【投稿】 小泉「脱原発」発言とエネルギー基本計画

【投稿】小泉「脱原発」発言とエネルギー基本計画
      -日本を舞台にした国際核勢力・脱核勢力の暗闘-
                             福井 杉本達也
                             
1 小泉元首相の「脱原発」発言は財界の意向を汲んだものである
 小泉純一郎元首相が脱原発の考えを持っていることが公になったのは8月26日付けの毎日新聞・山田隆男のコラム「風知草」である。フィンランドの核廃棄物最終処分場「オンカロ」を見学に行った小泉氏は「10万年だよ。300年後に考える(見直す)っていうんだけど、みんな死んでるよ。日本の場合、そもそも捨て場所がない。原発ゼロしかないよ」と述べたという。脱原発派の中には過去の米金融資本に追随し新自由主義的政策を推しすすめた小泉氏の「原発ゼロ」に拒否反応を示す者が少なからずいる。元ヨルダン大使の天木直人氏も「この国の権力構造は原発事故でさえも微動だにしないということだ。小泉脱原発発言がそれを覆せるとでもいうのだろうか」(ブログ:2013.12.17)と小泉氏の脱原発発言には否定的だ。小泉氏は2007年の首相引退後「国際公共政策研究センター」顧問に収まっている。同センターは東京日本橋室町の三井本館内にある。トヨタの奥田碩元経団連会長が各企業を回り設立した財界丸抱えの「隠居所」である。
 小泉氏の脱原発の発言は小泉氏1人の意見ではない。トヨタをはじめとする自動車産業や財界の意向を汲んだ発言である。財界関係には官僚機構に追随せざるを得ない者も多いが、脱原発の方向を持つ者もいる。しかし、現在は表に出るものは少ない。財界人自ら発言するには危険すぎる。国家官僚組織に潰される恐れもある。そこで、小泉氏に言わせているのである。
 しかし、1点気がかりなことがある。小泉氏は「核廃棄物最終処分場」を原発の一番の問題点として取り上げるが、果たしてそうなのか。

2 官僚機構に巣食う危険な核武装論者
 総合資源エネルギー調査会は経産大臣の諮問機関であるが、2013年6月に改正した政令により、身軽な「基本政策分科会」を設け、脱原発派は排除し極少数の人間で原子力政策の基本的な枠組みを全部決めてしまう体制にした。「委員及び臨時委員は、学識経験のある者のうちから、経済産業大臣が任命する。」としている。要するに官僚に都合の良い人選をし、調査会の議論を主導するという意味である。
 日本の官僚機構には外務省・経済産業省・文科省(旧科学技術庁)などを中心に、固い核武装論者が存在する。核武装論者は日本の国民が核で汚染されようが日本国土が崩壊しようがどうでもよいと考えている。これらのグループは米軍産複合体の指令のもとに動いている。
 外務省出身で元外相の川口順子は「高レベル放射性廃棄物の体積を減らし、エネルギー源を確保する観点から、再処理を含めた核燃料サイクルが日本には必要だ」と主張。「日本が再処理をやめたからといって、他国が核武装をやめるとは限らない。すでに世界に存在する核不拡散の枠組みを強化する方がいい」と述べている。総合資源エネルギー調査会委員で京大原子炉実験所教授の山名元は「日本という現実のなかで、オープンサイクル(直接処分)がいいか、クローズドサイクル(再処理)がいいか。もし日本が原子力をやめるなら直接処分を選ぶと思う。だが、再処理は廃棄物管理の意味でも重要だ。使用済み核燃料の保管量を減らすという意味では再処理した方がいい。長期間、地上で保管するロングタームストレージ(中間貯蔵)は究極の解にはなっていない。」として再処理を諦めていない。(朝日新聞デジタル版:2013.12.17)再処理とは核兵器の原料であるプルトニウムを抽出するということである。

3 エネルギー基本計画の「原発は基盤となる重要なベース電源」は核兵器を諦めない・「最終処分場を国が決定する」は核のための強制収用と読む
 総合資源エネルギー調査会基本政策分科会は12月13日、民主党政権の「原発ゼロ」方針を転換し『エネルギー基本計画』に原発は「基盤となる重要なベース電源」と書き込んだ。一旦事故を起こせば国家を崩壊させる原発がどうして「基盤」となるのか。一方、福島原発事故を「真摯に反省する」という言葉だけは書き込んだもの、原因追及を放棄し、ひたすら「再稼働」に邁進するという恐るべき愚鈍である。「核燃料サイクル」は「着実に推進する」とし、「高レベル放射性廃棄物については、国が前面に立って最終処分に向けた取組を進める」と書く。「核燃料サイクル」はプルトニウムを取り出すことであり、「最終処分」はその後始末である。最終処分場が決まらないので、用地を強制収用により確保するという意思である。これはもう福島原発事故の原因追及も事故処理も放棄し、国民を放射能に曝してでも核兵器を追求するという恐るべき国際的・国内的宣戦布告の文書である。
 さらに、基本政策分科会にはおまけが付く。11月28日の会議ではマリア・ファンデルフーフェン IEA事務局長の、又、 12月6日にはチャールズ・エビンジャー米ブルッキングス研究所長の「この案は、リアリズムに立って方向性を示したものと評価できる。」と属国の計画にお墨付きを与えている。ブルッキングス研究所はロックフェラーとカーネギーの資金で設立した軍事シンクタンクである(参照:広瀬隆)。

4 核燃料プールの核爆発で政策を変更した米原子力規制委員会
 軍産複合体以外の勢力はどう考えているのか。米原子力規制委員会(NRC)のアリソン・マクファーレン委員長は「敷地内のプールで使用済み核燃料を保管することは問題が多い。東京電力福島第一原発事故の教訓を踏まえ、米原子力規制委員会(NRC)もプールに水位計をつけるなどの対策を指示した。水がなくてもよい乾式の貯蔵に早期転換するかどうかの評価を行っている。米国では多くの原発が廃炉に向かっている。5基が既に停止された。使用済み燃料をいかに管理するかは、今後ますます重要な問題になってくる。」(朝日新聞デジタル版:2013.12.17)とする。少なくとも使用済み核燃料を燃料プールに保管することの危険性は十分認識し、乾式貯蔵=暫定保管の道を探っている。
 米国の資源・安全保障問題研究所長のゴードン・トンプソンも「六ケ所再処理工場が事故や人為的な攻撃を受けた場合の放射線リスクについて話したい。3カ所の使用済み核燃料貯蔵プールに、セシウム137でそれぞれ500京ベクレルの放射能が含まれる。タンク2基にもそれぞれ140京ベクレルがふくまれる。非常に小さなところに、大量の放射性物質をとじこめている。万が一、攻撃を受けたら、プールに大量に蓄えられた放射性物質が放出されてしまう。確率は低いとしても事故やテロがいったん発生したら、歴史に残ってしまうような影響が出る。日本原燃も原子力規制委員会も、リスクを過小評価しているのではないか。より安全な選択肢は、使用済み核燃料を乾式キャスクに貯蔵することだ。」と述べ、使用済み核燃料のプール保管の危険性と乾式貯蔵を提起している。再処理に経済的なメリットはない。施設の除染や、新たな事故の危険、核テロリズムのおそれや、核拡散につながってしまうという問題もある。
 プリンストン大学名誉教授、核物理学者のフランク・フォンヒッペルも「再処理という「わな」から、いかに抜け出すかが日本の課題だ。使用済み核燃料を再処理せずに、乾式キャスクに貯蔵することが安全で、安く、クリーンだ。福島第一原発の建屋は津波で浸水したが、敷地内にあった乾式キャスクには安全上の問題がなかった。」と福島第一原発事故の経験を踏まえ、乾式貯蔵方式を支持する(同:朝日新聞デジタル版)。

5 日本を舞台に暗闘を繰り広げる米軍産複合体とそれに反対する勢力
 福島第一原発は原爆17,000発分の放射能を抱えている。今後、地震や津波などで全交流電源が再びストップし崩壊した原子炉や核燃料プールの冷却ができなくなれば、これらの放射能が再び日本のみならず世界に撒き散らされることになる。その場合、米軍横須賀基地・横田基地・沖縄基地のみならず米国本土さえも無事ではすまない。
 第二次世界大戦中、ウラン資源に恵まれず、産業基盤が弱くウラン濃縮もままならなかった当時の日本で低濃縮ウランと水を合わせた原子爆弾を考えた。福島第一の崩壊した原子炉や核燃料プールは理化学研究所の仁科芳雄が構想した「原子炉爆弾」そのもの=「原子炉を制御せずに暴走状態に置くこと」(山崎正勝:『日本の核開発』)である。
 小泉氏は核の最終処分場がないから「脱原発」だという。しかし、それは彼の本音ではない。核爆弾の原料を作り出す装置でしかないはずだった軽水炉そのものが核爆弾であるというところに核心がある(ミサイルに搭載するには大きすぎるが潜水艦で運ぶことは可能であり、威力は地球を消滅させるほど巨大である)。プルトニウム分離という高度な技術を要することなく事実上の核兵器がそこにある。これは米ロ中英仏などによる恐怖の均衡としての国際核戦力体系を根底からひっくり返すものとなる。しかし、それをあからさまに発言することは軍産複合体勢力の逆鱗に触れることになる。小泉氏は言葉を選んで発言しているものと思われる。日本の原発を再稼働させないことができるか、全世界の人々を放射能の恐怖に落とし込むのか、国内外の勢力が入り乱れて闘いが始まっている。 

 【出典】 アサート No.433 2013年12月28日

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【投稿】「維新」のたそがれ–大阪府議会で過半数割れ– 

【投稿】「維新」のたそがれ–大阪府議会で過半数割れ– 

<造反により第三セクター売却案が否決>
 大阪維新の会の退潮が止まらない。今年7月参議院選挙での低迷、9月堺市長選挙での敗北、11月には大阪府岸和田市長選挙でも敗北と続いている。そして、今回大阪府議会では、第三セクターである、大阪都市開発株式会社の民間への売却議案が、維新自身から造反が出ることで否決された。
 大阪都市開発株式会社は、府内でトラックターミナル、難波と泉北ニュータウンを結ぶ「泉北高速鉄道」を経営し、トータルでは黒字企業である。民間で出来るものは民間で、との維新方針のもと、売却が橋下知事時代から提起されてきた。松井知事の下で、今回公募が行われ、米投資ファンドのローンスターが、売却額で南海電鉄の提案を上回ったため、優先予約権を獲得した。それが、府議会で否決されたのである。
 9月の堺市長選挙では、運賃の割高な泉北高速の運賃値下げも争点になった。都心に近い千里ニュータウンと違い、泉北ニュータウンからの通勤・通学問題では、運賃の割高に、市民の不満が高かった。市長選では敗北したが、維新の候補者も運賃の値下げを公約していた。
 堺市議会では、泉北高速鉄道の運賃値下げ幅が小さいと、自公民が反発、維新も含めた全会一致の反対決議案の動きがあったが、松井知事に一喝され維新議員団は離脱、売却案の白紙撤回決議が賛成多数で可決されていた。
 こうした中、府議会に提案された米投資会社への売却案の採決が12月16日に行われ、維新派府議4名の造反により、否決された。反対に廻った府議は、大阪市内選出1名、堺市2名、高石市選出1名の4名であった。
 維新は、即刻除名の対応を行ったが、即座に自民党会派と連絡を取る議員もいたという。2015年4月の統一地方選挙では、維新では当選できないという空気が出てきているのだ。
 これにより、辛うじて府議会の多数を確保してきた維新は、少数与党に転落した。
 
<大阪市でも公明が離反し、孤立>
 大阪市会でも維新派の力が弱まっている。ここでは、元々維新は少数であって、公明の「協力」なくしては何も決められない。少なくとも、昨年12月の総選挙までは、市会公明と維新は「協調」してきた。しかし、総選挙が終わり、自公による安部政権の成立以降、「すきま風」が吹き始めた。
 今年9月には、橋下市長が提案した水道事業の統合議案が、市議会で否決。11月には、大阪府立大学と大阪市立大学の統合議案も否決された。また市営地下鉄事業の民営化議案も、公明の協力が得られず、11月3度目の継続審議となった。
 一方、橋下市長が進めてきた公募路線も、失敗が続いている。4月には、公募区長を分限免職、11月にはセクハラ事件を起こした労働部長を処分、公募校長にも不適格者が続出という事態だ。ここまで「公募」で選んだ人間が、程度が低いとなると、それは選んだ方こそ、「程度が低い」ということだろう。市民も気付き始めている。
 
<大阪都構想の実現も、益々不透明>
 公明の賛成で、大阪都構想を準備する「法定協議会」が設置された。しかし、審議が進んでいない。年内に区割り案を確定するとしてきたが、年末の協議会でも決められなかった。橋下市長は、11月の記者会見では、来年10月には大阪市分割案の住民投票を行いたいと語っていたが、2015年4月の大阪都以降のためには、技術論・手続き論でも、そこがリミット。しかし、年末に決まらなかった分割案は、年明けには決めることが出来るのか。出来たとしても、住民を納得させる説明が可能か。分割することでコストがかかる。さらに、メリットを具体的に示す必要があるが、当初宣伝してきた夢物語は、色あせ始めている。
 
<新党合流で、消滅か>
 みんなの党が「特定秘密保護法」への対応をめぐり分裂し、15名で「結いの党」(江田代表)を結成した。ここへの合流を大阪維新は模索しているようである。旧太陽の党という自民党のもっとも保守的な部分と合流した「日本維新の会」だが、自公多数の国会の中で、維新は埋没し、原子力政策では党内は実質分裂状態にある。すでに「維新の会」では、選挙を戦えないのであろう。そして江田新党への合流は、日本維新の会の分裂が前提である。選挙で勝てるから、橋下維新は求心力を維持してきた。しかし、維新のメッキは剥げ落ち、「維新」では選挙に勝てないと、新党構想というのは、もはや泥船状態であろう。
 大阪都構想も不透明、新党問題も橋下抜きには決められないという維新だが、大阪市内では、まだ一定の支持を保っている。(11月読売新聞調査では、大阪市内支持率57%)
 大阪都構想を葬り去るため、橋下維新という右派勢力の包囲をさらに強めなければならない。(2013-12-22佐野) 

 【出典】 アサート No.433 2013年12月28日

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【書籍紹介】アクティブ・エイジングシリーズ『はたらく』 

【書籍紹介】アクティブ・エイジングシリーズ『はたらく』 

 世界一の高齢化社会・日本、「団塊の世代」も高齢者(65歳以上)の域に入ってくるのでこれからも高齢化が進む。
 このことは一般的にみると医療や保健などの社会的コストを増大させ財政負担につながるし、生産労働人口比率低下で経済の活性化に問題が生ずる。
 しかし、本来高齢化は大きな戦争がないこと、大自然災害が少ないこと、そして生活水準の向上や医療技術の進展の結果、人々が長生きするようになったためであり、喜ばしいことであるはずだ。問題があるとすれば、そのような変化に対応する社会システムが出来ていないことにある。今後のことを考えると、この高齢化を悲観的、評論家的にだけとらえるのではなく、積極的にとらえ直し、具体的な行動をとる必要がある。

 そのような問題意識から、エコハ出版ではアクティブ・エイジングシリーズとして、2012年3月に『地域で活躍する高齢者達』を発行したが、今度、第2号として『はたらく』を発行した。
 これらはいずれも高齢になっても、体力、気力が続く限り、社会や地域で積極的に活動しようではないかとの問題提起である。そのため各地で元気に活躍している高齢者を取材し紹介しながら、今後の高齢化社会にどう立ち合えばよいかかを考えようというものである。
 本書の題名をひらがなで「はたらく」としたのは、経済的な必要から雇われて「働く」ということだけではなく、社会や地域のためボランティアとしてはたらく場合や、自分の趣味や専門性を活かしてはたらくということも含めて、広い意味で高齢者の社会的活躍の場を広めようとするものである。
 実際に取材してみると、退職後ふるさとに戻って農園経営する例や、地域における国際化に貢献している人、専門性を活かしてまちづくりのコーディネーターの役割を果たしている人等、様々な例があることがわかる。これらの人達に共通しているのは、皆さんが生き生きと輝いて活躍さおておられるということであった。しかし、このような人たちはまだ少数派である。社会としてはこのような人達がはたらきやすい場を準備すること、少しでも多くの人たちが積極的に社会や地域の活動に参加しやすい条件をつくることが求められているという主張である。ぜひご一読をお願いしたい。
 本書を編集する中で、「面白い人物」を浮きぼりにしつつ、社会問題にアプローチする方法が有効なことを確信したので、これからもこのような手法で出版を続けて生きたいと思っている。現在、第3号として『シニヤ起業家の挑戦』、第四号として『地域における国際化の活動』などの準備を進めている。ぜひ皆様も高齢化の問題を真正面から現実的な社会問題としてとらえていただきたい。そして、願わくば、元気な高齢化社会を構築するための運動にご参加いただきたい。(本書の購入はアマゾンでエコハ出版と検索いただければ購入できます。)

