昔からいわれている。今回の新型コロナウイルスの感染は特に首都圏の元々からの医療資源の不足の弱点をついている。東京都は人口10万人あたり医師数では304人と京都府の302人とほぼ同じであるが、神奈川県は195人、千葉県は170人、埼玉県は最下位で148人しかいない。全国平均は235人である。人口10万人あたりの看護師数では東京都は748人、千葉県は701人、神奈川県は669人、埼玉県は665人と全国平均の953人と比較すると圧倒的に少ない。ちなみに、熊本県は1,458人である。「医師数の『西高東低』は、人口あたりの医学部数と相関関係にある。このことは、医学部卒業生 が出身大学の近郊で就職する傾向を示しており、医師は『地産地消』であることがわかる。つまり、医学部数も『西高東低』である。ではなぜ、西日本に医学部が多いのか。それは、約150年前 の戊辰戦争の影響である。」「明治政府は敵方であった東北・関東周辺諸藩の武装解除を徹底した。」このため「明治期の医学部誘致合戦で、政治力のある西軍雄藩が有利だったことは現在の国立医学部の偏在が証明している」。「首都圏では埼玉県、神奈川県に国立の医学部はない」(上昌弘:2017.9.1)。
救急医療も首都圏の弱点である。東京都の二次救急を支えているのは、全体の約7割にあたる私的病院である。近年救急車出動件数が増えているが、その急患に対応する救急告知病院は減っている。救急医療に対して加算される保険点数が低いことがあげられる。50床以下の病院では、当直医、看護師などの人件費を現状の保険点数から捻出することが難しいこともある(三浦 邦久江東病院副院長:2011)。今回の新型コロナウイルスの感染はこうした首都圏の弱点をついており、問題は構造的であり深刻である。

5 医療装備の不足を始め後手後手に回る安倍政権
4月15日の日経によると不足する医療装備ではサージカルマスクが2億7,000万枚、N95マスクが1,300万枚、防護服が180万枚、ガウンが4500万枚などとなっている。4月15日の朝日の記事によると阪大病院で患者への対応に使う防護服が足りなくてポリ袋を代用品に使い始めたという。ほとんど医療崩壊したイタリア並である。大阪府では急遽、防護服の代わりとするポンチョ型のかっぱ28万枚を購入する方針だとし、大阪市の松井市長は家庭のかっぱの寄付を募るという。日経の4月14日には「加藤勝信厚生労働相と梶山弘志経済産業相は7 日、経済同友会と経団連に、新型コロナの対策物資について緊急の供給体制を整えるよう協力を求めた。」との小さな記事があるが、いったい安倍政権は1月から3か月も何をしてきたのか。この期に及んでも政府が全く機能していないことを改めて確認できる。日本の現状には末恐ろしさを感ぜざるを得ない。

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