【投稿】生活保護が危ない

【投稿】生活保護が危ない

 生活保護がまた、マスコミを賑わすテーマになってきている。受給世帯数が160万世帯、人員で210万人を越えて増え続けているからだろう。ベクトルは、単純な抑制論、不正受給キャンペーン、受給する事自体を「無責任」とするような「排外主義的」傾向を強めており、極めて危険な動きであると思う。

<芸能人の謝罪から>
 人気タレントの母親が、彼の下積時代に生活保護を受給開始し、その後、人気が出て収入が増えても保護を受け続けていると、自民党の片山なつき議員がブログで取り上げたことが発端だった。一定の仕送りを福祉事務所に届けていたようで、法律的には問題は無い。ただ、「道義的」には、少し問題を感じるところだが、マスコミが取り上げると少々、そうした枠をはみ出し、打撃性の強いものとなった。
 続いて、大阪では、地方公務員の親族が生活保護を受けているという話題に飛び火した。発端は、東大阪市で議会で問題になり、市が30名の職員の扶養義務を負う親族が、保護を受給していると公表。仕送りをしていないケースが大半と報じられた。その後、堺市や岸和田市などが、同様の調査結果を公表した。(その後、府内で28市が調査・公表している。)
 さらに、地方議員や国会議員の親族に保護受給者がいる、との情報も飛び交い、自ら親族に保護受給者がいると「謝罪」した大阪府議会の維新議員まで出てきた。
 報道によると、「維新の会府議:親族が生活保護を受給–(8/2)大阪維新の会に所属する府議の親族が生活保護を受けていることがわかり、議員本人が釈明しました。府議は、「大変お騒がせしたことを反省しますとともに、今後このようなことがないよう議員活動を進めていきたいと思います」と釈明しました。・・・今日記者会見し、妻の姉、つまり義理の姉が八尾市から生活保護を受けていることを認めました。」そして、今後経済的支援をすると明言してみせた。
 この府議の行動は、果たして褒められたものか。維新議員の水準がよく分かるというものだが、生活保護がどういう制度なのか、90万円近い議員報酬があれば、親族に保護世帯があってはならない、かのような印象を受けるし、保護制度を敵視するかのような姿勢である。
 
<ベクトルは、不正受給の追及へ>
 こうして、生活保護が増え続けている経済・社会的要因や、社会制度の不備の問題は脇に置かれ、不正受給が多いとか、扶養義務者に「高額所得者」がいるのに、保護制度を否定的な方向から議論しようとする傾向に流れている。
 大阪だけではないと思うが、冷静な議論を飛び越えて、打撃的に敵を創りだし、センセーショナルに「問題の指摘者」「指弾者」として振舞うことで、世論を誘導しようという傾向が強くなっている。強者が弱者を叩くという構造だが、問題の解決への道筋は一向に描かれていない。

<最低賃金との比較論>
 また、生活保護と最低賃金の比較が再び注目を浴びている。「働かなくてももらえる」生活保護基準が、最低賃金を上回るのは、いかがなものか、とのマスコミ報道が目立つ。
 ただそのベクトルは、最低賃金の低さではなく、生活保護制度への批判を内包したものであり、増え続ける生活保護世帯数・人員と、連動する保護予算(国の予算で3兆円を越えている)の増加に対するキャンペーンの色合いが強い。
 人気タレントも公務員も、果ては議員も、その「批判」にひれ伏している。維新の会府議の「謝罪」も、それに迎合するものであろう。

<路線の定まらない民主党>
 税と社会保障の一体的改革(まだ、私もさっぱり理解できないが)を行うとして、消費税増税をおこなった民主党も、人気タレントの問題や、最低賃金との比較を受けて、保護水準の引き下げを言い出した。すでに始まっている2013年度予算編成においては、生活保護予算の削減を盛り込んでいると報道されている。
 「生活が第一」を訴えて政権交代を実現した後、すぐに着手したのが、生活保護の母子加算復活だったことは記憶に新しい。以後、生活保護の制度改革は、ほとんど進んでいない。にも関わらず、世間というか、マスコミ誘導というか、生活保護への逆風を見て取るや、「保護基準の引き下げ」に舵を切っている。

<医療費を削減すれば、予算は激減する>
 生活保護予算の内、6割は医療費である。しかし不必要な、過剰な医療も行われている。ジェネリック医薬品の利用も進んでいない。奈良の山本病院の例を出すまでもなく、勝手に病名を付けて、不必要な医療行為を繰り返すことは、「常態化」していると思われる。
 自己改革できない医療界に対してこそ、徹底的なメスを入れるべきであると私は考えている。さらに、受給者自身にも一定の規制は止むを得ないのではないか。せめて、国保医療の水準を超える場合には、上限を設定することは、直ちに可能ではないか。
 筆者は、医療界に少々批判的な意見を持っているわけだが、病名は付けても、直せない医療ではどぶに予算を捨てているようなものであろう。医療費削減が、一番簡単と思われる。ただ、簡単な事なのだが、抵抗が大きいことも事実なのだが。
 
<今後も増え続ける生活保護>
 非正規雇用を増やし、不安定雇用が3分の1と言われるまで、低賃金と不安定雇用を常態化させてきた「新自由主義」施策が生み出したものが、最後のセーフティネットと呼ばれる生活保護受給者の増加に他ならない。今後も、年金だけで生活できない高齢者と、雇用保険も補償されない不安定雇用に従事せざるを得ない中高年を中心に生活保護受給者が増え続けることだろう。しかし排外主義的な議論では解決しない事は忘れてはならない。(2012-08-19佐野秀夫) 

 【出典】 アサート No.417 2012年8月25日

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【投稿】「ぶれない」生き方 —「平和ツアー」で出会った人たちに学んだこと—

【投稿】「ぶれない」生き方 —「平和ツアー」で出会った人たちに学んだこと—

8月8~10日、大阪府下4単組の教職員組合女性部合同「平和ツアー」に参加し、多くのことを学ぶことができた。
1日目、岡山駅で降り、後楽園散策→荒手茶寮で昼食後、再び岡山駅から乗車、瀬戸内市邑久町へ向かった。国立療養所邑久光明園のAさんにお会いし、直にお話を聞くためである。16歳で発症し、「治療が終わったらすぐにでも帰れると思っていた。」と語るAさん。現在の年齢からすると、療養所で過ごして来られた年数は半世紀を超える。「辛かったことは…?」というわたしの愚問に、「辛かったのはあたりまえ。」「辛いことをいちいち気にしてたら、生きていかれへん。」と笑いながら答えてくださった。
2日目の午前中、長島愛生園で歴史館と園内を、学芸員の方の案内で見学した。
午後、岡山→徳山→柳井港→祝島と電車・船を乗り継いで、第2の目的地に到着。
船を降りるとすぐ、「はまや旅館」が見えた。今年3月下旬に祝島へ来た他県の友人が、「昭和の香り」がする旅館と表現していたが、正にその通りであった。予約したときに「食事なし」ということだったので、仕出し屋に夕食用の弁当を運んでもらった。交代で入浴を済ませ、聞きとりをさせていただく予定の清水さん(上関原発を建てさせない祝島島民の会、上関町町会議員)の到着を待った。
清水さんは、本業の多忙に加え、四年に一度行われる神恩感謝の合同祭事「神舞(かんまい)」に備えての練習指導で忙しくされているにも関わらず、祝島における反原発の闘いについて話をしてくださった。「建設予定地から4㎞と近く、『原発を見ながらの生活や離島で逃げ場がない』などを訴え、上関町・祝島の9割を超える住民で、1982年10月、反原発組織「愛郷一心会を結成(のち「上関原発を建てさせない祝島島民の会」に再編)。同年11月から現在まで毎週月曜日に島内デモを実施し、2008年6月に1000回を超えて現在も続いている。」島内デモについては、ギネスの記録を超えたということで、近いうちに登録申請を行うそうだ。
「なぜ、一つの地域がほぼまとまって反対するようになったのか。」について、いくつかの理由を挙げて説明をされた。「祝島からは、早朝昇ってくる朝日がとてもきれいに見える。そのちょうど真下が原発予定地。東の空が一変する可能性が大きい。それに対する憤りや反発が強かった。」というくだりに、わたしは一番共感し心に響くものを感じた。翌朝、平さんの棚田に行くために早めに起きたわたしたちは、祝島の人たちが誇る「朝日」を見ることができた!
今夏の平和ツアーで、「苦難」を強いられながらもたくましく生きてこられたAさんや反原発の闘いを貫いておられる祝島の皆さんに出会い、「ぶれない生き方」を学ぶことができた。政治家をはじめ「ぶれまくる」人々が多い昨今、この意味は大きい。「ぶれない」=「教条的」ということではない。人として一筋の生き方を持ち、それぞれの生き方を尊重し合い、高め合いたいと思う。
(大阪 田中雅恵)

【出典】 アサート No.417 2012年8月25日

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【日々雑感】熊森 VS 小出対談 ②

【日々雑感】熊森 VS 小出対談 ②

8月と言えば、広島のこと、長崎のこと、終戦のこと等、語り継いでゆくべきことは山ほど有ると思いますが、今現在最も大切なことは、原発問題だと思います。
前号で書ききれなかった熊森協会のインタビューと小出先生との対談の続きを書かせていただきます。お許しください。

<被爆障害は、5年後ぐらいから出てくる>
熊森:放射能を恐れすぎるなと言う方も出てきましたよ。
小出:それは愚かな人です。ドイツのレントゲンが放射能というものを見つけたのは、1895年なんです。エックス線です。その正体をつきとめようと研究したキュリー夫妻は2人とも身体がボロボロになりました。夫人は白血病で死にました。その後もたくさんの人が放射線に被爆をして、命を落としていくという事態が続いたのです。
広島原爆の後、米軍は、放射能が人間に与える影響を調べるために、ABCC(原爆傷害調査委員会)という研究所をつくりました。
5年後、どうも白血病が増えているということに気付きます。10年後くらいから癌が増えてくるということがわかりました。

<核の世界は、奥山生態系同様、人間がコントロールできない>
熊森:湯川博士が、核の世界は人間にはコントロールは無理だと言ったとか言わなかったとか、最近ネットで議論されていますが、先生はどう思われますか?
小出:核エネルギーを利用しようとすると、必ず、核分裂生成物という放射性物質ができます。これを無害化するための研究を、人類は70年間続けてきたのですが、無害化できません。それなのに、原子力利用を進めるなど、論外です。人類は原子力利用研究をしてはならない。ただ、すでに造ってしまった大量の核のゴミを、なんとか後世に重荷にならないようにする責任が、今の私たちの世代にあると思います。その研究はしなければなりません。
熊森:除染は移染でしかありませんが、消染に成功したという話がネットに出ています。
小出:有り得ません。完璧に有り得ません。だから私はやるなと言っているんです。放射能は、燃やそうが煮ようが水をかけようがEM菌をかけようが、何をしても消えないのです。汚染された瓦礫を燃やせば、焼却灰の中に、猛烈な濃度で残っています。
熊森:今日、先生のお話をお聞きして、核の世界と、私たちが取り組んでいる奥山生態系の世界が、永遠に人間がコントロールできないという点で、全く同じであることがわかりました。
結局自然界には、人間の頭ではどうしようもないような、どんなに科学を発展させたところでコントロールできない、神の領域があるということですね。
そういうところに中途半端に手を出すことによって、取り返しがつかない事態を招いてしまう。現代人は、科学万能信仰に冒されて、傲慢になっていることに気付かねばなりません。
小出:人間には、わからないことを、わかるようになりたいという欲求があります。そして、知識を増やしていくわけですが、その知識をどう使うかは、知恵です。こちらの方は、ソクラテスの時代から見ても、全然進歩していません。
熊森:人間って愚かな生き物ですね。
小出:そう思います。ある程度、科学の進歩にたがをはめないと、暴走してしまうでしょうね。

以上、いろいろ書き綴ってまいりましたが、今回もまた、小見出しの二つを残して書ききれませんので、次回に廻させていただきます。
この、くまもり協会72号は又10部づつ取り寄せて、友人や知人に配ってゆこうと思っております。何ら元活動家らしきこともできず、生活に追われ、生き恥をさらしている自分ですが、せめてもの出来ることは誠実に実行してゆこうと思っております。 (2012-08-17早瀬達吉)

