<<ビリオネア、コロナ禍でさらに巨額資産>>
4/6、米フォーブス誌が発表したビリオネア(保有資産10億ドル=1084億円以上)の「世界長者番付2021」によると、その人数は2755人に達し、4年連続で首位となったのは、アマゾンのCEO、ジェフ・ベゾス氏である。
フォーブスのデータによると、その中でも1,000億ドル=10兆8400億円以上の資産を保有しているビリオネアは、以下の6人、
・アマゾンCEOのジェフ・ベゾス(1970億ドル)
・テスラとSpaceXの創設者のイーロン・マスク(1,720億ドル)
・マイクロソフトの創設者ビル・ゲイツ(1300億ドル)
・ FacebookのCEO、マーク・ザッカーバーグ(1,135億ドル)
・ バークシャー・ハサウェイCEOウォーレン・バフェット(1010億ドル)
・ オラクルの創設者ラリー・エリソン(1,010億ドル)
である。(下表、参照)
(なお、この「世界長者番付2021」で今回、「長者番付入りを果たしたのは、中国が745人、米国が724人で、中国が初めて米国を抜いた。」と4/9付け・人民網は誇らしげに報じている。中国でも新自由主義と格差の拡大が急速に進行していることの現われであろう。但し、20位以内は2人である。)
1990年から2021年4月の間に、米国の億万長者の総資産は19倍に増大(2,400億ドルから24.56兆ドルに)しているが、とりわけ特徴的なことは、パンデミック危機の2020年3月18日から2021年4月12日までの間に、彼らビリオネアの総資産は、2.95兆ドルから4.56兆ドルへと、1.62兆ドル、つまり55パーセントも急増していることである。(INEQUALITY.org April 15, 2021 より)
FRB・米連邦準備制度理事会のデータによると、アメリカの719人のビリオネアは、現在、米全人口の下半分、約1億6500万人の総資産(1.01兆ドル)の4倍以上の富(4.56兆ドル)を保有している。人口の1%どころか、0.0002%にすぎない彼らビリオネアは、過去13か月のコロナウイルス危機の中で、3000万人以上のアメリカ人がウィルスに感染し、56万人以上がそのために死亡し、約7700万人が失業しているそのさなかに、その犠牲を利用し、踏み台にして巨額の資産をさらに増大させたのである。ビリオネアの富の増加の3分の1は、このパンデミック危機と経済危機の13か月の間に手に入れたものである。
99%以上の人々の犠牲の上に富と権力を集中し、独占する、こんな異常な事態が放置されることは許されないし、民主主義をあざ笑い、破壊するものと言えよう。日米首脳会談では例によって「日米は、自由、民主主義、人権などの普遍的価値を共有する同盟国だ」などとうたっているが、その「普遍的価値」を破壊し、富と権力の集中、独占を放置しているのは、日米首脳自身なのである。富裕層の脱税を許さず、累進課税を徹底的に強化し、富の社会的再配分を断行するニューディールが緊急に要請され、実行されるべき段階なのである。
<<アマゾンの組合つぶし>>
4/13のフォーブスのデータによると、アマゾンのジェフ・ベゾス氏は、4/6の「世界長者番付2021」時点で、2020年の1130億ドルから、この13か月間で1770億ドル(19兆1868億円)へ、56.6%も増大させており、4/12時点では1968億ドル(21兆5282億円)、実に74.1%の増である。
アマゾンは世界最大の企業の1つであり、日本でも展開するグローバル企業であるが、パンデミック危機に呼応して、ネットを通じた電子商取引が急増し、大量の実店舗の小売業に取って代わり、過去1年間だけでも、米国内だけで約40万人の従業員を追加し、総労働力はウォルマートに次ぐ80万人を超えている。ただし、これには、アマゾンのトラックで配達し、アマゾンのジャージを着ているにもかかわらず、数十万人のドライバーは請負業者として雇用されており、従業員には含まれていない。
そのアマゾンで、昨年11/20、米南部アラバマ州、ベッセマーにあるアマゾンの倉庫で働いている労働者の要請に基づき、小売り業界の労組、小売・卸売・百貨店労組(RWDSU)が、組合結成の投票を労働関係委員会(NLRB)に公式書類を提出したときから、猛烈な組合つぶし策動が開始された。
まず第一に、組合側が選挙に投票する資格があるのは1,500人の従業員であると主張したのに対して、アマゾン側は一時的・臨時的な季節労働者の追加を主張し、5800人に膨らませ、労働関係委員会にそれを飲ませることに成功。RWDSUのアッペルバウム事務局長は「投票資格者はわれわれが適正と考えた規模より大きくなった。だが、われわれが投票前にそれを受け入れなければ、数年にわたる法廷闘争になっていた」と述べている。離職率が高く、雇用形態が不安定で流動的な雇用主に有利な実態を逆に悪用したのである。
次いで、組合側の職場内でのキャンペーンを徹底して排除、締め出し、追跡、監視する一方で、会社側の反組合キャンぺーンは、会社側が雇った何十人もの反組合コンサルタント、その弁護士事務所の講義を従業員全員に聴講させる、トイレから浴室、職場のいたるところに会社側の反組合スローガン・チラシ・看板・メールをあふれさせる、等々、常軌を逸した、違法な反組合キャンぺーを横行させたのであった。ビリオネアにとっては、ビリオネアを維持し、さらに攻勢を強めていくための絶対に負けられない必死の反撃でもあったと言えよう。
4/9の投票結果は、投票総数3041、組合結成に賛成738票、反対1,798票、29%対71%での否決であった。会社側が異議申し立てをした賛成票とみられる500票余りがあり、それらを加えたとしても4対6で、組合側にとっての敗北である。組合側はただちに、「アマゾンの行為は(従業員の間に)混乱や抑圧、報復を恐れる空気をもたらし、結果として従業員の選択の自由を妨害した。今回の投票結果は無効にするべきだ」との声明を発表し、全国労働関係委員会に異議を申し立てることを明らかにしている。
しかし、組合側の敗北にもかかわらず、今回のアマゾン労組結成キャンペーンは、意外とアマゾンを追い詰め、多大な影響をアメリカのみならず、全世界に及ぼしていると言えよう。米国の50以上の都市でアマゾン・ベッセマー労働者との連帯集会が開催され、4/5に発表されたAFL-CIOの登録有権者の世論調査では、「労働条件について交渉するために組合を結成するアマゾンの労働者を支持しますか、反対しますか?」との問いに、77%対16%で支持が反対を圧倒(民主党支持者:96%対2%、共和党支持者:55%対34%、無党派:79%対15%)している。
3/22、イタリア労働総同盟(CGIL)が15か所のアマゾン倉庫で「アラバマとの連帯・ワンビッグ・ユニオン」を掲げてストライキを決行している。ドイツ、インドでもアマゾンの労働者によるストライキが行われている。
4/16、ジェフ・ベゾス氏は、「株主への手紙」を公開し、個人経営の宅配業者やドライバー、そして一時雇用の社員支援のための基金を立ち上げることを明らかにし、さらに、アマゾンの従業員が過酷な労働条件の中でトイレにも行けず、ボトルに小便をしていることの言い訳として、わざわざ「従業員の成功のためのより良いビジョン」と「世界で最高の雇用主」になることを約束している。ある意味では、ベゾス氏は追い詰められているのである。
アラバマ・ベッセマーのアマゾン労働者の闘いは、反撃の闘いの始まりに過ぎない、とも言えよう。
(生駒 敬)