【新春訪問】吉村励先生と語る(2009-01-10)

【新春訪問】吉村励先生と語る(2009-01-10)
   —-100年に1度の金融恐慌への対応について—-

 恒例の新春訪問ということで、1月10日に生駒・佐野・T君の3人で吉村先生宅をお尋ねしました。先生は今年87歳ということですが、現下の金融恐慌について、お話を伺いました。
 
【吉村】生駒君ね、1929年の恐慌というと僕はまだ小学校でね、七つだよ。ただ家が地主で何となくね、小作の方がね景気が悪くて年貢を下げてくれという話し合いをね、おやじとやっていたのを覚えているよ。しかし、後でバルガの世界恐慌史を読んでね、あれが恐慌だったのかと思ったわけだ。だから、記憶としては何となく不景気だったということは覚えているんだ。しかし、それから80年ぶりの今の恐慌だ。君らは客観的にちゃんと見ておいて欲しいわけだね。
【生駒】だってこういう経験はまずありえないですからね。
【吉村】100年に一度というからね。
【生駒】当事者、記録者でないとだめなんですね。ちょうど80年ですね。
【吉村】しかしびっくりしたね。世界があれほど結びついているとはね。
【生駒】しかも早いですね、展開が。去年の9月15日のリーマン・ブラザーズの破綻からの事態の進行は予想以上でした。
【吉村】日本の企業が海外の株をあれほど持っているとはね。そして海外勢が日本の株を持っていたこともね。あれほど緊密なものであったとはね。概念的には知っていたけれど。
【生駒】けったいな合成債権を農林中金まで大量に買い込んでいたわけですね。
【吉村】本当にたちまち影響が広がったね。
【生駒】しかも、本格的にはこれから、ということですね。実体産業の方への影響は。
【吉村】29年の恐慌は33年くらいまで続いてね、そして33年がヒトラーの政権獲得でしょう。31年が満州事変なんですね。29年の恐慌は戦争で克服されたという側面がある。今度はどうなるか、というところですね。今戦争されたのでは困るわけでね。
【生駒】そうですね。中東の事態も怪しいですね。ブッシュのいる内に、という面もあるが、どう進展するか、危険ですね。
【吉村】100年に一度の歴史的な時を生きているということを認識してほしいですね。私自身も実際の恐慌というのは初めてなんですからね。
【佐野】私も不景気はたくさん経験しているわけですが、経済学的にですね、恐慌の定義というのはあるんですかね。
【吉村】恐慌という言葉を使うのは、大体マル経なんですね。近経の連中は絶対に恐慌という言葉を使わないです。だから、不況というだけなんです。
【生駒】それでもクラッシュとは言いますね。ガルブレイスは、The Grate Crashと言ってますね。
【吉村】ただ違う点はね、昔アルゲマイネクリーゼと言ってましたが、全般的危機と。革命的情勢という点もあって、政治的危機と絡めてね。現在は、アメリカ一極の世界支配の下にあるという違いはありますが。君達はしっかりメモとスクラップをしておくことだね。ほんとうに貴重な経験ですよ。こんな恐慌は初めてですよね。
【生駒】29年恐慌と言っても、日本では33,4年に影響がでているわけですね。
【吉村】日本はね、世界不況の中で景気の島と言われていたわけですね。31年の満州事変しかりですね。戦争というのは使ったものは、見事に消えていくわけですね。過剰物資が残るわけではない。だから資本主義にとっては過剰生産を克服するためのもっとも有効な手段であるわけだ。それだけに、ある意味で戦争の可能性があるという危惧を感じますね。
 だから日本だけが不況の中に浮かぶ景気の島と言われた。考えてみると、アメリカの成長と言うか拡大というかね、その過程ではいつも戦争をやっていたわけだ。朝鮮戦争・ベトナム戦争、そして湾岸戦争・アフガン・イラク戦争とね。
【佐野】過剰生産のはけ口としての戦争ということなんですが、現状では派遣切りに特徴的なように、直ちに生産縮小体制に入ってますね。今回の恐慌の特徴が、膨張した金融が破綻することから始まっていますから、価値の減価が急激に起こったわけで、過剰生産のはけ口と言う意味と少し性格が異なっているようにも思えるのですがね。中国も生産縮小に入っていますからね。
【生駒】しかし、ここまで世界経済が緊密化しているから、戦争による解決というのはしんどいのではないでしょうか。
【吉村】解決は3年くらいはかかると言われているけれどね。
【佐野】アメリカの失業率が7.2%で、すぐに10%を越えると言われていますね。いくら救済策を出しても、ビッグ3は破綻するんじゃないかな。だってあの大型車は売れませんよ。売れないと再建はないわけですね。環境対応の電気自動車をすぐに売り出せれば話はちがいますけれど。それから、マインドの点の影響も大きいですね。リーマン破綻以後ですね。
【吉村】アメリカとしては市場原理主義でね、まだ確保しようと思っていただろうけれど、AIG問題では、これは潰せないと判断したわけだね。その上に、ビッグ3問題ですね。3社の社長が首を並べて大統領にお願いするわけだ、資金融資をね。芝居を見ているようだったね。
【生駒】あの巨額報酬には恐れ入るな。無茶苦茶ですね。リーマンを退職した社長の退職金が150億円とかね。
【吉村】年俸が100億とかね。日本と桁違いだね。
【生駒】ソニーがアメリカ人社長を迎えた時、その社長が報酬が低すぎると不満だったといいますね。年俸3億だったかな。アメリカでは考えられないとね。
【佐野】アメリカもオバマ大統領の登場を待っている面もありますね。大型投資で400万人の雇用を創出するということですが、財政赤字が拡大するばかりで、さらに円高ドル安が進むのは必至です。
【吉村】アイスランドですか、国家破綻したのはね。もしEUに入っていたら展開は違っていたでしょうね。小さな国はドル圏を選ぶか、EU圏を選ぶかね、国家の選択が問われるね。
【佐野】外資が入って金融で繁栄していたかに見えたのが、外資の逃げるのは瞬時だったですね。
【生駒】まさに、空中楼閣だったわけだね。もともと漁業国ですよ。そもそも金融立国というのがおかしいですよ。
【吉村】ブレドンウッズ体制というアメリカの一極支配が崩壊したあと、どんな体制が必要なのか、現役の諸君の課題として考えてほしい。今後議論していきたいね。
【生駒】先生、最後にちゃんと予測しておいてくださいよ。
【吉村】それはもう、君らの仕事だよ。(笑)・・・・・

 【出典】 アサート No.374 2009年1月24日

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【コラム】ひとりごと—連合結成20年に思う—

【コラム】ひとりごと—連合結成20年に思う—

○連合は、昨年11月に結成20年を迎えている。1998年結成10年の連合中央第6回大会(会場は有楽町の東京フォーラム)には、私も産別組合の代表として、傍聴ではあったが参加することができた。(「連合結成10年に思う」ASSERTNo263参照)○私もすでに労組役員を卒業し、直接的な運動現場の雰囲気・空気を感じることはできなくなったが、労働組合運動への思いは変わらない。昨秋来、不況になれば解雇自由とも言うべき「派遣切り」が横行し社会問題となっている。今号の杉本報告にもあるように、現出している雇用問題にどのように連合運動が対応するのか、正に連合の組織と運動が問われていると思う。○連合結成は、旧総評・同盟などの労働4団体を中心にした労働戦線の統一の産物であった。共産党系は、連合結成に合わせて、官公労の自治労・教組からの分裂を強行し、全労連を結成している。○両団体とも結成20年ということで、機関紙を見ると特集記事が目立っている。ただ、いつまでも「対立関係」にこだわり続けているかというとそうでもない。例えば、大阪自治労連の代表は機関紙で「反連合・反自治労という狭い視野ではなく・・・」と表現しているし、テレビ番組では共産党の市田書記局長が「連合は本工組合員だけのための運動をしている」との批判に、「年越し派遣村には連合系の組合も参加して協力してくれた。」とごく自然に発言し、対立関係一色から、意見の違いはあれ、労働者の組織であるという当たり前の立場に立っているな、という印象を受けた。(もちろん、選挙対策でもあろうけれど)○しかし、全労連系には、非正規の組織化面では運動強化が図られている面があるものの、ナショナルセンターを名乗る無理がいろいろ出てきているようだ。自治労連の独自共済を見ても、経営が限界にきている印象がある。公務員・教員の公務組合が中心では、やはり限界があるようだ。○さて、年末年始に派遣切りで職と住居を失った労働者に対して、年越し派遣村の取組みが展開された。この取組みには、連合系も参加した。テレビの報道の中に元連合会長の笹森氏の姿も日比谷にあった。○12月4日に都内で開かれた派遣法改正を求める集会は、連合・全労連・全労協など従来の立場を超えて2000名が結集した。この流れが年越し派遣村に繋がったと毎日新聞は報じている。(毎日1月12日)○生きるか死ぬか、こんな状況に置かれている労働者を支援することに、労働組合の路線対立は障害ではありえない。反貧困ネットの湯浅事務局長のような存在が、労働団体の垣根を越えた協力関係を創りだしていることが重要だ。○その上で民主党・共産党・社民党も協力体制を組み、1月6日には野党が一致して「雇用と住まいを確保する緊急決議」案が衆参両院に提案され、参議院で一部修正の上可決に至っている。(衆議院では自民が反対している)○このように、「反貧困」では野党と労働運動側の統一が創られている。評価すべき出来事だと思う。この流れは、止めることなく引き継がれる必要がある。○平成20年の労働組合基礎調査によると、組織労働者は1006万5千人、組織率は18.1%となった。連合は662万3千人(昨年比1千人増)全労連は66万3千人(同2万1千人減)である。両組織を合わせても、730万人弱である。○今次の恐慌の進行は派遣・期間工などの削減だけで終わるはずがない。正規職員にも失業の危機が迫っている。反貧困・反失業をスローガンに、全労働者を巻き込んだ闘争を仕掛けていく必要があると思う。○今後の雇用情勢を考えると、結成21年目の今年は、連合にとって組織の命運がかかっているのである。連合は産業別組合が中心の運営ではある。その分小回りが効かない組織なのである。連合の地域組織も中央の縦割り組織をそのまま小さくしただけの感がある。○その点、非正規や中小を組織する地域ユニオンには、行動力があり、行動で統一していく自由さがある。○かつての地区労的スタイルを排除してきた連合のように思うが、個々の企業で生起する解雇などの雇用問題に対して、機敏に対応できる連合の組織体制が必要のように思える。○ユニオン運動の弱点を連合組織がカバーし、連合の小回りの効かないところをユニオン運動と連携しつつ、自らも地域の運動課題に具体的にコミットできる体制を作ること。地域で見える運動、企業の枠を超えて労働者の連帯を作りあげる運動と体制確立が連合に求められているように思う。(佐野秀夫2009-01-19)

 【出典】 アサート No.374 2009年1月24日

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【投稿】経済恐慌の進展と反恐慌政策

【投稿】経済恐慌の進展と反恐慌政策

<<「世界中の街角が危機」>>
 2008年は、9月初め以来顕著となってきた金融恐慌から世界的経済恐慌への様相をますます鮮明にしながら暮れようとしている。それは、勤労諸階層と中小零細企業に最も重くのしかかる倒産と失業の時代の到来である。今次恐慌の最大の特徴は、自由競争原理主義の破綻が、これまで築き上げられてきた社会的資本、社会的インフラ、医療・労働・年金を初めとする社会保険・社会福祉、社会的セーフティネットを利潤追求の道具に切り売り・民営化し、労働基本権や社会的諸権利・人権をことごとく切り縮め、所得再配分を放棄して富める者はますます富み、格差を徹底的に拡大してきた結果としての恐慌であるがために、まさにグローバルに、国内外の隅々に至るまで深刻な害悪をもたらそうとしていることである。本来、恐慌を回避し、その影響力を弱め、脱出できるための防波堤の再建・再生から始めなければならないのである。自由競争原理主義の罪の重さは計り知れないと言えよう。
 すでに国際労働機関(ILO)は、金融危機の影響で世界の失業者が2千万人増える可能性があり、09年終わりには2億1千万人に上り、過去最高に達し、「米国の金融街だけでなく、世界中の街角が危機にさらされている」と警告し、「社会的な危機に発展するのを避けるため、各国政府が迅速かつ連携した行動をとる必要がある」と強調している(08/10/20)。
 すでにこの自由競争原理主義のもとで荒稼ぎをしてきた日本の名だたる大企業が軒並み、遠慮会釈のない大量人員整理に取り掛かっている。製造業への派遣労働の解禁によって最も潤ってきた大企業が、真っ先に派遣労働者の解雇に我れ先きにと乗り出す、その無責任さはかつて見ないほど傲慢、冷酷そのものである。

<<「キャノンが解雇したものではない」>>
 その典型がキヤノンである。12/1、麻生首相が、経団連会長の御手洗冨士夫キヤノン会長を官邸に呼び、非正規雇用の維持を求めたわずか数日後、大分キヤノンが同社で働く請負会社の従業員を年内に約1100人削減することを明らかにしたのである。首相の要請をあざ笑うかのようなこの解雇を、御手洗会長は「誤解である。キャノンが解雇したものではなく、請負・派遣元が解雇したものだ」として、同社の責任ではないとの発言をしている(12/9)。しかし「請負・派遣元が解雇した」のは、キヤノン側が発注を削減したためであることは明らかである。よくもぬけぬけと言えたものである。派遣法に基づく派遣先指針でも、派遣先に解雇の原因がある場合、派遣先の関連会社に就職をあっせんするなど雇用を確保しなければならないと定めているにもかかわらず、一切の努力もしない一方的解雇である。
 御手洗氏はまた「世界的な景気の急激な落ち込みにより各社も減産に追い込まれ、苦渋の選択で雇用調整が行われている」などと言い訳をしているが、キャノン自身だけをとってみても、1~12月の一年間で5800億円もの営業利益(連結)を見込んでおり、7~9月期決算でみても、社内にため込んだ剰余金は9月末で3兆3000億円を超えており、この一年間の増加分は約2800億円に達している。約1700人の非正規社員の雇用維持に必要な額は、その増加分のわずか1.2%にすぎず、正社員化して雇用を維持するにも十分な剰余金も体力も有しているのである。
 「ガテン系連帯」労働組合日研総業ユニオン大分キヤノン分会の御手洗氏とキャノンへの申し入れ書は次のように述べている。

 現在、貴社をはじめ多数の大企業が競い合うようにして「派遣切り」「期間工切り」を中心とした人員削減を発表しており、これら派遣・請負社員が解雇後の新たな仕事先を自力で見つけるのは至難の業というべき状況にあります。そればかりか、他府県からやって来た大半の派遣・請負社員は寮に住み込んで働いていたので、解雇されたがために、この年の瀬になって、その住まい(寮)からも追い立てられようとしています。まさに生存権が脅かされる事態です。
 大分キヤノンは、「国内唯一のキヤノンカメラ生産拠点」、「世界に広がるカメラ生産の拠点」の名の通り、キヤノンのデジタルカメラ製品の製造を一手に担い、02年から5カ年間で売上高は2,511億円から4,425億円へとほぼ2倍に伸ばしました。この空前の業績を製造現場から支えたのは、いうまでもなく無数の派遣・請負社員です。貴社らは、「企業理念」として「共生」をかかげ、「文化、習慣、言語、民族などの違いを問わずに、すべての人類が末永く生き、共に働いて、幸せに暮らしていける社会」をめざすと表明しています。
 この理念通りであるなら、正社員とともに汗を流して来た派遣・請負社員の雇用確保に、いまからでも遅くはないので、ぜひともあらゆる手だてを尽くしてほしいものです。
 そこで、下記の通り申し入れますので、派遣・請負社員の危機的現状を速やかに打開するために検討してください。
 1.新たな「期間社員」の募集について  
大量の派遣・請負社員の契約解除の一方で、多数の期間社員を新規に募集する理由を説明してください。
 2.派遣・請負社員の優先的採用について
これまで大分キヤノンで働いてきた派遣・請負社員のうち、希望する者については、貴社らが新規募集する期間社員として優先的に採用してください。

 こんなささやかな要求も呑めないキャノン、「地域の活性化」、「雇用の増大」を口実に巨額の補助金まで大分県に出させて工場進出したキャノンがこれまで唱えてきた「企業の社会的責任(CSR)」を完全に放棄した背任行為ともいえよう。

<<「この無責任政治」>>
 そして11月初め以降は、トヨタ自動車をはじめ、自動車大手が軒並み、期間工、派遣労働者などの非正規労働者に解雇通告を連発、さらに、ソニーは内外16000人の正規・非正規労働者の削減を明らかにし、首切りの嵐は電機大手から、輸出産業のほとんど、その関連企業、基礎産業にも及んでおり、日本中を人員削減の嵐が吹き荒れる状況が現出されている。いずれもこの5~6年にわたって増収増益を続け、膨大な内部留保を抱え、まだ赤字経営にもなっていないにもかかわらず、なおかつ来年三月期決算でも、利益幅こそ減少が見込まれてはいてもなお相当巨額な利益予想をしている大企業が先頭に立って人員整理の旗を振っている。
 意図的、過激ともいえる、これらのパニック的な解雇攻勢は、情け容赦のない暴力的な破壊攻撃であり、危機への対応能力を失った資本の、むしろ経済恐慌促進政策とさえいえよう。そこには、社会的合意や、セーフティネット、ワークシェアリングなど激変緩和政策への配慮のひとかけらさえない、寒風吹きすさぶ歳末に寮やアパートからも即日退去を迫る、社会的糾弾がもっとも必要とされる、許しがたいあくどさである。そこには、強欲資本主義の横行を礼賛する小泉政権以来の自由競争原理主義の荒廃した日本社会の姿が露骨に投影されていると言えよう。
 こうした事態を野放しにし、むしろ促進してきたのが自公連立政権であった。麻生政権はその最後の幕引き政権として、もっとも無能力な醜態をさらけ出して、解散・総選挙の「選挙の顔」として登場したはずが、今や「選挙のじゃま」ものとして取り扱われ、自民党内からさえ、「漢字だけじゃなく、庶民の感覚が読めてない」(後藤田正純)、「ブレブレ首相が世の中をかく乱している」(渡辺喜美)、「解散先延ばしのツケがこの無責任政治だ」(平沢勝栄)と、ボロクソに罵倒される事態である。最近の各紙世論調査でついに麻生内閣の支持率は急落し、20から22%という、もはや解散もできない、総辞職もできない、一種の政治空白状態に陥ってしまっている。

<<「生活安心保障」勉強会>>
 問題は、経済恐慌進展の下で、その破壊的影響を食い止め、それから脱出させるべき政治が、危機への対応能力をほとんど持っていない、その基本政策さえ明らかに出来ない、そこに真の危機が存在しているといえよう。打ち出されるのは全て中途半端なとりあえず今をしのぐつぎはぎだらけの痛み止めに過ぎず、それでさえ、実行は常に先延ばしにされ、今や期待さえされていない。一人1万2千円・年内配布を目玉とした定額給付金の2次補正予算も今国会には提出できず、来年3月配布さえ怪しくなりだし、その経済効果はますます低下し、あまつさえ、それと引き換えに3年後の消費税大幅増税を公約にするという、景気拡大政策に逆行し、個人消費をかえって冷え込ます政策を公言しても矛盾を感じないところに、この政権の末期的症状が象徴されている。
 ところが、反麻生で結集しだした小泉構造改革路線を金科玉条とするグループがまたぞろ小泉氏を担ぎ出して「生活安心保障」のための勉強会なるものを立ち上げて、蠢動しだした。さんざん社会保障費を削減し破壊してきたグループが「生活安心保障」とは、よくもいえたものだが、その看板に相反してあいも変わらず、社会保障費の自然増分二千二百億円の抑制と財務省の縮小均衡路線を主張して恥じないところに、そしてこれにまた動揺させられ、それと同一歩調をとる麻生首相の立ち位置の中途半端さに、この党の反人民的本質が明瞭に映し出されている。
 しかしこの点では、民主党においても、財務省の縮小均衡路線、市場原理主義路線からの決別が極めて不明確である。与野党の政策対立の最大の争点が、この路線から脱出すること、新たなニューディール政策によって、失業を減らし、雇用を拡大することにこそ焦点があわせられる必要があり、それこそが反恐慌政策の最大の要であることを強調すべきであろう。
(生駒 敬)