【出典】 アサート No.417 2012年8月25日

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【投稿】原発再稼働反対・「紫陽花革命」の地鳴り

【投稿】原発再稼働反対・「紫陽花革命」の地鳴り


7/16さよなら原発10万人集会の会場

<<「音」から「声」へ>>
首相官邸前で毎週金曜日、夕刻、18:00~20:00に行われている原発再稼働への抗議行動は、確実に民主党・野田政権を追い詰めている。首相が記者会見で関西電力・大飯原発再稼働を宣言した6/8以降、この首相官邸前抗議行動は飛躍的に拡大し始め、6/29には20万人を記録し、それ以降も10万~15万人と空前の規模の抗議行動とデモが繰り広げられている。そして7/16の東京・代々木公園で開かれた「さようなら原発10万人集会」には17万人もの人々が結集した。とりわけ首相官邸前のこの抗議行動は、1960年の日米安保条約反対闘争以降、国会と首相官邸を取り巻く最大規模に達しており、歴史的記録をさえ塗り替えかねない、新たな歴史的事態を招いている。
当初、野田首相は、「計画停電」の脅しと大飯原発再稼働さえ実行に移してしまえば、抗議デモなんて沈静化し、雲散霧消すると踏んでいたのであろう、6/29、野田首相は官邸から公邸に戻る際、抗議デモを「大きな音だね」と、傍らの警護官に語り掛け、内心ビクビクしながらも、まるで単なる雑音、頭から無視する姿勢を露骨に示していた。このことが報じられると、「音」ではなく「声」を聞けと官邸や衆院議員会館の野田事務所に抗議が殺到し、首相側近は「毎週金曜夜は首相日程に外食を入れづらくなった」とこぼす事態である。
野田首相は慌てて軌道修正をし始め、国会答弁で「(音と)言った記憶がない」と釈明。また、毎週金曜のデモのたびに記者団に「さまざまな声が届いている」(7/6)、「多くの声を受け止めていく」(7/13)、7/16の民放番組では、全国に広がる抗議活動の感想を聞かれ、「国論を二分するテーマになっていると考える。さまざまな声に耳をしっかり傾けていきたい」と、聞く気もないのに姿勢だけは改めざるを得なくなった。
民主党内からさえも「再稼働が決まり、原子炉が動き出してもデモは鎮静化しない。官邸前(の行動)もふくれあがり、さらに中部電力前、関西電力前など全国に広がっている。すさまじい」、「次の選挙に響く」との声が上がり始める事態である。

<<「五感をもって触れる必要」>>
その極めつけは、この首相官邸前抗議行動に、民主党政権への政権交代を成し遂げ、首相官邸の主であった当の鳩山元首相自身が直接参加し、首相官邸に向かって再稼働反対を訴えたことである。まったく前代未聞の異例な事態の招来である。一番驚いたのは野田首相であろう。
鳩山氏は、「毎週金曜日に行われている首相官邸前での再稼働反対の大規模行動に行きました。・・・私がこの集会に行かなければと思ったのは、私自身が、一衆議院議員として、また内閣総理大臣を務めた者として、毎回増えていく国民の声、民意のエネルギーに五感をもって触れる必要があるという一念と同時に、この思いを直接官邸に伝えなければなければならないということです。特定のイデオロギーや政治的な集会だけではこのようなパワーは生まれません。・・・今我々は、『大きな声だな』と言うだけでなく、今、国民が何に苦しみ、何を考え、何を求めているか、を真剣に考え、行動しなければなりません。私個人としては、原発の再稼働については、福島原発事故の原因が完全に究明されておらず、国会事故調査委員会の調査により、その原因が津波だけでなく地震による可能性が指摘されているにも拘わらず、再稼働に踏み切るということについては、どう考えても賛成できません。」と、その態度、政治姿勢を鮮明にしている。
鳩山氏にとっては「国民の声、民意のエネルギーに五感をもって触れる必要」があったが、野田首相にとっては「自民党、財界、原子力村の声」に「五感をもって触れる必要」あった、というその決定的相違がここに浮き彫りになっている。鳩山氏自身にはいくつもの問題点があり、辞任に追い込まれたのであるが、今回のこうした行動、政治姿勢こそが全民主党議員に求められていることを明らかにしたことにおいてその意義は大きいといえよう。野田首相にとっては、政権崩壊への重要な一撃である。

<<「新しい政治参加のうねり」>>
さらには、鳩山元首相に引き続き、あの菅前首相までもが7/21、原発再稼働反対を訴える首相官邸前の抗議活動について、「新しい政治参加のうねりが起きている」と評価したうえで、「首相がいろいろな意見を聞くのは望ましいと思うし、そうアドバイスしている」と述べ、野田首相に対し、主催者との面会を助言したことを明らかにした。小沢氏や鳩山氏、羽田元首相、江田党最高顧問をはじめ、民主党議員の3分の1に当たる119人が賛同した大飯原発の再稼働の再考を求める署名にさえ参加、賛同しなかった菅前首相が、いまさら何が「新しい政治参加のうねりが起きている」などと言えた代物ではないが、これまた野田政権が求心力を全く失ってしまっている証左でもある。
ともあれ、首相官邸前と国会周辺、霞ヶ関が52年ぶりというほどの人々で埋め尽くされ、「再稼働反対!」「原発いらない!」というただ一点に絞られ、集約された必死の叫び、怒りの声が、民主党・野田政権に押し寄せ、根底から突き崩す勢い、まだ端緒にしかすぎないかもしれないが、「紫陽花(あじさい)革命」と呼ばれるほどの実体を持ち始めたとも言えよう。
この官邸前抗議行動を主催する「首都圏反原発連合」は、13のグルーや個人が力を合わせようと、2011年9月に立ち上げたネットワークで、7/6官邸前抗議行動の「よびかけ」では、「私たち、首都圏反原発連合は、3月29日より毎週、大飯原発再稼動反対の首相官邸前抗議を行ってまいりました。当初300人程度だった参加者は、1000人→2700人→4000人→12000人→45000人→200000人と、回を追うごとに劇的に増加しています。福島第一原発事故の収束もままならないまま、そこから何の教訓を得る事もなく、再稼動ありきで物事を進めていった野田政権に対しての怒りがいよいよ噴出する形で、この抗議行動の規模は拡大を続けています。野田政権は、世論の大半を占める市民の声を無視し、この再稼働を進めました。したがって、私たちもまた、今回の決定を黙って受け容れる必要は一切ありません。7月6日(金)18時より、首相官邸前にて原発再稼動反対の抗議行動を行います。前回をはるかに凌ぐ、空前の規模の抗議行動で、大飯原発3号機の即時停止と、再稼動決定をただちに撤回、そして、私たちが一切諦めていないことを、野田政権に対して突きつけましょう。」と訴えている。

<<無党派・非暴力直接行動>>
7/13の官邸前抗議行動に筆者自身も参加したが、午後6時からだというのに、午後2時過ぎには首相官邸に通じるほとんどの道路が警察車両で歩道脇にびっしりと連ねられてブロックされ、警察官が要所要所に多数配置され、歩行者を強制的に誘導する事態であった。回りまわって3時過ぎに官邸前に着いたがもう多くの人々や報道関係者が詰めかけ、5時前にはもはや身動き出来ぬ程の人の波で、再稼働に抗議するプラカードや風船、うちわ、のぼり、ゼッケン、大画板、旗指物が所狭しと揺れ動き、開会を今や遅しと待ち構える熱気が充満。6時になるやすぐさま主催者挨拶が始まり、注意事項として、「1.反原発・脱原発というテーマと関係のない特定の政治団体や政治的テーマに関する旗やのぼり、プラカード等はなるべくご遠慮ください。2.現場が混雑しているため、ビラ配布や署名集め等は抗議終了後の20:00以降にお願いします。3.この首相官邸前抗議は、あくまで非暴力直接行動として呼びかけられたものです。その趣旨を十分にご理解頂きご参加いただきますよう、宜しくお願い致します。」と言い終わるや、すぐさま官邸に向かってシュピレッヒコールが始まり、「再稼働反対!」「原発いらない!」が繰り返し繰り返し、声が枯れる勢いで、あくことなく続けられた。その間何人かのスピーチがあったが、これまた注意事項として「1.一人あたり 「1分以内」 でお願いします。2.反原発・脱原発テーマに関係のないテーマでのスピーチはご遠慮ください。3.特定の団体のアピールにつながるスピーチはご遠慮ください。個人としてアピールをお願いします。4.主催者側の意向に沿わない内容であると判断した場合、中断をお願いすることもあります。あらかじめご了承ください。」が明らかにされ、これもしっかりと守られ、一人が終わると次から次へとスピーチが続くのではなく、必ず官邸に向かって「再稼働反対!」「原発いらない!」のシュプレッヒコールが行われる。
ウォール街占拠運動と相通じる、こうした至極明瞭な原則の徹底こそが、これまでの運動を包摂しつつも、なおかつこれまでの組織動員主義的な運動を乗り越えさせているものではないかと実感させるものであった。個人個人の意識に基づいた一過性ではない粘り強さと継続性もそうした原則の徹底によってこそ保証されるものであろう。そしてこの運動は全国各地に急速に拡大し始めている。
首都圏反原発連合は、7/29には国会議事堂をデモ行進とキャンドル・チェーンが取り囲む「脱原発国会大包囲」行動を呼びかけている。(日比谷公園中幸門で集会開始15:30、デモ出発16:30、国会包囲19:00(集会/キャンドル・チェーン))
(生駒 敬)

【出典】 アサート No.416 2012年7月28日

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【投稿】「再稼働、はんたい!原発、いらない!」 ~官邸前金曜日デモに参加して~

【投稿】「再稼働、はんたい!原発、いらない!」 ~官邸前金曜日デモに参加して~

 7月13日(金)、この日から3連休にかけて予定していた田舎旅が中止になったので、一度参加したかった「首相官邸前デモ」に行くことにした。
 午前8時前に自宅を出て、天王寺→大阪→新大阪→品川→有楽町→麹町と乗り継ぎ、先ず宿泊先のホテルに着いた。チエックイン可能な時刻に少し間があったが、フロントの方の「お部屋の準備ができているのでどうぞ。」という案内で、部屋に入った。雨が予想されていたので着替えを済ませ、サービス用のお茶で一服後、ホテルを出た。
 フロントでもらった周辺地図を頼りに、官邸前を目指して歩き始めた。自民党本部前を通り国会議事堂に近づいて行くと、まだ午後2時半頃なのに、車道には警察車両がずらり、背中に「警視庁」とある服装の警官があちらにもこちらにも・・・!胸に「SP」バッチをつけた、TVドラマや映画でしか見たことのない人たちも、耳に装着した物をしきりと気にしながら行ったり来たりしている。
 先週のデモ参加者が「20万人」とも言われる人数に膨れ上がったことに、首相官邸はじめ警察関係者はきっと「恐れをなした」と想像できる。車道と歩道の間に鉄柵を置き、歩道にも「一般歩行者が安全に通行できるように・・・。」(デモ隊の最前列付近に止めた警察車上に立った警官が連呼していた。)赤いポールを置いて、「規制!規制!」ばかりが目立った。「過剰警備」の費用は税金から支出、無駄なことして・・・。


7/13経済産業省前テント

 以前から気になっていた「経産省前テント」にも寄った。受付でカンパをして、テント前のイスに座っているご年配の方と話した。「84歳」と自己紹介されたその方から、今年出版された著書「核も戦争もない世界を!すこやかな未来を願って」を購入し、話を聞いた。自宅のある国分寺から毎日のように通っておられる、その「生き方」に学びたいと思った。
 官邸前に戻ろうとすると、まだ4時過ぎなのに、歩道に人、人、人・・・!若い人そうでない人、子どもを連れた人や仕事帰りらしい人、楽しそうに談笑しているグループらしい人たちの間を、通り抜けて前列に進み出た。
 午後6時、マイクを持った若者(と思うが、何しろ顔が見えないので)の呼びかけで、「金曜日デモ」は始まった。「再稼働、ハンターイ!」「再稼働、はんたい!」「原発、いらない!」の連呼、連呼、連呼。初めの呼びかけの時に、「いろいろ主張はあると思いますが、このデモは、原発の再稼働に反対して呼びかけられているので、理解をお願いします。また、団体や組織の旗・のぼりについても、できる限り遠慮してください。」ときっぱり。参加者から異議の声が少し聞こえたが、多くの参加者は容認した。そうした確認をきちんとする主催者の「しっかりさ」に、わたしは感心した。お互いの主義・主張はあろうとも、「このデモはこれひとつでいきましょう!」というシンプルさが、わたしには心地よい。

7/13再稼動に反対する官邸前行動

 午後8時、終了。来た道をそのまま帰ろうとすると、「こちらは通れません!」と言う警官。大回りをさせられたので、4時間程立ちっぱなしでガクガクになった足が一段と痛く感じられたが、参加者の多さを実感でき、気持ちは清々しかった。
 安保反対デモや学生運動、組合運動などを経験された方々、機会があれば一度「金曜日デモ」に参加してみてください!「アジサイ革命」が予感できるかも・・・。
 また、来る7月29日(日)に「脱原発 国会大包囲デモ」も計画されているようなので、そちらへの参加もお薦めします。
(大阪 田中雅恵)) 

