【投稿】イギリス艦隊は極東でもロシアと対峙へ

黒海でロシアを挑発し、地中海ではイラクの武装勢力へ空爆を行い、意気軒昂とインド洋を進むかに見えたイギリス空母打撃群(CGS21)であるが、ここにきて様々なトラブルに見舞われている。
空母「クィーン・エリザベス」を含む4隻でコロナクラスターが発生、乗組員100人以上が感染したことが明らかになった。フリゲート「ケント」ではコロナとの関連は不明だが、7月10日に乗組員一人が死亡した。
さらにミサイル駆逐艦「ダイアモンド」がエンジントラブルで艦隊から脱落し、シチリア島で修理中であることが明らかになった。
欧州から極東へ向かう艦隊が次々とトラブルに会うのは、「バルチック艦隊」を想起させる。この時はスエズ運河通行拒否など、イギリスによる妨害の影響が大きかったが、今回はイギリス艦隊が悲運に見舞われており、ロシアの呪いが通じたわけではないがプーチンは大笑いだろう。
コロナについては中東の寄港地で感染した可能性が高い。先にはジプチの自衛隊基地でクラスターが発生し、最近にはソマリア沖に展開する韓国の駆逐艦で乗員の8割が感染する事態となっている。今後コロナが猖獗を極めるインドや感染拡大中のシンガポールに寄港し、西太平洋を進む予定である。
CGS21司令部は「作戦に支障はない」としており、予定通り進めば9月には朝鮮海峡を抜けて日本海に入り、津軽海峡を通過し太平洋にでる予定となっている。これは明らかにロシアを挑発するコースである。ウラジオストックにどこまで接近するかにもよるが、ロシアは昨年11月にアメリカがピヨトール大帝湾で「航行の自由作戦」を実施した時以上の対応をとるだろう。
一方、中国に対しては南シナ海での行動に不確定要素はあるものの、台湾海峡は通らずに不要な刺激を避けるコースとなっている。
黒海で始まり日本海で終わる行動を見ればCGS21の主要な狙いは、日本が期待している中国牽制ではなく、ロシア牽制であることが判る。
日本政府は、ソマリア沖での海自との共同訓練を皮切りに、随時CGS21との演習を積み重ねていく計画であるが、日本海で共同歩調をとればロシア側からの厳しい反発は避けられない。
政治情勢が流動的な時期に緊張が高まれば、対露没交渉の菅政権としてはなすすべもないだろう。

その後艦隊は横須賀、呉、佐世保、舞鶴に分散して寄港する予定となっているが、その際は厳重な検疫が必要となる。昨年の「プリンセス」に続き「クィーン」がコロナ禍にみまわれたわけであるが、「女王陛下」を特別扱いすることは許されない。
また外国の艦艇が寄港した際には市民対象の一般公開が行われるが、「希望者へのワクチン接種完了が10月から11月」という状況では実施不可能だろう。
菅政権はCGS21の極東来航を政権浮揚のイベントにせんとしているが、オリンピックと同様その目論見は外れるだろう。(大阪O)

カテゴリー: 平和, 歴史 パーマリンク