 【出典】 アサート No.373 2008年12月20日

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【投稿】大量破壊兵器と化した「時価会計」の恐怖

【投稿】大量破壊兵器と化した「時価会計」の恐怖
                          福井 杉本達也

1.企業目的をコペルニクス的に転換した「時価会計」
 時価会計とは「望みどおりの」利益を出す方法である。これまでの「企業の目的は利益を稼ぐことであった。」が、いまや利益は経営者の思うままに操作できるようになった。時価会計によって収益・利益の前倒し計上が可能になった。時価はこの商品が「売れたらいくら儲かる」という仮定(バーチャル)の世界である。しかし、債権・デリバティブ商品の今日付いている値段が、明日もあるいは来期も5年後も続くとは限らない。むしろ、続かないと考えるほうが自然であろう。その将来の「たられば収入」を評価差益として益金を計上し、ストックオプションなどを通じ経営者に高額報酬をもたらし、株主にも高配当してしまい、後は野となれ山となれというものである(参照:田中弘神奈川大教授:『不思議の国の会計学』税務経理協会)。しかし、その落とし穴は現金=キャッシュ・フローがついてこないことにある。この商品はいくらで売れるというその時点の「時価」で評価しただけであり、その商品を売ってしまったわけではないので、肝心の現金は入ってこない。いくら帳簿上利益を計上しても、「たられば」であるから肝心の財布に現金がないのである。したがって、いつかは破綻する会計トリックである。落語の「花見酒」の世界である。六代目春風亭柳橋の作であるが、あらすじは「”酒が無くてなんの桜かな”と言われるように、花見には酒が付き物です。『向島に花を見に行ったら酒屋がない、だから我々二人が金を出し合って酒を売らないか』と言う事で酒を仕入れて売る事になった。倍儲かるから2両が4両、4両が8両になって、8両が ・・・・、両手でも数えられないほど儲かるという。借りのある酒屋だがそこで2両の酒を買った。一斗樽に仕込んだが底の方にわずか入った程度で、担いで出掛けた。腹が空きすぎて力が出ないと言って1貫だけ残して置いた。この1貫で芋でも買って力を付けて働く事にしたが、芋を買えば芋屋に儲けさせてしまう。だったら、無駄がないように我々の酒を買えば損が無く、倍儲かるよ。樽をそこに置いて、まず相手に1貫の金を払って一杯の酒を買って飲み出した。金を受け取った相棒も待ちきれずに、その一貫を相手に渡して一杯やった。イイ酒だと感心しながらやった。相手が美味そうに飲むので 、その1貫で交互にまた飲んだ。向島に着いて、酔った勢いで店開きをした。最初の客が付いたが、酒が無く売り切れていて断った。2両の金で仕入れているので、4両にはなっているはずで、そのお金で再び酒を仕入れて来る事にした。相棒に売上金を出さすと1貫しか無い。『2両で仕入れたのに1貫しか無いとはおかしいじゃないか』、『1貫出してお前が飲んで、俺が飲んで、またお前が飲んで、俺が飲んで・・・、で売り切れた』、『それなら、無駄が無くって良かったな』。(HP:「吟醸の館」「落語の舞台を歩く」より『花見酒』)という世界なのである。
 右肩上がりのインフレ時には、債権の価格も上がり土地の価格も上がるので破綻しないが、一旦、デフレに陥れば「含み益を吐き出させる会計」から「含み損を作る会計」に逆転する。破綻したときには貸借対照表の「借方」である「資産の部」には過大に時価評価されてきた無価値の、今や紙くずとなったCDS(Credit default swap)や各種デリバティブ商品があり、「貸方」である「負債・資本の部」には“あるはずだった”自己資本が全くなく、これまた膨大に積みあがった借金だけが残る。現代の会計学は「詐欺」になってしまった。
 10月7日付け日経新聞のマーケット総合欄に末村篤氏が「現在価値革命の暴走と挫折」という記事を書いている。「投資銀行のビジネスモデル崩壊の教訓は、高レバレッジ(負債によるテコの原理)経営の失敗だけではない。投資銀行が担った金融文化の特徴は、あらゆる資産を市場取引の対象とするために、価格を時価で評価する会計思想である。市場価格がないものにまで「時価」を付ける「現在価値革命」の暴走と挫折が、投資銀行を葬り去った。現在価値革命は、資産価値を過去の採用や利益の積み上げではなく、将来収益の割引現在価値で認識し、すべての金融取引に適用する金融文化を指す。会計上の資本概念は、払込資本に内部留保を加えたものから、時価評価後の資産から負債を引いたものにコペルニクス的転換を遂げた。」と評している。

2.欧米の時価会計見直しに鈍感な金融庁・日本公認会計士協会
 本家の米国証券取引委員会(SEC)やEUが時価会計の見直しに舵を切ったにもかかわらず、日本の金融庁や公認会計士協会は鈍感であったし、今でも鈍感であり続けている。SECが時価会計見直しに関するガイダンスを発表した(9月30日)時点で、「証券化商品の時価会計適用を事実上緩和する発表について、日本の金融庁は真意を測りかねている」(日経:2008.10.2)との間の抜けた報道対応をしている。「アメリカから時価評価が出てきて、アメリカがまずそれを放棄してしまったということで日本は困惑している」(平松一夫関学教授:「税経通信」2009.1)のである。米国にいわれるままに、米国のすることは全て正しいことだとしっぽを振って二階に上がったとたんハシゴをはずされてしまったのであるから困惑するのも無理はない。
 ところが、増田公認会計士協会会長は「会計基準は経済の実態を表す物差し。基準の変更で(会計上の) 白己資本比率を変えるのは本末転倒」と指摘し、「金融商品の時価会計を凍結することには賛同できない」と述べ、(日経:2008.10.24)時価会計の緩和に反対している。さらに輪をかけて、佐藤金融庁長官は12月3日の企業会計基準委員会で、「一部の金融機関から(時価を基礎とする)会計基準を緩和すべきだとの意見があるが、(混乱を回避する狙いとは) 逆に作用する」「会計に期待するものは単純で、企業の財政状態を公正、正確に示すもの。損失が発生すれば迅速かつ正確に開示すべきだ」と述べ、不良資産の切り離しや自己資本の積み増しなどを金融機関に要求し(日経:2008.12.4)、企業への「貸し渋り」を加速させ、さらに不況を深刻化させようとしているかのようである。

3.時価会計は『勝ち組』が100年に1度のチャンスをものにする道具
 12月4日、欧州中央銀行は政策金利を大幅に下げ2.5%に、同時にイングランド銀行も1%にした。さらに11日にはスイス国立銀行はゼロ金利に、11月26日には中国も1.08%もの異例の利下げをするなど、世界の実体経済は完全にデフレに陥ってきた。デフレ下においては全ての財やサービスは下落する。欧米諸国は時価会計の一部凍結を決めたのに、日本だけが時価会計の見直しに消極的であれば、日本の企業は不況下でどんどん下がり続ける資産を「時価」で再評価し資本が縮小していくことになる。結果、自己資本過小となり破綻に至ってしまう。日本の金融機関は、BIS規制により海外展開する企業は8%以上の自己資本が要求され、国内展開している地銀などの金融機関も4%以上という金融庁の指導がある。自己資本がそれを下回れば金融事業からの撤退や他行との強制合併を迫られる。そこで、金融機関は自己資本率を維持するために競って企業への貸し出しを制限し「貸し渋り」を行い、不況に喘ぐ中小企業を無慈悲に切り捨て、派遣労働者の首を切らせ、株価を暴落させ、不動産を売り急ぎ、実体経済をさらに深刻化させることになる。
 しかし、100年来の金融危機・恐慌は、ゴールドマン・サックスをはじめ一部投資家の『勝ち組』にとっては逆に100年に1度の資本を集中化するチャンスでもある。ゴールドマンは米金融界の時価会計の緩和に反対している(日経:2008.10.30)が、池にはまった『負け犬』を叩けば叩くほど『負け犬』の資産を安く手に入れることができて儲かる。日本が時価評価に消極的であれば、日本の企業はそれだけ資本が棄損する。ゴールドマンにとっては資本を集中化する際に日本の競争相手が少なくなる。9月に破綻した米リーマン・ブラザーズのアジア部門などを買収した野村やモルガン・スタンレーに出資した三菱UFJのように海外展開しようとする企業も足元をすくわれる。野村・三菱UFJなど大手金融機関は、この間、棄損した自己資本の増強するため、あわてて劣後債や優先株・普通株などを発効し4兆円もの資本増強に走り出している(日経:12.1)。また、日本の株価がさらに下がり(外国人投資家による意図的な日本売りを含め)、時価評価による資本棄損によりさらなる投売りが進めば、ゴールドマンらにとっては日本企業を買収しやすくなる(米国企業は資本を無駄にするものだとして日本企業のような株式の相互持ち合いなどをしていないので株式に時価評価は適用されない。日本だけが株式の評価損によって大打撃を受ける)。投売りされる日本の不動産も買い易くなる。「法人企業統計調査」によると、資本金10億円以上の金融業・保険業の自己資本比率の推移は、平成20年4~6月期の5.4から、7~9月期の5.0へと低下しており、自己資本は確実に毀損してきている。竹中平蔵・山本有二・渡辺善美氏など歴代の金融担当大臣の多くは米国金融資本の代理人ばかりである。「日本の会計は、独自路線を行くようなことを口にしながら、やっていることは、アメリカ追随です」「アメリカにとって、日本は『やり放題』の国です。アメリカのいうことはすべて実行し、いわれてもいないことも、あうんの呼吸で相手の希望や願望を嗅ぎ取って、『自発的に』自分を変えようとします」(田中:上記)と田中弘氏は指摘しているが、「時価会計」は米英アングロサクソン金融資本の国策会計である。日本は国策会計にまんまと乗せられ、騙されてきているのである。そして、それに気脈を通じ、日本の企業経営を内部から堀崩そうとする大臣や会計士がいる。その結果、大量の派遣労働者が首を切られ、正社員にも失業の波が及ぼうとしている。金融庁や会計士協会の動きに十分注意を払い、日本は早急に廃止に向けた議論をしなければならない。

 【出典】 アサート No.373 2008年12月20日

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【本の紹介・論評】大暴落1929 (The Great Crash 1929)

【本の紹介・論評】大暴落1929 (The Great Crash 1929)
                   著者 ジョン・ケネス・ガルブレイス
          発行 2008年9月29日第一版第一刷 日経BP社 2200円+税

<<「『ブラックマンデー』でしたっけ……」>>
 麻生首相は先月30日夜、八重洲ブックセンター本店で、国際政治や外交に関する本を4冊購入したという。この時にこのガルブレイス著『大暴落1929』も買っている。その1カ月前の11月1日にも八重洲ブックセンターに立ち寄り、同じく4冊の本を購入している。ところがすでに購入済みの本を今回また買ってしまった。マンガだけでなく、書籍も読めることをアピールする目的のパフォーマンスであったが、ただ買っただけで読んではいないことを自ら露呈してしまったともいえよう。
 首相は、これまで解散・総選挙を逃れる逃げ口上として、最初は10/25に、現在の世界経済情勢について「百年に一度の国際的な経済危機だ」と指摘して、まずは経済対策をこそ先行させなければと述べ、これ以降何度も「百年に一度の大暴風雨」などと発言している。これは、アメリカの連邦制度準備理事会(FRB)のグリーンスパン前議長が10/23の米下院公聴会で「我々は世紀に一回のツナミのまっただ中にいる」との発言を援用したものであろう。当然、1929年の大恐慌ぐらいは自ら調べるなり、学習し、レクチャーぐらい受けていてしかるべきであろう。
 ところが首相は、APECでの会見(11/23)の記者団とのやりとりで、「1929年のいわゆる『ブラックマンデー』でしたっけ……」と口にした。まずいと感じた事務方が「恐慌!」と声を上げ、首相が「恐慌」と言い直す場面があったと報道されている。
 1929年10月24日のニューヨーク証券取引所の株価大暴落は、暗黒の木曜日(Black Thursday)であり、続いてさらに値を下げた10月29日は、悲劇の火曜日(Tragedy Tuesday)であった。「ブラックマンデー」はあくまでも、1987年10月19日月曜日の暴落のことである。
 「K(空気が)Y(読めない)」だけではなく、「K(漢字も)Y(読めない)」「K(経済も)Y(よく知らない)」とまで言われる首相には、もはや退場する道しか残されていない情勢になりつつあるが、この際、せっかく購入されたのであれば、「歴史が生き生きと語りかけてくることを書き留め」(著者まえがき)たこの書籍をぜひとも最後まで読み通していただきたい。実に読みやすく、約80年前の大恐慌と今日進行しつつある大恐慌との共通点、相違点、著者が警告することが浮かび上がってくる好著である。

<<「暴落を仕組んだ」>>
 ガルブレイス氏は、1908年に生まれ、2006年に亡くなっている。この名著とも言われる『大暴落1929』は、初版が1955年春である。以来四〇年以上、版を重ねている。著者は、「一九九七年版まえがき」の中で、「この本がこれだけ長いこと売れ続けているのは、著者はともかく中身がいいからだと評価していただいているようだ。まずいくらかは役に立つかも知れない。だがこの本が時代を超えて長寿を保っているのは、別に理由がある。増刷され本屋の店頭に並ぶたびに、バブルや株安など何事かが起きるのだ。すると、この本への関心が高まる。そう遠くない昔に好景気が一転して深刻な恐慌につながったときのことを、多くの人が知りたいと考えるからだろう。」と述べている。
 初版を出したときに著者は、「ワシントンに呼ばれ、上院の公聴会で過去の投機と暴落について証言したのだが、まさにその最中に株価が突然落ち込んだのである。おかげで私はあちこちから恨みを買うことになった。年季の入った投資家からの攻撃はことにすさまじく、生かしてはおけないといった脅しの手紙が大量に送られてきたものだ。もう少し上品な人からは、ガルブレイスが病気になって早死にするよう祈っていると言われた。証言から数日後、バーモントでスキーをしていた私は足を折り、新聞がさっそくこれを報じる。祈りは聞き入れられたという喜びの手紙が何通も舞い込んだ。どうやら私は、少なくとも宗教には何らかの貢献をしたらしい。また当時の風潮の中、共和党の上院議員ホーマー・E・ケープハート(インディアナ州選出)からは、ガルブレイスは共産主義の擁護者であり、資本主義を陥れるために暴落を仕組んだのだと言われたものである。」
 「一九五五年の出来事はほんの手始めに過ぎない。七〇年代にはオフショア・ファンドが相次いで破綻。八七年にはあのブラックマンデーがあった。どれも一九二九年の出来事ほど劇的ではなく、また深刻に懸念するにもおよばなかったが、それでも多くの人があのときを思い出し、その結果この本は印刷され続けることになったのである。一九九七年のいまもそうだ。」
 そして2008年金融大恐慌の発生が、この著を再び店頭に並ばせたのである。

<<「ファンダメンタルズは問題ない」>>
 著者は、「29年の大暴落は、それに先行した投機ブームの必然的結果であった。値上り益を狙って株を持っていることは無益となり、売り逃げラッシュが始まる。過去における投機の狂宴はすべてこうして終わった。29年においても同様であった。今後においてもそうであろう。」とのべ、続いて「とは言え、一九二九年の大暴落後ほどひどいことにはなるまい。当時の銀行はひ弱で、預金保険もなかった。証券市場より農作物市場の方が重要な地位を占めていたが、こちらはとくに脆弱だった。おまけに失業保険、福祉給付、社会保障といったセーフティ・ネットも整備されていなかった。いまでは、これらはすべて改善されている。だがそれでも景気後退は起こりうるし、それはごく正常なことだ。そうなったとき、政府はきっと、国民を安心させようと決まり文句を言うだろう。市場があやしい雲行きになったときの常套句、すなわち「経済は基本的には健全である」とか「ファンダメンタルズは問題ない」というものだ。この台詞を聞かされたら、何かがうまくいっていないと考える方がいい。」と警告する。この同じ常套句が、2008年の現在においても繰り返されている。
 著者は、1929年の経済は、間違いなく「基本的に不健全であった」と述べる。まず、所得分配において、「金持ちは途方もなく金持ち」で、総人口の5%が所得全体の1/3を占有し、不平等と格差が拡大し、個人消費が伸び悩んでいたこと。さらに企業構造において、「詐欺やペテン師の長い歴史の中でも、この時期は企業犯罪の全盛期であった」こと。そして1920年代後半の自動車・鉄鋼・電気製品の過剰生産、工業の繁栄に取り残された農業の慢性的不況、世界的保護貿易主義の拡大(29年輸入品平均関税33%→40%に引上げ:各国報復関税で世界の貿易量29年→33年1/3に激減)を指摘する。保護貿易主義を除いては、いずれも2008年の現在の状況と酷似するものがあるといえよう。

<<共通点と相違点>>
 1929年大恐慌と2008年金融恐慌から2009年大恐慌への共通点と相違点はどのようなものであろうか。
 まず、どちらも金融バブルの破綻という点では本質的な共通性を持っている。その前段階での、自由放任主義的金融政策とその破綻という点でも共通している。
 そして、恐慌とは「資本主義的生産の衝動と対比しての、大衆の窮乏と消費制限である」(マルクス『資本論』)という本質規定においても共通である。恐慌の役割が、これを制御できない社会において、暴力的に価値を破壊し、低落した利潤率の回復と均衡を取り戻すという不可避的な過程であるという点においても共通している。収奪のしっぺ返しとしての恐慌という共通点、そして収奪された人々に最も重くのしかかるという共通点。
 相違点は、29年当時は存在しなかったマネーゲームの手段としての各種金融派生商品取引残高が07年6月で516兆$と、世界の名目GDPの約10倍の規模に達し、世界中にばら撒かれ、広さ、深さ共により深刻である。
 さらに、今次恐慌では無縁な世界が存在し得ないほど影響が世界的規模であり、波及が即時的でさえある。なおかつ、巨額の資金が一瞬のうちに世界を駆けめぐる金融市場の規模とスピードを支えるネットワークと技術の存在。
 そして、マネーゲームに狂奔するカジノ資本主義の進展は、アメリカの実体経済そのものの空洞化を推し進め、製造業の基盤を崩壊寸前にまで追い込み、その中で恐慌が進展していることの深刻さである。
 同時に29年恐慌との違いとして指摘されねばならないことは、ガルブレイス氏が指摘するように、「資金の最後の貸し手」としての中央銀行制度、IMF(国際通貨基金)など国際的な機構や協調体制が存在し、国家財政が経済に占める比重も格段に大きくなり、各種の需要喚起策や景気対策を発動する条件が多様に存在し、失業・健康保険など社会保障制度、銀行業務と証券業務の分離、預金保護制度など、恐慌に対処する条件が存在してきたことである。