                           エコハ出版
                           代表 鈴木 克也 

 【出典】 アサート No.433 2013年12月28日

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【お知らせ】小野暸さん「文明<後>の世界」が出版されました。 

【お知らせ】小野暸さん「文明<後>の世界」が出版されました。 

 「文明<後>の世界」小野暸 新泉社 2013年12月10日 \2600+税

 本来ならば、書評としてご紹介したいところですが、まずはお知らせということでご了解願いたい。2011年12月10日に亡くなられた、我々の友人小野暸さんの著書が発行された。

 暸さんは、「季刊唯物論研究」第112号(2010-03)から第115号(2011-03)まで、4号に渡り、全11章に渡る構想の下、氏の持論でもあった「万人企業家社会論」から、資本主義後の社会を展望する論文を発表されていた。原因不明の病床にある中での執筆であったと後に知ったが、この構想は道半ばにして実現されなかった。

 2012年2月には偲ぶ会が京都で行われたが、出席者の中からは、残された未完の膨大な文書類を紡ぎ直し、暸さんの構想を、是非書物として実現させる必要性についての発言があったと記憶している。その後、唯研の田畑さんやご家族のご協力の下で、編集作業が行われた。出版に至る御労苦に感謝申し上げたい。
 奥様からいただいた文章には、「夫の生前に遺した出版構想を基にして主要論文を中心にまとめましたもので、思想全体が概観できる内容となっております」と記されている。 暸さんの遺作となった本書を、是非お読みいただきたいと思います。(佐野) 

【関連文書】
★【追悼】 未来を目指した知的冒険家を偲ぶ –小野暸さんを偲んで–
      (Assert 410号 2012-01)
★【講演録】 21世紀のグランドデザインをどう描くか
      (Assert 289号 2001-12)

 【出典】 アサート No.433 2013年12月28日

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【投稿】混迷・暴走・自爆解散と対決する 脱原発・反増税・改憲阻止の包囲網を

【投稿】混迷・暴走・自爆解散と対決する 脱原発・反増税・改憲阻止の包囲網を

<オバマの再選、野田の投げ出し>
 11/6、米大統領選において、オバマ現大統領はかろうじて踏みとどまった。共和党のロムニー候補が勝利していれば、自由競争原理主義の新自由主義が再び猛威をふるい、マネーゲームを野放しにし、金融資本や大独占、富裕層に大幅減税を実施する一方、緊縮財政の旗の下に、社会保障をはじめとするセーフティネット、教育、自治体、社会的公共資本をズタズタにぶち壊し、さらなる景気後退局面に陥りかねない危機的な米経済をさらに破滅に追い込むところであった。こんな候補者を大統領に据えることを阻止したのは、昨年来のウォール街占拠運動に象徴される99%対1%、ごく少数の超富裕層対圧倒的多数の低所得者層、格差のとどめのない拡大と社会保障と教育破壊に反対する、広範な粘り強い闘いの広がりと包囲網であった。そして「米国経済の最優先課題は、雇用ではなく、財政赤字だ」と叫び続けてきた緊縮財政タカ派は偽善者であり、もうこんな連中にはうんざりだ、という圧倒的多数の99%の声がロムニー候補を蹴落としたのだと言えよう。
 11/12付ニューヨークタイムズ紙でクルーグマン米プリンストン大教授は「緊縮財政タカ派は退場せよ」と題して、いわゆる「財政の崖」問題は、「経済を人質に取ろうとする共和党の企てによってもたらされた政治危機なのである」、「景気が深く落ち込んでいる時の財政赤字は良いことである。赤字削減は景気が回復するまで待つべきである」、「財政赤字のうるさ型」連中は「米国の財政を気高く守っているふりをしながら、実際は偽善者であり、支離滅裂でもあることを自ら露呈した」、「さあ、こんな連中には退場願おうではないか」とそのコラムを結んでいる。
 こうした声を反映するもうひとつの結果が、米大統領選と同時に実施されたカリフォルニア州の住民投票の結果に示されている。ブラウン州知事(民主)の「富裕層の所得税率引き上げ、その増収分を教育予算に充てる」提案が賛成53.9%で可決・成立したのである。この結果、年収25万ドル(約1975万円)以上の高額所得者の所得税率を引き上をげ、2012年1月にさかのぼって7年間実施、増収分は全額、公立の小中高等学校、2年制の公立大学に割り当てられることとなった。画期的な転換だといえよう。
 こうしてオバマは再選されたが、片や、日本の野田首相は、今や米共和党の「緊縮財政タカ派」と全く瓜二つとなって、増税・緊縮路線で自民・公明と野合し、「近いうち解散」に追い込まれ、もはや与党多数派も維持できなくなって、ついに政権を投げ出す事態を自ら招くこととなった。

11・11関電本店1万人大包囲行動
写真は、11・11関電本店1万人大包囲行動への西梅田公園での集会

<「さあ、こんな連中には退場願おうではないか」>
 野田首相にとっては年内解散以外の選択肢はなかったのであろう。しかしそれは、野田首相個人、あるいはその同類である松下政経塾出の未熟極まりない新自由主義路線と緊縮財政路線、アジア諸国との緊張激化路線に凝り固まった連中にとっての私利私欲に基づく解散路線である。それは、民主党にとっては、あるいは三年前の政権交代に託した有権者にとっては、裏切りにも等しい暴走であり、党の解体と事実上、党そのものが散り散りばらばらになる「流れ解散」への「自爆解散」でしかない。
 野田首相やその同類にとっての私利とは、マニフェストが否定し、そして首相自身が否定していた財務省の増税路線を忠実に実行し、それを成し遂げたことへの達成感、功名心、そしより直接的には、「100人が100人反対」という党所属議員の総意、「民主党の総意と」して解散反対を突きつけられ、解散前の首相交代を迫られ、その圧力に怯えて、これに対抗してどんでん返しで異例なクーデター的ともいえる解散を強行し、たとえわずか一ヶ月でも首相の座にとどまり、ASEAN首脳会議にも出席し、「あとは野となれ山となれ」という私利以外の何物でもない。
 そして私欲とは、たとえ壊滅的な打撃を受けて少数政党に転落し、政権を明け渡したとしても、その増税路線を確実なものとするための民自公3党合意を盾にとった後継政権への擦り寄り、たとえ補佐役でも新与党連合にすがりつき、増税翼賛大連合の一翼を担うことへの期待であろう。なんとも許しがたい私利私欲である。
 共同通信社が11月上旬に実施した世論調査では、野田内閣の支持率は前回10月調査より11・5ポイント減の17・7%と20%台を割り込み、政権発足以来最低を記録している。もはや有権者の信頼を失った野田首相が、解散によって「国民に信を求める」と大見得を切っても今や空々しいほどのうつろさである。そもそも「信を求める」、その「信」が無きに等しいのである。離党者が続出し、民主党内部は、いまや原発、消費税、環太平洋連携協定(TPP)、外交、防衛など主要課題をめぐって賛成と反対が入り乱れ、もはや党機関の決定もままならず、収拾がつかない混迷状態である。一大政治決戦であるにもかかわらず、全て旗色鮮明にできない、候補者個人に任された選挙戦は敗北を前提とした苦戦以外の何ものでもないであろう。
 そしてそもそも首相が成し遂げようとしている消費税増税路線は、すでに既定の路線としてやり過ごそうとしているが、11/12に内閣府が発表した7~9月期の実質国内総生産(GDP)は前期比マイナス0.9%、年率換算マイナス3.5%と、景気後退が鮮明になっており、9月の鉱工業生産は前月比4.1%低下し、低下幅はリーマンショックと大震災以外では最大の落ち込みである。こんな時に増税路線を提起すること自体が、経済をさらに悪化させ、庶民の暮らしをより一層苦しくさせる以外のなにものでもない。野田首相は、来年に解散を先送りすれば、こうした経済状況では消費税増税に赤信号がともるという財務省の見通しとその圧力にあわてて解散に踏み切ったともいえよう。いずれにしても、こんな景気後退時に増税を提起するなど、クルーグマン氏の言うとおり、「さあ、こんな連中には退場願おうではないか」という声をこそ、有権者の声として結集させるべきであろう。

<「民意の実現を図る国民連合」>
 こうした声を無視し、踏みにじってきた民主党は、かくして大惨敗を喫せざるを得ないと言えよう。
 しかし、退場を願わなければならないのは、同じ増税路線と緊縮財政路線を歩み、むしろ先鞭をつけ、主導してきた自民・公明連合とて同罪である。自・公・民の間には今や基本的に政策的な違いは無きに等しい状態である。違いは、安倍自民党総裁の再登場によって、憲法改悪と軍事力強化、緊張激化路線でどちらがより先鋭、強硬、右翼的かという、最も危険極まりない競り合いがより激しくなってきたことである。
 そしてさらにこの際、退場願わなければならないのは、この競り合いを叱咤激励するばかりか、東京都が尖閣諸島を買い上げるという対中国挑発行為をあえて実行し、「これで政府に吠え面をかかせてやるんだ」と野田政権にその国有化を迫り、そのその愚劣な発言と挑発行為の結果、長期化する日本側の経済的打撃と景気悪化に何の反省もなく、性懲りもなく国政復帰を目指し、今や第三極、いや第二極のヒーロー然として振舞っている石原慎太郎東京都前知事である。今や「我欲」に凝り固まり、耄碌して「原発をどうするかはささいなこと」と放言するようなこんな人物に国政関与の資格などもはやないし、悪意と差別に満ち満ちたこのような人物に追随し、「石原氏しかできないような判断と行動だ」と絶賛・迎合し、石原氏を表面に立てて、自らはその共同代表として後釜を狙っている橋下徹大阪市長もこの同類であり、より悪質・危険な存在である。この石原・橋本連合に身を寄せ、連携せんとする有象無象もその同類と言えよう。そして総選挙と同日日程で行われる都知事選に立候補し、石原氏の後継者として指名された猪瀬氏も、茶坊主よろしく尖閣諸島買い上げの寄付金集めを提案して高く評価されるような同類である。
 こうした勢力に対抗する真の第三極、あるいはそれこそ第二極こそが結集されなければならないが、いまだ明確で具体的な姿が見えてこない。
 10/22、国民の生活が第一 社会民主党 新党きづな 新党大地・真民主 減税日本 新党日本 改革無所属がようやく「民意の実現を図る国民連合」共同公約(案)を提起し、
1.まだ間に合う、消費税増税法の廃止
2.10年後の3月11日までに原発をゼロにする
3.TPP交渉参加に反対する
を明らかにしたが、より幅広く具体的な結集が図られるべきであろう。
 政権交代の意義を真に継承し、本来の総選挙の争点である、脱原発・反増税・反TPP・セーフティネットの再構築・改憲阻止の包囲網の早急な構築が望まれる。
(生駒 敬)

 【出典】 アサート No.420 2012年11月24日

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【投稿】大飯原発を至急停止して調査せよ! –敷地内に活断層の疑い濃厚–

【投稿】大飯原発を至急停止して調査せよ!   –敷地内に活断層の疑い濃厚–
福井 杉本達也

1 福井県民はBクラスの国民
大飯原発の活断層シロクロ判断が先送りされたことに関連し11月8日の孫崎享元外務省国際情報局長はtwitterで「原発:8日福井新聞『大飯断層調査に不安抱える地元民“命は大事だが生活も大事”』。こう言って“生活”をとる図って哀しい。他地域より金持とうと思わなければ“命大事”が貫ける (2012年11月8日午前7時07分)」とつぶやいている。同様の趣旨で武田邦彦中部大学教授は「福井県の人に悪いけど、なぜ福井県に原発を置いていると思います?『福井県の人はBクラスの国民だ』ってみんなが言っているわけですよ。何故だって言ったら、『自分は電気を使わないのに原発だけもらって金が欲しい』と、『彼らは仕事では金が無くて生活も出来ないから原発にくっついてるんだ』って言われているんですよ。」(2012.11.11岩上安身「武田邦彦インタビュー」(「みんな楽しくHappyがいい」HP))と語っている。両氏に指摘されるまでもなく“カネ”で“命を売る”思考に同じ県民としては赤面する思いである。原子力規制委の現地調査団の活断層かどうかの判断が先送りされた11月4日、福井県庁幹部は「5人という少人数であやふやな議論をしていてはいけないのではないか」(福井:11.5)とコメント、別の県幹部は「原子炉を止めずに追加調査をする規制委の判断に理解を示した」(朝日:11.8)と報道されている。これが県民の命を預かるべき自治体の職員の発言かと思うと情けない。

2 関電の大飯原発活断層調査は誤魔化し-島崎邦彦原子力規制委員
11月14日昼のNHKニュースは「原子力規制委員会は、14日に定例の会合を開き、島崎委員は、大飯原発の敷地を走る[F-6破砕帯]という断層について、[関西電力は『破砕帯がこれまでの調査より短く、位置も違っていた』と説明していて不明な点がある]と述べたうえで、[調査の考え方に疑問が出てきている]と述べ、関西電力の調査方法に疑問を呈しました。また、大飯原発で専門家と共に行った現地調査について、[事前に現状を把握していなかったほか、現場で時間が限られ詳しく分析できなかった]と説明し、改善する考えを示しました。」と報道した(NHK NEWSWEB:11.14)。ところが、この重大な発表を新聞各社はどこも報道していない。福井新聞は島崎委員の「時間が限られ詳細な分析ができなかった」とする最後の言葉だけを引用し、田中委員長の「調査団に大飯を止める、止めないの判断はお願いしていない」(福井:11.15)との発言の方を見出しに取り上げ、島崎委員の発言の趣旨を大きくゆがめている。新聞媒体はあくまでも大飯原発を停止させないよう真実を隠す情報操作に熱心である。
TV朝日の報道ステーション(11.5)やモーニングバード・「そもそも総研」(11.8)では①12~13万年前から約10万年前の間の地層をこの断層が切っていること、②断層は海側から山側にせり上がっているが、海側から山に向かってずり上がるような地滑りなどないこと、③「これが活断層ではない」と否定できる人は4人の中で誰もいない。つまり、グレーであることはみんな一致している。ことが報道されている。
大飯原発活断層現地調査団員の1人-渡辺満久東洋大教授(変動地形学)は11月2日の現地調査後「①大飯原子力発電所の最重要施設の直下に活断層は存在する。②「F-6」以外にも、活断層が敷地に存在する。③現在の応力場で動きうるものである。④これらが見落とされ、現在になって問題が顕在化した理由は、事業者の不適切な調査と非科学的解釈に基づく国の杜撰な審査にある。⑤活断層の定義についてこれまでは、「確認できない」ことを「活動していない」として誤魔化してきた。⑥今後の原子力関連施設周辺における活断層評価においては、科学的定義と同等かむしろ厳しく、より安全側に配慮した「活断層の定義」を定めるべきである。⑦今後の追加調査について「結論はまだ早い」「慎重に」という意見は不要。「暢気な」学術調査ではない。「ない」ことを理屈付ける調査は不要である。原子力発電所をすぐに停止し、すべてを調べ直す覚悟で調査すべきである。」と述べている(渡辺:資料「大飯原子力発電所敷地内の活断層」11.4)。

