【翻訳】「COVID-19 との闘いにおける焦点は T-Cellsに移っている。」
The Japan Times, July 25, Friday, 2020
“Focus shifts to T cells in COVID-19 fight” By Bloomberg
「COVID-19 との闘いにおける焦点は T-Cells に移っている。」
「抗体」(Antibody)*は、病気に罹った患者において急速に減退していくことが示されている。
「抗体」は、昨今のパンデミックの時代において親しい言葉になってきている。恐らく抗体は、恐ろしいコロナウイルスを窮地に追い込む最良の頼みであることを示唆しているからであろう。しかし今週に入って、重要なワクチンのデータが発表され、脚光を浴びたのは、あまり注目されて来なかった免疫の王者:T Cells* であった。
AstraZeneca Plc, Pfizer,Inc, and partner BioN Tech SE., 同様に China’s CanSino
Boilogics Inc. これらの会社すべてが、彼らの実験的試みが結果を示したサインとして、ワクチンの受験者に、これら白血球細胞(T Cell のことか。訳者)の存在を認めている。
最近の研究によって焦点に押し出された T-cell は、一つの注意事項または督促状である。
即ち、身体の防御は、一つの要素、成分よりも、もっと多くの要素に依存していること、そして、COVID-19 に対する免疫反応の多くは未だ不可解(mystery)であること。
特に、賞讃されている「抗体」が長く存続する能力を欠いている、と言うことが研究者達によって明らかにされて来ている時において。
Mr. Paul Griffin, Associate Professor of Medicine at University of Queensland in Brisbaneは、「抗体は全体像の、たった一つの小さい部分である。」と述べている。彼は、Australiaにおける二つの有力なCOVID-19ワクチンの臨床研究を指導している。「しかし我々は実際、新しいコロナウイルスへの人々の免疫を十分に理解するところへは到達していない。」
Pandemicが世界を嵐に巻き込んでいる時、科学者たちは最初に抗体に注目した。抗体、即ち、外からの侵入者に取りつき働けないようにする蛋白質。何故ならば、それを取り出すことが、有効なワクチンの基本であるからである。その免疫蛋白質は、また T-Cell より計測が簡単であり、その前の感染を調べ評価するのに使うことが出来る。
抗体が、軽い病気に罹った患者においても、急速に無くなっていくことを示す研究は、抗体こそが免疫の何らかの継続する形態を供給してくれるという希望を打ち砕いた。
Antibody*
訳者注: Wikipedia等の情報を参考としております
「抗体」 ご存知とは思いますが、細菌やウイルスなどの外来病原体等が「抗原」となりうる。「抗体」は、体に入った「抗原」に対して排除目的で、白血球のB-Cellより作られる蛋白分子で、免疫グロブリンとも呼ばれ免疫の元である。”Y”字型の4本鎖構造を基本構造としている。
T-Cells*
訳者注:ご存知とは思いますが、T-Cells (T 細胞)とは、リンパ球の一種で骨髄で作られた前駆細胞が胸腺での選択を経て分化成熟したもので、細胞表面に特徴的なT細胞受容体を有している。名前の”T”は、胸腺を意味する ”Thymus” に由来する。
尚、生体防衛、免疫系態について整理してみれば以下のごとくです。
1.皮膚(上皮)や消化管上皮、粘膜。
2.自然免疫 : 病原体にたいして別個に応答するのではなくて、常に汎用的な方法で対処するがゆえに、即効性があり、常に臨戦体制にある。反面、獲得免疫のような免疫記憶はなく、長期に渡り防御する仕組みではない。白血球やリンパ球がその働きを担う。先天性免疫、基本免疫でもある。
3.獲得免疫 : 後天性免疫、適応免疫であり特定の白血球の一種であるリンパ球がその働きを担う。B-Cell やT-Cell (Killer T-Cell, Helper T-Cell 等)である。
[私見ながら、COVID-19 や MERS, SARSには自然免疫では対応しきれていず、今は、近く開発されるであろうワクチンに期待をつなぐしかないか、あるいは未だはっきりとは解明されていない過去に他の病気で獲得した免疫による “cross reactivity” (交差反応)に望みを託すしかないか。]
“Unsung Warriors” (注目されて来なかった戦士達)
対照的に、T-Cell は、ウイルスに感染した細胞を死滅させ、過去に患った病気を、長年に渡り覚えていて、最初の病気で T-Cell が戦場を去ったずっと後においても、新しい新鮮な抗体戦士を目覚めさせる。 例えば、2003年に発生したもう一つのコロナウイルスであるSARSに感染した人々は、今も、17年前の病気に反応するT-Cellを有している。
このことは、T-Cell が、少なくとも、仮説として、未だSARSからの生存者を、ほぼ20年後においても、その感染から防御する用意が出来ていることを示唆しているし、さらに、COVID-19 への防御の手助けをするかもしれないことを示唆している。
「抗体は、ある期間の後は衰えて行く。」スイスの製薬会社 Roche Holding AG の診断学を率いる Mr. Thomas Schinocker は述べている。「このことは、そこに免疫がない、と言うことを意味しない。潜在的に記憶細胞、即ち T-Cell や其の他の細胞が 直ちに よりよく二度目の感染に応答して、厳しい状態にさせない。」