<<『世界を不幸にするアメリカの戦争経済』>>
 問題は、こうした恐慌に対処できる条件を、自由競争原理主義が躍起になってぶち壊してきたところにあり、金融ビッグバンなど徹底した規制緩和が進む中で、巨額な富が多国籍企業・資本に集中し、膨大なワーキングプアと貧困層を増大させ、格差を極大化させることによって恐慌を進行させ、よりいっそう深化させつつあることころにある。
 さらに指摘されるべきは、アメリカ発の恐慌となった、『戦争経済』の果たした役割である。2001年9月11日以降の対アフガン・イラク戦費は、米国経済に3兆ドルに上る過酷な経済負担を強い、財政赤字を極大化させ、ドルの下落を決定的にさせ、エネルギー価格を暴騰させ、「石油のための戦争」が逆に4倍ものガソリン高をもたらし、他のコストも合算すれば6兆ドルもの不生産的出費を余儀なくさせ、恐慌に突き進ませたことである。ステイグリッツ著『世界を不幸にするアメリカの戦争経済 イラク戦費3兆ドルの衝撃』(2008年5月31日発行、徳間書店)は、この点を克明に分析・追及している。
 今次恐慌によって、もはやアメリカを中心としたG7の時代は終わった、G7ではこの世界的金融恐慌を克服する力も能力もないということが、誰の目にも明らかになってきたと言えよう。それはまた同時に、サブプライムローンの破綻から今日の金融恐慌に至る、虚業が実業を圧倒するマネーゲームと投機的金融資本主義の破綻、とりわけブッシュ政権が押し進めた軍備増強と戦争経済優位がもたらした国家的破綻と泥沼状態、その結果としてのアメリカの凋落、そして無法と無責任・格差拡大・弱肉強食の市場原理主義、新自由主義がもはや継続しがたく、持続不可能であり、崩壊の危機に瀕している端的な現われでもある。

<<恐慌脱出政策>>
 とすれば、恐慌脱出政策としての反恐慌政策の第一は、当然、アフガン・イラク戦争からの撤退・停止でなければならない。即刻対処が可能であり、それが及ぼす積極的プラス効果はきわめて大きい。同時に、ドル基軸通貨体制の転換が必要ではあるが、何よりも決定的に重視され、指摘されねばならないことは、もはや破綻し泥沼化しているイラク戦争、アフガニスタン戦争を即刻停止させ、戦争経済から平和経済への転換を明確にすることこそが、世界経済恐慌回避への最大の近道であり、そうした転換を前提としない新たな国際通貨体制では危機の回避は不可能であることを認識しなければならないであろう。
 第二は、国際・国内両面における市場原理主義からの決別である。それは、国際・国内両面におけるニューディール政策への転換でもなければならない。マネーゲームとも言われ、カジノ資本主義とも言われる投機経済、野放しの弱肉強食経済に対して、多国籍企業・国際金融資本・投機資本に対する徹底した民主的規制を課すこと、同時にそれらの国際的資本移動と収益に対して国際的共通課税を課すことを国際的ルールとし、それらを原資とした地球規模の環境対策、貧困対策、食糧危機対策、これらを包括した国際的規模のニューディール政策に前進すること、資本や資金の流れをこれらの政策に合流させることを明らかにすることである。29年恐慌におけるニューディール政策を上回る、世界的規模でのニューディールが要請されていると言えよう。
(生駒 敬)

 【出典】 アサート No.373 2008年12月20日

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【コラム】ひとりごと—無届老人ホーム増加の意味するもの—-

【コラム】ひとりごと—無届老人ホーム増加の意味するもの—-

○楡周平の「プラチナタウン」(2008-7祥伝社)を読んだ。図書館で見つけた本だ。主人公は商事会社の幹部であったが、子会社への出向を打診された時、故郷の同級生が郷土の町長に立候補を頼みに来る。企業誘致のための開発をしたものの企業進出はなし、夕張のように公共施設は沢山あるが、採算は取れず町財政は破綻状態。○一流大学を卒業し大企業へ就職した同級生に白羽の矢を立ててきたわけだが、主人公は心ならずも立候補するはめになり、見事当選。財政の破綻状態に驚きながらも、高齢者施設の誘致を実現する。人口の増加、雇用機会も増えて、東北の小さな町にも夢をつながれるというストーリーだ。○財政破綻した町財政の再生、再生プロジェクトに利権を見出そうとする古参の議員たち、そして巨大な高齢者住宅・介護関連施設の建設など、自治体に関係のある話に興味をそそられ読んだ。○サスペンスもので有名な作者が、一転して身近な問題に取り組んだもので、フィクションではあるが、福祉が雇用を創出するという仕組みをうまく描いている。○そこでである。私は福祉関係の部署にいるのだが、この2・3年、気になっているのが、高齢者住宅の問題であった。○認知症の進んだ高齢者や要介護度の高い高齢者には、特別養護老人ホームや老人保健施設が相応しいのだが、圧倒的に不足している。いずれの自治体も高齢者福祉計画等で一定数の施設は確保しているものの、実態は圧倒的に不足している。○高齢者福祉計画の必要数分については建設費についても補助金が出る。しかし必要数が確保された後は、補助金は出ない。○需要はあるのに供給が追いつかない。そこで、「金儲け」のための施設が建設されることになる。○大阪府内でも「有料老人ホーム設置指針」が策定されているが、必置施設・人員など、補助金が出ない前提となるとハードルは高い。○施設というより、高齢者向け住宅として建設し、食事提供や介護サービス・管理費でペイしようというものである。介護保険上はあくまでも在宅サービスとなる。○月額15万円程度で利用できるという場合が多いが、生活保護世帯には、別料金を設定している場合が多い。○こうした「介護付老人住宅」が全国で急増しているのである。しかし、問題も多い。規制や公的指導の対象ではないため、経営が破綻し高齢者が放置された高齢者住宅についての報道もあった。(2008年8月31日毎日新聞)実質的には「老人ホーム」なのに、届出義務は徹底されず、実態調査もまだ行われていない。○問題は他にもある。こうした高齢者住宅については、社会的コストが高くつく事である。住宅と介護サービスはセットされ、介護サービスは枠一杯まで使われる場合が多い。○単なる住宅であるから、民間会社が経営しチェーン展開をしている場合もあるし、医療法人や社会福祉法人が、医療・介護とセットできるメリットもあり参入が相次いでいるのである。○介護保険事業は来年度から4期目となるが、介護費用は伸び続けている。高齢者が増えているのだから、伸びるのは当然としても、こうした「無届老人ホーム」の増加は、求められる「在宅福祉」と言えるのだろうか。○消防設備の完備していない施設も多く、数年前のカラオケ店火災、大阪のビデオ店火災などを教訓に、「無届老人ホーム」にも立ち入り検査が行われているとも聞くが十分ではない。○総務省の調査によると、こうした無届のままの老人ホームは、全国に353施設あると言う(2008年9月5日産経新聞)。食事の提供、介護の提供、洗濯・掃除、健康管理のいずれかのサービスを提供する施設という定義が有料老人ホームだが、これら無届ホームは、高齢者住宅を看板にし「介護付き」などを売り物にしている場合が多いのである。総務省は、厚労省に対して届出指導を都道府県に徹底させるよう求めていると報道されている。○増え続ける社会保障予算の中心となりつつある介護保険事業だが、介護職場で働く労働者の厳しい労働条件・低賃金の実態改善に加えて、増え続ける「無届老人ホーム」(介護付高齢者住宅)についても、規制していく必要があると思われる。「民に任せれば、金儲けが優先される」のである。「民に任せれば、うまくいく」という新自由主義的発想の行き着く先が、無届老人ホームではあるまいか。安心できる介護サービスの提供には厳格な公的規制こそが必要である。(佐野秀夫)

 【出典】 アサート No.373 2008年12月20日

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【投稿】迷走する麻生政権と金融サミット

【投稿】迷走する麻生政権と金融サミット

<<「期待小さく、失望感なし」>>
 米国・ワシントンでこの11月14、15の両日に開かれた金融サミット(G20)は、もはやアメリカを主導国とした先進国クラブのG7やG8では、現下の世界的な経済恐慌の進展という深刻な事態には対処できない、なおかつマネーゲーム・金融バブルの肥大化と破綻・崩壊をもたらした市場原理主義、ドルを基軸通貨とする一極体制の継続は不可能であり、これを徹底して押さえ込み、規制をかけ、新たな国際的協力体制を作らない限りは現在の深刻な事態から脱出できないであろうという現実の反映であった。
 サミットは、先進国と新興国など20か国・地域(G20)の首脳会議として開かれ、世界経済の成長回復や世界の金融システム改革に向けて協調することで合意するとともに、「必要なあらゆる追加的措置の実施」を盛り込んだ首脳宣言を採択して閉幕した。
 宣言は、今回の金融危機の原因について、「いくつかの先進国の規制当局が金融の技術革新についていけなかった」と指摘しているが、危機がアメリカ発であることからして、何よりもアメリカに対する指摘であり、要求である。そしてそのその最大の要求項目は、「金融危機の克服と再発防止に向けた監督や規制の枠組みの強化」であった。アメリカも合意せざるを得なかった、金融市場改革についての合意は、1)市場の透明性と金融機関の説明責任を強化、2)市場の適正な規制と監視の強化、3)金融市場における公正性の促進、4)各国規制当局の連携の強化、5)新興国の発言権の拡大などを含む国際金融機関の改革—-の5つの共通原則を確認し、これらの原則を「完全かつ精力的」に実行するため、各国財務相の責任に基づいて追加的な提言の策定を要請し、優先度の高い項目を「行動計画」として規定。実施状況を協議するため、2009年4月30日までに再度会合を開くことを決めたのであった。
 問題は、ブッシュ政権があと二ヶ月しか存在し得ない政権であり、ブッシュ共和党政権の政策の継続を正面から否定し、それの「チェンジ」を掲げて圧勝したオバマ政権への移行期間であるにもかかわらず、ブッシュ大統領はあくまでも市場原理主義にこだわり、欧州が主張する金融規制強化では市場の自由度が失われるとして、「自由市場の資本主義の重要性」を訴えて規制強化に反論し、アメリカ自身が即刻行動に移すべき追加の景気刺激策にすら言及することができず、合意が総花的かつ具体性に欠け、今進行中の危機に対して具体的な一致した行動が何もなきに等しい合意でしかなかったことにある。「市場の事前期待が小さかったため、特段の失望感はない」という市場関係者の指摘どおりともいえよう。

<<「ポストドル」とか勇ましいこと>>
 それにしても、この期に及んでもなお、ブッシュ大統領に媚を売り、追随する麻生首相、その自公連立政権は、もはやその存在自体がますます有害であり、醜悪なものとなってきている。
 首相はサミット後の記者会見で、1997–98年に金融危機に直面し、克服した日本への期待の大きさと役割の大きさを感じたと指摘。「日本の経験を示し、新しい枠組みを主導し、具体的な提言も行った。宣言にも反映された」と述べ、今回のサミットが「歴史的なものと後世、評価される」と大見得を切っている。
 しかし今回のサミットの重要な争点となり、その弊害こそが指摘されているドル基軸通貨体制について、麻生首相はあくまでも「ドル基軸体制の堅持と自由主義市場の範囲内での金融規制強化が必要だ」とわざわざブッシュ弁護を買って出て顰蹙を買い、最も改革されるべき国際通貨体制について、中国やインド、中東・南米諸国など新興国の改革要求と対立する姿勢をとったのである。「ドルは、もはや基軸通貨とはいえない」現実に対して、欧州連合(EU)議長国フランスのサルコジ大統領が「ブレトンウッズ体制」の改革にまで言及し、ブラウン英首相が、合意された「新興国の発言権の拡大などを含む国際金融機関の改革」について、これを「新たなブレトンウッズ体制への道」と表現し、「首脳宣言を見れば、われわれが将来に向けた新たな体制を構築しようとしていることは明確だ」とする姿勢とは雲泥の開きがある。「最も先鋭化しているフランスから英国を切り離し、日米側に引き込んだポイントは大きい」(首相同行筋)などとブッシュへの貢献を自慢し、「『ポストブレトンウッズ』とか『ポストドル』とか勇ましいことを言ってるのが世界中にいるが、現実にできるかと考えてみた時、なかなかできない」などと放言する麻生首相の行動原理が、ただただ「日米同盟堅持」の一本槍で、現在の経済恐慌の現実と原因を真剣に考えようともしない、またその能力も持ち合わせない首相の姿勢と現実を如実に暴露している。
 またそもそも、97–98年の日本の金融危機対応策は、事実上アメリカのハゲタカファンドに食い物を提供し、公的資金注入(98年3月)後も景気の悪化が進行、長期にわたって継続し、デフレの深刻化とともに、ついに現在に至るまで景気回復の実感すらつかめない実態は、日本国内のみならず、国際的にも周知の事実といえよう。危機を克服し景気回復につながるような国際舞台で胸を張れるような実績は皆無であり、むしろ日本のようにならないことが国際的教訓なのである。それを「日本の経験を伝え、指導的役割を果たした」などとは、笑止千万であろう。

<<「年内と言ったか?」>>
 さらに麻生首相にとって決定的なのは、金融サミットの合意を受けて日本が直ちに着手すべき景気対策について、麻生政権自体が茫然自失の迷走状態に入っていることである。10/30に首相がブチ上げた追加経済対策の目玉は、2兆円の給付金バラマキであったが、当初、「年度内(来年3月まで)」といわれた給付金支給について、突然、「(実施が)年内と年を越すのではだいぶ意味が違う」と語り、年内支給を示唆、その舌の根も乾かぬうちに、「市町村の事務手続きに要する時間を考えれば、年内は困難」との指摘を受けると、「年内といったか?」と簡単に年度内に軌道修正。
 さらに支給対象について、最初は「全世帯が対象。4人家族で約6万円になるはず」と表明していたものが、1週間もたたないうちに「生活に困っているところに出すんであって、豊かなところに出す必要はない」と、前言を翻し、「困っているところ」と「豊かなところ」をどう区別するのかと問われると、「その基準はない」。そこへ閣僚内、自民党内からの異論噴出、首相自身の発言も二転三転、閣内の意思統一さえできない前代未聞の事態を出来。挙句の果てに首相は支給の根拠となる「法律を設けると面倒なことになる」と国会審議まで放棄したのである。しかも政府・与党は、11月30日に会期末を迎える臨時国会を延長せず、定額給付金などを盛り込む第2次補正予算案の今国会成立を見送る方向まで明らかにしている。
 これでは、金融危機を「100年に1度の暴風雨」と呼び、「政局よりもまずは景気対策だ」と公言し、「国民の生活の安全保障のための経済対策」などと説明してきたのは真っ赤な嘘で、選挙対策としての2兆円の給付金バラマキ、選挙民買収政策であったことを歴然とさせるものである。解散・総選挙をずるずる先延ばしにしてきたために、給付金のバラマキもそれに合わせて延ばしているにすぎないのである。問題はこんな姑息なことをすればするほど、その本質、愚策ぶりがあまねく暴露され、経済効果どころか選挙効果さえ怪しくなってきており、いまや各種世論調査においてもほとんど評価されない事態を生じさせている。政権の求心力は地に堕ち、解散・総選挙どころか、それ以前に総辞職せざるをえないという事態さえありえよう。

<<「単なる読み間違い」>>
 そうした事態を加速させかねないのが、麻生氏自身の庶民とかけ離れた生活感覚、無責任で品性下劣な行動と発言が隠しようもなくなってきていることである。
 「政界一の経済通」を気取りながら、株式市場の前場を「まえば」と言うお粗末さ。高級ホテルやクラブのバーの桁外れの値段を知ってはいても、スーパーに視察に行って常識的な物価水準さえろくに知らない、そのことを質問した新聞記者に居丈高に食ってかかる。「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の主人公、“両さん”の銅像の除幕式に出席し、「毎週月曜日に『少年ジャンプ』を買って、『こち亀』を読んで笑えないと、今週は疲れているなぁと、健康のバロメーターにしています」と言い、アキバ(秋葉原)に出かけてわざわざ「オタクのみなさん!」と呼びかけることを庶民的と勘違いし、マンガは週10冊以上も読んでいるのに、「新聞は読まない」と自ら公言・吹聴する。日中青少年友好交流年の閉幕式でのあいさつで、「四川省で発生した大震災、みぞうゆうの自然災害と」と「未曽有(みぞう)」を「みぞうゆう」としか読めず、さらに「1年のうちにこれだけ煩雑に両首脳が往来した」と「頻繁(ひんぱん)」を「煩雑(はんざつ)」と間違える程度の漢字知識しか持ち合わせていない。極めつけは、11/7の参院本会議で、侵略戦争と植民地支配を謝罪した村山富市首相談話を「踏襲」ではなく「ふしゅう」と答弁し、記者団に「んーそうですか。単なる読み間違い。もしくは勘違い、はい」とかわしたが、その前の10/15の参院予算委員会でも、従軍慰安婦問題に関する河野洋平官房長官談話を踏襲するかとの質問に「ふしゅう」と答えていたことが分かり、あまりにも一国の首相としてはお恥ずかしい実態、その無責任さと能天気ぶりを自らさらけ出してしまっている。
 当初は、少々のことは許容範囲と大目に見てくれていた庶民も、ここまで来ると見放さざるを得ない段階にまで来てしまっているといえよう。こういう政権には一日も早くご退場してもらう以外にないが、対する野党の追及はあまりにも迫力に欠けており、延命に手を貸しているのではないかと疑いたくなるほどである。その典型が、「日本が侵略国家だったとは濡れ衣だ」などと主張する田母神俊雄空将に対する追及である。4/17の名古屋高裁判決が、航空自衛隊がイラク首都バグダッドに多国籍軍を空輸していることについて、憲法9条に違反する活動であるとの画期的判断を下した際にも、この人物は、お笑い芸人のギャクを引用し「そんなの関係ねえ」と発言した、公務員としての憲法遵守義務もまったく意に介さない、札付きの「確信犯」である。今回またもや国会の参考人招致の場で、政府見解として麻生内閣の下でも、それこそ「踏襲」されている村山談話について「村山談話は言論弾圧の道具」と言い放っている。文民統制はもとより、日本国憲法の精神を真っ向から否定し、侵略戦争を正当化するこの人物に対する追及に与野党共にまるで「怒り」がないのである。麻生内閣の「腐臭」が、野党にも伝播しているのであろうか、徹底した監視が必要ではないだろうか。
(生駒 敬)

 【出典】 アサート No.372 2008年11月22日

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【投稿】日本はアジアと真摯に向き合え —-米国の衰退と田母神の乱—-