3 なぜ「F-6断層」が重要か
規制委は原発立地の条件として「①地震、風、津波、地滑りなどにより大きな事故が発生しないと考えられるところ。②原子力発電所と公衆の居住する区域との間に適切な距離が確保されているところ」であり、そのため地震については「敷地周辺における過去の地震や活断層の調査結果などにより、耐震設計に考慮する地震を選定します。」としている。安全設計の基本的な考え方として、「原子炉冷却系」は「最終的な熱の逃がし場へ熱を輸送できること。」が要求されている(原子力規制委員会「設計・建設段階の安全規制・安全審査」HP)。この「F-6断層」の真上を緊急用取水路が横切っている。もし、「F-6断層」が動けば緊急用取水路は破断し海から原発の冷却水を取水できなくなる。上記の規制委の説明にもあるように原発の熱を逃がすことができないのであるから、活断層の真上にこのような安全上重要設備を置くことはできない。活断層と認定されれば大飯3、4機は停止しなければならなくなる。
原子炉が地震で停止すれば自ら発電ができない。外から送電線が来ているが、福島第一原発の場合は外から来ていた7系統全ての送電が長時間に亘り停止してしまった。これが、福島原発事故の直接の原因である(「外部電源喪失事故」―けっして、津波により非常用ディーゼル発電機が使えなくなったからではない。それは二次的要因である)。福島事故の1例では、「5、6号機に外部電源を供給していた送電線鉄塔が倒壊したのは、敷地造成の際に谷を埋めた盛り土が液状化などにより崩れたことが原因の可能性が高いという分析結果を、東京大の鈴木雅一教授(砂防工学)が28日までにまとめた。」(福井:2012.1.29)という。F-6断層が動けば大飯原発でも倒壊がありうる。関電は「大飯原発(おおい町)と高浜原発(高浜町)から延びる送電線の鉄塔3基が、地滑りの可能性があり、移設対策が必要などと発表」「関電は、盛り土の崩壊▽地滑り▽急斜面の土砂崩れなど3項目で、計893基を評価。その結果、早急な対策が必要なものは、おおい町の山間部にある鉄塔3基。」であるとしている(産経:2012.2.18)。既に関電は美浜原発の送電線で鉄塔倒壊で作業員死亡事故を起こした実績がある。原因は鉄塔の強度不足であった(福井:2008.9.17、9.19)。
外部電源が使えなければ、非常用のディーゼル発電機で交流電源を供給しなければならないが、非常用ディーゼル発電機は巨大な発電機であり、水冷しければならない。その冷却のための水も緊急用取水路から供給されている。したがって、取水路が破断し水を供給できなければ、ディーゼル発電機を起動することができない。取水路をわざわざ『Sクラス』の最重要施設と定めているのは、これが無ければ原発は破壊してしまうからであり、活断層の上には作らないというのか大原則である。関電は非常用ディーゼル発電機が使えなければ、コンテナ式の空冷式の非常用発電装置を配備しており、電力を供給するから大丈夫だというが、大飯原発の場合には、原発構内に入るのにトンネルが1本しかない。活断層が動いてトンネルが崩壊すれば応援部隊が近づくことは不可能である。「グレーに濃淡は無い。グレーはグレーだと。なぜならば、そういう確率が高いとか低いとか、それを福島で失敗しているわけだから、『そこで学習してないんですか?』っていう事なんですね。真っ黒だった。ものすごく濃いグレーだった、宮城沖の99%が起きなくて、ほとんど白に近かった場所で、でっかい地震が起きたという事を全く学んでいないという気がします。」(渡辺-「モーニングバード」)。

4 活断層調査の重要性
活断層が注目され始めたのは1995年1月17日の阪神・淡路大震災からである。活断層とは「最近の地質時代に繰り返し活動した断層」と定義される。兵庫県南部地震の淡路島において地震断層が確認された10キロの範囲では、地表のあらゆるものが切断された。道路も家屋も水田もみな同様の大きな右横ずれを被った。大地がずれる力を止め得るような強固な構造物はありえない(鈴木康弘『活断層―大地震に備える』2001.12.20)。地面そのものがずれてしまえば、原発の耐震設計など何の役にも立たない。原発の真下に活断層があった場合、格納容器が破壊されるだけではなく、中の配管や核燃料を入れてある圧力容器自体も破壊される。それは福島原発事故以上の大事故を意味する。中の放射能の全てが一瞬にして外部へ放出してしまうことだからである。大飯原発の場合、1機で広島型原発1000発分である。2機とも一瞬に破壊されればチェルノブイリ事故の倍以上の大事故となる。もし、原子炉運転中で、断層の破壊速度が制御棒の挿入速度を上回った場合、核燃料は制御不能となり原子炉の暴走-核爆発も考えられる。「活断層かどうかが分からない」と言うなら、「まずは止める」べきであり、「動かしながら調べる」というのは言語道断である(小出裕章―「モーニングバード」)。

【出典】 アサート No.420 2012年11月24日

カテゴリー: 原発・原子力, 杉本執筆 | 【投稿】大飯原発を至急停止して調査せよ! –敷地内に活断層の疑い濃厚– はコメントを受け付けていません

【投稿】「日本軍国主義・ファシズムを取り戻す」安倍政権

【投稿】「日本軍国主義・ファシズムを取り戻す」安倍政権

<<安倍首相「韓国はただの愚かな国だ」>>
 週刊文春11月21日号(11/14発売)は、「韓国の『急所』を突く!」と題した特集記事を掲載、安倍政権の本音を前面に押し出し、その露骨な嫌韓論と排外主義を煽り立てている。
 新聞広告や電車内に目立つその中吊り広告は、以下のように大書している。
▼「もう我慢の限界だ」安倍側近からは“征韓論”まで…
▼安倍首相 「中国は嫌な国だが外交はできる。韓国は交渉もできない愚かな国だ」
▼「首脳会談しない方がマシ」朴槿恵 反日を焚きつける「君側の奸」
▼経団連は「カントリーリスク」を明言 日本企業一斉撤退シナリオ
▼日本メガバンクが融資を打ち切ればサムスンは一日で壊滅する
▼「韓国は日米同盟の庇護下にあると自覚せよ」 米国務省元高官ケビン・メア
 本文では、安倍首相の周辺人物の言葉として、安倍氏が「中国はとんでもない国だが、まだ理性的に外交ゲームができる。一方、韓国はただの愚かな国だ」と語ったと報じたのである。あくまでも「安倍総理周辺によると」と断り書きが付けられているが、首相の本音が透けて見える。
 折しも、韓日・日韓協力委員会の合同総会に出席するために訪日した韓国議員らは11/15、「週刊文春の記事は韓日関係の悪化を招くもので、深い憂慮を表明する。日本政府は記事の内容が両国関係に与える悪影響を十分に認識し、ただちに事実関係を明らかにするとともに、責任ある措置を取るべきだ」と声明を出し、これにあわてて菅義偉官房長官はその日の午後の記者会見で、首相が「そんなことを言うわけがない」と述べ、事実関係を否定した。
 韓国各メディアはこの事態を一斉に報道し、安倍首相の態度は、日本を訪問した韓国の国会議員などに年内の首脳会談の開催を強く希望していた態度とはまったく異なるものであり、二つの顔があると指摘、「本性があらわになった」、「安倍がまた妄言」、「韓国をおとしめる発言」などと非難している。
 韓国与党セヌリ党の洪文鐘事務総長は党院内対策会議で、「安倍首相と側近が韓国政府をおとしめる発言を続け、有力誌がとっぴな話を書いているようならば、韓日関係は今後多くの困難に直面するだろう」と懸念を示し、最大野党・民主党の田炳憲院内代表も党最高委員会で、「日本の軍国主義の亡霊にとらわれた安倍首相の妄言に、韓国政府は断固対応すべき」と強調する事態である。

<<「女性が輝く社会」>>
 こうした事態は、すべて安倍首相自身が招いたものである。安倍首相のアキレス腱とも言える問題は、従軍慰安婦問題にあり、首相はこの問題自体が存在しないか、存在しても「解決済み」であり、ましてや強制連行など「狭義の強制性を裏付ける証言はなかった」として、一貫して政府責任を回避する言動を繰り返してきたのである。
 安倍首相の意を受けたのであろう、外務省は11/4までに「最近の韓国による情報発信」と題した文書をまとめ、慰安婦問題について「(昭和40年の)日韓請求権・経済協力協定に基づき『完全かつ最終的に解決済み』であるにもかかわらず、韓国側は請求権協定の対象外としている」と、韓国政府を批判した文書を公表し、海外広報予算を増やし、対外発信に乗り出した。外務省幹部は「在外公館に対して日本の立場を各自治体や有識者、主要メディアに伝える取り組みを強化するよう指示した」という(11/5産経新聞)。
 そして首相自身が、そうした無責任で非人道的な姿勢が国際的にも孤立し始めるや、去る9月26日、国連総会での演説で、「二一世紀の今なお、武力紛争のもと、女性に対する性的暴力がやまない」として、「不幸にも被害を受けた人たちを、物心両面で支えるため、努力を惜しまない」「世界女性の人権伸張のために努力する」と「女性が輝く社会」を掲げた「イメージアップ作戦」で孤立を避けようとしたのであるが、二一世紀の武力紛争下の性暴力を強調することで、二〇世紀の日本の戦争犯罪をごまかすことはできないし、ましてや戦時下の性的暴力・性奴隷制の典型である従軍慰安婦問題については一言も触れずに、上っ面の美辞麗句で事態をやり過ごそうとする姑息な態度が浮き彫りになっただけであった。
 この美辞麗句を「称賛」してくれたのは米国のヒラリー・クリントン前国務長官だけで、クリントン氏は手紙で「働く女性を後押しする施策を推進する、と首相が明確に訴えたことに感謝する」とたたえ、首相は「書簡に勇気づけられた」との返事を送ったというが、弱肉強食丸出しの規制緩和路線で「働く女性」を非正規労働の拡大でさらに苦しめ、低賃金労働に押し込め、格差をさらに拡大させ、セーフティネットと社会保障の切り捨てで女性を家事・育児・介護等の無償労働に縛り付け、女性の人権を切り縮めようとする首相の政策のどこに「女性が輝く社会」があろうというのか。噴飯ものである。
 国連総会の「人権に関する委員会」で、韓国の趙允旋女性家族相が10/11、安倍首相の国連でのこうした発言を捉えて、「当事国は、紛争地域で女性に対する性暴力が続いている現実に怒るべきだと主張する前に、20世紀に犯した性暴力で苦痛と傷を抱えて生きている女性を無視してはならない」と批判し、「慰安婦の傷を癒やすには、責任を負う政府が心から謝罪し、必要な行動を取り、慰安婦に関するゆがめられた認識を正さなければならない」と強調したのは当然であった。

<<「日本の指導者は考え方を変えるべきだ」>>
 こうした安倍首相のまやかしを最も鋭く批判し、国際社会に訴え出したのが韓国の朴槿恵大統領であった。11月2日からフランス、オランダ、英国、ベルギー等ヨーロッパ各国を歴訪した朴氏は、出発前にフランス紙フィガロや、英BBC放送のインタビューを受け、「慰安婦問題が解決されず、日本の一部の指導者が歴史認識を変えないなら、首脳会談はしない方がましだ」と主張、「『日本に過ちはない』と謝罪もせずに苦痛を受けた人たちを冒とくし続ける状況では、(会談しても)何一つ得るものはない」と語り(BBC)、「欧州統合は、ドイツが歴史の過ちに前向きな態度を示したので可能だった。日本も欧州統合の過程をよく研究してみる必要がある」、「欧州統合は過去の過ちを直視するドイツの姿勢の上に築かれた。日本は欧州の経験を真摯に参考にすべきだ」と強調した(フィガロ紙11/3)のである。
 欧州歴訪・首脳会談の最後の11/8にも、欧州連合(EU)のファンロンパイ欧州理事会常任議長(EU大統領)らと会談した朴大統領は会談後の共同記者会見で、従軍慰安婦問題を巡り「日本には後ろ向きの政治家がいる」などと重ねて批判、安倍首相との会談についても、「(2国間関係の改善が期待できないならば)逆効果」と言明、「日本の指導者は考え方を変えるべきだ」と、安倍首相にあらためて鋭い批判を突きつけ、その政治姿勢を改めることを求めたのである。
 安倍首相は自らが招いたその犯罪的な歴史認識や、それにもとづいた政治姿勢を変えない限り、今後の政治的展望や打開の道が見出し得ない窮地に追い込まれ、その結果が、週刊文春に暴露された「もう我慢の限界だ」「韓国は交渉もできない愚かな国だ」発言だったと言えよう。

<<日中韓の「共同歴史教科書」>>
 しかし朴槿恵大統領から、打開の鍵となる解決への道筋の一つが示された。11/14、朴大統領がソウルの国立外交院創立50周年を記念した国際会議で演説し、日中韓共同歴史教科書を発刊することが、歴史や領土問題によって対立している状況を改善させ、平和を促進するための方法としてふさわしいとして、北東アジアの共同の歴史教科書を編さんすることを提案したのである。
 朴氏はフランスとドイツなどが共同で歴史教科書をつくったことを例に挙げ、北東アジアでも共同で教科書を発行すれば、国家間の協力や対話を強化できるとして、以下のように述べている。

 「私が提案してきた北東アジアの平和協力構想は、地域の国々がちょっとした協力から始め、お互いに信頼できる経験を蓄積し、さらにそれを拡散させ、不信と対立を緩和するというものです。核問題をはじめ、環境問題への対応や自然災害への対応、サイバー協力、資金洗浄防止などから始め、対話と協力を蓄積し、さらにその範囲を広げていくというものです。このような過程が進むに従って、究極的にはヨーロッパの経験のように、最も敏感な問題も論議できる時期が来ると確信しています。
 私は、北東アジアの平和協力のために、まず、地域の国々が、北東アジアの未来に対する認識を共有しなければならないと思います。目的を共有しなければ、小さな違いも克服できません。しかし、目的が同じであればその差を克服することができるのです。ドイツとフランス、ドイツとポーランドがやったように、北東アジア共同の歴史教科書を発刊することにより、東西欧州がそうだったように、協力と対話が、蓄積されるかもしれないのです。対立と不信の根源である「歴史問題の壁」が、崩壊する日が来るかもしれません。それは北東アジアが持続的に成長していく秘訣にもなることです。
 また、北東アジアの葛藤と対立はあくまで平和的な方法で解決されるべきものです。軍事的手段が動員されることがこの地域で二度とあってはなりません。私たちはお互いの政策意図を透明にして、国家間に信頼をもたらす様々な措置を通じて、軍事的紛争を予防しなければなりません。」

<<「社会科教科書」検定基準の改定>>
 これはひとつの重要な、事態を打開する前向きの提案といえよう。下村博文文科相は直ちにこの提案に飛びつき、11/15の記者会見で「大歓迎したい」と賛意を示し、「日中韓の関係大臣が話し合うよう大統領が韓国内で指示してくれれば、(日本も)積極的に対応すべきだ」と積極的に応じる姿勢を示した。
 ところがその同じ下村文科相は直前の11/13、現行の小中高校「社会科教科書」の検定基準について、歴史的事実について政府の見解がある場合は、それらを踏まえた教科書の記述を求めることを「明確化する」方針を固め、新たな検定基準では、尖閣諸島や竹島など領土に関わる問題、慰安婦や南京事件など歴史問題、自衛隊の位置づけなどについて、(1)政府見解や確定判決があれば、それを踏まえた記述をする(2)通説的な見解がない場合は特定の見解だけを強調せずバランスよく記述する-とした方針を打ち出したのである。これは、自民党教育再生実行本部の特別部会が今年6月、「多くの教科書は自虐史観に立つなど問題となる記述が存在する」と指摘したことをうけての検定基準の改定である。
 この改定について韓国メディアは直ちに反応し、特に慰安婦問題に関する記述では「戦後補償は日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決済み」とする日本政府の見解が記述されていない場合、検定通過が困難になると伝え、また、「軍と官憲によって慰安婦が強制連行された証拠がない」との一文が、安倍内閣の統一政府見解という名目で、教科書の義務記述事項になる可能性があり、日本政府は従軍慰安婦問題など過去の歴史に関して、「わい曲した歴史観を次の世代に植え付けようとしている」、「将来世代に公然と嘘を教えようしている」、「日本政府の恥知らずな言い逃れと嘘が、教科書に堂々と掲載される」などと日本政府の検定基準改定の狙いを的確に指摘している。
 さらに安倍政権の教科書をめぐる危険な動きは、道徳教科化にも現れている。11/12付琉球新報社説は「道徳教科化 皇民化教育の再来を危ぶむ」と題して、「文部科学省の有識者会議が小中学校の道徳について、教科化と検定教科書の使用を提言すると決めた。国が一律に徳目を指定するのは戦前の『修身』を想起させる。国のために死ぬことを求めた皇民化教育の再来ではないか。皇民化教育は、沖縄戦であまりに多くの犠牲を生じさせた。その痛切な体験で、国による特定の道徳の押しつけがどんな結果を招くか、われわれは骨身に染みて知っている。道徳教科化は避けるべきだ。…下村博文文科相が『6年前は残念ながら頓挫したが、今回は必ず教科化したい』と、有識者会議で熱弁を振るったのは理解に苦しむ。」と厳しく指摘している通りである。
 問題は、安倍政権のこうした動きが、日本版「国家安全保障会議(NSC)」を創設し、それと一体での成立を急ぐ特定秘密保護法案、「集団的自衛権」の法的基盤の検討と憲法解釈の変更、「武器輸出三原則」の見直し、陸海空3自衛隊3万4千人が参加する沖大東島での離島奪還訓練、等々、危険極まりない安倍政権の緊張激化・軍事力強化政策と密接に連動しているところにこそ存在しており、安倍首相の言う「日本を取り戻す」とは、戦前の「日本軍国主義・ファシズムを取り戻す」ものであり、そのような根本政策が改められない限りは挫折と破綻が運命づけられているものである。
(生駒 敬)

【出典】 アサート No.432 2013年11月23日

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【投稿】4号機プールからの核燃料取り出し開始は「廃炉への第一歩」ではない