 【出典】 アサート No.416 2012年7月28日

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【投稿】国家・官僚の無誤謬神話と「核兵器開発宣言」クーデター

【投稿】国家・官僚の無誤謬神話と「核兵器開発宣言」クーデター
                            福井 杉本達也 

1 日本存亡の危機に「事務系だから」と敵前逃亡した無能国家官僚
 前原子力・保安院長であり福島原発事故対策本部事務局長であった寺坂信昭は福島原発事故対応の真っただ中・東日本大震災発生の当日3月11日午後7時すぎ、原災本部初会合終了後官邸を去り、保安院に戻ってしまった。事務方のトップが職務放棄したことに対し、彼は今年2月の国会事故調の参考人聴取で次のように答えている。
 
○参考人(寺坂信昭君)「私はどうしても事務系の人間でございますので、これだけの非常に大きな事故、技術的な知見というものも極めて重要になってくる、そういった中で、私が残るよりも、官邸の方に技術的によりわかった人間が残ってもらう方がいいのではないかというふうに、これは私自身が判断いたしまして、私が原子力安全・保安院の方に戻った次第でございます。」
○野村修也君「私はちょっとびっくりするのですけれども、原子力の規制行政庁のトップは原子力についての知見を持たない方がなっておられるということなんですか。」
○参考人(寺坂信昭君) 「知見といいましょうか、今私が申し上げましたのは、私は原子力工学その他、理科系のそういう訓練といいますか学問を積んで、それで原子力安全行政をずっとやってきたということではないということでございまして、もともとは事務的な者でございまして、次長のときに初めて原子力安全行政を担当した、そういうことでございます。」(2012.2.15 「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会会議録第四号」・寺坂信昭前保安院長発言部分)
 寺坂の敵前逃亡の行為は国家公務員法第82条第1項「職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合」に該当し明白に懲戒の対象である。しかし、処分を受けたと言う話は寡聞にして知らない。しかも、職務放棄の言い訳が“事務系”だからという答えに委員の野村修也は言葉を失った(産経:2012.4.24)。正に官僚の無責任体質を地で行く人物である。こんな人物を代々トップに据える保安院が、「原子力規制委員会ができるまでは安全審査はうちの領分である」と大飯3.4号機の再稼働を認めた。我が国家は落ちるところまで落ちたといわねばならない。

2 国家・官僚は“無誤謬(むごびゅう)”-何があっても誤りを認めない
 自治官僚出身の西川一誠福井県知事は大飯原発再稼働に当たり、「政府がぶれることなく国民にメッセージを示して欲しい」との首相に会見をせまった(朝日福井紙面:6.18)。「ぶれるな」とは何があっても誤りを認めず、過去の政策を踏襲せよということである。 元経産省官僚の古賀茂明氏は「役人には非常に無謬性とかいう言葉でよく言われるんですけど、間違い認めないんですね。…もう1つ非常に欠けてるのは責任をとらない。…失敗したら誰が責任取るんだってことを考えているうちに…後手に回る」(文化放送:2011.10.19 「吉田照美ソコダイジナトコ」)と述べている。
「綸言汗の如し」(りんげんあせのごとし=皇帝の発言は、かいてしまった汗のように体に戻すことができない)とは、皇帝が一旦発した言葉(綸言)は取り消したり訂正することができないという中国歴史上の格言である。皇帝など国家の支配者の発言は神聖であり絶対無誤謬性を有するとされ、臣下が疑念や異議を差し挟むことは不敬とされた。 このため、一旦皇帝より発せられた言葉は仮に誤りがあっても、それを訂正することは皇帝が自らの絶対無誤謬性を否定することになり、皇帝の権威を貶めてしまうためタブーとされたのである(参照:Wikipedia)。「役人は先例があれば安心し、先例の見直しは、よほどの外圧がかかるまではしない。政治が変われど、行政の継続性が大切であるというのである。先例に誤りがあっても、役人無誤謬論で、敗戦のさいの国体護持のごとく、先例を護持する。」(阿部泰隆中央大教授『こんな法律はいらない』)。

7/16さよなら原発10万人集会より

3 原子力基本法の改悪はあからさまな「核兵器開発宣言」―宮廷クーデター
 6月20日、この官僚国家は原子力規制委員会設置法の附則第11条として密かに「前項の安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、行うものとする。」という原子力基本法第2条の法の「(基本方針)」を根底からひっくり返す改正条文を忍び込ませ、前代未聞にも「個別法」の附則で「基本法」を改正する挙に打って出たのである。「基本法」とは、国の制度・政策に関する理念、基本方針が示されているとともに、その方針に沿った措置を講ずべきことを定めている法律である。その基本方針を受けて、その目的・内容等に適合するように行政諸施策が定められ、「個別法」(例えば今回の「原子力規制委員会設置法」)にて遂行される。基本法は「親法」として優越的な地位をもち、他の法律や行政を指導・誘導する役割がある(参照:Wikipedia)。当法案は議員立法で提案されたものであるが、附則の改正で本法を改正するなどという裏技を議員ができるはずはない。これは官僚による暴挙・“宮廷クーデター”以外の何物でもない。いかに自らが信頼されていないか、国民とは分離した存在であるかを暴露した。
「安全保障に資する」とはどう読もうが“軍事目的”と言うことであり、すなわち核兵器を開発するという意味である。「原子力の平和利用」という名の下、1955年以降密かに核兵器の開発を進めてきた日本国家は、福島原発事故において、「平和利用」に説得性がなくなったと見るや露骨に居直り、あからさまに核開発の宣言を対外・内的に行ったのである。同日成立した、宇宙航空研究開発機構(JAXA)法は、「平和目的に限る」との規定を削除し、安全保障目的で人工衛星などを開発できるように改正した。核弾頭と運搬手段のミサイル開発の合法化により、名実とも日本の「核は保有しない、核は製造もしない、核を持ち込まない」(佐藤総理答弁 1967年12月11日:外務省HPより)という非核三原則は放棄された。

4 日本を滅亡に追い込む官僚機構の核政策
 2009年の民主党を中心とする連立政権は日本史上初めて選挙による民主主義が実現したと評価された。あれから3年、この党は官僚に乗っ取られてしまった。最初は検察特捜部の小沢捜査に始まり、鳩山氏の贈与問題と普天間問題で官僚機構に手玉に取られ全面降伏した。その後政権人事に介入し、「脱原発」に踏み込み官僚機構を裏切った菅首相下ろし、「最後の言葉はオフレコです。絶対書いたらその社は終わりだから」の松本龍前復興長官発言、鉢呂前経産相の「放射能つけちゃうぞ」発言などで官僚に都合の悪い政治家をどしどし排除した。一川保夫前々防衛大臣・田中直紀前防衛大臣の“失言”をあげつらい、自衛官→外務省上がりの森本敏氏を防衛大臣に担ぎ、オスプレイの普天間・岩国配備にやっきとなっている。「米政府の基本方針で『どうしろこうしろ』と言う話ではない」(フジテレビ:6.16)と野田首相は自らの言葉を持てず親米派官僚の操り人形となっている。極めつけは、陸山会事件で虚偽捜査報告書を作成した検察特捜部を不起訴処分にしたことである。 4月26日の東京地裁小沢氏無罪判決の中でも検察による虚偽の捜査報告書の作成及び検察審査会への送付は厳しく批判されている。しかし、腐りきった検察官僚機構を指揮権発動によって正そうとした小川敏夫前法相を逆に首相は解任してしまった。
 西川知事のように「ぶれることなく」原発を推進し続ければ、日本は早晩地球上から消滅することとなるであろう。原発敷地内を通る活断層。福島第一内の大量の放射性物質はどうするのか。16万人もの避難住民はどうするのか。
 武田邦彦氏は日本の指導層の「ぶれない」核政策を以下のように整理している。「1)日本の産業と軍事(核武装)を発展させるためには原子力を進めなければならない、2)しかし原爆を落とされた日本では原子力を進めるのは国民の抵抗が強い、3)そこで国民に2つのウソをつく必要がある、4)一つは原子力を平和利用に限ると約束する、5)もう一つは原発が安全だと約束する、6)並行して核武装のために遠心分離器によるウラン濃縮と核廃棄物が2.6倍になる再処理をして原爆用のプルトニウムを得る」(武田HP 7.17)、これに7)もんじゅを運転再開して純度98%のプルトニウム239を得る、8)原発が危険と知れ渡ってしまったので、平和利用というウソをやめて公然と核武装を宣言する。が付け加わる。
 東日本の大半を放射能で汚染させ、東京3,000万人が避難の瀬戸際に追い込まれても何もなかったかのように平然と振る舞う官僚機構。「放射能の直接影響で亡くなった方は1人もいない」とうそぶく中部電力の課長職(意見聴取会7.16)。「日米原子力共同体」を掲げる寺島実郎(『世界』2012.6)。そして外務・文科省官僚を中心に日本の核武装化へと公然と歩み始めた。しかし、核の先の悲劇は見えている。官僚機構はヌエ的存在である。選挙で落選することもなく、捜査報告書を偽造して冤罪事件を起こしても免職されることもない。勝手に法律を自分の都合のいいように改悪し、選挙で国家の頭部を奪取しても官僚機構に乗っ取られる。
 毎週金曜日・首相官邸前の脱原発行動が行われ、前例なき「革命」となっている(朝日:7.18)が、本来の姿を見せない敵に対しどのような行動を取るかは今後の課題である。 
 【出典】 アサート No.416 2012年7月28日

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【投稿】北朝鮮情勢と日本の閉塞

【投稿】北朝鮮情勢と日本の閉塞

「血の粛清」
7月18日、北朝鮮の朝鮮中央通信などは「重大報道」として、金正恩第1書記が「共和国元帥」の称号を与えられたと報じた。さらに、これに先立つ15日には、朝鮮人民軍のトップである李英鎬総参謀長が、軍および朝鮮労働党のすべての役職を解任され、新たに総参謀長には16日付で「次帥」に昇格した玄永哲人民軍大将が着任したことが明らかにされた。
この一連の動きに関し、韓国の朝鮮日報紙は20日、同国政府関係筋の情報として、李前総参謀長解任に際し、身柄拘束に向かった崔竜海人民軍総政治局長指揮下の部隊と、李前総長の警護隊との間で銃撃戦が発生、これにより約20人が死亡し、李前総長自身も死亡、あるいは負傷したのではないか、と報じた。
この情報の真偽については、いまだに詳細は不明であるが、事実とすれば北朝鮮指導部内におけるバランスが大きく変化したことを物語るものといえる。
昨年末以降の権力移行過程において、「金正日総書記の遺訓」「先軍政治」の継承は不可逆のものとされた。それを具現化する指導部内での金正日側近、人民軍幹部の地位、勢力は増大したものと考えられ、故に、労働党が主導した核問題に関する今年2月の米朝合意にもかかわらず、それらを反故にする4月13日の「弾道ミサイル」発射が強行されたと見られてきた。

打ち上げ失敗が転機
しかし、打ち上げの失敗は北朝鮮自身が早々に認めざるを得ないほどの惨憺たるものであった。中国をはじめとする関係国の懸念を無視して、強硬路線を突き進んだあげく打ち上げに失敗した、李前総長ら人民軍指導部に対する憤りは充満していったものと思われる。
打ち上げ失敗以降も、再度の発射情報、さらには3回目の核実験強行情報などが盛んに流れさた。これは、対外緊張関係を意図的に作り出し、人民軍の地位を保持せんとするための見せかけの動き=李前総長派の延命工作であった可能性が高い。(実際は弾道ミサイルや核弾頭の製造技術レベルが露見した後ではこけおどしにもならないが)
「ミサイル発射」直前に就任した崔局長は、金正恩第1書記の叔父である張成沢労働党政治局員の最側近の一人である。そしてこの間、張局員の命を受け李前総長の動静を探っていたといわれる。
これは、自儘にふるまう軍指導部に対して労働党が、金第1書記に恥をかかせた打ち上げ失敗を利用し、反撃の機会を狙っての動きであったといえよう。そして、実力行使も辞さない構えで、一気に排除へと動いたのである。
公式には李前総長の解任しか報じられていないが、銃撃戦も含めてかなりの関係者が処分されたと思われ、今後しばらくは「残党狩り」が進められるだろう。金第1書記は権力継承以降、乱暴な方法で意にそぐわない幹部の粛清を進めてきたが、今回の事件はその集大成ともいえる。