【投稿】日本はアジアと真摯に向き合え —-米国の衰退と田母神の乱—-
                             福井 杉本達也

1. 日米同盟を根底から揺るがす田母神前空幕長クーデター
 10月31日深夜、政府は、「日本が侵略国家だったとは濡れ衣」とするアパグループ懸賞論文を発表した田母神空幕長の更迭を決めた。そもそも深夜の持ち回り閣議で解任を決めるなどは尋常ではない。さらに、事務次官を戒告処分したにもかかわらず、田母神氏を「懲戒免職」ではなく「定年退職」という“公務員論理”の枠内で処分したことも異常である。今、政府もマスコミも最も触れて欲しくないことを国民の視線から覆い隠すことに狂奔している。それは、田母神論文の「『蒋介石により日中戦争に引きずり込まれた被害者』などと断じる」(毎日:2008.11.9)部分にあるのではなく、それに続く「日本はルーズベルトの仕掛けた罠にはまり真珠湾攻撃を決行する…東京裁判はあの戦争の責任を全て日本に押し付けようとしたものである。そしてそのマインドコントロールは戦後63 年を経てもなお日本人を惑わせている。このマインドコントロールから解放されない限り我が国を自らの力で守る体制がいつになっても完成しない。アメリカに守ってもらうしかない。アメリカに守ってもらえば日本のアメリカ化が加速する。日本の経済も、金融も、商慣行も、雇用も、司法もアメリカのシステムに近づいていく。改革のオンパレードで我が国の伝統文化が壊されていく。」という部分にこそある。この論文は米国からの“独立宣言”独自(核)武装派のクーデターの呼び掛けである。
 1997年の「日米防衛協力のための指針」以降、日米同盟は大きく変容し、自衛隊は事実上米軍の指揮下に入る「共同統合作戦調整」がなされている。その空軍の最高司令官が米軍に反旗を翻したのでは米日共同軍の統率はできない。それどころか、「米軍の横田基地や横須賀基地などに自衛隊が攻撃を仕掛け」(上記論文)るかもしれない。論文に激怒したのは米国であり、それに震え上がったのは麻生首相である。
 戦後63年間、日本は米国の占領下にありマインドコントロールされていることは事実である。その精神安定剤は中国・韓国やロシア(旧ソ連)であり、スパイスは北朝鮮であった。このマインドコントロールは、日本が米国の核の傘の庇護下で経済成長を謳歌していると考えていた間はきわめて“効果”があったし、プラザ合意に続くバブル崩壊後の日本の閉塞感に基づく不安・不満も靖国神社や尖閣諸島・竹島などのように中国や韓国に向いている間は有効である。 しかし、これまでも米国は、靖国の遊就館の展示物や櫻井よしこ・屋山太郎氏らのワシントン・ポスト紙への意見広告など、第二次大戦の結果を否定し、米国の日本占領の根拠を揺るがすような動きに対しては厳しく対処してきた。

2.米国の衰退が対米従属の破綻をもたらし、日本人の閉塞感を強めている
 これまで、米国は毎年日本に対し「年次改革要望書」を出している。その中身は郵政民営化にはじまり、電気通信、エネルギー、医療機器、医薬品から弁護士の増、談合の廃止にいたるまで多岐に亘り、日本の国内問題そのものであり、不当な内政干渉である。今年度も10月15日に同様の要望書が提出された。「医療機器・医薬品」では、「医療装置と医薬のためにその返済価格設定と監査機関システムの改革を求める。」と述べているが、米国の革新的な薬品・医療機器を、早く承認して買えということである。「M&A」についても、「買収防止措置を採用するに際し、株主利益を保護する。」と日本が企業買収防止策をとらないように牽制している。これら要望の数々を米国のいいなりに粛々と実行してきたのが、小泉元首相や竹中平蔵氏などである。その結果、日本の生命保険の4割がAIGなどの外資の軍門に下り、三井住友銀行もゴールドマン・サックスの配下に入り、無理やり倒産させられた旧長銀は安く外資に買い叩かれ新生銀行となってしまった。旧日興証券はシティに吸収され、民営化された郵便貯金・簡易保険の350億円の財産を身ぐるみ海外へ持っていかれようとしている。竹中氏や奥田碩・八代尚宏氏などの諮問会議委員の規制改革・新自由主義が低賃金の派遣労働者を生み出し、米の「強いドル」を支えるため、わが国の金利は1995年以来13年間も0.5~0%の低金利に抑えられ、国民の所得水準の大幅な低下を招いている。米保険会社の医療保険・年金保険の参入を図るため医療・年金不安が煽られ、対米盲従の結果が日本の国益を損ない、国民に多大な損害を与えている。政治的・軍事的従属で経済的利益を得ようとしていた国策は、いつの間にか膨大な富の米国への移転に転化してしまった。さらには、北朝鮮のテポドンで危機を煽り、総額3兆円ものMDシステムを購入する羽目に陥ってしまった。米軍再編で海兵隊のグアム移転にも3兆円も米国にくれてやることになった。
 この間、注意深く隠されていた日米関係が誰の目にも明らかになりつつある。その結果が日本人の閉塞感をもたらしている。「日本国内には、孤立感や、何かの拍子に何もかも崩れそうな脆さや、傷つきやすい雰囲気が漂う。日本のアンテナは引き続き太平洋の向こう側にしっかりと向けられており、ますます厳しさを増す米政府の要求に応えようと努力している。その間、自称ナショナリストたちの行き場を失ったエネルギーが向かう先は、確信に満ちていた過去の一時期に立ち返ることによって『明るい』歴史や『誇りのもてる』日本人のアイデンティティを取り戻そうとする運動だ」(ガバン・マコーマック著『属国』:凱風社)。
 しかし、昨年来のサブプライムローンに端を発した米国発の金融危機以降、米国の地位低下は覆い隠しようがない。「今の日本は、米国内の一部の勢力だけに賭け、全体像が見えていない。日本は非常に危険な状態にある。国家や国民の姿勢としても、米国という強者(いじめっ子ジャイアン)の後ろについていけば安泰だという姿勢は不健全である。しかも、その強者が崩壊しかかっているのに気づかずゴマすりばかりやっているとなれば、なおさら不健全で格好悪い。」(田中宇2008.11.05)。田母神氏は確信犯であり、この米国の衰退・軍産複合体の衰退を見て“反乱”を起こしたのである。

3. 改憲・先制攻撃・独自(核)武装化への道は“妄想”
 懸賞論文を企画したのは耐震偽装事件などで名前の挙がったアパグループ代表・元谷外志雄氏である。田母神氏とは小松基地以来の知り合いであり、安倍晋三元首相の安晋会副会長でもある。今回の田母神氏の論文は、急に突発したものでも、氏個人の意見でもなく安倍(中曽根に始まり、一時期の中断を挟み、森・小泉・安倍・福田・麻生ら「レーガン革命」流の反動政権の流れ)―元谷―三菱重工などの軍産複合体によって慎重に培養されてきたものである。
 11月11日、参院外交防衛委員会に参考人招致された田母神氏は、憲法9条に関し「直した方がいい」と述べ、改正すべきだとの考えを表明したが、これは、アジア各国の不信を招き、ますます日本の孤立化を深めるものである。残念ながら、中国と日本の経済関係から考えても、米国の意向から考えても、田母神氏が望むようにはいかない。所詮「米国という『大仏』の手のひらの上でくるくる回りながら大声で歌い踊っているようなもの」(上記『属国』)である。田母神氏は、2.26事件での皇道派と同じ役割を与えられているに過ぎない。しかし、皇道派の“蜂起”の裏には東条英機らの統制派の動きがつきものである。十分注意しなければならない。

4.アジアに真摯に向き合う
 11月15日のG20金融サミットに向け、日本はドル基軸体制維持のため外貨準備から10兆円のIMFへ資金拠出を提案した。一方、中国は57兆円もの景気刺激策を打ち出した。中国は米国1国のみが拒否権を持つIMF=ドル基軸通貨体制の維持に興味はない、米国の消費の落ち込みを中国は国内で賄うと宣言したのである。EUも景気対策と金融分野への規制を掲げた。日本だけが「定額給付金」というばらまきの景気対策さえも来年の通常国会に放り投げてサミットに臨んだ。
 アジア各国は、1997年の経済危機ではIMF=米英金融資本に煮え湯を飲まされている。インドネシアは政権が転覆され、タイの経済は崩壊し失業者であふれた。韓国では大手銀行のほとんどを外資に乗っ取られ、財閥系企業の多くが解体されてしまった。危機当時、大蔵省財務官の榊原英資氏はIMFのアジア版(AMF)をつくってアジアを円の共通通貨圏にしようと動いたが、サマーズの圧力と中国の日本不信もあり、幻に終わってしまった。今回、麻生首相が当時のIMFと同じことをしようとすれば、アジア諸国から総スカンを食うことになろう。
 日本がまずやるべきことは、米英金融資本を助けることではない。米英金融資本が貸し込んだ国は米英資本が身銭を切って助ければよい。そもそも、マネーロンダリングやMDシステムなどと引き替えに金融を呼び込もうとした国などを日本が助ける通りはない。榊原氏は、IMFに金融監督の能力はない、いったん米国中心の国際金融システムは壊れるが、崩れ切るには時間がかかる。当面、政府はシステムの崩壊がもたらす混乱が大恐慌に向かわないような手当に徹すべきだとする(日経:11.15)。
 11月6日、トヨタは今期の営業利益が74%減益となると発表した。自動車産業など、輸出産業を中心に日本の景気も後退局面に入った。これまで日本は民間からの資金を吸収し、さらに超低金利で家計から企業へ所得移転し、企業は賃金切り詰めで国民の購買力を奪ってきた。その結果は個人消費の落ち込みであり、年収200万円のトヨタの派遣労働者は車も買えない状況に追い込まれたのである。今なすべきことは家計中心の内需主導経済への転換である。
 それは、定額交付金のような無定見なばらまきの景気対策を行うことではない。ましてや、タミフルの在庫を景気対策と称して積み上げることでもない。北海道大学の中村利仁氏は崩壊しつつある病院医療建て直し策として、入院医療の平均利益率の小泉政権前の水準への戻し,急性期病院について手術点数などの15%程度引き上げ、非医療専門職員の約18万人増、後期研修医や専門看護師・病棟薬剤師等の養成プログラム、存亡の危機にある診療(救急,分娩,NICU)などの整備などに総計4兆5,000億円投資すれば,病院医療を再建できる(小松秀樹・虎の門病院:「『医療崩壊』と『医療再生』~医療再生のための工程表義解」月刊「保険診療」2008年10月号)と提案しているが、こうしたセイフティーネット型の需要喚起策を積み上げるとともに、派遣労働の規制・最低賃金の引き上げなどを含め労働分配率の向上や個人消費の拡大を目指すべきであろう。個人の負担が異常に大きい教育への投資もまた個人消費に結びつく。排出権取引などという金融ゲームに埋没するのではなく、省エネルギー投資などにより新たな技術への投資などにより国内需要の拡大を図り、米国の消費に頼り切らない経済に作り替えることである。
 G20金融サミットを決めたフランスのサルコジ大統領は「21世紀の通貨はひとつではない」と述べ、ブラジルとアルゼンチンは10月3日から両国間の貿易決済をドルから自国通貨にした。また、中国とロシアもドルから人民元・ルーブル決済への移行を決めた。韓国の李大統領も毎日新聞とのインタビューで「ドルの世界的地位は低下した。日中韓3カ国が単一通貨に合意すれば、アジアに広げるのは難しくないだろう」と述べている(毎日:11.11)。その場合には、「米国への服従と、周囲に優越して誇り高く純粋な歴史を持つ日本のアイデンティティとを同時に成立させよう」(上記『属国』)という根本矛盾の自己同一を見直しアジアと真摯に向き合うことである。

 【出典】 アサート No.372 2008年11月22日

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【投稿】アフガニスタン情勢の転換と日本の策動

【投稿】アフガニスタン情勢の転換と日本の策動

<「軍事力では勝てない」>
「9,11テロ」への報復として始まったアフガン侵攻以来7年間を経て、アメリカの「対テロ戦争」は大きな転換点を迎えている。
 タリバン政権崩壊後に樹立されたアフガンのカルザイ政権は、事実上アメリカの傀儡政権であるが、この間タリバン側の勢力拡大に動揺し、対話路線に方向を転じようとしている。
 この背景には米、NATO軍など国際治安支援部隊(ISAF)による軍事作戦が行き詰まりを見せていることがある。
現地では同部隊による「誤爆」や残虐行為により、民間人の犠牲が増加している。さらにコーランを射撃の標的にするなど、イスラム社会に対する冒涜行為も相次ぎ、これによりタリバンもテロを行っているにもかかわらず、政権批判につながるという泥沼に陥っている。
 こうした状況のなか、カルザイ大統領も9月には記者会見で「外国軍により多数の市民が犠牲となった、民間人の犠牲は無くさなくてはいけない」と述べざるを得なくなっている。
 「誤爆」の主犯であるアメリカ軍はしらを切りとおし、正当化してきたが、ゲーツ国防長官がカブールを訪問し、カルザイ大統領に謝罪した。
 そして、アメリカ大統領選挙を控えた10月、アフガニスタン情勢をめぐり、関係国の高級軍人から相次いで重要な発言が出された。
 アフガニスタン安定の命を受け、10月31日着任したペトレアス米中央軍司令官は、就任前に米国内で行った講演で「アフガニスタン情勢の好転のためには、反政府勢力として影響力を拡大してきているタリバンとの対話も必要であると」と述べた。
またこれ以前に、アフガン駐留英軍のカールトンスミス司令官も「戦闘ではタリバンには勝てない、タリバンに交渉の意思があるならテーブルに着くべき」との見解を示している。
アフガン駐留軍の主力部隊である米英軍の最高指揮官が、武力でタリバンを掃討するのは無理であり、和平交渉をすべきと主張しているのである。
 さらにパキスタン軍のパシャ中将は同国議会に対し「武力行使のみではイスラム原理主義組織に永久に勝てないだろう」と、やはり和平交渉の必要性を示したという。

<オバマの新戦略>
 このように、アフガンにおける治安安定化政策が変更されるのは確定的であるが、米大統領選挙前日の3日にもカンダハルで米軍が結婚式会場を「誤爆」し多数の犠牲者がでた。
 これでアメリカの「謝罪」はまったく口先だけのものだったことが明らかになり、政策変更のまえに政権が持たないとの思いから、カルザイ大統領はオバマ次期大統領に向け「空爆ではテロに勝てない」と悲痛ともいえるメッセージを送った。
 オバマ次期大統領は、イラクからの早期撤兵を進めることを明らかにする一方、アフガンへの増派を検討していると伝えられている。しかし戦闘部隊の派遣だけでは、イラクにおけるブッシュ政権の轍を踏むだけであり、事態の改善にならないことは明らかである。
基本的にはタリバン側との交渉に軸足を置き政権に取り込みながら、主敵であるアルカイーダを孤立化させ、こちらは武力による掃討を進めるという戦略であろう。
しかし、アフガン国内、あるいは国境を接するパキスタン領内の部族地域に、アルカイーダが影響力を保持しているかは不明である。米軍は昨年末から二十数回にわたり、アフガン領内の基地から無人機を飛ばし越境攻撃を行っているが、5月に幹部一人を殺害したにとどまっている。
 さらに、前述のパシャ中将の発言などから、アルカイーダが存在していたとしても、攻勢の準備など活発な活動を行える勢力はすでになく、逃亡した少数の幹部が潜伏しているのみではないか、との見方もある。
 ブッシュ政権は「対テロ戦争」継続の口実、たとえばイラク戦争の開戦理由の一つとしてアルカイーダなど国際テロ組織を利用してきたが、このアフガン、さらには10月のシリアへの越境攻撃もその延長線上にあると言える。

<新たな派兵狙う麻生政権>
 オバマ新政権が、「テロとの闘い」を掲げつつ、そうした政策を事実上軌道修正する可能性が強いにもかかわらず、アメリカとの同盟強化をお題目に、自衛隊の新たな海外派兵を虎視眈々ともくろんでいるのが麻生政権である。
 すでに陸上自衛隊はイラクから撤兵し、航空自衛隊も年内にはクェートから引き上げる。新テロ対策特別措置法改正案の行方は予断を許さないが、政府は空白を埋めるため、「アフガン復興支援」を口実に新たな海外派兵を策動している。
 福田政権末期、ブッシュ政権の要請でアフガンへ陸自ヘリ部隊を派遣し、負傷兵の運搬を行う計画が策定されたが、収容時に攻撃を受け応戦した場合「駆けつけ警護」=武力行使に当たるとして、憲法判断上から凍結状態となっている。また、8月に農業指導を行っていた「ペシャワール会」メンバーが殺害される事件が発生した。
 犯行が「テロ組織」によるものであれば、政府は「民間人では危ない、自衛隊の出番だ」と政治利用に走ったであろうが、会の毅然とした対応と、犯人の背後関係が不明なことから、踏み込んだ論議はストップしていた。
 しかし、10月23日の参院外交防衛委員会で中曽根外相が、そもそものアフガンにおける米軍の作戦を「武力行使にあたらない」と発言、民主党から「武力行使でないなら自衛隊をだせるのか」と追及され、河村官房長官が慌てて否定する場面があった。
 マスコミは外交・防衛問題にふなれな中曽根外相の認識不足、と報じていたが、漢字の読み間違いレベルの問題ではなく、政府の本音が出たものではないか。今後の情勢次第ではアフガン派兵が現実味を帯びてくるだろう。
 さらに、麻生政権は「ソマリアでの海賊取り締まりのため」海上自衛隊派遣を画策している。もともとソマリアは「アルカイーダの拠点」で、インド洋も含めた海域での「連合軍」の臨検活動はテロ組織への武器流入の阻止という説明であったのが、いつのまにか「海賊の取り締まり」になっている。
 政府は相手が海賊なら武力行使に当たらないというのであろうが、来日したイエメン沿岸警備隊のマルマフディ作戦局長は朝日新聞の取材に対して「海上自衛隊の派遣は高い効果は期待できない」(11/15朝刊)と否定的な見解を述べている。
 過去のカンボジアやルワンダでも一触即発の危機があり、イラクにおいては前述の「駆けつけ警護」が検討されたことが明らかになっており、武力行使の一歩手前まで状況は進んでいる。
 おりしも田母神前空幕長問題が惹起するなか、こうした考えを持つ幹部自衛官が現地で指揮を執った場合、勝手に戦闘を開始する危険性があることを、政府は認識しているようには見えないのである。
 もっとも最大の問題は「大東亜戦争」と呼称してはばからない麻生総理が、シビリアンコントロールの頂点にいることであり、政権延命に汲々とする与党を厳しく追及することが求められている。(大阪O)

 【出典】 アサート No.372 2008年11月22日

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【緊急寄稿】「何の兆候か?」  

【緊急寄稿】「何の兆候か?」      和田三郎

 11月18日、東京近郊で、相次いで、元厚生事務次官とその家族を狙った殺傷事件が起きた。18日深夜の報道によると、2人が亡くなり1人が重傷という。2件目発生から数時間を置かず、首相官邸に内閣危機管理官が詰め、一方、厚生労働省首脳OBと現役幹部の身辺には、緊急警備体制が敷かれることになった。政府の要請という。
 これも報道によると、政府自民党のみならず野党関係者も、「もし、これが年金問題に係るテロだとしたら、……」という発言を繰り返している。(明朝のワイドショーはどうなることか!)
 狙われた(だろう)2人は、現行の年金制度創設を主導した官僚だという。
『吉原氏は年金局長時代の85年、20歳以上の人が全員加入する基礎年金制度の創設に、亡くなった年金課長山口剛彦さんとともにかかわった。「吉原年金局長―山口年金課長」のコンビで年金制度の大改正を手がけた仲。』(11.18WEB朝日)