【投稿】4号機プールからの核燃料取り出し開始は「廃炉への第一歩」ではない
福井 杉本達也

1.危険な福島第一4号機からの使用済み核燃料取り出し
4号機のプールに入っている燃料体は全部で1,533本、うち水で遮蔽をしなければ大量の放射線を出して周囲の人々に致死量の放射線を浴びせる使用済み燃料は1,331体、新燃料は202体ある。この取り出し作業は、4号機の建屋が爆発で破壊され、強度が著しく不足することとなったため、わざわざ建屋の外側から「使用済燃料取出し用カバー」の設置工事を行い、この桁構造物に移送用クレーンを取り付けて行われる。
移送作業は、燃料プールの中に移送用容器を入れるところから始まる。容器は全長5.5m・直径2.1m・重量は91トンもあり、従来から福島第一原発の構内で使用済み燃料輸送に使われていたものである。この中に一度に22体の燃料を詰めて移送する。吊り上げる際にプール内の瓦礫などに引っかけるなどの危険性もある。容器の密閉作業も全部水中で行わなければならない(最低でも水面下1.6mで)。32mの高さからの落下時の衝撃に耐えられるかどうか。誤って落下した場合、内容物が飛散することも想定しなければならない。
燃料体が露出した場合、そこから強力な放射線が発散し、4号機周辺の空間線量は致死レベルになる。規制委は10月30日に取り出しを認可したものの、実証試験が行われていないということで11月18日に取り出しが延期された。

2.それでも使用済み核燃料を取り出さなければならない
4号機は定期検査中だったにもかかわらず、4階部分と5階部分で2度の爆発を起こした。東電は3号機からの水素が空調配管を伝って4号機建屋で爆発したというが(2011.11.10東電)、1度崩壊した隙間だらけの建屋で2度目の水素爆発が起こるとは考えにくい(「3号機から逆流した水素のみで4号機原子炉建屋が爆発性雰囲気にまで到達するかどうかには慎重に検討する必要があり、かつ、いまだ立証されていない」(『国会事故調報告書』、また、東電はいまだに4号機の爆発の映像を公開していない)。米軍の無人偵察機は4号機プールに水がない(2011.3.16米議会証言)としたが、運よく隣の原子炉の上部(ウエル)が水で満たされておりウエルとプールを隔てた壁が何らかの衝撃で破壊されたことでプールに水が流入し3号機のような水蒸気爆発を伴った核爆発はまぬかれ(しかもむきだしの原子炉3基分相当)、日本は首都圏からの5,000万人避難・東西分断という状況にはならなかった。4号機プールの発熱は事故から2年半経って、崩壊熱自身はかなり減って、510KW/h程度となっている(東電:「福島第一原子力発電所1~4号機に対する『中期的安全確保の考え方』に関する経済産業省原子力安全・保安院への報告について」)。KW/hをKcal/hに直すと860Kcalになる。4号機プールの水温23度(11.12現在)の1,400トンの水を蒸発させるには(+77°+潜熱539°で)、1,400,000÷(510×860÷616)=1,966÷24=82日となる。燃料棒の体数が多いため1~3号機の原子炉や燃料プールと比較すると最も危ない施設ではあるが、冷却水の循環が止まれば明日にでも爆発するというものではなく、地震等がなければ十分対応する時間はある。
4号機プールからの燃料棒の移送は危険な作業ではあるが、放置しておけば日本は壊滅するため、やらねばならないのは確かである。4号機プールは、爆発によって建屋が壊されて宙吊りのような状態になっている。大きな地震でプールが崩れ落ち、中に水を蓄えることができないような状態になれば、燃料が爆発することになり、使用済み核燃料が建屋周辺に撒き散らされれば福島第一原発の敷地内は完全に放射能に汚染され人が近づくことはできず福島第一原発は制御不能となる。少しでも危険の少ないところに一刻も早く移さなければいけない。使用済み燃料はプールの底から空気中に吊り上げると、周辺の人がバタバタと死んでしまうというほどの放射能性物質を持っている(燃料棒直近では2,600シーベルト)。1年~数年の長丁場で、大きな地震が起きない保証はない。原発の最大の恐怖は原子炉ではなく、大量の放射性物質が格納容器にも守られずに1カ所に集まった燃料プールである。そして無事に1,533体を運び終えても、問題が解決したわけではない。1~3号機のプールにはさらに計約1,500体の燃料がある。しかし、溶けたデブリを回収するすべはない。チェルノブイリのような石棺しか道はないであろう。東電は13日、破損した4号機の燃料棒3体について取り出しは困難との発表をした。これは燃料棒全ての回収は不可能だという伏線である。だが、5割であろうが7割であろうが回収しなければならない。さらに、燃料を運び出した先の「共用プール」には、6千体以上の燃料棒で満たされたままとなっている。

3.取り出した使用済み燃料をどうするか
共用プールに移送した使用済み燃料は取りあえずそのままプール内で湿式貯蔵するしかない。その後、崩壊熱が空気冷却出来る程度までに下がった時点でキャスクに入れて乾式貯蔵=「中間貯蔵」することになろう。原子力委員会の依頼を受け検討してきた日本学術会議は2012年9月11日、「高レベル放射性廃棄物」を数十~数百年間「暫定保管」すべきだとの提言を出した(政府の用語としては「使用済み核燃料」=「高レベル放射性廃棄物」ではないが、学術会議は『高レベル放射性廃棄物』とは、使用済み核燃料を再処理した後に排出される高レベル放射性廃棄物のみならず、仮に使用済み核燃料の全量再処理が中止され、直接処分が併せて実施されることになった場合における使用済み核燃料も含む」と定義している)。
ところが、この学術会議の提言を全く無視するかのように、総合資源エネルギー調査会原子力小委員会放射性廃棄物WGではこれまで通り使用済み核燃料を再処理し、再処理後の放射性廃棄物を地中処分する案が検討されている。
8月7日のWGで、委員の朽木修氏(原子力安全研究協会)は放射性廃棄物の地中処分について「廃棄物自体が直接人間に影響を及ぼさないようにするために、非常に厚い岩の壁が本来的に持つ隔離機能で、数百メートルぐらいのものを使おうということになります。」「さらに閉じ込め機能を確実にするために、多重バリアシステムを構築する。」「工学バリアのところで全部が閉じ込められているということを確保したい。オーバーパックは1000年で壊れると。19cmの鉄が全部やられてしまう。ガラス固化体はだんだん溶けてしまう」 と仮定して設計するとする。朽木氏の説明によると、ガラス固化体1本=40kgの放射能は2×10^16(10の16乗)ベクレル(Bq)(福島第一事故で撒き散らされたセシウムに匹敵する)あるが、1000年後には2000分の1の10^12Bq程度に減少し、人工バリアが壊れても岩盤の中に閉じこめられているので人間の生活圏に出てくるまでには数万年かかりその頃には無視できる放射線量になるというのである。しかし、哲学者の加藤尚武氏は「地下の施設の理想的な設計図を作り、理想的な材料を用いて、手抜きのない工事をしたら、1000年間は安全であるのか。私は、それを証明できないと思う。『1000年の安全』を支えるにはさまざまなデータや科学法則が使われる。そのデータと科学法則そのものが、『1000年間有効』という保証がないなら『1000年間の安全設計』は絵に書いた餅で、実際に『1000年間の安全』を約束することはできない。」とし、度重なる地震で建築法規は改正に次ぐ改正を重ねているので、建築物本体の耐用年数よりも、その間の法規の有効年数の方が短く、今、工業的に作られているセメントは150年前に開発されたものであり、1000年間使ってみて安全を確かめたセメントは存在しないという(加藤:「核廃棄物の時間と国家の時間」『現代思想』201203)。コンクリートの寿命について、溝渕利明氏はせいぜい50年程度だと結論づけている(溝渕:『コンクリート崩壊』)。

4.選択肢は「暫定保管」しかない
高レベルの放射性廃棄物を地下深くに埋めて処分する技術を研究している北海道の幌延町の施設で地下350mにある実験用のトンネルを10月28日に報道陣に公開した。しかし、この施設は今年2月6日に大量の地下水が漏れ出し、地下水にはメタンガスが含まれ、濃度が基準の1%を超えたことから、現場にいた作業員24人は全員避難する事態となっていたものである(NHK:2013.2.14)。数十万年後も「大丈夫」と豪語しつつ、明日の地下トンネルの水漏れも保証できないのが現在の(あるいは将来の)工学の水準である。とするならば、やはり学術会議の提言するように「暫定保管」(政府用語では「中間貯蔵」=再処理を前提として「中間」という言葉を使っている)しか道はない。
福島第一原発事故で世界を震撼させたのは3号機燃料プールの水蒸気爆発を伴う核爆発であった。低濃縮ウランでも核爆発するという事実である。しかも、『核兵器』は、ほとんど注目されてこなかった核燃料プールというむきだしの原子炉にあったことである。日本の原発の使用済み燃料のほとんどは核燃料プールで湿式保存されている。しかし、水が介在して核爆発するというのであれば、我々は時限『核爆弾』の上に寝ているのと同じである。何らかの事故で電源が止まるか水がなくなれば時限爆弾のスイッチが入る。一刻も早く使用済み核燃料を乾式貯蔵に移行する必要がある。原発の再稼働を進めたい西川福井県知事は電力消費地との駆け引きから「中間貯蔵」は県外でと主張している。しかし、そう簡単に受け入れ先が決まるとは考えられない。となれば、いつまでも時限爆弾の上で寝なければならない。ではいったいどこに貯蔵するか。当面、原発敷地内しかないであろう。

【出典】 アサート No.432 2013年11月23日

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【投稿】民主党政権の総括—「民主党政権 失敗の検証」を読んで 

【投稿】民主党政権の総括—「民主党政権 失敗の検証」を読んで 

 昨年12月の総選挙から、まもなく1年が経とうとしている。選挙結果は圧倒的な敗北であり、再び、自民党政権が誕生し、かなり意気消沈したというのが、素朴な感想であった。以来、選挙総括や、民主党分析の書物もいくつか出版されてきたが、正直、まともに読むこともなかった。一方、アベノミクスという経済拡大策をもって登場した安倍政権だったが、そろそろ陰りが出始めるとともに、滑り出しは、安全運転だった政権運営も、特定秘密保護法や、原発再稼動問題など、旧来の自民党色が目立ち始め、支持率も低下の傾向にある中、そろそろ民主党問題を考えようかなと、感じ始めていた。
 そんな折、本書「民主党政権 失敗の検証–日本政治は何を生かすか」(中公新書)を手にした。民主党議員、政権時の政務官経験者などに、丁寧にインタビューを行うと共に、項目別に整理され、記載されているなど、一読して見て、中々まとまっているという印象であった。本書の紹介を行いながら、私の関心の高い点を通じて「民主党失敗の検証」をしてみたい。
 
 本書の構成は、以下の通りである。
 序章  民主党の歩みと三年三ヵ月の政権
 第一章 マニュフェスト–なぜ実現できなかったのか
 第二章 政治主導--頓挫した「五策」
 第三章 経済と財政–変革への挑戦と挫折
 第四章 外交・安保–理念追求から現実路線へ
 第五章 子ども手当–チルドレン・ファーストの蹉跌
 第六章 政権・党運営–小沢一郎だけが原因か
 第七章 選挙戦略–大勝と惨敗を生んだジレンマ
 終章  改革政党であれ、政権担当能力を磨け
 
 「はじめ」の項では、「民主党政権はどこで間違ったのか。それは誰の、どういう責任によるものなのか。そこから何を教訓として導き出すべきか。この報告書は、そのような問題関心に正面から応えることを目的としている。」と語られている。全体を通じて、政治的に客観的な立場から取り組まれたと読み取ることができる内容になっている。
  
<マニュフェストと財源問題>
 「消えた年金」問題などを通じて、すでに自民党(自公)政権を国民は見限っていたが、民主党の2009マニュフェストは、子ども手当や農家への戸別補償制度、高速道路無料化、ガソリン暫定税率の廃止など、直接給付や減税政策が多く盛り込まれていた。
 マニュフェストでは、無駄の排除、埋蔵金の活用、税制見直し等で、16.8兆円を捻出し、施策の財源に充当するとされていた。しかし、2012年11月に発表されたマニュフェストの進捗報告によると、初年度は、埋蔵金活用等で、9.8兆円を確保したものの、次年度以降は、6.9兆円、4.4兆円と、財源を確保することができなかった。
 暫定税率の廃止は、早々と撤回されたが、「マニュフェストの後退」「国民への裏切り」「公約違反」の非難が浴びせられることとなった。
 本書では、マニュフェストが党内で共有されていなかったという指摘がある。それは、個々の政策の理解という以上に、マニュフェストの作成過程において、少数の首脳部が作成したこと、さらに2009総選挙で大量に増えた新人議員の中で顕著であったという。
 さらに、個々の政策が、どのような社会をめざすのかというコアな戦略の中に位置づけられていたのか、という点も指摘されている。それは、第五章の子ども手当問題でも取り上げられている。給付金額のみが一人歩きし、(当初16000円案が、小沢が26000円に上げた、という指摘もあるが)、総体としての子ども育成、働き盛りの若年家庭支援の施策との整合性も不十分になり、民主党政権時代に、保育所が増えたという印象も残せなかった。
 
<小沢の評価>
 2003年に小沢の自由党が民主党に合流し、それまでの都市型市民の改革政党というイメージから、保守的階層や地方の票も党の視野に入ると共に、自民党の中枢で「国政」を知り抜いていると意味で、民主党の幅が広がったことは事実であった。
 本書では、特に項を裂いているわけではないが、随所に小沢の果たした役割、そして功罪に触れられている。私が特に注目するのは、政権交代を準備した2007年参議院選挙での役割であろうか。小泉選挙で大勝した自民党は、旧来の支持層をから規制緩和や「改革」中心、都市型政党への傾向を強めた。そこを見抜いた小沢は、参議院選挙戦術においても、地方の1人区での戦いを重視し、地方の疲弊を取り上げて1人区で大勝し、2007参議院での民主党勝利を実現したという。しかし、政権交代後は、むしろ「政治とカネ」の象徴のように、民主党の足を引っ張ることになるのだが。
 民主党政権の「失敗」と小沢の評価との関連は、さらに分析する必要があるだろう。
 
<政治主導は実現されなかった>
 民主党結党時からのスローガンには、霞ヶ関批判が含まれていた。無駄な公共事業批判、自民党政治における官僚主導に対する批判であった。第二章では、官僚主導から政治主導は実現したのか、が取り上げられている。鳩山政権では、事務次官会議が廃止され、議員から100名余りが、大臣・副大臣・政務官として各省庁に配置されることとなった。
 本書によると、各省庁でのこれら政務官の役割などが、省庁間で共有されることはなく、バラバラとなり、官僚の離反もあって、省庁の情報が官邸に伝わらなくなってしまい、逆に、政治主導が言葉倒れになったという。菅政権では、東日本大震災を受けて、事務次官も参加する「被災者生活支援各省庁連絡会議」が設置され、震災対策の進捗状況の共有をはかった。野田政権では、この会議が「各省庁連絡会議」として週1で開催され、事実上の事務次官会議の復活となった。
 
<首相の発言の重み>
 政治主導の極みとして、首相・党代表の発言についても、民主党の混乱の原因を作ってきたと言う。普天間基地の移設問題について、鳩山は「最低でも県外」という発言を、選挙中に発言する。マニュフェストには、沖縄県民の基地負担の軽減云々までの叙述であった。この発言が、鳩山政権を揺さぶり、最終的に辞任にいたった。
 菅は、2010年の参議院選挙を前に、唐突に消費増税の必要性に言及する。自民党案の10%も検討材料、という発言であった。2010参議院選挙で民主党は惨敗するのである。消費税増税問題は、マニュフェストには書かれていない。
 これを引き継ぎ、野田政権は、「決める政治」だと小沢グループの離党など傷だらけになりつつ、3党合意による消費税増税を進めた。
 唐突な首相(代表)の発言に、党内は後から付いていったようだが、果たして党の決定システムとして、妥当であったのか、どうかが検証されるべきだろう。
 
<地方議員の問題>
 本書の中で、分析が不十分だと感じるのは、地方議員の問題である。私は、政権交代時に、民主党の足腰の弱さについて指摘し、政権を握っている間に、地方の体制を強化する、議員を増やす必要について書いたことがある。努力はされていたと思うが、現実には、おそらく微増に止まっているだろうし、大阪では、逆に民主党の混迷もあり、維新の会が躍進し、むしろ大幅に減らしている。旧来の社民党・民社党出身の議員以外に、新たな人材を確保することができなかったのではないか。国・地方を貫く政策目標が、一般的に「分権推進」以上に明確にできていなかったのである。