路線転換は不可避
李前総長粛清の理由として経済問題もあったと見られている。中国関係筋からは、李前総長が人民軍の利権を守るため経済の「開放・改革」に強硬に反対し、中朝貿易で私腹を肥やしていた、との報道もなされている。
中国にとって、緊張緩和と経済改革の阻害物である李前総長は好ましからざる人物であったのは確実で、その排除には、実力行使までを想定していたかは分からないが、中南海の暗黙の了解があったという見方もある。
21日、香港の市民団体は中国軍が17日以降中朝国境の警戒を強化し、緊急演習を繰り返しているとの情報を明らかにした。この動きは朝鮮労働党を支持するとともに、李前総長派に対する威嚇の意味が込められたものである。中国共産党指導部は1971年の林彪事件を思い起こしたかもしれない。
北朝鮮指導部内の権力構造の変化は、当面経済問題に反映される形となろう。もう一つの重要課題である核開発問題については、膠着状態が続くだろう。
20日、朝鮮外務省は「アメリカ情報機関の指示を受けた脱北者が金日成主席の銅像を爆破しようとした」として「核問題を全面的に再検討」すると明らかにした。「爆破計画」は6月に北朝鮮国内で逮捕された脱北者が「自供」したものである。それは多額の報酬を餌に銅像に仕掛けた爆発物を遠隔操作で起爆させる、とされている。
「計画」の真偽は不明であるが、これを口実に米朝協議や6か国協議を先延ばししようとする意図は伺える。しかしこうした怪しげな話で、北朝鮮指導部が本気で「核問題を全面的に再検討」することはないだろう。
今後は核開発に依拠してきた人民軍を牽制しながら、核カードを利用しアメリカとの取引を進めるというスタンスに落ち着いていくものと考えられる。

放置される北朝鮮
この間の北朝鮮の情勢に対する関係国の動向は、4月の「弾道ミサイル」問題に比べ非常に低調である。中国のコミットはあったとしても限定的であるし、アメリカも特段の反応は示していない。北朝鮮関係の動きには独自の見解を示すロシアも沈黙を続けている。韓国は重大関心事であろうが当面注視を続けるに留まるだろう。
これは今回の騒動が現在のところ北朝鮮の国内問題以上のものではないし、「核弾頭」もまったく差し迫った脅威ではないためだが、それにも増して各国の重要課題が他方面にあるからである。要は北朝鮮は放置状態にある。
アメリカは、イランの核開発問題と大統領選挙がある。とりわけイランに対しては、関係国協議の進展がみられないまま、経済制裁が段階的に強化されてきている。今後イラン産原油の輸出がストップすれば、イランはホルムズ海峡封鎖を示唆している。
周辺海域の緊張は高まってきており、7月16日にはアラブ首長国連邦沖でアメリカの補給艦が漁船を銃撃し、インド人船員一人が射殺された。これは過剰反応による誤射というべき事態であるが、この地域の緊迫感を示すものである。
現在ハワイ沖では日米露など22か国が参加する環太平洋合同軍事演習「RIMPAC2012」が8月初旬までの日程で実施されているが、その終了後の9月には、ペルシャ湾で米軍が主導し、日本なども参加する大規模な多国間掃海演習が実施される。
これは現時点では演習であるが、それまでに核問題協議が最終的に決裂しイランがホルムズ海峡封鎖に踏み切れば、実戦になりかねないものである。アメリカは当面この地域に全神経を集中することになるだろう。
ロシアはシリア情勢に最大の関心を寄せざるを得ない。シリアでは内戦が激化しているが、最大の援助国ロシアはアサド政権に見切りをつけられないでいる。6月には戦闘部隊を乗せたロシアの揚陸艦がシリアに向かったという偽情報も流されたが、7月20日ノーボスチ通信は「ロシア北方、バルト、黒海各艦隊が8月に地中海で演習を行う」と報じた。
その陣容は各艦隊の大型揚陸艦を中心として警備艦が付くものとなっており、約10万人といわれるシリア在住ロシア人の救出に備える態勢とも見られているが、イラン情勢の展開次第ではそれへの対処も必要となろう。
中国は南シナ海、東シナ海への権益確保が第1義となっている。北朝鮮は中国のこの地域での利用価値はないし、むしろ足かせとなる可能性がある。韓国は大統領選挙が終わるまで積極的な対北政策の展開は不可能だろう。

無為無策の日本政府
日本はこれまで北朝鮮の脅威を理由に軍拡を進めてきた。しかしこの間の尖閣列島問題を契機として、中国を「仮想敵」とする国民的合意が図られんとする現在、北朝鮮の利用価値は低下している。
7月19日、内閣府は北朝鮮による拉致問題について「関心が低下している可能性がある」との世論調査結果を公表した。拉致被害者、家族も使い捨てにされそうな雰囲気が漂い始めている。また、北朝鮮が示した日本人遺骨の返還問題は、日朝交渉打開に向けてのサインと考えられるが、日本政府の反応は極めて鈍い。
関係国が北朝鮮への関心、関与を低下させているなか、拉致問題はおろか戦後補償など未解決の具体的課題を抱えている日本は、むしろ積極的に働きかけを強めるべきである。
しかし、内政問題でさえ対処しきれていない満身創痍の民主党・野田内閣では、こうした閉塞状況の突破は不可能だろう。
「国会の政局が第一」ではなく、東アジアの緊張緩和を外国政策の柱とするような「第3極」勢力と、その総選挙後のキャスティングボードの確立が望まれるところである。(大阪O)

【出典】 アサート No.416 2012年7月28日

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【日々雑感】熊森協会 VS 小出対談① 

【日々雑感】熊森協会 VS 小出対談① 

 先日、1週間程前に、私が寄附会員として参加している、日本熊森協会から、くまもり通信72号が送られてきました。いつも優れた記事が載っているのですが、今号では、熊森対談という形で、私の好きな小出裕章先生と熊森協会との対談が載っておりました。
 
 <核エネルギーも、奥山生態系も人間(科学)がコントロールできる世界ではない>
 対談者・京都大学原子炉実験所助教 小出裕章氏 という見出しで対談が進められておりました。(長くなるので全文は紹介できず、拾い読みで申し訳ございません)
 先ず、小出裕章氏の略歴:1949年東京生まれ。京都大学原子炉実験所助教。原子力を学ぶことでその危険性に気づき、専門家としての立場から原子力の危険性を訴え続けている。
 著書に、「騙されたあなたにも責任がある」「原発のウソ」「原発はいらない」など。
 「3・11福島原発事故は、以前から小出さんがその危険性を指摘されていた通りになりました。利権とは完全に無縁で、全人生をかけて真実を語り続けてこられた信念の研究者がいたことを知り、私たちは心からの感動を覚えました。政府の事故収束発表とは裏腹に、現実は、収束の目処もなく、更なる大惨事も予測されるそうです。本当のことを知りたくて、4月5日、先生の研究室を訪問しました。」と対談へと進んでいきます。
 熊森:あともう1箇所同じような原発事故が起きたら日本の国はつぶれるという声に対して、大げさなことを言うなと非難する人がいます。
小出:放射能に関して国が作った法律は、たくさんあります。例えば、一般人は、1年間に1ミリシーベルト以上被爆してはいけないし、させてはいけない。1平方メートルに換算して4万ベクレルという汚染を超えているようなものは、どんなものでも管理区域以外に持ち出してはならないなどです。
 もし私がそのようなものを持ち出して、皆さんを被爆させるようなことをすれば、私は法治国家である日本で処罰されます。
 ところが今は、1平方メートルあたり4万ベクレルを越えて放射能で汚染されてしまったところが、会津の一部を除く福島県全域、栃木県や群馬県の北部半分、宮城県の南部、そして北部、岩手県の近く、茨城県の北部と南部、千葉県の一部、東京都の一部、埼玉県の一部というようなところです。本当に日本が法治国家だというなら、これらのところを無人にしなければなりません。
 今や、この日本という国は、自分が決めた法律を反故にして、人々を被爆地帯に取り残しているのです。福島第1原発の事故だけですでに、国家が倒産してもあがないきれない程の大被害を出したのです。
 他にも、小出先生の示唆に富んだ対談内容が掲載されていますが書ききれませんので、次回に廻させていただきます。
 非常に優れた対談内容なので、全文を読みたい方は、日本熊森協会の方に問われてはいかがでしょうか。是非お薦めいたします。0798-22-4190が熊森協会の電話番号です。
 (2012-07-20 早瀬達吉)) 

 【出典】 アサート No.416 2012年7月28日

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【投稿】消費税増税談合と大飯原発再稼働

【投稿】消費税増税談合と大飯原発再稼働
         民主党政権・メルトダウンへの暴走



6/17 ふくいでつながろう集会より

写真は、6/17、福井市中央公園で開かれた大飯原発再稼働許さない、「ふくいでつながろう」集会での「原発いらない 福島の女たち」の怒りの決意表明

<<完全に見放された民主>>
 6/10に投開票がおこなわれた沖縄県議会議員選挙の結果は、与党21議席に対し野党27議席という結果になり、自民・公明を中心とする沖縄県政与党、ならびに民主党政権に対する手厳しい審判となった。党派別当選者の内訳は県政与党の自民が1減の13人、公明3人、無所属5人の計21人(前回22人)。野党は社民が1増の6人、共産は5人を維持、社大は1増の3人、無所属・諸会派7人の計21人。中道は民主が1人、そうぞうが1人、国民新が1人、無所属が3人の計6人。仲井真知事が待望していた与野党逆転はならなかったのである。
 わずか900票差とはいえ、今年2/12の宜野湾市長選に自・公推薦候補が勝利し、その勢いで県議会過半数奪取を目指していた仲井真知事を支える与党は敗北を喫し、この与党と手を組んで普天間基地の辺野古移転・米軍新基地建設、そしてオスプレイ配備、高江ヘリパッド(オスプレイパッド)建設や先島への自衛隊配備などを強行できる、仲井真知事がその方向で翻意する環境を整える、そうした政府・民主党執行部、野田・前原・仙谷氏らの目論見はもろくも崩れ去ったのである。そもそも辺野古移設に関しては、選挙期間中、「保留」とした1人を除いて、立候補者全員が与野党の別なく「辺野古ノー」の選挙公約を掲げていたことからすれば、政府・民主党執行部の目論見は当初からあてが外れていたのである。
 なおそれでも、野田首相は6/4の内閣再改造で、あきれたことに防衛相に元幹部自衛官で、日米同盟至上主義者として知られ、米軍普天間飛行場の辺野古移設推進論者である森本敏氏を起用し、この期に及んでも、「辺野古が唯一の解決策」などと言い張るこの人物を沖縄の説得に向かわせるという政治的無神経さを正そうともしていない。
 さらにオスプレイの沖縄配備問題では、この森本敏防衛相がモロッコで起きた墜落事故の原因究明がなされる前の配備の可能性を示唆したことに、民主党沖縄県連は辞任を求める緊急声明を発表したが、政府・民主党は無視を決め込み、一顧だにしていない。これまた輪をかけた政治的無神経さといえよう。今や米軍事政策への追従ぶりばかりが前面に出る異常さである。
 しかし、この沖縄県議選の結果は当前予想されていたこととはいえ、とりわけ民主党にとっては、取り返しのつかないほどの手痛い打撃となった。前回県議選で民主党は那覇市選挙区で県議選史上最多の1万8331票を獲得してトップ当選を果たした候補者が、今回は1万2630票も減らして、5,701票しか獲得できず落選したのはその象徴と言えよう。しかも4年前は擁立した4人が全員トップ当選であったが、今回は最後の1議席に滑り込むのがやっとであった。完全に見放されたも同然といえよう。

