【投稿】バブル破裂の前兆続発--経済危機論(39)

<<「急激な市場の下落リスク」>>
米株式市場が大きく揺れ出し、バブル破裂の前兆現象が続発しだしている。
1/22、米銀大手・シティバンクのレポートは「米株式指標はさらに50-100%上昇する可能性があり、バブルがいつ破裂してもおかしくない」と警告を発している。JPモルガン、ゴールドマンサックスなど、事実上すべての主要銀行・投資機関が「記録的な株価上昇の陶酔感が非常に近い将来に急激な市場の下落のリスクを急上昇させる」と警告しだしたのである。ゴールドマンサックスは、それを「米国株式市場の一角にはフロス(細かなバブル)が泡立つ兆しが見えている」と形容している。
1/27、「アマチュア投資家とヘッジファンドの間の激しい戦いにより、ウォール街の取引量は2008年の金融危機の最盛期に設定されたピークを超え、240億株以上、2008年10月の最高値を超え、パンデミックの開始時に設定された4800万の記録をも超えた」と報じられている(1/28 Financial Times)。
「アマチュア投資家が集まるRedditのr / WallStreetBets(ネット掲示板「レディット」)コミュニティのユーザー数は280万人から430万人に増加し、水曜日の60,000人強から、約316,000人がプラットフォームでオプションを購入すると発表している。」と、マネーゲームに集まる投機家の急増の実態まで報じられている(1/28 Financial Times)。そのプラットフォームが、売買手数料が無料のスマホ証券トレーディングアプリ・ロビンフッドである。
そして、「この1週間で株式取引量が急増し、ウォールストリートのオンラインブローカーは追いつくのに苦労しています。最近、Fidelity Investments、E * Trade Financial Corp.、Charles Schwab Corp.、Vanguard Groupのクライアントは、取引の実行が少し遅れたり、重要なアカウント情報に一時的にアクセスできなくなったりしています。」と、取引に追いつけない実態が報じられている(1/26、ウォールストリートジャーナル)。
こうした最中の1/28、米商務省が発表した2020年の米国実質国内総生産(GDP)速報値は前年比3.5%減と、1946年以来の大幅な落ち込みとなった。経済恐慌が進化した実体経済の疲弊を象徴するものであった。202

0年第4四半期の貿易赤字が、史上最悪の状態に陥ったことも明らかになった。
翌1/29の株式市場は乱高下激しく、ダウ工業株平均は3万ドルの大台を割り込み、2万9973.47ドルに急落、S&P500指数も74.61ポイント(1.97%)の急落、ナスダック総合指数も273.58ポイント(2.05%)、1万3063.58に急落、これら3大株価指数、いずれも昨年10/28以降、週間の下げ幅最大を記録したのであった。日経平均株価もリスク回避の売りが急増、534円03銭(1.9%)安の2万7663円39銭への大幅続落となった。

<<「ゲームストップ事件」>>
ここで登場してくる「アマチュア投資家とヘッジファンドの間の激しい戦い」とは、投機対象となったゲームストップ(GameStop)というビデオゲームを販売する会社をめぐる、同社の株の「空売り」攻防事件である。同社は、世界中に5500以上の店舗を有しているが、今やほとんどのユーザーは直接オンラインでビデオゲームをダウンロードするか、Google、Amazon、Apple、またはSteamなどからゲームをストリーミングしており、実店舗の小売チェーンはさびれる一方で、1年前、同社の株価は1株=約4ドルであった。2021年1月期も赤字で、業態変化を模索するか、廃業するかの岐路に立たされ、本来注目されるような投資対象ではは全くなかったのである。ところが今年1月初めには17.25ドルに、「空売り」攻防事件の最中の1/27には347.51ドルに跳ね上がったのである。そこには、大手ヘッジファンドの一つ、あるいは

いくつかが、同社の株価に目をつけ、人為的に価格を引き上げ、次にそれを反転させる「空売り」を仕掛け、金融差益を稼ぐ、つまりは実体経済を食い物にして、弱体化させるハゲタカ金融操作を仕掛けたのであるが、それはカジノ資本主義の真っただ中にある彼らにとっては日常茶飯事であった、と言えよう。

ところが今回、ネット掲示板「レディット」の人気フォーラムページ「WallStreetBets」で、この空売りに気づいた個人投資家が「私たちは市場を悪用するヘッジファンドにうんざりしている」と声を上げ、それが「空売りを締め上げろ」へと拡散し、「それは階級闘争です。反撃する時が来ました」にまで盛り上がり、ロビンフッドを経由してゲームストップ株や映画館大手AMCエンターテインメント・ホールディングス、BlackBerryなど空売り対象となっている銘柄に買いを殺到させ、ヘッジファンドの売り抜けを許さない行動に出たのであった。この攻防でメルビン・キャピタルやシトロン・キャピタルなどヘッジファンドは思いもよらぬ損失を被り、空売りポジションの大部分を100%の損失でカバーせざるをない事態に追い込まれたのである。
問題は、この事態に直面してロビンフッドがこれらの銘柄取引の停止措置を取り、それが大きく報道され、批判されるや翌日また復活させるなど混乱の極みに追い込まれたことである。ロビンフッドに27億ドルの株式を保有していたと伝えられているCitadelや他のウォール街の金融資本の要請と圧力によるものであろう。
こうした事態を受けて、1/28、民主党のアレクサンドリア・オカシオ・コルテス議員とラシダ・トライブ議員は「株式市場をカジノとして何十年も使用してきた人々を保護するようなこと、これは容認できない」として、議会にロビンフッドを調査するよう求めている。同じく民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は1/29、「株式市場は私たちの経済ではありません。それは巨大なカジノであり、億万長者の遊び場です。 証券取引委員会・SECはそれをクリーンアップする必要があります」と述べ、議会がもっと行動する必要があると強調している。
落ち込む実体経済とかけ離れた株価上昇に有効な手を打てず、ただただバブル崩壊を怖れる米中銀・FRBや世界各国中銀の超金融緩和政策、債務不履行のリスクが高いジャンクボンドにまで融資して、巨額の投機資金を株式市場・金融資本市場へ流入させてきたツケ、トランプ政権や各国政権の億万長者・大企業への減税、株価つり上げの自社株買い、巨額の報酬や配当慣行を横行させてきたツケが、いよいよ処理しきれない段階、「バブルがいつ破裂してもおかしくない」段階に直面しているのである。
根本的な政策転換、ニューディールが要請されているが、先ずは無謀な金融投機を抑制し、カジノ化を防止するために、例外なく適用される金融取引税を早急に導入すること、そして富裕税・累進課税の復活が急務と言えよう。社会的合意の基盤はかつてなく高まっており、たとえ税率が低くても、一挙に市場を鎮静化させ、本来あるべきセーフティネットの再建と建設的投資を促進させる契機となろう。
(生駒 敬)

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