<二度の政権交代、次もあるか> 
 小泉選挙で大勝した自民党だったが、2007年の参議院選挙で民主党に敗北し、参議院では過半数を確保できず、政権運営に行き詰まり、2009年総選挙で政権の座を失った。今回も、当時の菅首相の下で戦われた2010年の参議院選挙で、民主党は自民党に敗北、ねじれ国会と言う状況を生み、2013年の総選挙で再び政権交代となっている。このパターンでいけば、2016年の参議院選挙が、一つのポイントになるのだろう。
 小選挙区制の下で、大きく票の流れが変化し触れ幅によって、ある政党の一人勝ちという状況が生まれ、政権そのものが交代することとなった。
 2009年の政権交代は、民主党の勝利であったのか、自民党の敗北であったのか、私たちは、むしろ「自民党の敗北」の側面を見ていた。決して、民主党に能力や力があると見てはいなかった。むしろ、少なくとも1994年の細川政権の退場以後、続いてきた自民党(自公)政権を、国民が見限り、民主党にやらせてみようと思ったに過ぎなかった。
 それは、本書でも明らかにされているが、民主党に政権を担当する準備が出来ていたのか、また、政権を運営するための「党内システム」が考慮されていたのか、という議論にも行き着くのである。
 
 本書は、民主党政権が残した成果についても、客観的に評価している。高校無償化や名前は変わったが、子ども手当の増額。NHKが報道した復興予算の無駄使いも、「事業仕分け」の中で生まれた「行政レビューシート」という事業明細の存在から明らかになったという。安倍政権が綱渡りの政策を続けている現在、本書が分析している「失敗の検証」を基にして、さらに議論が深まることが期待される。(2013-11-17佐野秀夫) 

【出典】 アサート No.432 2013年11月23日

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【コラム】変貌する中国–上海を旅して– 

【コラム】変貌する中国–上海を旅して– 

〇10何年ぶりに中国・上海市を訪れた。〇まず驚くのは、高速道路の整備と高層マンションの林立風景であろう。以前は、上海虹橋空港から入国していたが、今回は浦東区の新しい空港、巨大な浦東空港に降り立った。そこから、車で中心部に移動するのだが、高速道路(これは無料のようだった)は、車で溢れ、渋滞に時折遭遇しつつ、ホテルに向かった。〇上海万博の跡地付近を通り、30階はあろうかという高層マンション群をいくつも見た。この風景は、観光地に向かう翌日も遭遇する。建設中のものもここそこにあり、ありふれた風景である。〇1元10円程度だった通貨レートも、16円程度に切り上がり、中国通貨元の価値が上っている。街中の飲食店でも、このレートを考えると安さは感じられず、むしろ日本国内の購買力の印象と比べても、同等のような感覚であろうか。〇滞在中に、何人かの人と会話をしたが、とにかく困っているのは、家賃だという。ツアーガイドの女性も、家賃の高さを嫌って、最近安いアパートに引っ越したとの話だ。独身者同士でシェアする場合も多いという。〇林立するマンション群には、一体どんな階層の人々が住むと言うのだろうか。日本人的感覚なら、ローンを組んで住宅を買うということだろうが、おそらく大半は、富裕層による投資目的なのではないか。街中のスーパーの前で時間を潰していたら、投資話のパンフレットや、マンションや住宅地のチラシを配ってくれるのだが。〇電気店で、サムスン製の携帯電話が売られていたが、円に換算すると、ほぼ日本の国内価格と変わらない。中国ブランドなら、もっと安いかもしれない。〇旧租界である外灘も夕暮れに訪れた。中国の人も多いし、欧米からの観光客も多い。しかし、日本人の姿は、我々以外には、見かけなかった。上海市内の観光地豫園でも同様で、欧米からの観光客ばかりであった。ここにも、日中関係が影を落としているなと感じた。〇市内を移動する際、とにかく車、車である。以前なら、自転車や原付が道路を占領していたが、今は自動車である。高速道路やバイパス的な道路も多く、市内と空港や周辺工業地帯への移動手段は整備されている。以前になかった地下鉄も市内を縦横に走っている(乗る機会はなかったけれど)。空港から市内へは「リニアモーターカー」路線も整備されている。高速道路を走っている限り、ここが本当に中国なのか、という感覚も生まれてくる。北京では大気汚染が進んでいると言うが、上海では、そこまでの汚染という印象はない。〇道路が整備され、車がひしめく表通りから、少し猥雑な市街地を行くと、昔ながらの商店が軒を連ねている一角に出た。手前には、入り口に警備員が配置されている高層マンションがあったが、その直ぐ側に、肉や野菜、魚を売る庶民の商店が並んでいた。そこの人々は、南京東路の歩行者天国を歩く、おしゃれな中国人達とは違い、丁度日本でいう昭和レトロというのか、少々くすんだ服装、高齢者も多く、昔ながらの生活風景である。肉や魚、上海蟹も売られていたが、とても安い値段だった。〇10年一昔というが、この街の、この国の変貌は何だろうか。〇社会主義というものを印象付けるものは、何もなかった。中世中国のお庭や旧宅は観光地として残されているが、今そこにあったのは、街全体が猥雑な都会であった。上海市だけで、人口2300万人。何処に行っても人が溢れていた。帰国後、閑散とした大阪の街中を歩いた時、ちょっと寂しい気持ちになった。(2013-11-18佐野)) 

【出典】 アサート No.432 2013年11月23日

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【投稿】「東京五輪」〝成功決議〟と大政翼賛化

【投稿】「東京五輪」〝成功決議〟と大政翼賛化

<<危険な曲り角>>
 いよいよ日本は重大な転換期、危険な曲り角に差しかかっている、あるいは既に危険な道を歩み始めているのではないだろうか。
 10/15、衆参両院は本会議で、2020年東京五輪とパラリンピックの成功に向けた努力を政府に求める同一の決議をそれぞれ採択した。決議は、五輪開催を「スポーツ振興や国際平和への寄与にとって意義深い」と位置付け「元気な日本へ変革する大きなチャンスとして国民に夢と希望を与える」と強調するもので、衆院は全会一致、参院は「新党 今はひとり」の 山本太郎氏が反対したのみであった。722人の全国会議員中、民主はもちろん、社民、共産も全員賛成、山本太郎氏ただ一人の反対のみ、99.9%の大政翼賛である。今年6月の東京都議会議員選挙で、共産党の全候補者が「オリンピック招致」に「反対」を明確にしていたにもかかわらず、この事態である。超党派のオリンピック議連・馳事務局長は「国会での五輪に関する決議は共産党も賛成してくれて、みんなで取り組もうとする気持ちが見えた。」と共産を褒め称え、オリンピック担当大臣の下村文科相は「オールジャパンで推進することが重要だ。成功に向け最善の努力を図る」と決意を表明。ここにすでに「オールジャパン」=「大政翼賛」の翼賛政治体制への第一歩が踏み出されたというのは言い過ぎであろうか。
 そもそもこの東京五輪招致は、嘘で掠めとったものである。高濃度の放射能汚染水を太平洋に平然と垂れ流しながら、地球規模の全人類的犯罪を止める術さえ立てられず、事故収束の展望さえ見えない、収拾不能の原発事故を、「状況はコントロールされています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません」とそれこそ真っ赤な大嘘をついて、東京に持ち込んだ意図は、まさにこの翼賛政治体制を構築する道具立てとしてオリンピック招致を利用することにあったとも言えよう。
 「オリンピックどころではない」「オリンピックより原発事故に全力を注ぐべきだ」「6000億円を五輪準備に用意する金があったら、原発事故被災者に使うのが筋」という声は福島に限らず、全国に満ち溢れている。いつさらに危険な放射能汚染の拡大が生じてもおかしくない、全世界が注視し、憂慮している福島の事態は、危機的状況を収拾するめどさえ立てられない。最悪の場合、「東京五輪返上」の事態さえ誰もが現実的に予測しうるものである。しかし、そんなことにお構いなしに、こと政治の世界は、一人を除く全政党、全議員が、放射能による「おもてなし」を容認する、「嘘と隠蔽と利権の五輪」を利用する、欺瞞に満ちた翼賛政治に賛同する道へと突き進んでいるかのようである。
 歴史の大転換が、こんなことは大したことじゃない、オリンピックじゃないか、当然賛成すべきだよ、といった、例外と異議申し立てを許さない、ファシズム的な大転換がいかにも当然であるかのように、それと気づかないうちに、それこそあの麻生氏の「ナチスの手口に学べ」手法で進んでいると言えよう。

<<「『意志の力』さえあれば」>>
 このナチスの手法は、安倍首相の10/15の衆参両院の本会議での所信表明演説でも、実にそれとわかる形で明瞭に示された。
 「この道しかない」で始まった安倍首相の所信表明演説、「この道を、迷わずに進むしかない」「ともにこの道を進んでいこうではありませんか」―冒頭で3回も「この道」を繰り返したあげく、結びの段階で、「意志さえあれば必ずや道はひらける」「日本が直面している数々の課題も『意志の力』さえあれば乗り越えることができる」「要は、その『意志』があるか、ないか。『強い日本』、それを創るのは、他の誰でもありません。私たち自身です。皆さん、共に、進んで行こうではありませんか」と、「意志の力」に4度も言及し、その重要性を訴えたのである。
 安倍流「強い日本」をめざす、規制緩和オンパレードの弱肉強食の新自由主義・市場原理主義路線、アベノミクスによるマネーゲーム・投機経済路線、増税と社会保障切り捨てと格差拡大の大衆窮乏化路線、危険で無責任な原発再稼働と原発輸出拡大路線、「積極的平和主義」なる軍事的緊張激化路線、首相がこだわる憲法改悪、特定秘密保護法、国家安全保障基本法、こうした“富国強兵”政策の拠り所が、「意志の力」なのである。実は、「この道」以外の道を国民に示すことができない安倍政権の行き詰まりと無能こそが、すべてを空元気の精神主義的な「意志の力」に頼る、「要は、その『意志』があるか、ないか」に賭けられている。かつての日本の軍国主義・ファシズム路線が、いよいよどん詰まりに追い込まれてもなお特攻隊と竹槍で本土決戦を企んだ精神主義、「神風」に頼るあの「意志の力」路線である。
 この「意志の力」路線こそ、日本とドイツのファシズム・軍国主義の無謀な侵略戦争の原動力であったことは、全世界周知の事実でありながら、安倍内閣は全世界に挑戦するかのようにこれを再び持ち出してきたのである。
 1923年、ミュンヘン一揆で捕まったヒトラーは獄中で「意志の力は知識よりも偉大である」と悟り、ヒトラーがナチス党政権を樹立した1933年、リーフェンシュタール監督に作らせた映画『信念の勝利』、そして1935年公開の長編映画『意志の勝利』、1938年の『オリンピア』(『民族の祭典』『美の祭典』の2部作のベルリンオリンピック記録映画)で”国威発揚”を煽り、1942年6月 – 1943年2月のスターリングラード攻防戦でソ連軍の大反攻と逆包囲に追い込まれた時のヒトラーの演説「意志の力だ。意志の力を奮い起こせば、不可能はない。諸君一人一人が力を尽くせば、我々は全能の神の御名のもと、再び勝利できるだろう」と語ったあの「意志の力」路線である。「意志の力」といい、オリンピックの利用といい、「意志の勝利」を目指す安倍首相の演説と、不気味なほどに見事に重なってしまっている。おそらく安倍首相はこうした歴史的事実は知らないし、知ろうともしないでのあろうが、期せずして一致してしまったのである。

<<新しいファシズム>>
 今年の8/31に作家の辺見庸氏が、「私のほうからやらせてくださいとお願いして」開かれた講演会「死刑と新しいファシズム 戦後最大の危機に抗して」で冒頭次のように語っている。

 「最近、ときどき、鳥肌が立つようなことはないでしょうか?  総毛立つということがないでしょうか。いま、歴史がガラガラと音をたてて崩れていると感じることはないでしょうか。一刻一刻が、「歴史的な瞬間」だと感じる かつてはありえなかった、ありえようもなかったことが、いま、普通の風景として、われわれの眼前に立ち上がってきている。何気なく歴史が、流砂のように移りかわり転換してゆく。「よく注意しなさい! これは歴史的瞬間ですよ」と叫ぶ人間がどこにもいないか、いてもごくごく少ない。3.11は、私がそのときに予感したとおり、深刻に、痛烈に反省されはしなかった。人の世のありようを根本から考え直してみるきっかけにはなりえていない。政治は、予想どおり、はげしく反動化しています。2013年のいま、歴史の大転換が、まったく大転換ではないかのように、当然のように進んでいます。歴史は目下、修正どころか安倍内閣により「転覆」されています。しかもこの内閣が世論の高い支持率をえてますます夜郎自大になっている。たとえば「君が代」をうたっているかどうか、口パクだけじゃないかどうかということを、わざわざ教育委員会とか、あるいは極右の新聞記者が監視しにきてそれをメモっていく。わざわざ学校や教育委員会に電話をかけて告げ口したり記事化したりする。極右というのも、非常に懐かしいことばですけれども、しかしいまや日常の風景になってしまっている。気流の変化に気がつかないと危ない 例外がない。孤立者がいない。孤立者も例外者もいないってなんでしょうか? ファシズムであり、不自由な状態なのです。」

 辺見庸氏のこの警告は実に正鵠を射ているといえよう。「気流の変化に気がつかないと危ない」事態の進展である。私たち一人一人があらためて問われている「気流の変化」である。
(生駒 敬)

 【出典】 アサート No.431 2013年10月26日

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【投稿】暴走する安倍軍拡 

【投稿】暴走する安倍軍拡 

<「ガイドライン」の裏側>
 10月3日、東京で日米の外務・防衛4閣僚による安全保障協議委員会(2+2)が開催され、戦時における自衛隊と米軍の任務を定めた「日米防衛協力の指針」(ガイドライン)の1997年以来の再改定を2014年末までに完了させることを柱とする共同文書が発表された。
 今回の「2+2」で安倍政権は、尖閣諸島周辺での中国の活動に対抗する緊密な日米同盟を、喧伝することを目論んでおり、岸田外相は終了後の記者会見で、「尖閣諸島が日本の施政下にあり、いかなる一方的な行動にも反対する力強い立場が表明された」と強調。
さらに安倍総理もケリー国務、ヘーゲル国防両長官と首相官邸で会談、「日米同盟の強い絆を内外に示すことができた」とアピールした。
 共同文書では、安倍政権が進める集団的自衛権行使解禁や防衛大綱の見直しなどについて、アメリカは「歓迎し、緊密に連携していく」とした。しかし「日米同盟の強い絆」が本当に存在し、オバマ政権が安倍政権の動きを評価しているか疑わしいものがある。
 この間アメリカは、シリア内戦で化学兵器使用を使用したアサド政権に対する軍事攻撃を企図したが、国内外の反発で断念せざるを得なかった。さらに核開発を進めるイランに対しても、軍事的圧力ではなく外交交渉による解決へと方針を転換しつつある。
 アメリカが最重要視している中東地域でさえ、このように軍事的プレゼンスは弱体化していっている。これに関してはアラブ世界一の「親米国」であるサウジアラビアが、抗議の意として国連安保理の非常任理事国への就任を拒否するという前代未聞の事態が起こり、アメリカの威信は大きく低下した。
 これに拍車をかけたのが、長期化した連邦予算と債務上限法案の店晒し状態である。この影響は多方面に及んだが、日本関連では10月15日から宮城県で実施予定であった陸上自衛隊とアメリカ陸軍の共同演習が中止になった。
 8日からの滋賀県におけるオスプレイを投入しての陸自、海兵隊による共同訓練は、かろうじて実施されたが、オバマ大統領のAPEC出席中止で「アジア重視」の底が見えたのと同様に「同盟の強い絆も金次第」というお寒い実態が明らかになった。
 さらに深刻なのは、アメリカが主体的に準備したシリア攻撃は、巡航ミサイルと限定的な空爆という、自軍の戦死者を出さないことを前提とする計画にもかかわらず、実施できなかったということである。
 アメリカ政府は、イラク、アフガンで泥沼化した地上戦の教訓から、極力犠牲者を抑えるため、武装勢力に対し同地域やパキスタンで無人機による攻撃を常態化させている。
 先日明らかになった国連人権委員会が委託した実態調査の中間集約によると、2004年以降の米英、イスラエルの攻撃により、パキスタンなど3カ国で2千人以上が殺害され、民間人の犠牲者も500人弱に上るという。今後最終報告が提出されれば死者数はさらに増加し、アメリカに対する批判も一層強まるだろう。アメリカはますます「戦争のできない国」になりつつあるのである。
 この様な状況の中では「尖閣諸島に上陸した中国軍をオスプレイに乗ったアメリカ軍が殲滅してくれる」という想定が、いかに非現実的かがわかる。アメリカは、自国民のほとんどすべてが名前も位置も知らない無人島に流す血など一滴も持ち合わせていない。
 今回の「2+2」でも確認されたのは、確固たる領有権ではなく、あいまいな「施政下」という表現である。
 さらに「いかなる一方的な行動」という表現も、現在中国政府が行っている公船による一時的な領海侵犯を含むと解釈するには無理がある。これは逆に言えば、現レベル程度の中国の活動は容認すると言っているのと同じであろう。
 日本政府も尖閣諸島だけではアメリカ軍を引っ張り出せないことは百も承知で、中国軍の侵攻想定地域を与那国、石垣など先島諸島から沖縄本島まで拡大させている。
 最近では、中国軍侵攻の呼び水として右派論壇が「琉球独立論」をやり玉に挙げており、「オスプレイ配備に反対する沖縄県民=国賊」とのヘイトスピーチもネット上を中心に拡散しつつあり、これを放置する政府も同罪であろう。
 2+2でも、沖縄の負担軽減策として、本島東側のアメリカ軍の海上、空域訓練区域の航行制限の一部解除や、返還予定の米軍基地への、地元自治体職員の立ち入りを認めることなども盛り込まれたものの、「辺野古移設」は既定路線であり、真の負担軽減には程遠い。
 日本政府は集団的自衛権行使解禁によりアメリカに恩を売り、その分を対中国で返してもらおう、と目論んでいるのが露わであり、オバマ政権の警戒感を高めているのが現状である。