 ここまでWEBニュースを追ってきて、重大な発言が、数日前に報道されていたことを思い出した。発言の主は、財界の大御所、奥田碩トヨタ自動車取締役相談役。11月12日の政府の「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」の場で、座長である氏は、次の発言をしている。
 『政府の「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」の座長を務める奥田碩トヨタ自動車取締役相談役が12日の会合で、ワイドショーなどの番組での過度な厚生労働省たたきに不快感をあらわにした。
 奥田氏は「テレビが朝から晩まで年金や厚労省の問題をあれだけ毎日やるのはちょっと異常な話。正直言ってマスコミに報復してやろうかな、スポンサーをやめようかなとも思う。」と発言。「ああいう番組のスポンサーは大きな会社じゃない。パチンコ屋とかサウナとかうどん屋とか」とまくし立てた。
 関係者は「マスコミ公開の会議であることを忘れていたのでは」と奥田氏をかばったが、経済界の大御所の発言だけに波紋を呼ぶ可能性もある。』(抄11.12.WEB日経)

 そこで、以下は、私の仮説である。
 折から国会情勢は急転し、政府与党の本心も、「客観的に見て、数週間の内に解散せざるを得なくなる」となった。そのとき、年金問題追及=テロリスト加担の構図(これをデマゴギーとフレームアップと普通は言うが)を描こうとしているのではないか。今や、全国くまなく行渡っている「自民党政府は、年金泥棒」という声に、選挙戦において弁解する必要性は、薄れる。
 殺害された山口元次官について、時間就任挨拶に(感極まり)涙を流す列席者の映像を、夜のTVニュースは繰り返し流している。次官就任挨拶会場だから、列席しているのは、多分、本省の課長以上だろう。その人たちに対し、事務次官の汚職罷免の後任となった山口元次官は、「皆さんの苦しい気持ちを私は知っている。共に新しい省をつくろう。」と目を潤ませながら、呼びかけていた。
 さて、妙に奥田発言と通じるものを、今回の事件に、私は感じた。
 今回の殺傷事件の被害者たちは、いずれもOBであり、現在の政府の年金行政に影響力を持つ方々ではない。人命という最大価値を除外すれば、権力中枢にとって失うものはあったのだろうか。年金行政について、論理的に国民を説得することは、無理だと承知している。繰り返し批判されることも困る。しかし、「もう年金はいいではないか、回復の対処をしているのだから。むしろ、国の経済再興を目指すのが第一である。」
 これには、年金問題に体を張ったと示せるものが必要となる。人命を、三文政治の具にすることは、もう止めたいものである。[11月19日02:00記]

 【出典】 アサート No.372 2008年11月22日

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【投稿】投機と市場原理主義経済の破綻

【投稿】投機と市場原理主義経済の破綻
     —アメリカ発世界金融恐慌をめぐる闘い—

<<つかの間の「歓呼の声」>>
 アメリカ発の金融恐慌は、10月に入ってさらに深刻な状況に突入していることを明らかにしている。10/9のニューヨーク株式市場は、ダウ工業株平均株価が9000ドルを大きく割り込んで、8579・19ドルへと急落した。7営業日で2271ポイントにも上った下げ幅は、史上最悪の記録であった。ちょうど1年前の昨年10/9は、1万4000ドルを超える史上最高値を記録していたものがこれである。
同じく10/10、東京株式市場の日経平均は9000円台を一挙に割り込み、8276円43銭まで急落、7営業日連続で、下げ幅は計3091円に達した。下落率は53年3月のスターリン暴落に次ぐ史上3位の9.62%であった。ITバブル後の戻り高値である昨年7/9の1万8261円から1年3カ月で半値以下になってしまったのである。そして外国為替市場ではドル売りが加速、円は一時、1ドル=97円91銭まで上昇している。
この9月からの1カ月余りで、世界の主要市場の下落率は日本が36%を記録、米国が25%、英国が23%、中国・上海が16%に達している。大和総研の試算では、世界の株式市場の時価総額は8月末の約49兆ドルから、9日時点で28%減の約35兆ドルに。日本の国内総生産(500兆円強)の3倍近い14兆ドル(約1400兆円)が吹き飛んだとみられている。
 翌10/10、急遽ワシントンで行われた主要7カ国財務省・中央銀行総裁会議(G7)は、各国の主要金融機関に対する公的資金を使った資本注入などを盛り込んだ行動計画を発表して、「現下の状況は緊急かつ例外的な行動を必要としている」と危機的な状況であるとの認識を強調、金融市場の機能回復、銀行の資本増強、預金者保護策の3点を強調し、金融システム全体に影響を与えるような重要な金融機関の破綻を避けるため、あらゆる政策手段を総動員する、との姿勢を打ち出した。
 これを受けて米政府は、総額2500億ドル(約25兆円)の公的資金を使い、金融機関に資本注入する新たな経済危機対策を発表し、まず大手9金融グループに合計で約1250億ドル(約13兆円)を注入し、全米の金融機関に広げることを明らかにした。
このG7の合意を受けた10/13のニューヨーク株式市場は、前週末比936.42ドル高の9387.61ドルと急騰し、過去最大の上げ幅を記録、9000ドル台を回復し、10/14の東京株式市場でも、日経平均株価の上げ幅が1000円を超え、9300円台に上昇。マスコミ報道は一斉に、「歯止めがかかった」「金融危機がいったん遠のいた」「金融不安は後退した」「市場は歓呼の声で応えた」とはやし立て、歓迎ムード一色であった。
ところがこうした希望的観測は二日と持つものではなかった。10/14のニューヨーク株式市場は、9700ドル台まで急伸した後、再び急落、302ドル下落し、9310.99ドルで取引を終了した。翌10/15にはさらに 前日より733.08ドル安い8577.91ドルに急落、下げ幅は、777ドル安を記録した先月29日に次ぐ史上2番目の急落を記録することとなった。
もちろん東京市場も、10/16、日経平均の終値は前日比1089円02銭安の8458円45銭に再び急落、下落率は11.41%と53年3月スターリン暴落の10.0%を上回る史上2位の暴落となった。市場関係者の中には、03年4月に付けたバブル後最安値=7607円の更新を警戒する声も出始めている。
10/16未明には主要8カ国(G8)首脳があらためて「金融機関を強化し、金融システムへの信頼を回復し、共通の責任を果たす」とする異例の緊急声明を発表し、金融危機の回避のため国際協調を打ち出し、各国政府が公的資金の注入や不良債権の買い取りなどを宣言しているにもかかわらず、市場はこれを無視し、株価下落を押しとどめるものではなかった。金融の信用危機ばかりか、政府の信用危機の表明とまでいえよう。

<<ブレトンウッズ2>>
 もはやアメリカを中心としたG7の時代は終わった、G7ではこの世界的金融恐慌を克服する力も能力もないということが、誰の目にも明らかになってきたのである。それはまた同時に、サブプライムローンの破綻から今日の金融恐慌に至る、虚業が実業を圧倒するマネーゲームと投機的金融資本主義の破綻、とりわけブッシュ政権が押し進めた軍備増強と戦争経済優位がもたらした国家的破綻と泥沼状態、その結果としてのアメリカの凋落、そして無法と無責任・格差拡大・弱肉強食の市場原理主義、新自由主義がもはや継続しがたく、持続不可能であり、崩壊の危機に瀕している端的な現われでもある。
そして金融システムの機能不全、金融恐慌の進展には、いよいよ実体経済に直接的悪影響をもたらし、大型倒産・解雇を初めとするあらゆる価値破壊を含む負の連鎖が控えている。すでにアメリカを始め各国にそれらの兆候が拡大し始めている。
 これからまさに金融恐慌から世界経済恐慌への進展をめぐって、いかにそれを回避し克服するかをめぐって熾烈な闘いが展開されざるを得ないともいえよう。
 すでに金融恐慌の進展によって、ドル離れが急速に拡大せざるを得ない状況に直面している。この機会に英政府は、ドルと米国債の破綻を予期し、ロシアやBRICの参加を前提とした新たな国際通貨会議、ブレトンウッズ2を開くことを提唱している。欧州連合(EU)首脳会議は、米国中心の国際金融制度を改革するために、取引の透明性強化や規制導入を含む金融の新秩序づくりを目的に主要8カ国に中国やインドなど新興国を加えた拡大首脳会議の開催を求めるという。ブラウン英首相は「1940年代に国際通貨制度を創設した時に匹敵するようなビジョンが必要だ」と語り、サルコジ仏大統領は「21世紀の金融システムを再構築する機会を逃してはならない」と強調する。IMFはすでに、ドル一極の基軸通貨体制の持続は困難であるがゆえに、ユーロや人民元、円、ペルシャ湾岸諸国(GCC)の通貨などの、他の諸国・地域の有力通貨を加えた通貨の多極化が必要だと表明している。
 当然、ドル基軸通貨体制の転換が必要ではあるが、何よりも決定的に重視され、指摘されねばならないことは、もはや破綻し泥沼化しているイラク戦争、アフガニスタン戦争を即刻停止させ、戦争経済から平和経済への転換を明確にすることこそが、世界経済恐慌回避への最大の近道であり、そうした転換を前提としない新たな国際通貨体制では危機の回避は不可能であることを認識しなければならないであろう。
 次いで明らかにされなければならないことは、市場原理主義からの決別である。マネーゲームとも言われ、カジノ資本主義とも言われる投機経済、野放しの弱肉強食経済に対して、徹底した民主的規制と国際的共通課税を課すことを国際的ルールとし、それらを原資とした地球規模の環境対策、貧困対策、食糧危機対策、これらを包括した国際的規模のニューディール政策に前進すること、資本や資金の流れをこれらの政策に合流させることを明らかにすることである。
 こうした転換の結果としてこそ、世界経済恐慌への進展を食い止めることが可能となろう。

<<「解散引き延ばし」>>
 金融危機を通じて無力の象徴となったブッシュ政権、共和党政権はいよいよ瓦解しようとしている。11/4の米大統領選の投開票日は、ブッシュ氏が率いてきた共和党政権の退場、オバマ民主党政権の登場という歴史的な一日となろう。軍事強硬路線をあくまでも継承しようとするマケイン氏に対して、オバマ氏はイラクからの米軍の撤退を公約とし、対話路線を外交の基本としていることからすれば、重要な前向きの転換といえよう。しかし一方で撤退米軍をアフガン増強に回していたのでは元の木阿弥である。この際、日本をアフガン戦争にさらに深く関与させ、財政的軍事的負担を増強させようとしている政策も危険である。対話路線とも矛盾せざるを得ない。マケイン候補が、一時伯仲していたにもかかわらず、オバマ氏に差をどんどん開けられたのは、皮肉なことにブッシュ氏の経済政策の破綻、金融恐慌に対する無策であった。ここでも徹底した平和経済への転換が問われていたのである。
 一方、日本の麻生政権は、こうした経済危機と政策転換については、まったく無知無能力無方針をさらけ出したままである。
 麻生首相は10/10発売の月刊誌「文芸春秋」に寄稿した論文のなかで、「国会の冒頭、堂々と私とわが自民党の政策を小沢(民主党)代表にぶつけ、その賛否をただしたうえで国民に信を問おうと思う」「強い政治を取り戻す発射台としてまず国民の審判を仰ぐのが最初の使命だ」と述べて、臨時国会の冒頭、所信表明演説と各党の代表質問が終わった時点で衆院解散に踏み切る考えだったことを明らかにしている。
ところが、その後の米国発の金融危機の進展に驚き、金融不安がいっそう広がり、内閣支持率も下がってくるとなると、ずるずると解散戦略の修正を余儀なくされ、もはや追い込まれ解散しか出口がなくなりつつある。金融危機の広がりはすでに八月の末には明瞭な形を取っていたのであり、自らの総裁選で浮かれていた九月中旬にはその深刻さ、危機の日本への波及がさらに明らかになっており、そのような現状を正確に把握することさえ出来ない、情勢の読み誤りにも気づかない政治的能力のなさを露呈している。しかも所信表明演説が、自らの与党としての政策を明らかにし、それへの支持を訴えるのではなく、野党に対する質問・攻撃演説に終始するという前代未聞のあきれた無責任さをさらけだし、それが「強い政治を取り戻す」基本姿勢だと錯覚し、悦に入っていたのである。肝心要の政策は、後手後手のアメリカへの追随政策しかない、「麻生カラー」を出すための政策減税、第2次補正予算についても「詳細を示したら期待はずれになる。骨格だけ示して解散したほうがいい」といわれる始末である。
 麻生政権にとっての唯一の救いは、小沢民主党が「解散引き延ばし」に対抗するために、麻生政権が成立を願っている問題法案、民主党が反対してきた法案まで十分に審議することなく、審議を早めて早期採決、成立させ、結果的に麻生に貢献していることである。問題の対アフガン給油新法改正案もろくな論議もなく成立させられようとしている。このような姑息な対応は必ず手痛いしっぺ返しを受けるであろう。民主党にも平和政策としっかり結びついた経済政策が問われているのであり、亜流アメリカ追随政策と決別することが問われていると言えよう。
(生駒 敬)

 【出典】 アサート No.371 2008年10月25日

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【投稿】民主党は大胆なマネー戦略を

【投稿】民主党は大胆なマネー戦略を
                     福井 杉本達也 

1.「米ドル資金市場の流動性はほぼ枯渇した」
 米金融救済法案が下院で一端否決される直前の9月29日、日銀白川総裁の会見が行われた。総裁は「リーマン・ブラザーズの破綻等を契機にしまして、米欧の金融機関の株価が急落しましたし、信用リスクにかかる評価であるCDS(Credit Default Swap)のプレミアムが急拡大しました。こうした中で米ドルの調達金利をみますと、オーバーナイト金利は急上昇しており、足許は低下しているものの日中の振れが大きい状況にあります。期日(ターム)物の方は、金融機関相互の間での信用リスク不安が高まる中、長めの資金放出姿勢が極度に慎重化したことからレートが上昇しています。」「米ドル資金市場の流動性はほぼ枯渇したという状況だと判断しています。」と会見で述べている。世界の金融機関は、お互いが持つ巨額の不良債権に怯え、日本を除く世界の銀行間の取引が北極の氷のように凍り付いてしまったのである。要するに民間金融機関の信用が全くなくなったので国家の信用保証に頼るしかなくなったのである。
 米政府はシティーグループ250億ドル、ゴールドマン・サックス100億ドル等金融機関に2,500億ドルの資本注入を含む最大7,000億ドルの投入を決めた。また、連邦預金保険公社(FDIC)が保証する金融機関の債務が1.4兆ドル、これらを併せ、米の金融対策は2.6兆ドルになるという(朝日:2008.10.16)。また、欧州でも、英がRBSやバークレーズ等に9兆円、ドイツが11.2兆円、フランスが5.6兆円と欧州全体で37兆円もの巨額の資金を投入した(日経:10.15)。さらに金融資本の牙城スイスもUBSに5300億円の資本注入と6兆円の不良債権の買い取りを行うなど(日経10.17)、まさに、9月~10月にかけて世界の金融市場は1929年大恐慌以来の激動に飲まれている。ブログ上では『社会主義』の言葉が踊っている。銀行の国有化とはまさに社会主義そのものである。
 銀行の国有化だけでは安定しなかった世界の株式市場も日米欧が一斉に「時価会計の一部凍結」の検討を報じられた(日経:10.17)ことにより、乱高下を繰り返しつつも当面は落ち着きを取り戻しつつあるように見える。今後は、実体経済の停滞が金融機関の資産内容の一段の悪化とさらなる信用収縮をもたらし、これがまた景気に悪影響を与えるという金融と実体経済の負の相乗効果が生じている」(白川総裁:日経:10.18)。
 
2.欧米の金融機関の総損失はいくらあるのか?
 「ビジネス知識源」で吉田繁治氏は米国の住宅関連ローン1500兆円・欧州の住宅関連ローン1500兆円の20%が欠損となるとして、それで、600兆円、この間の世界株価の暴落3,000兆円の30%を欧米の金融機関が持っていると仮定して900兆円、6,200兆円といわれるCDS(債務保証保険)の5%が精算による最終損になるとして310兆円、株式の暴落部分を抜きにして、910兆円、株式を含めれば1,810兆円という天文学的な数字となる。この損害はIMFの見積もりの6倍にものぼる(「ビジネス知識源」緊急特別号「ウオールストリート;恐怖の8日間」2008.10.14)。こんな巨額な損害をどう埋めるかですが、信用の根幹は各国の国債が担保になる。「物的担保を裏付けにしないペーパー・マネーの信用の根源は、各国の、将来の国家財政です。つまり、あらゆる国の国家財政の信用は、将来の徴税力(=課税力)に依存」する(吉田氏)。ところが、米国の純債務は350兆円、英は80兆円もあり、米国債は国内では消化できない。現在でも米国債の94%が海外で消化されているが、今後の膨大な米国債の発行を中国・日本・アラブ諸国でも支えきれない。そうなれば、次のストーリーは米国債の暴落・ドルの暴落である。
 
3.「ブレトンウッズ」
 驚くことにEU側から「ブレトンウッズ」という遠の昔にゴミ箱に捨てられた言葉が戻ってきた。ECB(欧州中央銀行)のトリシェ総裁は「世界の金融システム再構築に当たり、第二次世界大戦後の数十年にわたって市場の安定的な発展の基盤となった『規律』、すなわち『ブレトンウッズ体制』に目を向けるべきだと各国当局に呼び掛けた」(Bloomberg:2008.10.16)。これに、英のブラウン首相も「限られた資本フローを前提として規律を作りあげたブレトンウッズ体制創設者にならい、国際的な資本フローの下で、新しい枠組みを作っていかねばならないと」(同上Bloomberg)表明した。田中宇氏によると『第2ブレトンウッズ会議』を最初に提唱したのは、仏サルコジ大統領で、9月26日に仏ツーロンでの講演の中に盛り込まれていた。」(田中宇:「危機対策の主導権奪取を狙う英国」2008.10.14)という。これに、ロシアも賛成している。田中氏の分析は泥船のアングロサクソン金融資本主義から英だけが抜け出して、アイスランドの危機を仲介にしてロシアと手を組みフランス・ドイツと対抗して新しい通貨体制の枠組みの主導権を握ろうということである。
 