<<「国家の信頼のメルトダウン」>>
 2009年9月に政権交代が実現し、民主党連立政権が誕生してから初めての沖縄県議選の結果がこれであり、マニフェストの主要な政策をことごとく投げ捨てて、今や第二自民党と化してしまった民主党への沖縄県民の怒りと反発が如実に現れている。
 この結果は当然、民主・自民談合解散、あるいは行き詰まり解散など、年内にも行われる可能性が取り沙汰されている次回衆議院選挙に反映することは必至である。沖縄と同様、迫る解散・総選挙では政権政党である民主党の看板が逆にデメリットとなり、現有議席が激減、四分の一、あるいはそれ以下になる可能性である。
 しかし政府・民主党執行部は、あえてこのような有権者から完全に見放される道を暴走し始めたともいえよう。それは大飯原発の再稼働路線と、たとえ談合をしてでも消費税増税法案成立を最優先に闇雲に突っ走る野田政権執行部の姿勢に現れている。
 野田首相は6/8の記者会見で、「原発を止めたままでは日本社会は立ち行かない」、「国民生活を守るために」再稼働が必要だと言明、大飯原発の再稼働を決断するに際しては「東京電力福島第1原発を襲ったような地震、津波でも炉心損傷に至らない、事故は防止できる」と断言したが、これは3・11フクシマ原発震災以前の、3・11から何らの教訓も学び取ろうともしない、政・官・財・学癒着の原子力ムラの認識そのままである。責任を取る気もない、また取れもしない、客観的根拠を全く上げることができない、むしろ危険極まりない、脆弱このうえない現実を前にしても、「事故は防止できる」とは、まさに「悪魔の決断」である。新潟県の泉田知事は「『電源が失われるような事態が起きても炉心損傷に至らないことが確認されている。』との発言についても、現実には、『電源が失われなくても、炉心冷却に失敗すれば、大惨事になる』ということが福島の教訓であることを無視した説明です」と厳しく指摘するとおりである。
 さらに首相の再稼働会見では、新たな安全対策が一切示されていない。それどころか、あの無責任極まる東京電力の前社長・清水氏が、新潟県中越沖地震(2007年)で起きた柏崎刈羽原発の事故を受けて福島第1原発につくられ、今回の事故対応の拠点となっている免震重要棟について「あれがなかったらと思うとゾッとする」との認識を示した、その緊急時の指揮所となる免震施設の建設や放射能除去フィルターの設置でさえ、再稼働の条件にできず、先送りで放置して電力会社の言いがまま、大飯原発は免震棟、放射能除去フィルターの設置さえなく再稼働に踏み切ろうとしているのである。
 さらに福島第1原発事故では5キロ離れた「オフサイトセンター」には空気浄化フィルターもなく全く使用することができずに、事故4日後に約60キロ離れた福島市に撤退したが、大飯原発でもやはり、約7キロしか離れていない事故、避難などの対応拠点「オフサイトセンター」は、あいもかわらず空気浄化フィルターなしである。
 そして大飯原発でより根本的な問題は、これまで隠し続けてきた1、2号機と3、4号機の間にはF-6と呼ばれる活断層の存在が明らかにされ、それについての度重なる専門家の指摘にさえ、即刻調査すれば解明できる努力さえ放棄して、断層を過小評価し続けてきたままで再稼働をのみ優先させたのである。
 こうした野田首相の原発再稼働の決断について、国会事故調の黒川清委員長は「なぜ国会事故調の報告を待ってからやらないのか。理解できない」と批判し、「国家の信頼のメルトダウンが起きているのではないか。理解できない」、「世界の先進国のあり方と全然違うところに行っているのではないか」と指摘する事態である。暫定的な安全基準、専門的知見とかけ離れた原子力業界向けの安全基準、ご都合主義で責任を回避する「政治判断」によって再稼働に走る日本政府の知性と良心と人間性に反する無責任極まりない政治的堕落の行く末をを世界は注視しているといえよう。

<<「増税だけが行われるのは主客転倒だ」>>
 政府・民主党執行部は、大飯原発の再稼働に引き続き、6/15には、税と社会保障の一体改革関連法案をめぐる民主、自民、公明3党の修正協議のかたちで進めら、まず民・自両党が自民党の対案を事実上丸のみするかたちで一致、つづいて公明党も法案賛成方針に転じて合意に達し、舞台は民主党内の「合意」形成、実際はいかに民主党の事実上の解体を推し進めるかに焦点が移行したといえよう。
 すでに民主党内では、荒井聰元国家戦略担当相と福島選出の増子輝彦参院議員が中心となって呼びかけた大飯原発の再稼働の再考を求める署名が行なわれ、わずか4日間で民主党議員の3分の1に当たる119人が賛同し、小沢氏や鳩山氏、羽田元首相、江田党最高顧問、馬淵元国交相、福山元官房副長官らも署名している。荒井氏は署名提出後、記者団に「信頼を失った経済産業省原子力安全・保安院が安全性を主張しても国民の理解は得られない」と強調し、「署名は多くの党議員が再稼働に慎重な証拠だ」と述べている。
 そして消費是増税法案については、民主党内で「党の『民主的合意形成』を実現する集い」が呼びかけられ、「自分たちは社会保障が前提で、消費増税が前提なのではない」と民主党執行部への批判が明確に打ち出されだした。6/15には、田中慶秋副代表と篠原孝元農水副大臣の、輿石東幹事長への両院議員総会の開催を求める154人分の署名提出が行われたが、これは開催要件を満たす署名数に達している。
 同時に6/14には、消費増税に反対する超党派の国会議員が東京都内の憲政記念館で集会を持ち、与野党の国会議員117人が出席し、民自公の修正協議を「密室談合」と批判し、消費増税法案の採決に反対する決議文を採択、鳩山氏は「国民に訴えて政権交代したことが棚上げにされ、増税だけが行われるのは主客転倒だ」と訴えたほか、共産党の志位委員長、社民党の福島党首、みんなの党の渡辺代表らもあいさつに立って、民自公の修正協議を痛烈に批判した。
 野田首相を先頭に、政府・民主党執行部はいよいよ政権交代の意義を完全に葬り去る、民主党解体による消費税大増税、原発の連続再稼働へ向けた大連立構想へと動き出したといえよう。しかしこの道は、大多数の有権者の意識とかけ離れた孤立化への道でしかない。厳しい反撃を覚悟すべきであろうし、その反撃が組織されなければならない重大な局面といえよう。
(生駒 敬)

写真は、6/17、福井市中央公園で開かれた大飯原発再稼働許さない、「ふくいでつながろう」集会での「原発いらない 福島の女たち」の怒りの決意表明

 【出典】 アサート No.415 2012年6月23日

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【投稿】 大飯原発再稼働の決定に抗議する

【投稿】 大飯原発再稼働の決定に抗議する
                           福井 杉本達也 

1 大飯原発再稼働決定に抗議する
 野田首相は6月8日の記者会見で、大飯原発3、4号機について、国民の生活を守るために再稼働すべきだというのが私の判断だと表明、経済活動や国のエネルギー安全保障の視点からも原発なしでは日本社会は立ち行かないと強調、さらに福島を襲ったような地震・津波が起きても事故を防止できる対策と態勢は整っていると述べた。記者会見を地元同意の条件としたのは西川福井県知事であったが、当初、藤村官房長官は記者会見には否定的であった。しかし、再稼働のリミットが迫る中、バナナの叩き売りのような妥協をした(朝日:2012.6.9)。
 しかし、大飯原発の安全性は何ら担保されていない。福島第一事故で唯一不幸中の幸いであったチェルノブイリを上回る事故の拡大を防いだ免震重要棟もできていない(元々、敷地の狭い大飯原発敷地内に免震棟を造ることは不可能であろう。3,4号機建設中は敷地の余裕がなく、工事用車両などのために法面に仮設で鉄板を敷きつめて人工地盤を確保していたほどである)。もちろんベント施設も、津波対策もできてはいない。極め付きは県の防災計画もできていないことである。県は国が防災指針を示さないから作れないと言うが、福島原発事故で実際に30キロ圏内の住民を避難させたにもかかわらず、どう住民を避難させてよいかわからずに「大飯原発は安全」というのは住民の生命を守るべき自治体の最重要責務を放棄した無責任そのものの判断である。おおい町からは敦賀市や越前市方面へ逃げる計画であるが、若狭湾の原発銀座を通過して避難するのは机上の空論も甚だしい。近隣の滋賀県・京都府とまともな話ができないからである。西川知事は安全と防災計画は「レベルが違う」(福井2012,6.14)とのたまうが、過酷事故対策に目をつぶって再稼働を判断するとは言語道断である。さらに変動地形学の名古屋大の鈴木康弘氏・東洋大の渡辺満久氏は2号機と3号機の間を通る「F-6断層」は活断層だと指摘している(朝日:同上)。これでどうして事故を防止できる対策・態勢が整ったのか。「国民の生活を守る」のではなく「国民の生活を破壊する」ために再稼働の決定を下したとしかいいようがない。「国民」を強調しつつ、首相の目は「国民」を向いてはいない。

2 「福島」を無かったことにする棄民政策
 6月11日のNHKニュースは、福島原発から最も多くの放射性物質が放出された去年3月15日の対応について、文部科学省は原発から北西およそ20キロの福島県浪江町に職員を派遣し、午後9時前に最大で1時間当たり330マイクロシーベルトの高い放射線量を測定したとしている。そのうえで、この調査地点は15日夕方のSPEEDIの予測を基に選んだことを明らかにしている。しかし、測定結果は現地の対策本部には報告せず、自治体にも伝えなかった。文科省はSPEEDIによる放射能情報を隠蔽しただけでなく、それを利用して測定した情報も隠蔽していたことが明らかとなった。浪江町長はNHKのインタビューで「当時、われわれは避難を自主的に判断せざるをえず、原発から遠くに離れようとした結果、不要な被曝を招いてしまった。住民の安全を守るべき国が出すべき情報を出さずに、その責任を果たさなかったのは非常に悔しいし残念だ」と述べている。
 このSPEEDIの情報については、3月11日当日から保安院から福島県にメール等で情報が送られてきたにもかかわらず、県はこのメール等を意図的に廃棄していたことも明らかとなっている(県民福井2012.3.21)。また、事故直後のヨウ素131などの生情報が全て消されており、福島県民がどれだけ初期被曝したのか全く不明であった。東電や国は電源の喪失や津波によって原発周辺の放射線観測施設が全て破壊されたとウソを突き通してきたが、この生情報は福島県の原子力センター職員による決死の内部告発により放射線測定の第一人者・岡野眞治博士らの手元に届けられている(NHK:ETV特集『ネットワークでつくる放射能汚染地図5 埋もれた初期被ばくを追え』2012.3.11)。この大規模かつ組織的放射線隠しを福島県現地で指揮したのが「放射線の影響は、実はニコニコ笑ってる人には来ません。クヨクヨしてる人に来ます。」と発言する山下俊一長崎大教授(福島県立医大副学長)である(2011.3.21講演「放射線と私たちの健康との関係」)。
 その結果、今福島では「6月のころは相談会もなごやかな雰囲気だった。7月になって戒厳令になったという気がした。福島では放射能が不安だと言うとバッシングを受ける状態になっていた。とりわけ福島市が強くいろいろな規制をしている。外に出ている子どもに対して、『早く教室へ入ったほうがいい』『長袖のシャツを着ていたほうがいい』くらいの注意をした教師に育委員会から指導が入る。」「福島市の医師会は全員『放射能は心配ない』と口裏を合わせることになっている。最近は子どもを連れたお母さんが受診して、放射能と一言いうと横を向き診てくれないという状態になっている。福島の個人病院で健康診断をしようとしたら、福島市からストップがかかり、『山下さんと相談してからやれ』と言われた。山下としては自分たち以外の健康診断はやらせない。勝手にやった健康診断で被害はなし、将来も大丈夫と言ってしまう。他のところでやるとそういう結果は出ないわけだから、自分たちの健康診断のおかしさが暴露されてしまうから止めている。それで、福島の医者は動きがとれない。」福島は完全に沈黙させられている(2012.5.20「原発事故と病気 『福島を切り捨ててはならない 』」八王子中央診療所 山田 真)。
 かつて、第二次世界大戦末期の大日本帝国下においても、米軍による本土空襲の可能性が高まった1944年夏から子供を空襲から守るため全国的に学童疎開が行われた。ところが福島県では5~20ミリシーベルトという極めて危険な放射線区域内でも子供の避難は行われていない。チェルノブイリ事故で旧ソ連が強制移住させた値である。今の日本政府は大日本帝国の軍国主義者以下である。『大本営発表』の方がまだましである。

3 日米協力イニシアティブ-「民生用原子力協力に関する二国間委員会」
 4月30日、日米首脳は共同声明を発表し、その重要部分を詰めた文書として『日米協力イニシアティブ』を公表した。その中で原発は「日米両国は,2011年3月の日本の原子力事故の後の日米間の緊密な協力を基盤として,民生用原子力協力に関するハイレベルの二国間委員会を設置し,この分野での協力を更に強化する。同委員会は,民生用原子力エネルギーの安全かつ安心な実施並びに廃炉及び除染といった事故への対応に関連する包括的な戦略的対話及び共同の活動を促進する。同委員会は,原子力エネルギー,原子力安全,核セキュリティ,環境管理,核不拡散を含む諸分野において,より強固な研究開発交流を調整する」とうたわれることとなった。福島第一原発事故の収束の見通しも立たず、原子力・保安院に替わる組織(現在「規制委」案が民自公で合意)の見通しも立たない段階で、「ハイレベルの二国間委員会」の設置を宣言するのは異例である。日本の原発稼働がゼロとなることを米国がいかに恐れているかを示している。「全面停止状態にある原発が早期に再稼働できるよう支援したい意向」(2012.5.1)という日経の間の抜けた解説ではなく、無理矢理にでも再稼働させるための米国の恫喝と捉えるべきであろう。その詳細は5月27日の日経の解説記事でより明らかとなる。「『いかなる形でも支援する用意がある』再稼働に絡み、関係閣僚と地元自治体の折衝などを抱え慎重な日本の背中を押した。日本当局筋は複数の米政府高官に責められた。日本の原発が衰退すれば米も共倒れになる相互依存の構図で、イニシアチブは米の焦りの裏返しでもある。」つまり日本の原発が動かなければ米国の核兵器産業も共倒れになるから、絶対に原発を再稼働しろという意味である。その回答期限は6月18日のG20である。大飯原発再稼働決定はこの流れの延長にある。「国民」という野田のうつろな言葉の後に目は「米国」を見ているのである。さらに野田が心変わりしないかを「野田首相が掲げる政策は消費増税を含め環太平洋経済連携協定(TPP)への参加や原子力発電所の再稼働など国際的な課題。どう対処するかは日本が今後、国際社会でどのような地位を占めるかのリトマス試験紙にもなる」(日経:2012.6.3)と米戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問・日本部長マイケル・グリーンが監視している。