ある研究成果が見つかった、即ち、COVID-19に罹った兆候を示さない何人かの患者は、そのウイルスを認識する T-Cells を有していた、たとえ、そのウイルスを探知する抗体を持っていない時でも。 もう一つの研究は指摘している、即ち、この病原菌(COVID-19のことか。訳者)に遭遇したことのない人々における免疫のレベルにおいて、COVID-19 に罹ったとして、その兆候を示さないのは、可能性として、普通の風邪(”common cold”)を引き起こす、ひとつか、幾つかのコロナウイルスに感染した為であろう。
「免疫システムとは、記憶にまつわることがすべてである。」Mr. Alessandro Sette,
La Jolla Institute for Immunology(免疫学) in San Diego, California, USAの研究者、が述べている。また彼は、先月、以下のことを実証した。即ち、健康な提供者における、既存の SARS-CoV-2*に交差反応(cross -reactive)*する T-Cell の反応の潜在力について。「多分、あなたは既存の記憶応答を少し持っている。それであなたの免疫システムは、それを持っていない人より、幸先良いスタートを切っている。」「最近、4種類ある普通に流行しているコロナウイルスの一つによって引き起こされた風邪に罹ったことがある人にあっては、交差反応がより強力になっていることは、ありうることである。」木曜日に(on July 23 であろう。訳者)あるインタビューにおいて Mr. Sette は述べている。
SARS-CoV-2*
訳者注:ご存知とは思いますが、SARS-CoV-2 はCOVID-19 のウイルス名。
ご参考までに、知られているコロナウイルス7種類は、以下のごとくです。
病名 COVID-19 SARS MERS Common Cold
(新型コロナ) (Severe Acute) (Middle-East) (普通の風邪 4 種類)
Respiratory Syndrome) Respiratory Syndrome)
ウイルス名 SARS-CoV-2 SARS-CoV MARS-CoV HCoV-229E, HCoV-OC43, NL63, HKU1
発生 2019年末中国 2002年中国 2012年Saudi-Arabia 有史以来か
cross -reactive* 又は Cross Reactivity :
ある病原体に対して起きた免疫反応が別の似た病原体でもおこりうることを言う。
科学者たちは、Tuscany の海岸の沖合にある島に住んでいる人々についての研究に関心を寄せている。( Tuscany: トスカーナ:イタリー中部の州で州都はフィレンツェ) その島では、本土イタリーから、感染した旅行者が島中を行き来したにもかかわらず、COVID-19の発生が非常に少なかった。前年に島の人々は、普通の風邪(”common cold”)に罹り、とりわけ不調の一期間を体験していた。
「私が話した何人かの島民は、このこと(風邪に罹ったこと)が、何かを(”COVID-19”に対して)したのであろうと思いを巡らしていた。」と Mr. Sette は述べている。
一方で感染してもほとんど影響を受けない人達がいるのに、他方、重症化したり、時には死に至る人達がいるのは何故かを、SARS-CoV-2ウイルスに交差反応する既存のT-Cellsによって説明できるどうかを確定するには、さらなる研究が必要である。Mr. Paul Griffin, Associate Professor は述べている、即ち、はっきりしていることは、最良の防御のためには抗体と T-Cells の両方のバランスが必要とされる、と。
Pandemic を弱める。
Mr. Corey Smith, head of translational and human immunology at QIMR Berghofer Medical Research Institute in Brisbane は述べている、即ち、抗体の存在期間が短いということについての知見は、免疫が完全に後退し弱まっている、正確には T-Cells の故に、と言うことを意味しない、と。 Memory T and B Cells 同様に いわゆる Helper T-Cellsが、感染によって深刻な状況に至る前に、感染に反応する抗体を準備することが出来る、と Mr. C. Smith は続けて述べている。 同氏は、SARS-CoV-2 ウイルスに対する免疫反応を研究している。このウイルスは、普通の風邪を引き起こす他のコロナウイルス同様に、抗体から逃れる方法を持っているかも知れず、かくして再感染を引き起こす。「しかし、どんなに厳しい状態になっても、それを和らげる細胞の免疫力がある。」Mr. C. Smith。
7ヵ月に満たないうちに 600,000以上の人々を死亡させた pandemic virus を最終的に抑制し弱めるのは T-Cells なのだろう。「もしわれわれがこのウイルスを根絶できないとすれば、それは、一種の巡回するウイルス、もう一つの風邪ウイルスとして成り上がるのであろうか?」Mr. C. Smith は述べている。「私には、今は、判らない。しかし関心をそそられる。」[完] <訳出:芋森>