4.日本の立場
 日本は10月10日のG7の場で、日中の外貨準備を活用してIMFを通じたアイスランドなどの金融危機に陥った新興国に対する緊急融資制度を提案(日経:10.10)したようだが完全に無視された。『第2ブレトンウッズ』について「麻生首相は10月16日、拡大G8会議は、できれば開催されずにすんだ方が良いと述べた。日本が対米従属をやめざるを得なくなる世界の多極化を決めるブレトンウッズ2会議など、やらない方がいいという意味だろう。」(同上:田中氏)日本はこの危機に及んでもドルに対して過剰な思い入れをしており、日本の金融政策の基本スタンスはあくまでも対米協調にある。ドルを支え続ける以外に独自のマネー戦略を持たない。三菱UFJの9,000億円のモルガンへの出資や野村のリーマン欧州部門などの買収もこうした政府姿勢の一環であろう。このままではドル暴落の中で、膨大に積み上げた米国債を踏み倒され、ドルと一緒に心中する以外にはない。それは1995年9月に0.5%の金利となって以来、年間10兆円もの金利所得を金融資本や米国に献上してきた日本国民の汗と血の結晶をさらに無にする行為である。
 10月18日の日経社説はオバマ陣営の民主党政策綱領を批判し「ライス国務長官が提唱する六カ国協議を安保機構化するのと同様の発想である。」とし、「それは日米同盟の相対化につながり、さらに形骸化にさえつながる危険がある…ワシントン体制という多国間システムのなかで日英同盟がなくなっていった1920年代の歴史の再現にさえ見える。日英同盟廃棄の後に何が続いたか。あの歴史は語るまでもない。当時の日英同盟に相当するのが現在の日米同盟である。それは日本外交の基軸であり、アジア太平洋の安定装置として機能する。」「日米同盟の維持・強化が日米双方にとっての利益だとすれば、米側だけに努力を求めるのは正しくない…8年前の超党派の米側報告季(アーミテージ・ナイ報告)が日本に求めた集団的自衛権をめぐる憲法解釈の変更はまだなされていない。」と雑誌「諸君」や「Voice」顔負けの古色蒼然とした時代錯誤の主張を繰り広げている。この思考の延長線上に、麻生首相が今、力を入れるインド洋給油延長法案がある。
 既に旧『日英同盟』の一方の当事者・英国さえも泥船のアングロサクソン同盟から逃げ出そうとしているのである。ドルは規制されなければならない。「日米同盟」は破棄されなければならない。今後も借金を踏み倒し、ドル紙幣を輪転機を回して無制限に供給し続けることは許されない。基軸通貨の地位から引きずり下ろさねばならない。その際、英国やフランス・ドイツ主導の新ブレトンウッズ体制にしてはならない。「六ヶ国協議」の発想で、日本は中国・ロシアと組み、合わせて3.5兆ドルもの外貨準備高に相応しい体制を獲得するために交渉しなければならない。それが、金という実物にリンクするかどうかはわからない。
 いずれにしても、金融危機を理由に総選挙を先延ばしすることなど許されるはずはない。危機の大本の米国こそ大統領選挙の真っ最中ではないか。どうして、被害の少ない日本に先延ばしの必要性があるのか。先延ばしの理由は、今の政権での、米国へのさらなる貢ぎ物が隠されているのではないのか。リーマンの破綻で日本の金融危機のどさくさの中で外資に乗っ取られたあおぞら銀行が486億円、新生銀行が380億円の損失を被ったという。日本は金融危機でもないのに「金融機能強化法改正案」でどうして公的資金枠が2兆円(当初案10兆円)も必要なのか。いかに今の自民党政権が骨の髄から腐りきっているのか。
 
5.「時価会計」は破棄されねばならない
「時価会計」はゴミ箱に入れるべきであり、BIS規制は見直すべきである。時価会計こそが投機の根本原因である。新自由主義イデオロギーの会計上の根本である。何でも市場価値で計れるというイデオロギーである。そもそも、土地や工場・設備といった固定資産や現金や債権などの流動資産以外のブランドや知的財産・人的資源などを何で計るのか。これらを市場価値で計るとすれば、株価の変動に応じて大きく変動せざるを得ない。経営はきわめて短期指向にならざるを得ない。短期指向を突き詰めれば「投機」とならざるを得ない。野村が慰留したリーマン社員の平均給与(年収)は4,000万円であるという。それでも、これまでの給与よりはかなり安いという。27・28歳の社員がぞろぞろと1億5,000万円もの所得を得、経営者が何十億、百億単位の所得を得る経営は異常と言わざるを得ない。
 サブプライムや怪しげなCDSなどを工夫し人の財布から掠め取る以外にそのような所得を支払うことはできない。「通常、巨額の設備投資や研究開発投資を必要とする企業は投資の回収に長期を要するので、中長期的な視野に立った投資計画を必要とします。このような投資計画を実施するためには、短期指向機関投資家を中心とする資本市場からの圧力を受け流すことができる長期平準化利益を算定可能なフロー配分を重視する会計が好ましい」(徳賀芳弘「M&A時代の会計」)のである。

 【出典】 アサート No.371 2008年10月25日

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【投稿】迷走する麻生政権 –民主党は明確な対案で臨め!–

【投稿】迷走する麻生政権 –民主党は明確な対案で臨め!–

<世論調査は自民惨敗予想→冒頭解散断念>
 麻生政権が、迷走している。臨時国会冒頭解散をぶち上げてみたものの、リーマンショックによる世界同時株安の事態に直撃され、10月解散論は吹き飛ばされた。郵政選挙で獲得した圧倒的多数の衆議院議員という上半身と比較して、足腰は、国家戦略なき宗教政党・公明党に頼らざるをえない弱体政党となった自民党には、かつての民主党のように「風向き」次第の国民の意識動向しか、解散時期の判断基準はなくなっているのである。
 総裁選直後には、麻生政権の支持率は50%を越えていたが、所信表明に続く党首対決でも、決定的な優位を獲得できないばかりか、中川国交大臣の妄言により出鼻を挫かれた。国交省は、かつての運輸省。「成田の農民はゴネ得」などは、話し合い路線に転換した同省にとっても容認できない内容だった。たった数日で大臣辞任。任命責任もあいまいなままだ。以後、内閣支持率は下降を始める。
 9月中旬に自民党が全国300選挙区毎にサンプル数1000のリサーチを行ったところ、小選挙区で自民党優勢は106前後、民主党優勢は130、比例区では自民党は67、公明30を加えても最大220議席、落選は130という結果が出たと言う。自公で過半数は不可能という衝撃の結果が伝わったのは、9月末。早期解散はとても出来ないと補正予算優先、第2次経済対策で挽回という方針転換となったのである。
 
<支持率低下が止まらない自民党>
 それでも、支持率低下は止まらない。10月20日に報道された毎日新聞世論調査(10月18・19日調査)では、内閣支持率は36%に低下、勝利期待では、民主48%と自民36%を大きく引き離した。比例投票行動も民主38%、自民25%と逆転され、政党支持率も民主27%、自民24%という結果だった。これでは、解散はまたまた先延ばしであろうか。
 麻生にとって幸いだったのは、米・仏大統領が11月中に緊急G7首脳会議を開催し、世界的金融危機への対応策を呼びかける共同宣言を出した事だ。これで、11月解散・総選挙も、不可能になったのではないか。このままでは、年内解散は不可能になり、2009年予算成立後の4月以降でなければ解散はできなくなる。任期満了解散ともなれば、首相の大権も有名無実であり、敗北を座して待つのみとなろう。
 しかし一方で、選挙区地元では、議員候補が与野党ともに選挙事務所を早々と開設し、選挙モードが高まりつつある。借上げ料や人件費も馬鹿にならず、選挙を待たずに「財政破綻」が囁かれる候補者もいるとか。要するに悲鳴にも似た解散待望論が強まっていることも無視できない状況になりつつある。
 
<あいまいな政権交代論だけでいいのか>
 確かに、政権交代の可能性が極めて高い総選挙になることは重要なことであり、画期的なことである。官僚・政府・与党との悪しき癒着を解き放ち、新たな緊張関係のある政治が生まれることは評価できる。しかし、民主党の「生活が第一」というスローガンが、小泉構造改革への批判であることは理解できるが、アメリカ発の世界金融危機が極限まで進行している現時点では、この危機の根源である市場原理主義とカネ儲け第一の金融資本主義への決別を明確にすることが必要となっているのではないか。
 小沢代表の下で今は声が小さくなっているが前原前代表や松下政経塾出身者を中心に「市場原理主義」「新自由主義」に親和性の高い人々が民主党には多い。元官僚やアメリカ留学経験組などが候補者の中には多いのではないか。
 小泉路線との対決という意味で、「生活が第一」という方向は社会民主主義的「色合い」を結果として意味することができた。しかし、実態は、どちらかと言えば「小さな政府」指向であり、「官より民」という新自由主義的傾向をもっていりのが現実である。
 アメリカ発金融危機の意味するものは、明らかにレーガン・サッチャー以来の新自由主義・市場原理主義の破綻・敗北であろう。国家の基本戦略において、新自由主義と距離を置くこと、ニューディール政策のような官主導の雇用創出政策の実施、不況脱出のための財政出動など「修正資本主義」的政策を国家戦略とすること、対米協調路線からの修正など、今こそ基本政策の転換が求められているのである。

<共産党立候補削減の大きな影響>
 さて、今回の総選挙の行方に大きな影響を与えそうな要因がある。共産党の動向である。これまで、ほぼ全選挙区に候補者を立ててきた共産党だが、先の中央委員会(2008年7月)で、新しい選挙方針を決めている。それは、小選挙区立候補者を130人とすること。比例選挙に重点を置き、比例選挙ブロック毎に全体の獲得目標である650万票を割り振るというものである。
 単純に考えると170選挙区には共産党の候補者はいないことになる。民主・社民・国民新党は、ある程度の選挙区で候補者調整を行っているため、170選挙区では、自民党対野党候補のみの対立選挙となるのである。興味深いデータがある。今年4月に行われた衆議院山口2区補欠選挙であるが、自民・民主の対決となったが、民主候補が当選している。この選挙の各種出口調査によると、共産党支持層の80%以上が民主党候補に投票しているという。共産党・赤旗は、民主党を第二自民党であると批判し、民主党に政権を渡してはならないとの姿勢を取っているが、共産党支持層はより健康である。自民党への拒否感は強くとも、民主党への拒否感はやや薄まる。自民党よりはましという判断である。

<自民に逆風で3%移動すると>
 以下の情報は、宮地健一氏のホームページ(http://www2s.biglobe.ne.jp/~mike/sousenkyosimu.htm)に負っているが、2008年5月5日の中日新聞によると、「自民党支持票の2%が民主党に流れただけで、第一党は民主党に。自民、民主両党が政権をかけて激突する次期衆院選の各党獲得予想議席が、白鳥令・国際教養大教授のシミュレーションで明らかになった。自民党に逆風が吹き、さらに、小選挙区での候補者擁立を絞り込んだ共産党支持票が動くとどうなるのか。白鳥教授のシミュレーションを基に分析した。
 議席予想によると自民党は前回獲得の296議席を大幅に下回る230議席にとどまり、逆に民主党は前回113議席から、190に大幅に躍進する。・・・都市部での落ち込みが激しい。
ただ、福田内閣の不人気が続けば、予想議席は自民党にさらに厳しいものになる。仮に、自民党支持票の1%が民主党に流れると、両党の獲得予想議席は自民206、民主207に、2%なら自民205、民主217と逆転する。・・・自民党は公明党の議席を加えても過半数を割る。3%なら民主党はさらに優位に立つ。」と
これは今年5月の分析だが、自民党にはより以上の厳しい逆風が吹いている。ここに、共産党支持層の票が民主党に流れた場合どうなるか。
「 共産党が候補者を立てない選挙区で、もし同党支持票の30%が民主党候補に流れた場合、自民党は当初の予測から9議席減の221議席となり、逆に民主党は204議席と、10議席増える。また、民主党に流れる共産票が50%に増えた場合、自民217、民主208と、両党はさらに接近する。これに、自民党から民主党への票の流れが加わると、自民党にはさらに不利な展開に。共産票から30%、自民党から1%が民主党に流れれば、同党は第一党になり、民主党に流れる票が共産党から50%、自民党から3%になれば、民主党の予想議席は238に達し、184議席の自民党を突き放す。」と。
シュミレーションであるが、現在の状況は、この結果とあまり変わらないのではないだろうか。麻生政権が、安易に解散を行えない事情がよく分かる。
 
<オバマ大統領誕生と日本の政治>
 さらに、アメリカでは、11月4日に大統領選挙が行われる。民主党オバマ氏が、アメリカ史上初の黒人大統領となる可能性が高い。泥沼のイラク戦争・金融資本主義の破綻は共和党への逆風であり、アメリカ国民は変革の時を迎えようとしているのである。そしてオバマ大統領誕生の余波は、大きく日本にも及んでくるはずである。
 現在最短の解散総選挙日程でも18日公示・11月30日投票となる。すでにアメリカで政権交代が起こった後ということになる。アメリカの政権交代が現実のものとなった後の日本の総選挙ともなれば、一層風向きは民主党に向くことになるだろう。ブッシュ=共和党=新自由主義から、オバマ=民主党=修正資本主義という大きな変化の後だ。すでに、アメリカ国民自身が、金融安定化法提案に「カネ持ち救済だ」と反発し、共和党下院議員も反対に回らざるをえなかった。アメリカ国内においても、金融資本主義・新自由主義に対して批判が高まっていることを示したのである。
 ただ、来るべき日本の政権交代において政権政党が入れ替わっても基本政策が強弱程度の違いだけでは意味がない。民主党内の「社会民主主義」的部分の奮起によって、市場原理主義・新自由主義との決別を実現しなければならないのである。(H)

 【出典】 アサート No.371 2008年10月25日

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【コラム】ひとりごと–金融危機の第二幕は景気急降下–

【コラム】ひとりごと–金融危機の第二幕は景気急降下–

○アメリカ発の金融危機は、欧州・アジア・日本に波及した。金融資本主義・市場原理主義が揺らぎどころか、完膚なきまでに敗北したと認識すべきだろう。○アメリカ・欧州の各国政府は、相次いで巨額の公的資金を金融機関・証券会社・保険会社に投入せざるをえなかった。「市場」から調達することは不可能となり、「市場」に任せていては、金融システムの破綻から企業の倒産、国民の資産が紙くずとなることは確実であったろう。○アメリカは、金融・証券・保険などの金融機関を「国有化」した。まさに「社会主義化」である。○最悪のシナリオが回避されたかどうか、疑問は残るが、金融機関の破綻の底は見えたというところであろうか。○もちろん、75兆円の不良債権買取負担が、ただでさえ財政赤字・貿易赤字という巨大な双子の赤字を抱えるアメリカにとって、如何に巨額であるかは言うまでもない。打つ手はドル紙幣の増刷と米国債の大量発行しか手段はない。○しかし問題は、買い手があるかどうか。○米国債の入札が不調に陥る事態ともなれば、国債の暴落、そしてドル価値の暴落、という世界恐慌シナリオが現実化する可能性も取りざたされ始めている。○産油国のドル・ペッグ維持も限界に来ているらしい。さらに、原油価格の「暴落」は、原油高騰で潤ってきた産油国の財政に大きな影響を与え始めているのである。○そして大量の米国債を保有する日本である。日米協調どころか、アメリカの属国のごとくアメリカに円を還流させてきた。アメリカとの関係を清算しアジアでの政治的・経済的協調関係にこそ軸足を移す絶好の契機であると言えるのではないか。○そういう意味でも、政権交代による国家基本政策の変更が求められているのであるが。○話がそれたが、重要な事は今回の金融危機が、いよいよ日本経済を徐々に直撃し始めていることだ。2008年6月以降前年比10%を越える企業倒産が起こっている。信用収縮・貸し渋りにより黒字企業でも倒産する事態が続出している。景気の先行指数と言われる機械受注も7月から3ヶ月連続で前年比で減少している。○輸出関連では、自動車など対アメリカへの輸出に大きく依存してきたが、金融不安からアメリカでの自動車販売が低迷している影響は大きい。原油高騰もあって、2008年8月の貿易収支は26年ぶりの赤字となっている。○国内でも、2008年6月以降、時間外労働が前年比で低下し、有効求人倍率も2007年12月以降1を切り、7月以降は0.9を割り込み、8月は、0.86まで落ち込み、企業活動が低下の傾向を示している。○一方で、消費者物価は、長期に渡るデフレ・物価の下降傾向から、2008年6月以降は、前年比2.4%の上昇となった。原油・国際商品市況の上昇が物価を押し上げ始めている。○今後は、金融不安が安定化へ向かう事が確実にならない限り、サブプライムで自己資本を毀損した日本の金融機関も不良債権切り離し、貸し渋りの傾向を一層強めるだろう。不動産価格の低迷・住宅・マンション販売の不振により住宅・建設業界は、厳しい状況となるのは確実である。○黒字倒産はもとより、消費の低迷、輸出の縮小、貸し渋りにより、企業倒産は今後一層増加するのは確実であろう。○そして、そのしわ寄せは、労働者へ転嫁されることになる。今年に入って、少なくとも上場企業45社が約5千人の退職募集に踏み切ったと報道されている。今後さらに広がると見られている。○派遣・非正規労働者の就労機会が、すでに縮小していると言われており、失業者の増大は確実である。大企業の組織労働者も決っして安心していられない。失業と貧困の2009年が近づいてきているのである。闘う以外に道は残されていない。(2008-10-19佐野秀夫)

 【出典】 アサート No.371 2008年10月25日

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【投稿】自公政権打倒への政権交代

【投稿】自公政権打倒への政権交代

<<政治の劣化・疲弊・腐敗現象>>
 自公政権は、あろうことか二年も続けて現首相が突如政権を投げ出すと言う、統治能力はおろか、もはや自らの自己管理能力さえもたない、あきれ果てた無責任きわまる実態をさらけ出してしまった。これは二世議員の幼稚さ、世間知らずのお坊ちゃま気質といった程度の問題では片付けられない、政治の劣化・疲弊・腐敗現象そのものの現われと言えよう。
 9/1に福田首相は政権を投げ出し、9/10に自民党の総裁選を告示、それから12日間もの空疎で無内容な5人の候補者の全国行脚を演出、マスコミ・テレビはこれを垂れ流し続けた。NHKなどは、自民党広報局に成り代わったかと思えるような特別番組編成まであえて行うに至った。しかし五人の候補者は、いずれも小泉内閣の閣僚であったことからして当然なのであろうが、「市場原理主義・小さな政府・規制緩和・公的福祉予算の削減」という路線ではほとんど変わらず、差がない。石原候補と小池候補は純粋小泉路線の継続を訴える、石破候補の独自性は、軍事オタク丸出しの自衛隊海外派兵路線だけ。与謝野候補は、財務省の代弁者として財政危機を煽り立て増税路線を説く。本命の麻生候補は景気回復が当面の最大の課題だと訴えてはいるが、小泉路線こそが現在の日本社会の劣化と格差の拡大、自由放任・無責任主義の蔓延をもたらしたことをまるで自覚していない。「パートや派遣社員が増えたので、正規社員との所得格差は拡大したけれど、失業者がその分だけ減っているとすれば、社会全体としての格差は縮小したという面もあるのではないだろうか。」などと著書・『とてつもない日本』(新潮新書)で述べるお気軽さである。さらに麻生氏そのものが差別発言を日常茶飯事とする常習者であり、格差拡大の一方の富める家系の代表として、選挙演説で「下々の皆さん」と平然と言ってのけた人物である。これほど低劣な候補者しかそろえられなかったところにこそ、現在の自民党の疲弊し、腐敗した真の姿があるともいえよう。

<<麻生太郎氏の差別発言>>
 東京新聞2008年9月15日付け朝刊で、政治学者で北海道大学教授の山口二郎氏が、「総裁の資格」と題して、以下のように書いている。

 「自民党総裁選挙が始まったが、麻生太郎氏が大きくリードしていると新聞は伝えている。私は麻生太郎という政治家を基本的に信用していない。理由は以下の通りである。
 魚住昭氏が書いた『野中広務 差別と権力』(講談社刊)という本の中で、麻生氏が野中氏について、被差別部落出身者を総理にするわけにはいかないと自民党河野派の会合で発言したこと、その後、引退直前の最後の総務会で野中氏自身が麻生氏の面前でこのことを暴露し、厳しく糾弾した。ことが書かれている。先月末、野中氏がTBSの番組に出演し、麻生氏を批判したことには、こうした背景があると思われる。
 発言が事実なら、麻生氏は総裁失格どころか、政治家失格、人間失格である。差別を是認する者は、公的世界から即刻退くべきである。事実無根ならば、麻生氏はきちんとそのことを訴えるべきである。決して曖昧にできる話ではない。
 メディアにもひとこと言いたい。一国の最高指導者になろうとする政治家について、その言動をチェックし、適格性を吟味することは、メディアの使命である。
 アメリカのメディアは大統領候補について、そうした厳しいチェックを行っている。これだけ重大なことが本に書かれていながら、なぜ日本のメディアは何も伝えないのか。」