4 闘争の重点をどこに置くべきか
 福島の問題は福島という一地方の問題ではなく、日本全国の問題だけではない。かつてチェルノブイリに対して国際的に原子力帝国主義国から圧力がかかったように、今、「福島」に対してあらゆる国際的圧力がかかっている。米国・英国・フランス・ロシア・中国といった核大国ばかりでなく、原発からの撤退を決めたドイツでさえ、フランスからの放射性廃棄物を受け入れ、さらにはシベリアに搬送している。こうした中で日本が「核」から全面撤退するのは至難の業である。国も世界も「福島」だけに限定してしまいたいと思っている。福島市の東側に放射線の極めて高い渡利地区がある。市の中心部に近い地域で、阿武隈川を挟む対岸は県庁などの官庁街である。渡利地区を汚染地区にすると、福島市全域を避難地区にせざるを得ない。国が渡利を認定しない理由は「ロケーションの問題」である。人口密度が高く、中心地に近い渡利を危険な地域と認定すると、福島市全域が危険だと宣言したことになってしまう。福島が避難地区と認められないと、それより少し低い郡山などは到底認められない。渡利地区は橋頭堡であり、渡利地区を認めさせることができれば、中通りに避難地区を広げられる(山田真「大震災・子どもの健康と未来の補償のために」『現代思想』2012.3)。
 一方、大飯再稼働問題では関西のふがいなさが目立つ。「計画停電」の脅しにあっさりと降伏してしまった。電力やエネルギーの需給についてほとんど何も考えていなかったことが明らかとなった。まず、関電に対する監視を強化し火力発電所に対する設備更新を急がせることである。地震による壊滅的被害を被った東電や東北電力が被災した火力をわずか3ヶ月で修復を終えたことと比較するとこの1年3ヶ月の関電の設備の更新・修復はあからさまなサボタージュである。ガスタービンコンバイドサイクルの姫路第二の運転開始を少しでも早めさせなければならないし、老朽火力の設備更新を急がせなければならない。 次に、特定規模電気事業者・大阪ガスや神戸製鋼などの電力事業やエネルギー事業を応援することである。原子力帝国主義の圧力から自由度を確保するにはそれしかない。かつて敦賀市に大阪ガスのLNG基地誘致の話が持ち上がったことがある。1989年である。計画では10.5haの土地に18万klのLNGタンク10基、8万klのLPGタンク3基を設置し、敦賀港のLNG受け入れ桟橋とをトンネルで結ぶという大規模な計画であった(参照:岡敏弘『環境政策論』1999.12.15岩波書店)。しかし、この計画は表向きは自然保護、裏は敦賀3,4号機の増設(現在敷地造成のみが完了している)にとって邪魔であるという理由で葬り去られた。表向きの中心人物は日本原電社員・北條正敦賀市議であった。大阪ガスがなぜ敦賀を選んだかといえば、ロシア・サハリン等からのLNG輸入を考えていたからである。しかし、天然ガスのロシアからの輸入は関電にとってもアメリカにとっても都合の悪いものである。関西が若狭湾からの電力に頼るというのはあまりにもリスクが大きすぎる(建設後40年前後の老朽原発が軒並みということもあるが、電力集中も)。都市の中心部・埋め立て地に発電所を設けるとともに、エネルギー源の多様化を図るべきである。 
 【出典】 アサート No.415 2012年6月23日

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【投稿】震災の被災地 宮城県を訪ねて(2) 

【投稿】震災の被災地 宮城県を訪ねて(2) 

 唯一残った防災庁舎
 津波が襲った際、今では跡形もない町役場の横にあった防災庁舎。30数名の町長含む町職員が、4階になる屋上部分で孤立した場所である。まるでシンボルのように立っている鉄骨の骨組みだけの建物。連休中ということもあり、ボランティア活動を目的に、特に横浜や千葉、関東ナンバーの車が行き来しており、防災庁舎の前に花を手向ける人も多かった。
 南三陸町では、住宅の8割が津波によって消失したという。志津川中学校まで登ると、眼下に南三陸町の中心部が見渡せる。あの防災庁舎も含めて、形を留めているのは、鉄骨造のビルの骨組みか、4階建て位の鉄筋コンクリートの志津川病院など中心部のいくつかのビルのみ。見渡す限りの「建物跡」。これが、震災から1年2ヶ月の姿。震災直後とほとんど変わっていないのだろう。クラブ活動の中学生が、僕にも「こんにちわ」と声をかけてくれる。ここ志津川中学校のグランドも半分くらいが、仮設住宅となっていた。


写真1 志津川中学校から南三陸町を臨む

 仮設商店街が産声あげる
 その中でも、商店主の皆さんを中心に、いくつかの商店街が産声をあげていた。気仙沼へ向かう国道45号線沿いの歌津地区に、「伊里前福幸商店街」がプレハブ作りのお店でオープンしていた。海産物の店に立ち寄って、土産にと買い物をした。仮設商店街は津波で消失した住宅地の一番奥にあるが、100mほど東側は海岸線で、それに沿うように、JR気仙沼線が通っていた。高架型の鉄道敷も津波で破壊され、橋脚部分のみが並んでいた。
 この日は、気仙沼をめざして移動した。リアス式海岸沿いのくねくね道を過ぎ、津谷川の橋を越えると、気仙沼市街地に入る。国道の東側の海岸側は、津波被害地が続く。瓦礫の山もいくつか見た。気仙沼は大きな街で、海岸から山裾まで市街地が広がっている。市役所周辺は高台で普通の佇まいだが、沿岸部のビル外の中には、空地になって整備している場所も散見した。津波で流されたのだろう。ここでも、仮設商店街ができていた。「復興屋台村 気仙沼横丁」だった。(翌日南三陸を離れる日、古川方面に続く本吉街道沿いにも仮設商店街「南三陸さんさん商店街」を発見。ここは、30軒くらいの店があり、観光客もたくさん訪れていた。)
 この日は、発達した低気圧が東北地方を通過中で終日雨、夜には更に雨脚が強まるとのことだった。


写真2 仮設商店街 南三陸さんさん商店街

 雨で町内冠水続出、基盤整備の遅れ
 夕方から雨脚は強くなり、早々にテントの中に。小さな台風という感じ。夕刻キャンプ場に向かう頃には、戸倉小学校前の道路が冠水をはじめ、何とか通過したが、その後通行止めとなった。翌日は、雨が上がったが、川が増水し、南三陸町中心部に入る手前で通行止め、なんとか迂回して、「さんさカフェ」に向かう。
 堤防や水門が破壊された上、水関係施設も破壊されている中、少々の雨でも町内に、冠水箇所ができるらしい。下水幹線など社会資本部分の損傷も大きいということ。これから、梅雨や台風シーズンを迎えることを考えると少々不安になる。地震の影響で、地盤全体が下がっていることも、冠水箇所が続出する原因との話もある。(この日は、震災ボランティアに行く予定だった。しかし、前夜に雨のため国道45号も通行止めなどの情報があったので、前日の段階でボランティアは断念した。翌日、なんとか町内中心部に入ってみて、カッパを着て瓦礫整理にあたっているボランティアさんの姿をみて、ちょっと恐縮。)
 
 家なき市街地に立って
 復興商店街が出来ているが、残念ながらそこで売られていた海産物などは、岩手産や北海道産が目に付いた。地元南三陸町はじめ、三陸地方は漁業が盛んな地域であったが、まだまだ、地元産の海産物は出回っていない。漁業資源と観光資源など、就労という点でも、まだまだ道遠し、というところであろう。
 宮城県が、県内の仮設住宅に生活する人たちの、生活・就労アンケートを行ったらしい。詳細は把握していないが、失業率や生活不安など、かなり厳しい内容であったという話だ。生活の再建の第一は、仕事の確保であろう。高台移転など住居の確保、仕事を中心とした生活再建が求められている。箱ものの再建以上に、これは困難な事業になると感じた。
 南三陸町を中心に、2泊3日の旅であったが、5月時点での現地の雰囲気を伝えることができただろうか。家なき市街地に立って、再度自分に出来る協力とは何なのか、そして、このような災害の事実を前にして、日頃の悩み事など、些細なことのように覚え、心が落ち着いたという面もあった。
 いよいよ夏を向かえ、東北支援でと観光旅行も良いだろう。そんな折には、少々足を伸ばしても、被災現地を訪ねられることを願う。(2012-06-17佐野秀夫)


写真3 被災したビル跡に「がんばれ南三陸町」のメッセージ


写真4 橋脚だけが残る気仙沼線(歌津町の伊里前福幸商店街から見る)

PS:報道によると6月15日から「公立志津川病院」の解体工事が始まったとのこと。病院は、現在、内陸部の登米市に仮設病院として存続している。 

 【出典】 アサート No.415 2012年6月23日

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【コラム】ひとりごと—消費税増税と原発再稼動—

【コラム】ひとりごと—消費税増税と原発再稼動—

○国民の半数以上が反対しているにも関わらず、重大な2つの懸案事項が、強行されようとしている。一つは消費税増税であり、一つは関西電力大飯原発の再稼動である。○そして、それを進めているのが、政権与党の民主党主導の形をとりつつ、自民・公明が協力・追随する、というパターンである。○消費税10%への増税案は、手法はどうあれ、自民党の選挙公約であった。野党であるにも関わらず、民主党の混迷下にあっても、支持率が一向に好転しない谷垣自民党。このままでは、秋の総裁選挙では、党首交代が必至と言われ、総選挙に追い込むことが唯一の作戦であった。しかし、「維新の会・国政進出」の影におびえ、「民主党マニュフェスト撤回」を条件に、基本姿勢を消費税増税法案成立に、どこの時点か不明だが、転換したのだろう。明確な説明は全くされていない。○マスコミも、消費税増税反対の論陣を張る新聞は一紙もなく、14日毎日新聞主張も「大詰め修正協議–党首会談で決着を図れ」とは、消費税増税賛成、ということか。○一方、消費税問題のために、民主党は政権交代選挙で掲げたマニュフェストの主要政策を「撤回」した。もちろん、消費税増税そのものが、マニュフェスト違反であるが。○15日の民主党経過報告集会では、修正協議報告に異論が続出、「執行部一任」の取り付けができず、野田首相帰国後の20日全議員総会に持ち越されたという。○他方、労働者の団体である連合は、消費税問題では、口をつぐんでいる。○ホームページで消費税問題への見解すら出ていない。当然、大衆行動の提起もない。(「原発再稼動」問題も同様であるが。)大企業労働者のための組織であって、国民のための組織ではないからなのか。○修正協議が整えば、衆議院での採決となるが、その日程は見えていない。21日の可能性が高い。○民自公の3党合意ともなれば、数の上では衆議院で圧倒的多数となる。しかし、民主党内から相当の離反が生まれる可能性が高い。小沢グループしかり、増税反対派が100を越えるという話を聞いている。それでも、3党の増税支持派では、3分の2を越えるとも言われ、衆議院での可決は動かない状況ではある。○3党合意の後、2ヶ月程度の会期延長が行われて、舞台は参議院に移るわけであり、増税反対の運動を参議院での否決へと結実させる必要があるだろう。○同様に、国民の大半が望んでいない大飯原発再稼動問題である。安全対策など、全くできていないまま、野田政権が強行しようとしている。○関西広域連合の首長連中も、関電の「計画停電」恫喝に屈した。橋下市長も散々暴れた上で、旗を降ろした。○国民は、原発なしでも節電しようという意識になっているにも関わらず。○民主党内の、再稼動慎重派が13日に国会内で「再稼動の判断再考を求める緊急集会を国会内で開催した。○14日の毎日新聞は、再稼動の再考を求める署名の呼びかけ人(66人–衆47参19)と、署名した民主党議員(53人–衆36参17)合計119人の議員名を掲載している。○中々丁寧な報道だが、その目的は他にあったようだ。14日以後、署名等した国会議員には、地元の電力系労組から、署名撤回の「申し入れ」があり、対応によっては、今後の選挙応援はしない旨の「恫喝」が入っているとのこと。○なんと、きたない奴らだろう。労組も「原子力ムラ」の住民であれば当然のことか。○大飯再稼動の報道では、地元大飯町の住民が「再稼動」を望んでいる、原発が動かないと雇用が守れない云々の新聞記事が目立っている。それなら、全原発を再稼動することもできる論理じゃないのか。○過疎地に金を落として原発依存症にしてきた構造は、何も変わっていない。○このままでは、国民の賛成していない重要政策が、マスコミも一体になって強行される事態。それも、3党が国会で組めば、何でもできるという状況を許していいのか。まさに倒幕運動を巻き起こす状況あろう。○今日も仕事で、民主党国会議員の挨拶を聞いたが、消費税に触れることもできず、予算確保に全力を尽くします、とは情けない限りである。○この異常事態を異常と思えない感覚、やはり分裂でもして、やり直した方が良さそうである。(2012-06-17佐野)
 