<進む外征準備>
 安倍総理は、9月の国連総会などで「積極的平和主義」などという歯の浮きそうな美辞麗句で、真の意図を覆い隠そうとしているが、この間の具体的な動きを見れば衣の下の鎧は隠しきれるものではない。
 安倍総理の指示で置かれた、政府内に外交・安保に関する二つの懇談会では積極的軍拡に向けての議論が着々と進んでいる。
 それは、「国家安全保障戦略」を策定するとともに、新防衛大綱策定を進めるための「安全保障と防衛力に関する懇談会」(安防懇)であり、集団的自衛権行使解禁のため実質改憲を合理化する「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)である。
 このうち「安保法制懇」は16日、総理官邸で第3回となる会合を開き、自衛隊の活動を拡大すべき五つの具体例を安倍総理に提示した。
 それは①米国を攻撃した国に武器を供給する船舶に対する強制検査 ②近隣有事での集団的自衛権行使や集団安全保障への参加 ③国連決議に基づく多国籍軍への参加 ④日本への原油輸送に関わる海峡封鎖時の機雷除去 ⑤領海侵入した他国の潜水艦への実力行使という、専守防衛を完全に逸脱し海外での武力行使に道を拓くものとなっている。
 こうした指針に対応する、自衛隊の編成、装備の更新も次々と明らかになっている
防衛省は12月に策定する新防衛大綱に、陸上自衛隊に「水陸両用団」(仮称)の設置を盛り込むことを固めた。
 この部隊は離島などの防衛を任務として2002に新設された、陸上自衛隊西部方面普通科連隊(長崎県佐世保市、700人)を基幹として、14年度に準備隊を立ち上げ、15年度に発足、将来的に3千人規模に増員するとしている。同部隊に配備される、アメリカ製の水陸両用装甲兵員輸送車の取得も予算化されている。
 また防衛省は9日、新型の装甲戦闘車両である「機動戦闘車」の試作車を神奈川県の同省施設で報道関係に公開した。
 この8輪で走る車両は、離島防衛や市街地での対ゲリラ戦闘などで使うことを想定したとして、中国軍の戦車を撃破可能な105ミリ砲を装備しながら、C2次期輸送機にも搭載可能な26tで、戦闘地域への迅速な展開が可能とされている。
 これらの部隊、装備は、島嶼防衛を理由にすれば予算が通る現在の状況を利用した陸自の権益拡大である。対中国では海自、空自の後塵を拝している陸自が、先に述べた政府の侵攻想定地域拡大と二人三脚で演じているパフォーマンスである。
 水陸両用団はアメリカ海兵隊をモデルにしているというが、外征軍である海兵隊は、海軍との一体運用のもと専用の艦艇(強襲揚陸艦など)と自前の航空隊を保持しており、陸自の部隊が海自の揚陸艦に乗るという現在の運用構想では本家と程遠いものがある。今後、米海兵隊に近づこうとするほど、海自、空自との摩擦が起こるだろう。
 「機動戦闘車」も「戦車は船でしか運べないので先にC2輸送機で運ぶ」としているが、「中国軍が占領している島」に輸送機は近づけないし、それ以前にC2が着陸できる滑走路が先島諸島にはほとんどない。
 いずれにしても、「水陸両用団」も「機動戦闘車」も島嶼防衛で使われることはないだろう。英米のみならず、フランス、イタリアなど諸外国におけるこうした部隊、装備の投入例は、海外領土、旧植民地での治安維持や武装勢力の鎮圧、さらにはPKFなどであり、実例からそれらの用途も明らかになっていくだろう。
 安倍総理は今後起こりうるであろう、批判や反対の動きを封じ込めるため、戦時体制指導部たる国家安全保障会議(NSC)の設置や、政府が恣意的に指定した「特定秘密」をマスコミなどに伝えた公務員や報道関係者を厳しく処罰する「特定秘密保護法案」の成立も目論んでいる。
 さらに、安倍総理は中国、韓国、アメリカなどからの懸念をよそに「私を右翼の軍国主義者と呼びたいのなら、どうぞ呼んでほしい」と開き直り、19日には福島県相馬市で「第一次安倍政権で靖国公式参拝ができなかったのは痛恨の極み」と述べ、挑発的言動を繰り返している。
 臨時国会で平和勢力には安全保障問題に関しても、安倍政権を厳しく追及することが求められている。(大阪O) 

【出典】 アサート No.431 2013年10月26日

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【投稿】大飯原発敷地内の「活断層」はシロか

【投稿】大飯原発敷地内の「活断層」はシロか
                        福井 杉本達也 

1 大飯原発「活断層」に「シロ」判断?
 9月3日の各紙は大飯原発の敷地内断層を調べた原子力規制委の有識者調査団は9月2日評価会合を開き、関電が「F-6」と呼ぶ3、4号機の重要施設の下を通る破砕帯(断層)は「地盤をずらす可能性のある断層(活断層)ではない」との認識で一致したと報じた。これを受け規制委は5日、3、4号機の定期検査後の再稼働に向けた安全審査を再開することを決めた。昨年10月から3回の現地調査と、5回の会合を重ねてきたが、有識者の間で見解が一致せず、1年間、決着が見られなかった。国内の6つの原発で進められている断層調査の中で、活断層の可能性を否定するケースとなった。報道で特に注目されたのは、大飯原発敷地内の「活断層」の疑いを早くから指摘していた変動地形学の渡辺満久東洋大教授(「大飯原発直下・破砕帯 県に調査求める」福井新聞2012.6.2)を含む有識者調査団全員が「活断層」ではないという見解で一致したという点である。
 評価会合で争点となっていたのは、3、4号機用の非常用取水路の真下を横切る断層が活断層か否かであった。関電は今回、敷地を南北に走ると推定される「F-6」破砕帯を切る形で、1、2号機のすぐ北西背面の山頂に南西―東北方向の長さ150m・深さ約2mのトレンチ(溝)を掘ったが、山頂であるため当然ながら上層部には地層がない。そのため応力場等を考慮して活断層かどうかを判断せざるを得ない。これは渡辺氏の専門分野外である。有識者の1人・構造地質学の専門である重松紀生産業技術総合研究所主任研究員が活断層の可能性を否定したので、渡辺氏と他の有識者は重松氏の意見を尊重したという流れである。

2 関電が恣意的に活断層評価の「土俵」をずらし、「F-6破砕帯」を“幻”に
 原発施設の下を横断しているため、「F-6破砕帯」の調査は容易ではない。関電は、「Fー6破砕帯」の北端、原発から約200メートルの海沿いにある「台場浜」付近にトレンチを堀り、調査団は2012年11月2日に現地調査で断層を確認した。渡辺氏らは台場浜トレンチの断層について、「将来の活動性が否定できない」=活断層ではないかという見方を強く持ったが、「地すべり」を主張する岡田篤正氏(立命館大学)らと意見が対立した。 しかし、これを受け、朝日新聞など各紙は「運転停止し詳細調査を」と主張した。
 ところが、関電はこの2回目の評価会合で、それまでとは全く異なる主張を繰り広げた。「F-6破砕帯」の位置が異なっていたというのである。だがこの報告はほとんどマスコミでは報道されなかった。唯一、福井新聞だけが「関電は説明で、F-6断層が想定よりも東側を走り、900メートルとしていた長さも600メートルと修正した」(福井:2012.11.8)と記事にした。「F-6破砕帯」は大飯原発2号機と3号機の間の敷地中央から北の海沿い台場浜の方向に伸びるのではなく、北北東方向にずれており、しかも海にまでは達せず1、2号機背面の山腹の途中までで終わっているというのである。「F-6破砕帯」はそもそも、1980年後半、大飯3、4号機の設置変更許可申請時に、関電が自らの調査によって示したものだった。それを、今になって、断層はそこにはなかった、「F-6破砕帯」の位置が違うというのである。これまでの「F-6破砕帯」は“幻”であったというのである。関電のこの活断層調査の「土俵」自体を自らの都合の良いようにずらした報告書により、台場浜トレンチとの関連性は葬り去られた。台場浜のトレンチで発見された地層のずれが「活断層」の痕跡であろうが、「地滑り跡」であろうが「F-6」破砕帯の方向とは違う場所であるということで評価の対象外となってしまったのである。活断層評価の争点は関電が「F-6破砕帯」の「土俵」を東側にずらした非常用取水路の下に見つかった新しい断層一本に絞られ、結果的に「F-6破砕帯」全体が活断層ではないと否定されてしまったのである(参照:IWJ Independent Web Journal 「渡辺満久東洋大学教授インタビュー」 2013.9.3)。

3 活断層の「松田時彦の式」の誤用
 原子力発電所の設計の基準では、近くにある活断層を調べて、その活断層が起こす最大の地震を想定して、それに耐えるようにしている。原子炉、炉心冷却装置など放射性物質を内蔵している機器は、このような限界地震に襲われて、機器が変形してしまっても、安全機能を保持すること。つまりその場合でも、最悪の事故だけは回避せよと求めている。 そのため、建設地の近くにある活断層の長さを見積り、その長さから、地震地質学者で東大地震研究所の松田時彦氏が作った「松田式の計算式」を使って、将来起こりうる地震のマグニチュードを計算して、M6.5におさまるかを確認している。しかし、この松田の式は、曖昧さが大きくて実際に起こりうる地震よりも、ずっと小さなマグニチュードが計算される場合もある。松田氏は、過去に活断層が起こした地震のマグニチュードと、それぞれの活断層の長さについて、横軸にマグニチュード、縦軸に活断層の長さをとって相関関係を研究した。雲のようにぼんやりとした形ながら右上がりの傾向が読みとれる。最小二乗法のようなデータ処理の手法で、この雲全体にいちばん当てはまる右上がりの直線を描いて、それが「マグニチュードと活断層の長さの関係」の式とされているのだが、いかにもデータが少ない。しかも、いったんこの式が出来てしまえば、「活断層の長さが分かれば、その長さからマグニチュードが計算できてしまう」ことになるのだが、実際は小さな地震が起きることもあり、ずっと大きな地震が起きる可能性もあり得る。つまり長さ何キロの活断層があるからマグニチュードがどのくらいの地震しか起きないとは言えない。さらに、一般的には活断層の長さが長いほど大きな地震を起こす。ところが実際の活断層は途切れたり、曖昧になったり、枝分かれしたりしながら、延々と続いていることが多い。その活断層のうち、どれだけの長さの部分が関与して地震を起こすかという判断は学者によって大幅に違う(島村英紀『「地震予知」はウソだらけ』・『人はなぜ御用学者になるのか』)。

4 大飯原発で活断層3連動地震も
 原子力規制委は10月2日、大飯・高浜2原発の周辺を通る3つの活断層(高浜原発北20キロ沖の海底断層「FO-B断層」・高浜原発沖から大飯原発のすぐ北東・小浜湾の入り口にまたがる海底断層「FO-A断層」・大飯原発の東南東・小浜市から若狭町にまたがる「熊川断層」)について、関電の連続せず、連動して地震を起こさないという報告を認めず「都合のいい解釈をしている」と批判した。関電の調査では「FO-B断層」・「FO-A断層」・「熊川断層」はそれぞれ切れており連動して動くことはないとしているが、「FO-A断層」と「熊川断層」の間の小浜湾の海底調査はおざなりとなっている。これらの断層が連動して動けば総延長は63キロにもなり、“幻”の破砕帯の1本は否定されたものの、大飯原発敷地内にあると思われる無数の破砕帯も連動して動かざるを得ない。また、敷地海岸沿いの台場浜は場所によって海岸線の高さが異なっているが、これは海底の大きな断層が動き、土地が隆起した証拠である。海底断層が動いた時に、敷地がかなり隆起して傾くこととなる。その時大飯原発は耐えられるのか。 

【出典】 アサート No.431 2013年10月26日

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【投稿】堺市で維新敗北 都構想に赤信号

【投稿】堺市で維新敗北 都構想に赤信号

去る9月29日投票の堺市長選挙では、大阪都構想に反対する現職の竹山修身氏が当選を決めた。
(竹山修身(無所属)198,431票 西林克敏(維新)140,569票)

今回の選挙の特徴は、投票率が大きく伸びたことであろう。投票率は50.69%であった。堺市長選挙の投票率は、前々回32.39% 前回が43.93%であり、4年前の選挙から7%近い伸びとなった。増えた票が竹山陣営に大きく流れたのである。従来、無党派層票の大半を獲得してきた維新戦法は堺市では全く通じなかった。大阪都構想に対する拒否の姿勢を堺市民は示したと言える。
竹山陣営は、「堺はひとつ!」「堺をなくすな!」と、大阪都構想による堺市の分割反対のみを掲げた。一方の橋下維新は、大阪市の解体によって「一つになる大阪」に堺も合流することで、堺が発展できると主張した。堺分割論は元々受けが悪く、この問題を回避して、論戦を挑む道もあったはずだが、橋下が押し切り、大阪都構想1本勝負とも言うべき戦略に出たことが、裏目に出た。橋下維新の戦略的敗北である。下降期には、情勢が読めなくなる、人気がまだあると思い込む、強気発言連発で人気を博してきたが、落ち目になっても、それが通用すると考える、まさに「負け」パターンにはまったわけである。
ただ、これで橋下維新の流れを止めたと喜ぶわけにはいかない。今後3年間は国政選挙が望めない中、橋下維新は、これから2015年4月のリミットまで、大阪市解体に向け必死になるだろう。
一方、勝利した竹山氏だが、バラマキ政策はあっても、都市戦略は皆無という人物である。今後「堺の停滞」は約束されたも同然である、と私は考えている。

<維新、慢心の選挙で敗北>
実は、竹山陣営の政策には、政令都市のメリット云々という表現はあるものの、具体的な都市政策は無いに等しいものだった。中心市街地の活力低下は目を覆うばかり、北大阪や阿倍野の商業施設に人々は流れ、北区を除いて人口も減少。活力を失った泉北ニュータウンは、高齢化と人口減少が同時進行している。課題は山ほどあるのに、対応できていない。本来こうした課題、その解決策をめぐる論戦こそ市長選挙に求められていた。
しかし、橋下維新自身も、この論戦を回避し、大阪都構想の是非を中心においた。竹山陣営も同様に政策は「堺はひとつ」のみ。堺における大阪都構想問題には決着は着いたのであろうが、シングル・イシュー選挙は、堺市民にとっては、不毛な選挙であったとも言えるのではないか。

<大阪都構想の行方>
今回の選挙について、大阪都構想が問われた選挙であるとマスコミは伝えてきた。大阪府・大阪市では、特別区設置のための法定協議会が設置され、区割り案・財政調整の段階にあって、2015年4月までに大阪市の特別区への移行ができるかどうか。この動きに、同じ政令都市堺市が加わるのか、どうかは、確かに大きな焦点であった。
選挙の結果で、堺市の大阪都構想への参加は閉ざされた。2015年4月までに、住民投票を行い大阪市を特別区に移行させるという方針は、堺市長選挙の敗北によって勢いを挫かれたのは事実だろう。
2015年4月は、次の統一地方選挙がある。この時点までに、住民投票を終えるというのが、橋下維新のもくろむ大阪都構想スケジュールであろう。しかし、区割り案も財政調整策も、現時点でまとまっていない。大阪市会では、維新派だけでは過半数に及ばず、公明の同調が必要条件と言える。今回の堺市長選挙で、公明は自主投票と表明していたが、明らかに公明票は竹山支持にまわった。政権与党の自民・公明が、維新をけん制したということも考えられる。公明が自公路線を貫き、大阪市会でも維新派が孤立する場合、大阪都構想の実現は有り得ないのである。
橋下の大阪府知事当選に始まる大阪の停滞、人権無視、地方自治の破壊、不正常な労使関係などを生み出した維新勢力の解体に向けて奮闘しなければならない。(佐野秀夫)