 この山口二郎氏の指摘は非常に重要なことである。これは決して曖昧にできる話ではないし、メディアも言動をチェックすればすぐ分かることであるにもかかわらず、なぜ日本のメディアは何も伝えないのか、重大な問題提起といえよう。
野中氏本人は、山口氏が指摘しているように、今年の8月24日放映のTBS番組『時事放談』で、「私は、私個人のことについてもですね、麻生総理総裁が出来たらね、自分の生命にかけて、国民に分かるようにしますよ」と発言している。麻生氏が野中氏に対して明確に釈明なり、謝罪できないのであれば、総理総裁どころか、議員としての資格さえないといえよう。
そんな麻生氏であるが、「政権禅譲密約」、出来レースの締めくくりとして、9/22の投票で麻生総裁を決定。9/24に首班指名と組閣、臨時国会冒頭の所信表明と選挙向けのばら撒き補正予算を提示。そして、麻生人気が衰えない内に、麻生氏の差別体質と放言癖の馬脚が現われ、賞味期限切れにならない内に、まだ支持率の回復とご祝儀相場が期待できる内に衆議院の解散・総選挙になだれ込む、これが腐りきった自公政権の意図するところであろう。実に一ヶ月近くの、解散・総選挙まで含めれば二ヶ月近くの政治的空白が浪費されようとしている。

<<ブッシュの右往左往>>
 この間9/9には、くすぶり続けていた米住宅金融2社(政府系住宅金融の連邦住宅抵当公庫・ファニーメイと、連邦住宅貸付抵当公社・フレディマック)の破綻回避と救済に向けた2000億ドル(約21兆6000億円)もの公的資金注入が明らかにされ、バブル破綻の巨大な悪影響がますます懸念されることが明らかになった。住宅ローン債権を元にした両社関連の証券は各国の金融機関や中央銀行などが約1兆6000億ドル(約170兆円)も保有しており、日本の金融機関の購入額も約14兆円に上っており、政府・日銀でも8兆円分保有している。両社の破綻は直接的な、日本も含めた世界的な金融危機の連鎖を引き起こし、ドル暴落の引き金にもなりかねない事態であった。
同じ9/9に、米大手証券リーマン・ブラザーズ株は45%も急落、9/11には同社の株は3ドル台に暴落、9/15にはついに破産申請に追い込まれ、清算手続きに入った。負債は六十兆円に上り、アメリカ史上最大の企業倒産である。そして同じ9/15にはリーマン同様にサブプライム問題関連の損失拡大に苦しむ米証券大手メリルリンチが米銀大手バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)に買収、合併されることが明らになった。同日、これによってバンカメ株は上がるどころか、逆に21%も値下がりしている。たった一日で米四大投資銀行の内、二つが消えてしまったのである。さらに同じ9/15、世界最大の保険会社AIG株が61%も下落、翌9/16には、ついにAIGの破綻が明らかとなり、リーマンを見放した米連邦準備制度理事会(FRB)は、AIGについては総額850億ドル(約8兆8千億円)の公的資金を緊急融資し、同社の株式の8割を購入する権利を取得し、事実上の国有化に踏み切らざるを得なくなった。アメリカ発のマネーゲーム野放しの自由競争原理主義が招いた金融恐慌という事態に全世界は直面しているのだと言えよう。
9/17のニューヨーク株式市場は、前日比449.36ドル安の1万0609.66ドルと急落、全世界の株式市場は全面株安とドル売りが席巻する事態となった。
9/19、ブッシュ大統領は声明を読み上げ、「米国経済は前例のない困難に直面しており、我々は前例のない手段で対応する」と強調、まさに「前門の金融危機、後門のドル暴落」という事態に、ブッシュ政権にとっては場当たり的対応、右往左往の連続であった。問題はこれで終わらず、これからさらに厳しい事態が、金融恐慌から本格的な経済恐慌へと深化していく危険性が高まっている。米大統領選で巻き返しに成功したと言われていたマケイン陣営は、こうした事態の進展に一気に苦戦に追い込まれている。

<<政策転換の基軸>>
 ところがこの間の日本は、福田政権であれば当然なのでもあろうが、政権投げ出しに引き続く政治的空白の連続によって、こうした世界恐慌の様相を帯びる事態をただ手をこまねき、傍観し、何ら有効な政策的決定も打ち出しえない、世界の投機マネーのなすがままに放置されている状態が継続している。
 今、日本政府がなすべきは、これまでの小泉路線、「市場原理主義・規制緩和・小さな政府・社会福祉削減」路線を排し、投機マネーへの課税強化と市場の民主的規制に踏み出すことである。そして、庶民減税と累進課税の強化、不正規雇用の全面的規制と最低賃金の大幅引き上げ、福祉重視と社会資本の充実、環境保護と農業保護、危険な原発廃止と自然エネルギー重視の政策へと政策軸を大きく転換することこそが必要であろう。もちろんそれらの前提条件として、アメリカの戦争政策追随を拒否し、軍事予算増大、自衛隊の海外派兵、ミサイル防衛網の構築など有害無益な垂れ流し政策をストップさせることが必要である。
一部富裕層のみが豊かになり、社会の貧困化がよりいっそう進展し、格差がよりいっそう拡大する自由競争原理主義が、政治的にも経済的にも明確に破綻した今日、圧倒的多数を占める庶民の経済的社会的地位の向上をもってこそ、社会の底力が強化され、景気回復の最大の原動力となることを肝に銘ずべきであろう。その意味でこそ「国民生活が第一」(民主党の選挙スローガン)でなければならないし、自公政権に対置すべき政策を具体的に明示すべきであろう。
政権交代は、このような政策転換に一歩でも二歩でも近づき、その成果が有権者に還元されるものでなければならない。ましてや、政権交代がそのような政策転換をうやむやにさせてしまう「大連立」などの踏み台にされるようなことがあってはならない。
解散・総選挙の日程がいよいよ固まり、自公政権を妥当する最大のチャンスが到来している今日、野党の対置すべき政策、結束こそが試されている。
(生駒 敬)

 【出典】 アサート No.370 2008年9月27日

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【投稿】原発の耐震設計を根底から“揺るがす”「変動地形学」

【投稿】原発の耐震設計を根底から“揺るがす”「変動地形学」
                              福井 杉本達也

1.“どんどん伸びる”?原発の想定する活断層
 昨年7月16日に東京電力柏崎刈羽原発を襲った新潟中越沖地震以降、国も電力事業者も思考停止状態にある。柏崎刈羽原発の目の前、国も東電もこれまで活断層はないといってきた領域で想定を遙かに上回る地震が起こったためである。東電は、2003年に中越沖地震の震源断層と思われるF-B断層を約23kmと確認しながら、中越沖地震後5ヶ月近くも沈黙し、12月にようやく明らかにした。調査では、中越沖地震の震源断層の延長は2003年時点の調査で20km、2007年12月の発表で23km、2008年3月の発表では30kmに、さらに、4月28日の発表では34kmへとどんどん伸びてきている。東電調査を元に、さらに石橋克彦神戸大名誉教授は佐渡海盆東縁断層として50kmの延長があるとし、マグニチュード7.6~7.8程度の地震を引き起こす恐れがあるとしている(福井:2008.5.20)。
 活断層の長さが伸びると何が困るかといえば、原発が想定する地震動が大きくなるからである。松田時彦氏が地震断層の長さと断層変位量の関係を式にしているが、地震の規模と震源断層の長さには相関がある。変動地形学の中田高広島工大教授らが2001年に過小評価を指摘した、島根原発の南を走る鹿島断層を、中国電力はこれまでの10kmから22kmに変更し、島根原発の安全基準を456ガルから600ガルに引き上げている(朝日:2008.3.20)。
 一連の活断層延長の発表は、2008年3月31日の電気事業各社による原発の耐震安全性調査結果報告書(耐震バックチェック報告)の一斉提出による。調査は新耐震指針に照らした耐震安全性評価のためであるが、報告で調査方法について「敷地周辺、敷地近傍、敷地の地形、地質、地質構造について、設置許可申請以降の文献を調査するとともに、陸域については、変動地形学的知見を反映して地表地質調査、ボーリング調査、トレンチ調査等を実施しました。」(もんじゅ耐震安全性評価結果報告書概要等)とわざわざ「変動地形学」にふれている。これが、活断層の“大量発見”につながっている(そもそも“F-B”断層などというのは名前もなかったので新たにつけられたものである)。しかし、原子力保安院は電気事業者の報告だけでは信用できず、独自に、中越沖のほか、福井県沖、福島県沖の海域断層調査を始めた(福井:2008.3.20)。

2.もんじゅ・美浜原発炉心直下に活断層
 福井県内の各原発の耐震安全性調査についても、中田高氏や渡辺満久東洋大教授に活断層と指摘された浦底断層が敷地内を走る日本原電敦賀原発は、断層をこれまでの3.6kmから10kmに変更し、浦底-池河内断層など3断層を一体評価するとともに、柳ヶ瀬山断層と連動すればマグニチュード6.9の地震を起こす可能性があるとした。原子力機構の高速増殖炉もんじゅでは新たに敷地内地表部で炉心の西530mを通り、炉心直下1kmに向け60度の角度で滑り込む白木―丹生断層(15km)が走り、これと平行した炉心の直下5kmを走る今回新たに発見されたとするC断層(18km)が関電美浜原発の直下4km地点にまで伸びており、南北の海域断層と連携してM6.9の地震を起こすとした。また、関電大飯原発・高浜原発付近の若狭湾では新たにFo―A断層(23km)、Fo―B断層(10km)などの海域断層3本、陸域では26kmの断層1本を新たに確認している(各事業者バックチェック報告、)。いずれもこれまで活断層ではないかと指摘されていたものだが、事業者側は「当時の知見ではわからなかった」「新たに調査した結果」と口をそろえていいわけしている(朝日:2008.4.1)。特にもんじゅでは地震動評価を炉心に最も近い白木―丹生断層ではなく、新たに発見されたC断層で行っており、地震動を耐震設計内に収まるように恣意的に選んでいる疑いが濃厚である。

3.活断層が直下にあることの重大性
 活断層が原発の近くを通ることと直下にあることとは根本的に話が異なる。ところが、原発の耐震指針改定に加わっている大竹政和東北大名誉教授は「重要なのはどれくらいの規模の揺れが起きるかであって、直下に活断層があることがすぐに問題になるわけではない。新手法で調査した結果、新たな活断層がでてきたことは、むしろ評価できる。」(朝日:2008.4.1)との無責任きわまりないコメントを出している。これまで原発は活断層のあるところには造らないといってきたのではないのか。原発が活断層の直上にあるということは、地震規模の揺れによる破壊ではなく、「地盤変位」=断層がずれて切断されるので、いかに耐震設計を強固にしても無意味である。兵庫県南部地震による野島断層の横ずれで、コンクリート塀が折れ曲がり1.4m横ずれした民家が資料館に保存されているが、直上まで断層変位が達すればいかなる構造物も崩壊をまぬかれない。強固な建物ばかりではなく巨大な岩盤自体が崩落した四川大地震の北川県などの例をみても明らかである。

4.変動地形学による活断層評価
 渡辺満久教授は、いつも「変動地形学」を説明するに当たって、変動地形学は東洋大学では理系に分類されるのではなく文系の社会学部に分類されているといくことから始める。地形学は、地形を取り扱う自然地理学の一分野であり、「大地を切り裂く活断層。その活断層のずれが長期間のうちに何回となく繰り返されると、やがて岡や山脈が造り上げられていく。そのさまは大自然の造形美であり、地形学者はそれに魅了されてきた。」(『活断層大地震に備える』鈴木康弘)のである。渡辺氏自身は原発には賛成であり、電力の供給には必要だとの立場をとっている。当初は原発は安全な地層の上に建てられていると思い込んでいたという。ところが、自身で島根原発や敦賀原発、六ヶ所村などの活断層を調査する中で国や電力事業者による原発周辺の活断層調査がいかに杜撰なものであるかを発見してしまったのである。
 これまでの原発の活断層調査が誤っていたのは直線的な崖に注目してリニアメントを決定し、活断層かそうでないかを決めていた。しかし、実際の活断層はそこにはない。ないところでいくらトレンチ調査(地面を掘り下げて調査用の溝の中で地層を観察する)をしても活断層が見つかるはずがないという。川が極端に曲がっている、谷底平野が折れ曲がっているという地形に注目し、そのような場所を連ねて活断層と判読している。その結果、島根原発の鹿島断層や敦賀原発の浦底断層の正確な位置を特定できたのである。また、日本原電は浦底断層ではボーリング調査も行ったが、調査データを自己の都合のよいように恣意的に解釈し、5万年間堆積土が動いていないという結論を出している(断層の上に積もった地層が5万年以上も動いていないからもう活断層ではないという解釈)。しかし、ボーリングで分かることは、ボーリング地点の情報だけであり、ボーリングとボーリングの間の地層は推定しかないのである。活断層は地下調査や地下探査で必ずしも「見える」とは限らない。調査のために「掘ることのできる範囲」も限られており、断層通過地点だけ見ていても見逃すことがあり、その周辺を含めた「広域的な変位・変形」も検討対象とすべきあるとし、谷底や段丘の変形、海成段丘面の局所的な変形など幅10m~数十kmにわたる緩やかな撓み(六ヶ所村のケース)なども検討すべきだとしている。
 電力事業者や国では、これまで、断層面が「見えた」かどうかが重視され、見えない場合には「活断層はない」と判断されてきたが、地層が「狭い範囲に急激に撓みこんでいる」などの「地下深部に断層運動を想定しなければ物理的に説明し得ない現象」を見逃さないことである(雑誌『科学』2008.1 鈴木康弘・中田高・渡辺満久:「原発耐震安全審査における活断層評価の根本問題」、渡辺満久:「活断層見逃しの現場を見る」資料 2008.6.10 原子力資料情報室)。炉心直下に活断層の見つかったもんじゅなどは「当時の審査としては妥当」などという寝言を言っている暇はない。活断層が動き、MOX燃料を炉心に抱え・放射能を浴びた液体ナトリウム配管が複雑に絡み合う構造物を切り裂くこととなったらどうするのか。国・原子力機構は、来年2月の運転再開に向けて、規準地震動Ss―DHを評価結果に収まるような姑息な画策をするのではなく、過去の活断層評価の誤りを真摯に反省し、真剣に廃炉に向けた準備を進めるべきである。福井県も「エネルギー拠点化計画」などという戯れ言を何年も言い続けているのではなく、住民の安全のために廃炉を国に真剣に求めるべきである。

 【出典】 アサート No.370 2008年9月27日

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【投稿】底知れぬ金融不安–米政府の綱渡り続くが–

【投稿】底知れぬ金融不安–米政府の綱渡り続くが–

 先週の1週間は、サブプライムローン問題に端を発する経済不安が、金融システムそのものの機能停止の瀬戸際まで危機が現実化したという意味において、新たな段階に進んだと位置づけられる出来事の連続だった。
 この影響は、アメリカに止まらず欧米、アジアなど世界的規模に及んでいる。正に戦後最大のバブル崩壊の底深さを示したものと言えよう。
 2007年8月に表面化したサブプライム問題だったが、最初は、デフォルト(債務不履行)となった住宅ローン証券化商品の価値が減価し、これを購入していた投資銀行、証券会社、銀行などが決算期に巨額の引当金を計上することにより、大幅な減益決算などを余儀なくされた。これに先立ち、アメリカでは住宅バブルの崩壊が始まり、住宅価格の値崩れは、価格上昇を前提として組まれていた高金利高リスクのサブプライムローンの焦げ付き、新規住宅購入・建設の低迷から一層の住宅価格の下落が進むことになった。
 破綻の連鎖は、続いて、住宅ローンの保証会社であるモノラインの破綻の危機となって現れた。2008年3月には投資銀行であるベア・スターンズが経営危機に陥ったが、モルガン・スタンレイが買収することで、一旦危機は収まったかに見えた。
 また、中東やシンガポール、中国などの政府系投資機関が、自己資本不足に陥ったアメリカの証券・投資会社の増資要請に応じたことで、経営危機そのものについては、一息ついたと思われた時期もあった。この間、FRBは、一貫して従来のドル高路線を放棄し、5%を越えていた金利を2%まで引き下げてきた。さらに、住宅バブルの崩壊から個人消費が低迷し、景気減速を恐れたブッシュは、7兆円を越える所得税減税を実施したが、個人消費の減少を短期間止めることしかできなかった。四半期決算毎に、アメリカの金融機関は、デフォルトに伴う赤字予想を引き上げざるを得なかったのである。
 7月には、政府系住宅金融公社2社において、住宅ローンの焦げ付きの影響により、株価が45%下落し経営危機に陥った。同社が保障しているローン残高は、5.2兆ドルであって、同社の発行する債権は、世界各国の中央銀行も所有しており、これが破綻すれば、世界的な金融破綻の可能性があった。アメリカ政府は、急遽公的資金の投入を含めて資本増強する事を決定したが、市場の動揺はさらに深まることになった。(9月には、2社を政府管理することを決定)
 そして、先週1週間の出来事である。前週の末からリーマン身売りのニュースが溢れ、韓国政府系金融機関などの買収も囁かれていた。しかし、リーマンは、投資会社の中でも、飛びぬけてリスク性資産を抱えていたため、アメリカ政府にも見放され、民事再生・倒産を余儀なくされた。負債総額は6000億ドルを越える。
 さらに、同じ投資会社のメリル・リンチは、バンク・オブ・アメリカにおよそ500億ドルで事実上救済合併されることとなった。こうして、アメリカの主要投資会社は、モルガン・スタンレーとゴールドマン・サックスを除いて、退場となった。投資会社は預金機能を持たないため、資産が減価し、資金供給が弱まれば忽ち窮地に立つことになる。先週は、不安の連鎖のため実際の銀行間の貸出金利(短期市場金利)が7%を越える事態となったという。
 さらに、先週アメリカ最大の保険会社AIGも、巨額のリスク性資産保障を負っているとして、株価が急落、経営危機に陥ったが、こちらは影響が多くの国民に及ぶとして、アメリカ政府が850億ドルのつなぎ融資を決定して、破綻を一旦免れることとなった。
 ドル資金が減少するという事態を受け、アメリカ・日本などの6つの中央銀行が協調してドル資金総額36兆円を市場に供給する事を決定。さらにアメリカ政府は、不良資産を公的資金で買い取る法案を議会に提案した。総額75兆円と言われる。さらに個人資産である投信型MMFの保障、株式の空売り規制を打ち出している。
 このように、先週1週間の出来事は、アメリカ発の金融破綻が、新たな段階に至ったと言えるのではないか。金融機関・企業間に疑心暗鬼が蔓延し、短期市場金利が急上昇するなど、信用収縮が起こっているのである。経営悪化した企業に資金が供給されないとなると破綻企業は一層増加する。すでにアメリカ地銀は昨年4行が破綻、今年になって12行が破綻しているのである。(200行近い地銀が破綻する予想もある)
 モラル・ハザード論など言ってはいられないほど、アメリカの金融不安は深刻である。公的資金の投入なくして危機の回避は不可能となっている。「市場がすべて」のアメリカ・スタンダードがこの有様である。対岸の火事ではない。市場原理主義・新自由主義の行き着く先をしっかり見つめる必要あるのではないか。(佐野秀夫)

 【出典】 アサート No.370 2008年9月27日

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【本の紹介】「閉塞経済—金融資本主義のゆくえ」 金子勝著