【出典】 アサート No.415 2012年6月23日

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【日々雑感】続:つくづく思う 語り部、記念館の重要性 

【日々雑感】続:つくづく思う 語り部、記念館の重要性 

 前号414号でもお約束しておりましたが、記念館のことを書きます。少し古い記事で恐縮ですが、2011年10月8日(土)の毎日新聞夕刊の「引き揚げ風化防げ 記念館見学を必修化」という記事を紹介させていただきます。
 内容は、戦後、旧満州(現中国東北部)やシベリアからの引き揚げ港となった京都府舞鶴市の市教委は今年度、小学校(全18校)の「舞鶴引揚記念館」(同市平)見学を初めて必修とした。引き揚げを知らない世代が増えて風化が危惧されるためで、バスのチャーター代など交通費を予算化した。水谷昭教育長は「(戦争を)評価するのは大きくなってから。ただ、自分の古里について学ぶ機会を準備しておく責任が教師にはある」と語る。最初の引き揚げ船「雲仙丸」が舞鶴に入港して10月7日で66年となった。
 記念館は88年、市街地から離れた海を見下ろす丘陵に開館。引き揚げ資料約12000点を収蔵している。91年の入館者は約20万1000人だったが、ここ数年は約10万人と半減している。学校から気軽に歩いていけないため、社会科見学などに利用されず、逆にバスをチャーターした市外からの修学旅行生の方が多いという。
 このため、市教委は社会科で近代史を学ぶ6年生に一度は見学してもらうことにし、今年度予算に交通費など729万円を計上した。今月6日までに5校が見学。5日、訪れた市立新舞鶴小の6年生112人は、シベリヤに抑留された舞鶴出身の男性がシラカバの樹皮に望郷の思いを綴った日記を目の当たりにした。語り部から「君たちのような年齢で、孤児として舞鶴に上陸した子が101人もいたんだよ」と聞くと、驚いた表情を見せた。
 語り部のNPO法人「舞鶴・引揚語りの会」理事長の濱朗夫さん(70)は、「平和学習で広島や長崎に行くのに、目の前の教材をなぜ利用しないか、ずっと不思議だった」と話す。これまで語ってきた印象では、引き揚げを知らない児童が6、7割に上るといい、「親もしらないだろう。子どもに学んでもらうことで
 一人ひとりに語り部になってもらい、逆に親の世代にも伝えていきたい」と考えている。
 以上、私見が入ることを恐れ、全文紹介しましたが、何度読んでもウンウンと、うなずける内容だと思います。戦争を知らない親へ、学習を積んだ子どもから伝え続けてゆきたいものですね。そして私も18歳頃に暮らした舞鶴なので、その記念館に行ってみたいと思っております。(2012年6月15日 早瀬達吉) 

 【出典】 アサート No.415 2012年6月23日

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【報告】再稼働はんたい!原発いらない!

【報告】再稼働はんたい!原発いらない!
       ふくいでつながろう@福井市中央公園に参加して 

 昨夜から未明にかけて、「家の屋根が壊れる!」と一瞬ビビッてしまった位の大雨…。「集会は予定通り行われるのかな…?」と少々心配になり、大阪府や福井県の天気予報をネット検索してみると、「17日12:00まで雨、午後からくもり」でも、最近は急変することも多々あるので、防水着・タオルなどを用意し、早朝自宅を出た。
 「当初の予想以上に申込者が多く、中にはお断りをした方もいた。」とのこと。これまで以上の盛り上がりが感じられた。
 午前11時30分過ぎに福井市役所近くの中央公園に到着。公園の中央付近から、にぎやかな音が響いてきた。のぼりや旗などを持った人たちが、続々と集まってきた。道中買っておいた鯖ずしを、公園に設置されている木製ベンチに座って食べながら、空を眺めた。雲が少し垂れ込めている。様々な団体・個人が、それぞれの主張を載せたちらしやビラを配っている。同じ物を差し出されたときは、「先ほどいただいたので・・・。」と断る。以前は黙って受け取っていたが、より多くの人に渡って、より多くの人に読んでほしいとの思いから、丁重に断ることにしている。


 正午過ぎ集会が始まった。実行委員会事務局からの集会の意義・趣旨等の提起、中島哲演さんや鎌田慧さんの発言の後、参加団体代表や個人からの1分間スピーチ。時折、時計係らしき人が、発言者に言葉ではなく指1本で「時間厳守!」を要請している姿に、限りない好感を抱いた。わたしの勝手な見方かもしれないが、比較的若い発言者は、時間をきちんと守ろうという意思を感じさせ、比較的若くない発言者は、思いが先走ってしまうのかついついタイムオーバーになりがちであった。今回のように、さまざまな団体やグループ、多種多様な個人が、各地から集まって開く場合は、日頃聞けない話や訴えが多いはずだから、皆さん、言いたいことはいっぱいあると思うけど、「1分間」を守りましょうねと大声で言いそうになった。でも、さばき方のうまい進行役のおかげで、80人を超える人たちの、真剣で熱いスピーチをたっぷり聞くことができ、途中の雨にすら爽やかさを感じた。
 集会後、中央公園→福井市役所横→福井県庁前→県庁横→県庁裏→公園と、デモ行進。日曜日だからか、官庁街はとても静かで、警備員の立ち姿だけが見える。「車道に引いてある白線までがデモ隊の歩く所。それ以上は、注意する。」ように指示が出されていたのであろう。デモに参加している人が線からちょっとはみ出そうとすると、デモ隊横にぴたりと就いていた警官がしきりに線の中に押し戻そうとしていた。
 「さいかどう、はんた~い!」「げんぱつ、いらな~い!」何度も何度も大きな声で叫んで歩いた。後半、デモ隊が信号を横切っていくとき、車に乗った女性が窓を開けて手を大きく振ってくれていたのが、印象的だった。思いが共有できていればいいな…!
 「消費税増税」「大飯原発再稼働」等々、この間野田政権が推進する政策は、×××…!で、「政権交代」に期待した者としては、今や「残念」を通り越して「怒り」の度合いが増すばかりだ。 
 集会の最後に、福島の女性たちが発言されたが、「わたしたちは、政府に見捨てられ、切り捨てられた!」という訴えを、胸に深く留め置きたいと思う。そして、そうではない社会を築いていくために、今のわたしにできることをコツコツとやっていきたい。
                          (大阪 田中雅恵) 
 【出典】 アサート No.415 2012年6月23日

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【投稿】拒否された緊縮・増税路線  ギリシャ・フランス選挙が示したもの

【投稿】拒否された緊縮・増税路線  ギリシャ・フランス選挙が示したもの

<<「支援が断たれれば返済を止める」>>
 緊縮経済路線が全世界で厳しく問われている。市場原理主義と弱肉強食、規制緩和と社会保障政策破壊の新自由主義路線が圧倒的多数の人々から明確に拒否されだしたのである。
 5/6、ギリシャの総選挙で、連立与党を構成していた二大政党、中道左派の全ギリシャ社会主義運動(PASOK)と中道右派の新民主主義党(ND)は、合計得票率を前回の77%から32%まで激減、増税・年金切り下げなど緊縮政策を進めてきた両党、ならびにお仕着せの金融支援と引き換えに過酷な緊縮政策を押し付けてきた欧州連合(EU)、IMFに対して明確なノーがを突きつけられ、緊縮政策の撤回を主張する急進左翼連合(SYRIZA)が第2党へ、新民主主義党から離れた議員らによる新党・独立ギリシャ人が第4党になるなど、反緊縮派が大きく前進、その結果、どの党も過半数を制することができず、連立工作も不調に終わり、6月17日に再選挙が行われる予定であるが、この再選挙では急進左翼連合が、今回を上回る得票率で第1党となる可能性が濃厚となってきている。
 急進左翼連合はこの総選挙で、経済危機脱出の方針として、1.市民の最低限の収入、失業手当、医療保障の確保、付加価値税(消費税)の減税、2.債務の利払い停止、債務取り消し交渉など債務負担の処理、金融機関の投機の規制、3.富裕層への課税と、軍事費をはじめ不要な歳出の全面カット―などを主張、同党のツィプラス党首(37)は、5/17のインタビューで、ギリシャは必要ならば自分でやっていけると強調し、債務を返済しなければ、同国には労働者や年金生活者に支払う十分な現金があると述べ、国防費の削減、無駄遣いや不正、富裕者の税金逃れの摘発などを提案し、同時に、ギリシャ経済を押し上げるための刺激策が必要だとし、融資を見返りとした緊縮策を破棄すべきだとしている。同氏は、2015年までに公的部門で15万人をレイオフするという計画を中止し、民間部門の賃金を引き下げる措置を撤回すべきだと述べ、また、銀行の貸し出し政策を改善するために銀行の国有化に賛成だとし、かつてのルーズベルト米大統領によるニューディール政策とオバマ大統領の景気刺激策、欧州ではこれが欠けていると主張。さらに、欧州が同国への資金援助を断つ可能性は小さく、もしそのような措置が取られればギリシャは債務を返済しないと言明、ギリシャの金融崩壊は他のユーロ圏加盟国をも引きずり込むと強調。そうならないようにするため、「われわれの第1の選択肢は、それが欧州のパートナーの利益にもなるのだが、これらのパートナーに金融支援を止めてはならないと説得することだ」と述べ、欧州はギリシャの深まりつつあるリセッションを食い止めるための成長志向政策を検討し、同国が直面している「人道的危機」に対処しなければならないと述べている。

<<新自由主義の権化の敗北>>
 同じ5/6に行われたフランス大統領選決選投票で、社会党のフランソワ・オランド氏が、二期目を目指した保守系与党・国民運動連合のサルコジ大統領を破り当選を決めた。ここでも問われたのが緊縮政策であり、敗北したのは緊縮政策派であった。
 サルコジ氏が「16万人の公務員削減や年金改革で赤字を削減した」との“成果”を強調したのに対して、オランド氏は、「サルコジ政権の5年間は、失業者を70万人も増やし、格差を広げた失政だった」と指摘し、サルコジの富裕層優遇税制、年金支給開始年齢引き上げ、緊縮政策路線を批判、とりわけ消費税引き上げ(付加価値税の増税)は購買力を低下させ、雇用に必要な経済成長に悪影響を与えるとし、逆に消費税引き上げの撤廃、公的投資銀行の創設や家計貯蓄の活用による中小企業融資の促進や、新雇用契約の創設による終身雇用の推進を訴え、60歳の年金受給開始、教職員6万人の新規雇用、子どもの新学期手当て25%増、若者の雇用創出を提起し、さらには国際面では、フランス部隊のアフガニスタンからの撤退迅速化を最優先課題の一つに取り上げ、そして問題の原発政策においては、サルコジ氏が「安全基準が強化され開設時より安全になった」として存続を主張したフェッセンハイム原発について、「最古の原子炉で耐用年数の30年を過ぎた」として廃炉を公約、「投資するなら原発存続より再生可能エネルギーだ」と脱原発路線への転換を明らかにした(4月には、国民の8割以上が原発の大幅削減に賛成、6割以上が段階的廃止に賛成との世論調査が発表されている)。その結果としてのオランド氏の勝利であった。優柔不断で未知数と言われてきたオランド氏であるが、新自由主義の権化でもあったサルコジ政権の存続を許さなかった選挙結果こそが、今後のオランド政権の進むべき方向を指し示している。
 早速、組閣された内閣は、公約通り史上初めての男女同数内閣 閣内外の大臣34人の半数の17人を女性が占めて発足し、オランド氏は、ギリシャのみならず、イタリア、スペイン、ポルトガルなどに過酷な予算削減を強いるEUの新財政協定を再交渉することに意欲をみせており、この政権の行方が注視されよう。