【出典】 アサート No.431 2013年10月26日

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【コラム】ひとりごと–消費増税、社会保障に回らず–

【コラム】ひとりごと–消費増税、社会保障に回らず–

〇安倍政権は、来年4月から消費税を3%引き上げ、8%とすることを表明した。すでに、民主党政権時代、3党合意によって消費税の引き上げは法律化されていたが、引き上げの判断は、経済情勢等を勘案し、時期については時の政権が決定することとなっていた。〇来年4月から3%引き上げとする場合、準備期間を半年として、現政権は10月にその判断を行うとの意思表明を行ってきた。〇9月に発表された4-6月期の実質国内総生産(GDP)は前期比年率換算で3.8%増に上方修正され、消費税増税によるGDPのマイナスを吸収できると判断したと伝えられている。〇確かに、経済指標は経済の好転を示してはいるが、それは賃金や社会保障の拡充等による、国民の安心感とは繋がっていない。財政再建のための消費税増税に理解を示す世論がある一方で、増税による生活不安を心配する声も少なくない。〇円安や株価の上昇で、富裕層には余裕が出てきているかもしれないが、非正規労働者が全体の4割に届こうとしている就労環境では、不安が先に立つのは当然であろう。〇さらに、増税による景気後退リスクに対して、5兆円の経済対策を行うと安倍首相は表明した。それも、復興特別法人税の前倒し廃止や、設備投資への減税など、企業向けが4兆円というから、国民生活に目が向いていない内容であろう。〇住民税非課税世帯に一人1万円の給付金も含まれているというが、バランスが悪い。〇綱渡りのアベノミクスだが、2年間で2%の物価上昇をめざせば、2年後には物価で2%、消費税で3%、さらに2016年10月から5%の増税ということになれば、国民の負担は増えるばかりである。加えて、経済が下降を始めれば、これで安倍政権の命運も尽きるかもしれないが。〇国民負担ということでは、2015年4月から介護保険負担がさらに増える。〇一定の所得がある高齢者には、現行の1割負担を2割するという案が出ている。さらに、生活保護基準が8月から見直され、3年かけて引下げの予定である。〇年金も、この秋から年金スライド修正ということで、順次額が引下げられることが決まっている。〇国民健康保険も、現在の市町村から都道府県が保険者となる制度改革が準備されており、これまで自治体が繰り入れてきた部分がなくなり、全体的に保険料は値上がりすると言われている。〇このように、消費税増税によっても、その税源が社会保障に廻るのかどうか、はなはだ疑問という状況である。〇与党で衆参過半数を背景に、やりたい放題が始まっているのである。〇ここでは、詳しく展開できないが、「経済特区」の中に、解雇し放題の特区を画策したり、派遣労働の3年期限の撤廃を持ち出すなど、不安定労働、非正規労働を拡大しようとしている。〇安倍政権になってもうすぐ1年になるが、一層批判を強める必要があろう。(2013-10-20佐野)

【出典】 アサート No.431 2013年10月26日

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【投稿】安倍首相の大嘘とナチスの手口  —汚染水虚言の深刻な泥沼—

【投稿】 安倍首相の大嘘とナチスの手口  —汚染水虚言の深刻な泥沼—

<<「憤りを禁じ得ない」>>
 9/20、福島原発事故で全域が避難区域に指定されている福島県浪江町の町議会は、東京電力福島第1原発の汚染水問題を巡り、安倍晋三首相が国際オリンピック委員会(IOC)総会で「福島について、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況はコントロールされています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません」「健康問題については今までも現在も将来も全く問題ない」などと発言したことについて、「事実に反する重大な問題がある」とする抗議の意見書を全会一致で可決した。意見書は、首相の発言は全く事実に基づいておらず、原発から1日推計300トンの汚染水が流出している「深刻な事態」であり、これは「非常事態」であり、「『コントロール』『(港湾内で)完全にブロック』などされていない」と厳しく指摘し、安倍首相が「健康への問題は全くない」と発言したことに対しては、浪江町だけで震災関連死が290人を超えるとし、首相に「避難生活の息苦しい日々を知らないのなら、現場の声を真摯に聞くべきだ」と訴え、「(首相の)無責任な発言に強く抗議する」と明言、「福島を軽視する政府、東電に憤りを禁じ得ない」と心底からの怒りを表明している。
 意見書はまた、民主党政権時代に出した「事故収束宣言」を早急に撤回し、原発からの汚染水漏れを、国が自らの国民に対する責任として、直接、解決するよう求めている。町議会は同日、首相や環境相、経済産業相ら政府関係者8人宛てに意見書を発送している。安倍内閣はこれにどう応えるのか、厳しく問われている。

<<「真実は嘘の不倶戴天の敵」>>
 当初この暴言ともいえる大嘘は、経産省や原子力村にていよく丸め込まれた安倍首相が事態の深刻さを何も知らずに乗せられて発言したのかとも思われたが、嘘とわかっていながら嘘を突き通す確信犯なのである。
 首相がこの大嘘を発言したのは、9/7のアルゼンチン・ブエノスアイレスで行われた国際オリンピック委員会(IOC)総会の五輪招致プレゼンテーションの場であった。その直後から国内外から多くの疑問の声が沸き起こり、9/13には東電自身が「今の状態はコントロール出来ていないと我々は考えている」(山下和彦フェロー)としており、いくらでも検証できたのであるが、プレゼンから2週間近く経った9/19、安倍首相はわざわざ福島第一原発を訪れ、汚染は「港湾内に完全にブロックされており」「健康問題については、今までも、現在も、そして将来も、まったく問題ない」はずなのに、ものものしい防護服で身を完全ガードするしかない重装備の姿を晒しながら、放射能汚染水漏れの現場を視察し、そこでも改めて汚染水の影響が一定範囲内で「完全にブロックされている」といけしゃあしゃあと述べたのである。
 しかも、首相は、現地をごく短時間、たった2時間半しか視察しておらず、東京から同行した海外メディアと大手マスコミの「安倍番」記者とだけ会見し、被災を受けた浪江町の町民だけではなく、地元の報道機関とさえも会見を行わなかったのである。そしてその翌日に浪江町町議会全会一致の抗議の意見書を突き付けられたのである。
 こうした安倍首相の意図的な言動に明らかになったことは、「もしあなたが十分に大きな嘘を頻繁に繰り返せば、人々は最後にはその嘘を信じるだろう」というナチス・ドイツ宣伝大臣ヨゼフ・ゲッベルスのあの卑劣な手口なのである。ゲッベルスは1936年のベルリンオリンピックを一大宣伝ショーとして演出の総指揮を取り、現在の形式の聖火リレーはこのベルリンオリンピックから始まっているという。そのゲッベルスの手口をそのまま安倍首相は引き継ごうとしているといえよう。そして麻生副総理のヒットラーの「あの手口を学んだらどうかね」発言が、その提言通り、安倍首相の発言と行動に現れている。
 ゲッベルスは「嘘を頻繁に繰り返せば、人々は最後にはその嘘を信じるだろう」と述べた直後に、「嘘によって生じる政治的、経済的、軍事的な結果から人々を保護する国家を維持している限り、あなたは嘘を使える。よって、国家のために全ての力を反対意見の抑圧に用いることは極めて重要だ。真実は嘘の不倶戴天の敵であり、したがって、真実は国家の最大の敵だ。」と述べている。
 「あなたは嘘を使える。よって、国家のために全ての力を反対意見の抑圧に用いることは極めて重要だ」という次のナチスの手口が、安倍首相がこだわる憲法改悪であり、秘密保全法であり、国家安全保障基本法であり、すべての人権規定を自民党改憲草案に明記されている「公益及び公の秩序」によって「反対意見の抑圧に用い」て、破壊し、真実を覆い隠すことなのであろう。

<<「国家最大の敵」>>
 だがこうした目論見は、厳しい現実と真実の前に破綻せざるを得ないであろう。
 安倍首相がいくら覆い隠そうとしても隠しきれないフクシマの現実と真実が厳然として立ちはだかっているからである。
 第一に、首相がオリンピックプレゼンで、「事実」を見ていただきたいと大見得を切りながら、「汚染水による影響は、福島第一原発の港湾内の、0.3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされている」と述べたことからして、全くの大嘘なのである。
 7月以来、汚染水漏れが次々に発覚、8月19日には、貯水タンクから、当初「少なくとも120リットル」と推定していたものが、実は毎日300トンもの高濃度汚染水が大量に漏洩したことが発覚、この高濃度汚染水は、1リットルあたり8000万ベクレルにも達し、原子力規制委員会は、8/21、この事故を国際原子力事象評価尺度(INES)の「レベル3(重大な異常事象)」に該当すると発表せざるを得なくなったのである。
 さらに東電自身が、9/1、一日あたり港湾内の海水の44%が港湾外の海水と交換されていることを明らかにした。つまり「0.3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされている」はずの港湾内の汚染水は毎日半量近くが外洋へ、太平洋へと垂れ流されており、首相の発言は完全に覆されてしまっているのである。しかも港湾内だけではなく、貯水タンクから漏れ出た汚染水が側溝から港湾外の直接外洋に太平洋に垂れ流されていることまで明らかになっている。
 そして9/18には、国際原子力機関(IAEA)の科学フォーラムで、気象庁気象研究所の青山道夫主任研究官が東京電力福島第1原発の汚染水問題について、原発北側の放水口から放射性物質のセシウム137とストロンチウム90が1日計約600億ベクレル、外洋(原発港湾外)に放出されていると報告している。歴史的に見ても、これほど大量の高濃度の汚染水が長期間漏れ続けている事態は過去に例がないのである。
 さらに当然ではあるがトレンチに大量に流れ込んでいる高濃度汚染水を含めこうした放射能汚染水が、地下水に到達していたことまで明らかになっており、漏洩している場所を確認、特定することすらできない、汚染の規模は計り知れず、従って歯止めをかけるすべさえ立てられない、東電はもちろん、原子力規制委員会も、経産省もどこも、誰も汚染水の全体像を把握できていないのが真実なのである。
 第2の嘘は、「食品の安全基準は世界で一番厳しい」という、全くでたらめな嘘である。現在、日本政府の食品中の放射性物質に関する基準値は、食品からの被曝線量の上限を年間1ミリシーベルとし、野菜や米などの一般食品は1キロあたり100ベクレル、牛乳や乳児用の食品は1キロあたり50ベクレル、飲料水は1キロあたり10ベクレルであるが、チェルノブイリ原発事故後のウクライナでは、パンは1キロあたり20ベクレル、野菜は1キロあたり40ベクレル、飲料水は1キロあたり2ベクレルと、日本の数倍も厳しい基準値を導入している。こんなことは調べればすぐにでも分かる嘘なのに、平然と嘘をまかり通らせようとしている。
 第3の嘘は、「食品や水からの被曝量は、日本のどの地域においても、100分の1である」という大嘘である。「0.3平方キロメートルの港内」ではこれまで1キロあたりのセシウムが71万ベクレルというアイナメが見つかっているが、その港の外の20キロ先で捕れたアイナメからも2万5800ベクレルが検出されている。そして東北地方全域で基準値を超える食品が多数報告、確認されており、「福島県二本松市でも、家庭菜園の野菜などを食べ、市民の3%がセシウムで内部被ばくしている。」(木村真三・独協医大准教授、9/9付毎日新聞)現実を全く無視する、これまた大嘘なのである。
 さらに重大な第4の大嘘は、「健康問題については、今までも、現在も、そして将来も、まったく問題ない」と述べたことである。これほど福島県民を傷つける大嘘はないといえよう。8/20、福島市で開かれた県民健康管理調査検討委員会の席で2012年度の検査結果の中間報告がなされ、前回6月には12人だった甲状腺がんと確定診断された子供の数が、今回、新たに6人増えて計18人になったことが明らかになっている。子供の甲状腺がんの罹患率は、100万人に1人といわれており、福島県の人口が約200万人、そのうち今回の調査の対象の子どもたちは約36万人、明らかに人数が異常に多く、この事態を「今までも、現在も、そして将来も、まったく問題ない」と嘘をつき通す安倍首相の神経の底知れぬ異常さこそが際立っているといえよう。
 こうして真実を「国家最大の敵」とすることとなった安倍首相は、もはやこうした大嘘を撤回も修正もできないところに自らを追い込み、深刻な泥沼にはまり込んでしまったといえよう。
 安倍首相に「人々は最後にはその嘘を信じるだろう」という淡い期待を抱かせない、こうした虚構が崩れ、挫折せざるを得ない、広範で粘り強い闘いこそが要請されている。
(生駒 敬)

 【出典】 アサート No.430 2013年9月28日

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【投稿】何故今リニア新幹線か-原発再稼働を側面から支援するJR東海

【投稿】何故今リニア新幹線か-原発再稼働を側面から支援するJR東海
                                福井 杉本達也 

1 「オリンピックまでにリニア新幹線を」とはしゃぐ官房長官・マスコミ
 9月18日JR東海は2027年に名古屋まで開業するリニア中央新幹線の詳細ルートを公表し、環境影響評価準備書を沿線自治体に提出した。13年度中に国の認可を得、来年度にも単独で工事着工したいというのである。工費は品川-名古屋間で5兆4千3百億円、大阪全面開業までで9兆円もかかるという。これに菅官房長官は「五輪には海外から多くの人々が日本を訪れる。我が国を代表する技術・リニアに部分的に乗っていただければ」(日経:2013.9.19)と語り、経団連の米倉会長は「東京五輪までに名古屋まででも、乗れるようになればいい」(朝日:9.19)とさらに踏み込んだ発言をしている。ところが、当事者のJR東海山田佳臣社長の発言は「どうみても2ケタの年数はかかる。鉄腕アトムが一緒に掘ってくれれば別かもしれないが」と語り、かなり慎重である。リニアの全長286キロの86%もが地下を通るためである。中でも南アルプスを貫通する25キロのトンネルは最難関である(朝日:同上)。

2 原発数基分の電力を消費するリニア
 現東海新幹線は1964年・東京オリンピックに合わせて開業した。しかし、リニア新幹線はどう考えても9月7日に決定した7年後の2020年オリンピックには間に合いそうにもない。 ではなぜ今リニア新幹線なのか。JR東海はJR東日本のような自前の発電所を持っていない。新幹線に必要な電力の全ては電力会社から供給を受ける必要がある。目的は浜岡原発・柏崎刈羽原発の再稼働にある。リニア新幹線は大量に電力を使う(リニアの超電導は電気抵抗ゼロの技術だか、電気消費は減るどころか増えるリニアは車輪走行をしない。強力な超電導磁石で車体を地上から10センチ浮上させ、時速500Kmで地表を「飛ぶ」超電導磁石はリニアの各車両には搭載されている。そして、リニアが走る両脇の壁に設置したコイルに電流を流すとコイルが電磁石となり、車両の超電導磁石との間で吸引と反発が同時に起こり車両が動く超電導とは、極低温では電気抵抗がゼロになり電流が回路内を永久に流れる現象を言うが、リニアではその実現のため、各車両に、液体ヘリウムでマイナス269度にまで冷却する冷凍庫を設置し、超電導磁石を格納する)。JR東海の公式発表では「リニアの消費電力は東海道新幹線の約3倍」であるという。しかし、伊藤洋山梨県立大学教授が、乗客一人を運ぶエネルギーを基に計算した結果、「リニアには原発4基分の電力が必要」と推計する。JR東海がリニアのために原発を稼動させると公に明言したことはない。だが、リニアと原発の関係は否定できない。というのは、山梨県のリニア実験線の主な電力供給先は東京電力・柏崎刈羽原発(新潟県)89年に山梨県への実験線誘致が決まった後、実験線に電力を供給する東山梨変電所に柏崎原発からの高圧線が敷設されている(樫田秀樹:「夢の『リニア新幹線』は第二の原発か」)。
 JR東海の公式発表では、JR東海が2011年5月に発表したリニアの電力消費量は 約27万KW(東京―名古屋開業時、ピーク時:5本/時間、所要時間:40分 約74万KW(東京―大阪開業時、ピーク時:8本/時間、所要時間:67分 時速500km走行時の1列車(16両編成)の想定消費電力は、約3.5万KW であるが、「3.5万KWとは平坦地走行中」と説明している。つまり、1時間あたりリニアが走行に使う平均的な電力ということである。問題は最も電力を要する発進時の最大電力=ピーク時の電力を明らかにしていない。しかし、磁気浮上に至るまでの加速時の消費電力(KW)がバカ喰いである。磁気浮上するまでの数分間の瞬間電力KWがドイツのトランスラピットと極端に変わらないと仮定すると瞬間最大電力(KW)は50名定員1両あたり10000KW。東海道新幹線の定員100名16両編成に合わせると、リニアモーターカー1編成32両の瞬間最大電力は32万KW。東京=名古屋間を上下線5本ずつ、計10本走らせたとして、浮上前加速状態が3本重複した場合「32万KW×3本=96万KW」(OKWAVE:リニアモーターカーの消費電力)との計算になる。大阪まで全線開通となると最低この倍は必要となる。やはり原発数基分の電力が必要となる。