【本の紹介】「閉塞経済—金融資本主義のゆくえ」 金子勝著 ちくま新書

 泥沼の金融不安が9月15日アメリカと世界の金融界を覆った。アメリカ第3位の証券会社リーマン・ブラザーズが倒産したからである。サブプライムローン問題を発端にした金融不安は、アメリカの投資会社・証券会社・銀行・保険会社が次々に破綻の危機に瀕する事態となっている。動揺を繰り返す金融資本主義はどこへ行くのか、金融資本主義を分析するためにどのような経済学が必要なのか、それを明らかにしようとしたものが、本書「閉塞経済–金融資本主義のゆくえ」である。
 
<バブルを繰り返すアメリカ経済>
 著者は、1970年代の通貨の変動相場制移行と1980年代の為替取引の自由化によって、商業資本主義・産業資本主義の時代から、金融資本主義の段階に移行し、カネがカネを生む構造、バブルの生成と崩壊・破綻を繰り返すことこそ現代資本主義を特徴づけるものであるとされる。
 1997年の東アジア通貨危機、98年のLTCMの経営破綻、2000年末のITバブル崩壊、2001年9・11テロそしてイラク戦争と、金融市場が危機に陥ろうする度に、金利の引き下げ、国際協調による通貨供給が行われてきたため、世界には「膨張した投機マネー」が溢れた。行き場を失った金が、利益を求めて次々と投資先を求め、新たな金融商品が作りだされた。今回のアメリカにおける金融不安も、住宅バブルの破綻と、ローン証券化商品価値の大幅な毀損が発端となっている。
 著者は、こうしたバブルの生成と破綻を正面に据えた経済学がほとんど存在しないと指摘する。バブルは特別の出来事であり、「個別の金融政策や財政政策に原因を求めるという通常の経済学の説明では、起こっている事態をうまく説明できなくなってしまう」と指摘する。「ほとんどの経済学者は『変動相場制は、為替が自由な取引になるから、資本の配分の効率性を高めて、金融制度が効率化していく』と説明し」ている。「市場は万能の神」というが、「その根本テーゼそのものが、バブルとバブル崩壊を作りだす元凶になっている」と。
 1970年代以降は、先進資本主義国における成長率の鈍化もあり、余ったカネは行き場を失い、高利益を求め「過剰流動性」となって、土地、株式、石油や穀物まで、先物相場などへ流れ込んでは逃げ出して、バブルを繰り返しているのである。
 
<金融緩和政策がバブルを生み出す>
 著者は、バブルとバブル崩壊を繰り返す原因について、以下のように説明する。
 第1要因としての、石油ショック以後の投資機会不足、第2要因として変動相場制への移行があり、アメリカの双子の赤字を背景にしたドル還流策としての為替取引の自由化・金融の自由化が第3の要因。そして、バブル危機の度の金融緩和・低金利政策が第4の要因であると。
 「変動相場制と金融自由化が進んだもとでは、金融緩和政策はバブルを作る政策となり、バブルが崩壊すれば、また金融緩和政策をせざるを得なくなるというように、バブル病を進行させる役割を果たすようになってしまいます。」
 さらに今回のサブプライム問題では、ローン証券化商品により「リスク分散」が出来るという「金融革新」策の破綻が問題を深刻化させています。1998年のLTCMの破綻の前には、ヘッジファンドのレバレッジの手法が編み出され、いずれも「リスクを回避しつつ、資金を効率的に運用していく」という手法である。
 しかし著者は、「問題は、本来はリスクを回避するためにあった金融革新が、逆にリスクを深めてしまう点にあります」として「高度な数学を駆使する『金融工学』は、個別の金融商品の設計はできても、金融市場全体のリスクを管理することはできなかったのです。そして、金融革新の手段がかえって金融危機を深めてしまった」と指摘する。
 
<「影の銀行システム」の崩壊>
 さらに、今回のサブプライム問題で明らかになった事は、住宅ローン担保証券やそれを組み合わせたCDOが、「影の銀行システム」で取引されていた点であると、著者は指摘する。すなわち、銀行や証券会社本体ではなく、SIV(資産運用会社)やヘッジファンド間などで取引されていた事であり、「市場の外」で行われていたのである。アメリカの銀行は、連結決算の対象とならないファンドとの証券取引で収益を上げていたといわれ、この取引は、自己資本比率が適用されない。FRBの規制やSECの監督規制も及ばない。「まさに金融革新の先端にあった『影の銀行システム』が崩壊の危機に瀕している」のだと。
 また、今回の金融危機が、クレジットバブルと住宅バブルの崩壊が同時に起きている点についても、過去のLCTM問題、ITバブル崩壊と違って、信用と実態経済の両面が相互作用・連鎖して悪循環に至る危険性を指摘されている。まさに戦後最大の危機(バブル崩壊)と言えるのである。
 
<構造改革の経済学>
 第2章構造改革の経済学では、石油ショック以来長期経済停滞の局面で、日本の場合はバブルとバブル崩壊、不良債権処理問題になりますが、長期の経済停滞やバブルに対処する議論において、「供給サイド」か「需要サイド」なのか、という議論が繰返し行われたが余り意味を持たず、状況の変化に対応出来てこなかったこと、そして小泉構造改革路線の評価を通じて、求められる政策方向が示されている。
 90年代以降の長期停滞に対して「経済学者の間では、供給サイドの政策をやるのか需要サイドの政策をやるのか、どちらで長期の不況を脱するのかということが絶えず議論されてきた。・・・しかしどちらの政策をとっても、日本経済の先行きはなかなか見えないという状況は深まるばかりでした。従来の経済学ではそれ以外の選択肢はなくアクセルを踏みながらブレーキを踏むというような混迷ぶり」だった」と著者は言う。
 「では、効果的な政策とはどういうものか。まず、本丸の不良債権処理をきちんとおこなうと同時に、財政政策、金融政策を補助的な政策として使うという組み合わせでなければならなかったのです。」しかし、こうしたことは経済学の教科書には書かれていないと著者は言います。「主流派経済学にとって、あくまでもバブルは例外的事態にすぎないからです。」

<「構造改革」は何をもたらしたか>
 金融の自由化・規制緩和が進めば成長すると主張する構造改革論者は「経済が成長したのは規制緩和のおかげで、停滞するのは、規制緩和や民営化が足りない」という呪文のような主張を繰り返し、橋本「構造改革」以来、小泉内閣まで10年余り、「構造改革」が何をもたらしたか、を著者は明らかにしている。
 スイスの国際経営開発研究所の国際競争力ランキングでは、1996年の4位から2007年には24位に転落するなど、「構造改革」が、国際的競争力を高めていない事実。大きな政府であっても競争力を維持している北欧のケースなど、構造改革の10年が「新しい成長分野をほとんど生まなかった事実を厳粛に受け止めなければならない」と。
 さらに、2001年3月末には380兆円だった普通国債残高は、2006年9月には670兆円に膨れあがるなど、「構造改革」路線は財政再建も実現できなかったのが事実であること。
 膨大な国債発行に依存する以上、低金利政策を維持する他はなく、円安誘導による輸出増によってもたらされたのが「いざなぎを越えた」といわれる「長期の景気上昇」の正体であり、雇用の流動化策・非正規労働者の増加で、企業は潤い、労働者国民には格差を一層拡大させてきたのである。
 規制緩和と民営化、小さな政府路線ではなく、新たな成長戦略が求められていると著者は語り、とくに教育投資と環境エネルギー対策の重要性を指摘されている。
 
 第3章格差とインセンティブの経済学においては、医療・介護・年金問題などインセンティブに基づく格差政策への批判が行われている。
 このように、金融自由化を推し進めてきたアメリカ自身が戦後最大の経済危機を迎えている現在において、本書は、金融資本主義の閉塞状況を明らかにするとともに、変化に対応した経済学が求められているとの立場からの問題提起の書となっている。(2008-09-21佐野秀夫)

 【出典】 アサート No.370 2008年9月27日

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【コラム】ひとりごと–総選挙で自公過半数割れを!–

【コラム】ひとりごと–総選挙で自公過半数割れを!–

○9月22日の夜、友人と軽い夕食で駅前のラーメン屋に出掛けた。そこへ新たな客の中年男女が入ってきて、女性の方が店主に名刺を差し出し挨拶している。今度は私の所にも来て、名刺を出して「事務所を開設しましたので」という。地元選挙区の自民党候補の妻だったらしい。他にやる事はないのだろうと思ったのだが。○9月23日の朝、我が家の電話が鳴った。相手はANNリサーチセンターからと告げる録音による女性の声だった。「2・3分で終わりますので、アンケートに協力してください」と言う。○総選挙がらみのリサーチであった。質問は4つ。支持政党はあるか・ないか。どの政党を支持しているか。総選挙では、どの政党候補に投票するか。衆議院選挙の投票には行くか、どうか。○電話のプッシュダイヤルを押すだけの、妙に無機質な応答であった。すべて民主党と答えておいた。○自民党、民主党とも選挙の顔である総裁・代表も決まり、いよいよ、解散を待つばかりとなり、上述のように、いろいろ騒がしくなってきた。○10月14日告示26日投票が有力とされているので、あと1ヶ月ということ。○自民党は、政治ショーよろしく、総裁選挙を繰り広げたが、国民の反応は冷ややかであった。公明党の定額減税提案などを受け入れ、財政出動も辞さずとの拡大路線の麻生太郎の当選が確実しされていたからであり、2度続けての首相辞任による総裁選に、かつての小泉旋風のような盛り上がりを期待すべきもない。総選挙なしに3人の首相が入れ替わるということ自体、国民をバカにした対応であり、政治家・政党としての潔さが全く感じられない。○来る総選挙で注目されているのは、自民党議員が何人落選するかである。○サンデー毎日は、90議席を越える落選・減少を予測していたが、単独過半数割れに止まらず、自公で過半数割れも予想されるのではないか。○年金問題、高齢者医療、医師不足の医療問題などに応えることなく、加えてアメリカ発の世界的金融不安が日本の実態経済にも深刻な影響を与え始めたこの時期に「勝手に政権を投げ出し」ての総選挙である。与党に風が吹くはずがない。○バラマキ公約にも、国民は反応薄である。○与党がそんな状況であるから、政策の是非、財源議論などはあって然るべきだが、政権交代をしても良いのではないか、という空気がひたひたと広がっている。○まだ、民主党の選挙政策は、文書として示されていないが、昨年の参議院選挙政策をベースにした「生活が第一」という、格差社会の見直し・こども手当などの生活重視の政策になるだろう。それで十分だ。○憲法問題も、テロ対策も自民党自身が、自信をなくして争点にはできない。選挙前から、政権交代の可能性が十分に有りうる今回の総選挙である。圧倒的に、自民・公明を落選させ、野党中心の政権を作るため、総選挙闘争に突入だ!(佐野)

 【出典】 アサート No.370 2008年9月27日

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【投稿】近づく自・公連立政権の終焉

【投稿】近づく自・公連立政権の終焉

<<きしみが目立つ自・公連立政権>>
 臨時国会召集をめぐる与野党間、そして与党内の攻防は、いよいよ年内解散・総選挙の様相を現実化し始めている。福田首相は当初、インド洋での給油活動が非常に大事だとして、新テロ給油特措法延長法案の再可決に必要な日程を確保するため、何よりも給油一時停止という昨年の悪夢を避けるため、なんとしても8月下旬には臨時国会を召集する構えであった。しかしその意図はもろくも崩れ去った。
 その第一の原因は、公明党対策に応じざるを得ない、その意向を無視しては政権維持ができないぎりぎりのところに追い込まれているところから来ていると言えよう。
 昨年と同様、参院野党が否決した新テロ給油法延長を、衆議院において再び強行再可決する自民党に同調すれば、公明党は独自性どころか単なる自民党の付属物と化してしまう、「平和の党」の看板は完全に色あせてしまう。本音では同調することを前提としながらも、抵抗する姿勢を示さざるを得ない公明党は、新テロ特措法の延長に慎重姿勢を示し、再可決を前提とした臨時国会の早期召集に反発し、来年夏の東京都議選に全力を傾けるためにも臨時国会は短期で閉会し、来年1月までに衆議院の解散・総選挙を行うように求めたのである。
 さらに公明党にとって厄介な問題は、創価学会を提訴した公明党の矢野絢也元委員長と前公明党参院議員の福本潤一氏が国会喚問に積極的に応じる姿勢を明らかにし、「(国会)招致が実現すれば、私は政治とカネの問題、矢野氏は(学会による)人権侵害の問題を証言することになります」(福本氏)と述べていることである。参議院多数を握る民主党、野党によって、この問題が臨時国会で徹底追及され、政教一致問題から池田大作名誉会長の国会証人喚問にまで事態が発展すれば、公明党・創価学会にとっては死活的な重大な危機に立たされることは間違いない。なんとしてもそうした事態を阻止するために、公明・学会幹部は、喚問つぶしから連立組み換えのゆさぶり、民主党への接近、個別野党との選挙協力の誘い水まで、さまざまな裏工作に必死である。こんなときに臨時国会の早期召集や再可決を前提にした、「参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。」という、衆議院可決必要会期 +「60日ルール」適用の長期国会など呑めるものではない。結局は9/12召集、会期は70日という中途半端な妥協で折り合わざるを得なかった。公明党にとって、自民党との軋轢やきしみが目立とうとも、背に腹は代えられないのである。

<<「何も発信しない総理」>>
 公明党の太田代表は9/21のCS・朝日ニュースターの番組収録で、衆院解散・総選挙の時期について「どのあたりが勝ちうる状況を生み出すのかを考えなくてはいけない。(勝てる)状況をつくることからいくと、年末年始というのは一番最初に出てくる選択肢だ」とわざわざ具体的な時期に言及し、福田政権を解散・総選挙に向けた流れに押し出そうとさえしている。「11月23日総選挙説」が急浮上する火元でもあろう。
 さらに公明党としては、福田首相が「安心実現内閣だ」と胸を張った八月初めの大幅な内閣改造にもかかわらず、実態は「追い込まれ改造」内閣、「短命・消費期限付き」内閣、自民幹部からは「ぐず内閣」の声まで出るほど、政権浮上のリーダーシップも期待できない、無為無策、支持率低下も止められない、だとすれば、総選挙向けのバラマキ経済対策を早急に復活させ、補正予算案など生活に密着した法案に絞り、会期は短く、早期解散への圧力を強めていく、出来れば、福田首相早期退陣-麻生内閣による衆院解散というシナリオまでが期待されている。
そしてこれに呼応するかのように、「総理からも指示された」と、麻生幹事長ら自公与党幹部が8/13に打ち出した補正予算の規模は「1兆円超」だという。内閣改造に際して自民党幹事長に就任した麻生氏は、自らの役割を「景気対策を進めると、確実に財務省とぶつかる。その突破を、柄の悪い麻生にやらせるのが一番となったのだろう」と小泉路線からの転換を公言し、これを支援するかのように森元首相は、8/17の民放番組で、「チマチマ出しても役に立たない」と大型の景気対策を打ち出すよう主張、キングメーカー気取りで「ポスト福田」にも言及し、「『次は麻生さんに』という気持ちは自民党に多く、わたしもそう思っている」とまで明言している。さらにこれを念押しするかのように、麻生幹事長の側近とされる甘利明前経産相(山崎派)が8/18、BS放送の番組収録で「(福田内閣の)支持率が20%を切ったら党内から『態勢立て直しを』という声が出てくる。その時に党内合意が図られるのは麻生幹事長だ」と述べ、総選挙前に麻生政権になるとの見通しまで示している。福田首相と麻生幹事長の「政権禅譲密約」説の火元もこのあたりであろう。
 そして自民党の中川昭一元政調会長が8/23、福田首相の直接批判にまで乗り出した。中川氏は、福田内閣の経済政策に触れて「緊急の非常対策をまず発信すべきだ。何もしていないのは政治の無責任と言わざるを得ない。このままでは日本が沈没しかねない。何も発信しない総理では駄目だ」と首相を批判し、「2兆~3兆円相当の財政出動が必要だ。必要なことは何でもやって難局を乗り切るべきだ」とブチ上げている。

<<「ボロボロと荷崩れ」>>
一方こうした流れに対して、中川秀直・元自民党幹事長は、自らのホームページ上で「首相の明確な経済財政路線に反対する人が執行部にいるとは信じられない」と、麻生幹事長を露骨に批判している。8/24の「中長期ビジョンこそが政党の生命線」という主張では、「いずれにしても、90年代の「失われた10年」となった一時しのぎとなった財政出動によるばらまき政策の繰り返しの愚を犯してはならない。2001年4月からの小泉構造改革によって、足元の景気対策より、中長期の政策として、財政再建の旗を掲げて、不良債権処理を最優先した結果、02年2月からの戦後最長の景気回復が生じたのである。財政出動なしにである。」と主張し、いまだに小泉路線の自由競争原理主義を「構造改革」などと称し、自らのグループの研修会の冒頭でも、「財政再建、改革路線と両立させないといけない」、「改革をあきらめた政党にあすはない」と強調し、自民現執行部や公明党の動きを強く批判している。
しかしこうした小泉路線こそがもたらした膨大な破綻と社会の隅々にまで否定的影響をもたらした自由放任・無責任路線と貧困の蔓延と生活基盤の破壊、格差の拡大、社会保障の破綻について口をぬぐう限りは、 小泉チルドレンと同様、そしてまた福田現政権執行部と同様、政局の動きから取り残された存在と化し、彼ら自身にも「明日はない」と言えよう。
 サンデー毎日(2008年8月24日号)の総選挙予測によると、政党支持率は、自民26.1、民主29.7、公明0.7、共産4.9、社民1.4、国民新1.5、無所属5.4、「まだ決められない」30.3で、すでに民主党の方が自民党より上となっている。「官房長官・町村信孝も元副総裁・山崎拓も津島派会長・津島雄二も現状では当然の見込みがなく、財務相・伊吹文明も楽観できない」、「リードを保つ自民党現職は、広島4区の中川秀直元幹事長やテレビ出演の多い愛知13区の大村秀章氏ぐらい」、「自民党本部内では、『このままいけば8、9割は下野だろう』との不安が消えない。足元の支持組織がボロボロと荷崩れを起こし、次期衆院選に向けた明るい材料が何一つ見当たらないからだ」と指摘されている。「一度も衆院選に負けたことのない小選挙区は95、これを死守した場合、比例代表は60ぐらい。小選挙区、比例代表合計で155議席、ここからどれだけ積み重ねられるか、そういう選挙になる」という。
 週刊朝日(2008年8月22日号)の白鴎大学教授・福岡政行氏の総選挙予測によると、与党の予測獲得議席は、自民189(±13)、公明27(+4、-3)、自公合計216(+17、-15)。野党の予測獲得議席数は、民主226(±17)、共産(+2、-3)、社民7(±2)、国民7(+4、-2)、日本1(+3)、大地1、無所属10(-4)、野党合計264(+15、-17)で、衆院過半数(241議席)を大きく割り込み、自公連立政権は惨敗し、政権を失う、との予測である。
 現在の福田政権の路線の不明確さ、無為無策、他人事のような責任放棄、出しては引っ込める定見のなさ、茫然自失のダッチロール、リーダーシップの不在、こうした福田内閣を特徴付ける事態が続けば、さらに与野党の差は拡大するばかりであろう。自・公連立政権の崩壊と終焉がこれまでにも増して近づいていると言えよう。これは与党側の自壊作用ともいえるが、自壊=政権交代とならない以上、これを確実なものとする野党の対応こそが問われている。
(生駒 敬)

 【出典】 アサート No.369 2008年8月30日

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