3 架空の電力重要の作りだし
 今年の夏は猛暑であったにもかかわらず電力需要は伸びなかった。この間原発は大飯原発3,4号機235万KW(117.5万KW×2)が動いているだけであった。それも9月15日に定期検査のため停止した。再び原発の稼働は「ゼロ」になった。このままでは原発は必要がないといわれてしまう。この時期にリニア計画を発表したのは膨大な架空の電力需要を作りだし、原発の再稼働につなげたい思惑が動いていると言える。
 福島第一原発事故の直前まで、電力会社はガス会社に対抗し、オール電化住宅(IHクッキングヒーターやエコキュート)ということで新規の電気需要を作ろうとした。また、電気自動車が今後の自動車の主流になるというキャンペーンを張り、各地に無料で充電スタンドなるものを作った。しかし、価格が高く航続距離が短く、特に冬の暖房に余計な電力を消費するなど問題だらけであり実用化にはほど遠いものとなっている。さらに、「地球温暖化対策」という旗も色あせてしまった。日本政府は2013年度から京都議定書で約束した6%の温暖化ガスの削減目標から離脱し、政府の削減目標もなくなってしまった。「原発でCO2削減」という言葉は使えなくなった。原発の再稼働を進めるには新たな旗が必要なのである。

4 原発再稼働に向け旗を振るJR東海・葛西敬之会長
 JR東海の葛西敬之会長はかつての中曽根内閣時代の国鉄分割民営化・国労解体の立役者であり、安倍晋三応援団の1人で、嫌中・嫌韓・買弁でも安倍と一致している。葛西は8月3日、「日本原子力学会シニアネットワーク連絡会」の「原子力は信頼を回復できるか?」と題したシンポジウムにおいて基調講演を行い、「安全を過度に追求したら、経営のバランスを欠く」とし「原発の再稼動ができなければ、燃料費を圧縮できず、ジリ貧状態」なる。「これが経営の面からも原発再稼動を早急に行わなければならない理由だ。」とし、「『放射能への過剰な恐怖感』を民主党政権は生んだ」が、「人体に影響がある可能性は少ない。一歩踏み込んで『大丈夫だ』。」原発の「停止は長引くだろう。このまま国富が流失すれば、経済への悪影響は間もなく出てくる。」と述べた。さらに除染基準についても「現在、福島で年1ミリシーベルトまでの被ばくに抑えるとしている。これは実現不可能で…この基準の設定には、科学的根拠はない」とし、さらに賠償についても「基準を明確にせず、またすべてを東電に負わせるという形のために…無規律な状況に陥っている。何でも東電に補償させようとしている」と述べ、これを「是正しなければ、アベノミクスは原発、エネルギー政策で失速する。政権は英断を持って、悪しき政策を是正してほしい。」とアジっている(「アゴラ」2013.8.6)。
 葛西のいうように、汚染された地域の除染は不可能ではあるが、放射線被曝の年間1ミリシーベルトの設定には科学的根拠はあり、それを超す地域で長期間に亘り生活することは危険である。1ミリシーベルト以上の地域からは少なくとも子どもと若い親は一刻も早く避難すべきである。しかし、高齢者の場合には住み慣れた土地を離れたくない者もいるだろうし、地域を離れた場合、ストレスで病気が進行する者もいる。その場合チェルノブイリ事故で当時のソ連政府が取ったように、1~5ミリシーベルトの汚染地域は選択的避難地域とすべきであろう。もちろん現在日本政府が行っている5ミリシーベルトを超す地域に住まわせることは許されることではない。そして、その土地を離れざるを得なかった者には全て、住居を補償し、就職を斡旋すべきである。葛西は2011年9月に原子力損害賠償支援機構運営委員会委員に就任しているが、賠償について「何でも東電に補償させようとしている」という発言はとうてい許されるものではない。
 ところで、リニア新幹線に超電導磁石を収める冷凍機は1車両に2機搭載するというが、この搭載予定の『ギホードマクマホンサイクル冷凍機』は、まだ特許出願段階で開発途上であり、冷凍機にヘリウムガスやチッソを補充しないでは列車の複数回使用はできない。しかも、その冷凍機を冷やす電源は実験線では車内に積んだガスタービンエンジンによる電力であり、外部電源を使っての冷凍は今後の課題だというのである(樫田秀樹「疑問だらけのリニア新幹線」『世界』2012.9)。全くの噴飯物である。夏の電力需要も少ない、地球温暖化対策ともいえない、LNG発電・石炭火力発電の方が競争力あるとなると、原発再稼働を推進する側の旗色は悪くなる一方である。このため、オリンピックやリニア新幹線といった様々な目眩ましが今後ますます必要となるだろう。 

 【出典】 アサート No.430 2013年9月28日

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【投稿】中東パワーバランスの変化 

【投稿】中東パワーバランスの変化 

<動揺するオバマ>
 8月21日、内戦の続くシリアの首都ダマスカス近郊で、化学兵器による攻撃が行われ、数千人に及ぶ死者、負傷者が出た。
 アメリカオバマ政権は即座に、これをアサド政権によるものと断定し、軍事行動の準備を開始した。アメリカ的にはここで化学兵器の使用を看過すれば、イランの核開発への圧力が保持できないとの判断だったが、思惑は揺れ動くこととなった。
 当初は、米英仏など有志連合による攻撃が月内にも開始される、との見方が有力であった。しかしイギリスが議会や世論の反発で早々に脱落、フランスもオランド大統領が、国連現地調査団の報告を待つという慎重姿勢を示すなか、オバマ大統領も議会の承認を得ることを条件としたため、早期の軍事行動は遠のいた。
 9月5、6日、サンクトペテルグルブで開催されたG20サミットでは、シリア情勢について急遽、米露首脳会談が行われるなど、事態の進展が図られたが、アメリカの目指す軍事行動への賛同は広がらず、プーチン大統領が主張する政治的解決への機運が高まる結果となった。
 9日にはロシアのラブロフ外相がアサド政権に、化学兵器を国連監視のもと引き渡して廃棄することを提案した。翌日にはシリアのムアレム外相がロシアの提案を受け入れることを表明した。
 これを受け、10日にオバマ大統領はホワイトハウスで演説し、アサド政権に化学兵器の放棄を求める国連安保理の決議案採択を通じて、問題の政治的解決を目指す方針を表明し、武力行使から方向を転換した。またオバマ大統領は、「アメリカは世界の警察官ではない」とも述べた。
 12日になり、アサド大統領が化学兵器禁止条約へ加盟する意向を明らかにし、断続的に協議を進めてきた米露外相は14日、シリアの化学兵器廃棄に関する枠組みに合意した。
 今後、シリア政府の提出するリストに基づき、国際調査団が11月までに入国しチェックを進め、化学兵器を国外に移送したうえ、来年半ばまでに全廃するとしている。
 こうした政治交渉が進む中で、国連調査団は16日調査報告書を公表し、8月21日の攻撃と被害はサリンによるものと断定、これは戦争犯罪であるとした。
 国連は、化学兵器を使用したのが誰であるか明確にしていないが、様々な証拠や情報から、犯人は政府軍であるというのが国際的な共通認識となっている。

<強気のプーチン>
 ロシアも政府側の仕業であることを確認していると思われるが、外交戦術上アサド政権を強引に擁護し、政治的解決路線を押し通した。ここまではプーチン大統領の優勢であり、アメリカにとっては手痛い失策となった。
 攻撃後の明確なプランも存在せず、アメリカは最初から中途半端であった。8月21日以降、間髪を入れずに攻撃することができなかった。最も大きな誤算はイギリスの脱落であった。同じ要因でEUの理解も得られなかったのも痛かった。 
 イラク、アフガンそしてエジプトの失敗から戦略面ではアサド政権転覆が目的ではないと縛りをかけ、戦術面でも地上軍は投入せず、駆逐艦からの巡航ミサイルと小規模な空爆という限られた選択肢しかなかった。
 また攻撃準備完了から米議会承認まで半月もの猶予があれば、攻撃を実施してもいくつかの施設を破壊するだけで、憎悪と混乱を助長する結果に終わっただろう。
 これに対して、ロシアの目標はアサド政権擁護と武力行使阻止という明確なものであった。ロシアは現在地中海東部に、太平洋、黒海、バルト海の各艦隊から派遣された巡洋艦、駆逐艦など7隻で「地中海艦隊」を編成し監視体制を強めている。
 さらに太平洋艦隊から巡洋艦1隻、北方艦隊から空母1隻を派遣するという情報もあり、この地域における権益と安定の確保に向けた決意を見せている。
 アメリカは巡航ミサイルを搭載した駆逐艦のほか、強襲揚陸艦、輸送艦を配置しているが、空母は紅海に止まっている。
 この海域には他にドイツ、イギリス、フランス、イタリアが駆逐艦や情報収集艦を展開、またブラジル、バングラデシュ、インドネシア、ギリシアが国連のレバノン平和監視活動の一環として艦艇を派遣しているが、ロシアの集中度は群を抜いている。
 加えてアメリカは、当面国内開催がないオリンピックには無関心で、対シリア攻撃をした場合、IOC総会で隣国のトルコのみならず周辺地域に悪影響を及ぼすことなど考えていなかっただろう。しかし、来年ソチ五輪を控えるロシアは、古くはモスクワ五輪、近くでは北京五輪の際の南オセチア戦争の経験から、混乱の波及など許しがたいものがあった。
 さて、アメリカに一端は軍事行動を決断させた要因となった、イランの核開発問題であるが、24日から開会中の国連総会では穏健派のロウハニ大統領がシリア問題も含め、どのような対応を見せるかが注目されている。
 アメリカの影響力が低下し中東でのパワーバランスに変化が起きつつある中、新たな平和的イニシアチブの確立が求められている。(大阪O) 

 【出典】 アサート No.430 2013年9月28日

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【投稿】注目の堺市長選挙 維新解体の危機 

【投稿】注目の堺市長選挙 維新解体の危機 

 9月29日投票の堺市長選挙が注目されている。4年前の選挙で、橋下府知事(当時)の後押しで、当選した竹山市長が、今回の選挙では、橋下維新の「大阪都構想」に反対の立場で立候補し、維新からは市議会議員の新人が立候補、一騎打ちの選挙戦となっているからだ。
 
 <維新が、全力選挙の理由>
 マスコミは、「崖っぷちの維新」が総力戦で市長選挙に取り組んでいると報道している。橋下は、依然支持者を確保している一方で、その頂点はすでに通過している。慰安婦発言がそのターニングポイントだが、東京都議会選挙、そして7月の参議院選挙でも、埋没と言ってもよい状況に陥っている。さらに、自ら市長である大阪市政において、地下鉄民営化策も、議会の反対で頓挫し、公募した区長の乱行・不適切行動、公募学校長のセクハラ事件報道などが相次いで発覚し、自らの市政にも赤信号が点滅しているのが現状である。
 大阪都構想についても、法定協議会の設置はできたものの、区割り案・財政調整はスケジュールどおりに進んでいない。費用対効果の比較でも、大阪都構想は「夢」を語れても、現実には効果が薄いという結果も出ている。橋下維新は、こうした大阪都構想の停滞状況に、どうしても堺で負けられない事情があるわけである。
 大阪における維新派の伸長は、民主党政権下で進行した。府議では1人区を中心に、自民党脱党組が維新に合流した経過がある。政権は変わり、自民党単独でも衆院で過半数という状況では、「議員」ポストが欲しいだけなら、1年半後の統一地方選挙を前に、復帰を考える議員もかなり存在しているとの情報もある。堺で負ければ、大阪都構想も頓挫、橋下維新も大阪から解体の可能性は大いにあるのである。
 
 <自民・共産共闘の影響>
 迎え撃つ現職陣営は、民主が推薦を決めたが、自民は「支持」に止めた。また、話題になっているのが共産党であり、橋下維新・大阪都構想反対の立場で勝手連的に現職の支持に回っている。公明党は、早々と「自主投票」を決めて静観の構えである。
 先の参議院選挙の各党票数は、自民7万、民主2.5万、共産4万に対して、維新10万。合計すれば、13.5万対10万ということになる。簡単な算術では、現職優位ということだが、そう簡単ではないのが、選挙というもの、選挙戦時点で当落予想は止めておこう。
 選挙も終盤に来て維新陣営は、「共産党に担がれる現職」との批判を強めている。勝手連とは言え、選挙行動は整合されているようで、常にオール与党と共産が対立してきた堺市長選挙は、様変わりした印象は強い。
 
 <「堺はひとつ」だけでいいのか>
 確かに、大阪都構想に賛成か、反対かが今回の堺市長選挙の争点ではある。しかし、都構想で堺が発展する、という維新派の主張は「夢」物語である一方、「堺はひとつ」を唱える現職も、余りに「無策」ではないか、言うのが筆者の見解である。
 阿倍野や北大阪の発展と比べても、堺のポテンシャルは下がり続けている。買い物客は大阪市内に流れ、ベッドタウン化が進行している。行財政改革で生み出されたはずの資源を有効に活用できていない。泉北ニュータウンの高齢化問題、オールドタウン化は、千里ニュータウンの「再生」の取組みと比べても、比較にならないほど遅れている。
 こうした現状を「是」とする現職を、大阪都構想に反対しているからと支持する勢力には、他の利権の臭いが付きまとう。都構想論議も結構だが、肝心の重要政策についても、大いに議論があって然るべきだと、感じる。
 
PS 本紙が発行される時点は、丁度選挙結果が出ていることだろう。1週間前の選挙状況報道は、現職がリードとのこと(読売)。選挙結果が、どのようになるか、注目していきたい。(2013-09-22 佐野) 

 【出典】 アサート No.430 2013年9月28日

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【本の紹介】横田ミサホ著 「原爆許すまじ」

【本の紹介】横田ミサホ著 「原爆許すまじ」
          2013-06-15 鳥影社 1600円+税 

 私達の恩師でもあり、解放教育の指導者でもあった故横田三郎さんの奥様、ミサホさんから、この本をお送りいただいたのは、6月であったか。紙面の都合で、ご紹介が9月になったことをお許しいただきたい。
 ミサホさんとは、私は二度しかお会いしていない。一度は、島根県大田市のご自宅をお尋ねしたおり、そして2009年5月友人のT君と高槻市にお尋ねした折である。先生が突然旅立たれた後は、何かにつけてお手紙をいただいてきた。先生から奥様の事は、あまり聞いていなかったが、この本を読んでみて、中々の活動家(?)であり、文筆家であると再認識させられた。
 
 ミサホさんは、広島の原爆投下を、呉の海軍工廠で経験されている。島根県立大田高等女学校4年生の時、学徒動員で働く朝、閃光と「きのこ雲」に遭遇、その後、敗戦で動員が解除され、大田市への帰路、焼け野原の広島市内に衝撃を受ける、この体験が、ミサホさんの原点である。
 ミサホさんは、戦後、大阪被団協淀川支部の活動や婦人運動に取組まれ、大阪文学学校にも関わって、折りに触れて随筆や小説なども書かれてこられ、本書は、こうした活動の一端をまとめられたものである。
 
 戦後丸木俊画伯の「原爆の図」を初めて見た時の「痛みを伴う」感動、本書では、まさに自らの広島体験から語り始めておられる。(第1項「原爆許すまじ」)1982年の反核広島行動に併せて、呉や広島を訪れた際の感想、反核への思いが綴られている。
 第2項は、従軍慰安婦問題。第3項は、731部隊について、第4項は、「父の尊厳死」についてである。僧侶であったミサホさんの父親が死期を悟り、断食をして死を迎える側に寄り添った思い出の記である。安らかな死とは何か、現在も問われ続ける問題を扱われている。この他に、創作文章が数点収められており、今回じっくり読み直してみて、著者の厳しい、そして優しい人となりが滲んでいるように思える。
 
 本書に添えられていた挨拶文に、ミサホさんの思いが語られている。
「戦時下の学徒動員での死と隣り合わせた苦しい体験、そして、原爆投下直後の広島の状況など、この悲惨を次世代に伝えなければならない。まして、憲法改悪をゆるし、人々が殺し合う戦争を二度と起こしてはならない。そんな願いを込めて、「たった一人の反核運動」を世に問いたいと思い、拙い文章ですが敢えて出版する決意をしました。」

 読者各位にも、是非読んでいただきたいと思います。(2013-09-23佐野) 

 【出典】 アサート No.430 2013年9月28日

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