<<「我が国も両方を追求している」>>
 このギリシャとフランスの事態が示したものは、いずれもこれまで推し進められてきた市場原理主義路線の象徴でもある緊縮経済路線こそが、強欲資本主義の弱者切り捨て、社会保障切捨て、賃金切り下げ、不正規雇用拡大、格差拡大路線を推進し、それがもはや受け入れ難いし、社会全体の貧困化と窮乏化の最大の原因となっており、許し難い路線として拒否されつつあることである。ウォール街占拠運動の世界的規模への拡大と発展は、その象徴ともいえよう。
 5/19、米キャンプデービッドで開かれていたG8サミットは、サルコジ氏に代わってオランド氏が出席し、各国が経済成長と財政再建を両立させる道を探る首脳宣言を発表、G8各国は、財政健全化の公約を維持しつつ、「成長を生みだそうとしている欧州の姿勢を歓迎」と、ギリシャ、フランスの事態の急変にとってつけたようなつじつまあわせでお茶を濁さざるを得なかったのであろう、「それぞれの国にとって正しい措置は同一ではないが、経済を強化するために必要なあらゆる措置をとる」と表明した。これまでの「財政健全化」一本やりの押し付けがもはや不可能となったのである。
 このG8で野田首相は「財政健全化と経済成長を両立させるのは、どの国も直面している課題で、我が国も両方を追求している」と強調して調子を合わせたが、その一方で「消費増税法案を(今国会で)成立させたい」とあくまでも消費税増税路線にこだわる姿勢を表明しているが、こうした事態の急変に最も驚いたのは野田氏であろう。
 ギリシャとフランスの選挙の結果に、野田・民主党政権は自らの来るべき敗北を重ね合わせて驚きを隠せず、もはやどこに向かうべきかも決められない、方向性を喪失したかのごとく動揺し、ただただ政権維持のためだけに、内部抗争と駆け引きと増税談合による大連立策動に明け暮れているのが日本の政治の現実と言えよう。
 対する野党の自民党も、このような事態をもたらした小泉政権以来の新自由主義路線についてこれまたまったく何の方向転換も打ち出せず、野田内閣の増税・緊縮路線と寸分たがわぬ、むしろよりいっそう市場競争原理主義的度合いを強めた小手先いじりと、9条改憲による国防軍・天皇元首・非常大権・基本的人権制限などまったく時代錯誤的な改憲草案を発表して恥じることのない政治姿勢で、これまた大連立に期待をかけて、これまでの自民党支持層からさえ見放されるような手詰まり状態で内部抗争に明け暮れ、民主党同様の方向性喪失状態と言えよう。この機に乗じて、既成政党打破を掲げてあわよくばと政権奪取をもくろむ橋下・大阪維新の会や石原都知事、河村名古屋市長などが離合集散、ネオ・ナチスばりの強権政治の正当化に明け暮れている。混沌としているかに見えるが、それぞれの思惑はあからさまであり、本来あるべき政治の再編の結集軸こそが問われていると言えよう。
 「それぞれの国にとって正しい措置は同一ではない」のは当然であるが、緊縮経済路線およびそれと密接不可分な増税路線は、どの国においても受け入れがたいものである。その根底にある新自由主義路線からの根本的転換こそが問われており、日本の場合、それは徹底した脱原発路線への転換と結び付けられなければならないし、そのためのニューディール政策こそが政治再編の要と言えよう。
(生駒 敬)

 【出典】 アサート No.414 2012年5月26日

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【投稿】原発震災で崩壊した「科学技術信仰」

【投稿】原発震災で崩壊した「科学技術信仰」
                         福井 杉本達也 

1 「原発安全神話」と共に崩壊した「科学神話」
 哲学者・梅原猛は原発震災後の県民福井(中日新聞)紙上・『思うままに』で、「今回の震災による原発事故により、現代の多くの先進国が信じていた、原発は安全でクリーンなエネルギー源であるという神話は崩壊したが、このような神話よりもっと古く、遍く信じられている、自然は科学及び技術の発展によって奴隷の如く唯々諾々と人間に従うという神話にも大きな疑問符が付けられたように思われる。この神話の創始者はルネ・デカルトである」、「近代哲学は運命や神を追い払い、世界の中心に人間を置いた」、しかし「太陽を地球上に創り出そうというのは人間の傲慢ではないか」、「人間による自然征服の結果、人類の存続すら危うくするような地球環境破壊が起こっている」、デカルト以来の「人間中心主義の哲学を捨て、生きとし生けるものと共存する哲学を自らのものとしなければならない」と呼びかけている(2011.5.17 /24/31)。
 また俳優・菅原文太は「科学万能主義はもう切り捨てなきゃいけない」、「科学文明が国家を豊にする、人間の生活を幸せにするという幻想に突き動かされて、われわれはひた走ってきた」、「その終局が原発じゃないですか」、「ここで一回『科学はいらない』『学者はいらない』って宣言したほうがいいのではないか」(「外野の直言、在野の直感」『本の窓』2011.7)と述べている。
 文科省は福島原発事故後の昨年4月に一般市民を対象とした科学技術に関する意識調査を行ったが「科学者は信頼できる」と回答したのは41%であり、事故前の2010年11月の調査の83%から半減してしまった。調査機関・文科省科学技術政策研究所では「科学者や技術者に対する国民の信頼は低下している可能性が高い」と分析しているが(日経:2012.1.30)、原発の安全神話の崩壊と共に、その神話を吹聴し、支えてきた「科学技術」も社会的信用を失墜してしまったのである。

2 自然への畏怖の念を失った「科学」
 17世紀に数学的自然科学の方法論を確立したのはガリレオ・ガリレイである。ガリレオの根本思想は自然という書物は数学的記号で書かれているとし、自然を単に受動的に観察するだけではなく、実験によって、能動的に自然に働きかけてゆかなければならないとし、自然界には存在しない“真空”中での落下という理想状況に近づける実験を通じ、実験で感覚的経験の所与のうちから量的に規定可能な単純な要素を分析的に取り出し、こうして得られた要素を数学的計算によって相互に統合することによって自然の織りなす量的関係をとらえ、数学的に表現した(参照:木田元『反哲学入門』2007.12.20)。しかし、それは自然にたいする畏れを抱き人間の技術は自然には及ばないと考えていた16世紀までの職人たちの自然観から、科学と技術を支配しうると考えた17世紀の科学者の自然観への転換をともなっていたのであり、その過程で科学者は自然に対する畏怖の念を捨て去ってしまったのである。(山本義隆『十六世紀文化革命2』2007.4.6)。
 最終的にデカルトは「我思う、ゆえに我あり」として、キリスト教の世界創造論では世界は神によって創造されたと考えられていたことを逆転し、「我」という「精神」=「人間理性」の自己確認からはじめて、人間理性が明確に認識できるものだけが自然のうちに現実に存在する=実験によって確かめられるものだけが存在するとしたのである(木田:上記)。もはや自然は模倣すべき対象でも見習うべき師でもなく、審問の対象(「私が元素の混合によって生ずると言われている諸物体そのものを試験し、それらを拷問にかけてその構成原質を自白させる」(ロバート・ボイル))となり、「自然を支配し、管理し、そして人間生活のために利用する」(ジョセフ・グランヴィル)(収奪の)対象となったのである(山本:上記)。

3 科学はどこからが分からないかを明らかにすること
 しかし、実際には近代自然科学はきわめて限られた問題にしか答えていない。物理学や化学は法則の確立を目的としていたが、しかしその法則というのは、まわりの世界から切り離された純化された小世界、すなわち環境との相互作用を極小にするように制御された自然の小部分のみに着目し、そのなかで人為的・強制的に創出された現象によってはじめて認められるものである。自然科学はそのような法則の体系として存在し、実際にはかなり限られた問題にたいしてのみ答えてきたのであるが、そのような科学にもとづく技術が、生産の大規模化にむけて野放図に拡大されれば、実験室規模では無視することの許された効果や予測されなかった事態が顕在化することは避けられない(山本:上記)。
 ところが、今回の原発事故ではこのような近代自然科学の限界を悪用する「専門家」?が跡を絶たない。長崎大学名誉教授の長瀧重信氏は放射線被曝について「昨今、1mSv(ミリシーベルト)以上の被曝は危険であるという『科学的事実』があるかのような言説が流れ、特にお子さんを持つ親御さんたちが不安に包まれています。」と切り出し、「100mSv以下では、被ばくと発がんとの因果関係の証拠が得られないのです。これは、科学的な事実=《サイエンス》です」と述べる。因果関係が存在しないことが明らかにされたのであれば、科学的事実であるが、「証拠が得られない」ことは「科学的事実」ではない。現時点での「科学の無能」=影響があるかないのか分からないだけである。さらに氏は続けて「このような科学的事実で国際的な合意を得られたものを発表する機関がUNSCEARですから、『疫学的には、100mSv以下の放射線の影響は認められない』という報告になるわけです。」と続ける(首相官邸HP:「サイエンスとポリシーの区別」2011.9.29)。ATOMICAによると「低線量、低線量率の放射線被曝の影響については、あまり明確なデータは得られていない。」(ATOMICA:「国連科学委員会(UNSCEAR)によるリスク評価」)という要約となっており、明確に「数量化」できるものがないということであり、「実験と測定の結果を数学的に理論化された『法則』として確定」(山本:上記)はできないということである。それを、「影響は認められない」として無理矢理「ないこと」にしてしまうのであるから「国民の信頼が低下」するのも当然である(参照:影浦峡「『専門家』と『科学者』:科学的知見の限界を前に」『科学』2012.1)。なお、日本の法律(「放射線障害防止法」)では、一般人の被曝限度は、年間1mSvまでと決まっている。「あるかのような言説が流れ」というのは真っ赤なウソである。

4 科学の攻撃的性格
 地球は今から46億年前に生まれたが、生命はそれから6億年位経った頃、深い海の底、海水の温度も高いところで誕生した。浅い海では降り注ぐ宇宙線によって壊されてしまったからである。生命が浅い海に移動してくるのは地球に磁場が形成され、有害な宇宙線の進入を防ぐことが出来るようになった27億年前頃である。そして、生物が陸上に進出してきたのは紫外線を防ぐオゾン層が形成された5億年前である。生命は宇宙線や紫外線などの有害な放射線の届かないところで生まれ、そして危険がなくなったところに進出していったのである(参照:「よくわかる原子力」HP)。一方、地球内部でマントルを溶かしている熱(地熱)の半分は、地中の放射性物質(ウラン・トリウム・カリウム)が自然に崩壊する際に出す熱(崩壊熱)とされる(東北大学ニュートリノ科学研究センター)。46億年前の地球は半減期の短い核種を大量に含む放射性物質で満ちていた。半減期の短い不安定な核種は早く崩壊し、放射線の影響が少なくなったことで生命が誕生する条件が整ったのである。
 原発事故は今回の福島第一やチェルノブイリからも明らかなようにその影響の甚大さはこれまでの技術のものとは桁違いである。周知のように核爆弾はマンハッタン計画としてその可能性も作動原理も百パーセント物理学者の頭脳のみから理論的に生み出された。自然には起こらない核分裂の連鎖反応を人為的に出現させ、ヨウ素131やセシウム134・137といった核分裂生成物やプルトニウム239といった自然界にはほとんど存在しない猛毒物質をまき散らすことは、この生命誕生後の地球40億年の歴史を根本的にひっくり返す行為に他ならない。人類の祖先からの歴史に匹敵する10万年に亘って放射性廃棄物を管理することなどできるはずはない。それは人間に許された限界を超えている。地球内部のマントル対流がプレートの動きを生み出し、その沈み込み帯でM9の巨大な東北地方太平洋沖地震を発生させ今回の原発震災となった。我々はもう一度、16世紀まで人類が有していた自然にたいする畏れといった感覚を取り戻すべきである(参照:山本:『福島の原発事故をめぐって』2011.8.25)。 

 【出典】 アサート No.414 2012年5月26日

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【投稿】アジアにおける真の脅威 

【投稿】アジアにおける真の脅威 

北朝鮮のミサイルを利用
 4月13日午前7時39分、北朝鮮は通告通り中国国境に近い北西部の東倉里射場から「科学衛星『光明星3号』」を搭載した「ロケット『銀河3号』」を打ち上げた。
 しかし「銀河3号」は発射数分後で機体に生じたトラブルにより空中爆発し、その破片は黄海に落下した。
 過去3回の失敗時には「成功」と強弁してきた北朝鮮当局は、今回いち早く失敗を公表せざるを得なかった。事前の海外メディアや専門家への過剰なまでの公開姿勢が裏目に出たといえる。
 打ち上げ失敗の要因については、さまざまな分析がなされているが、今回も多段式機体の分離に失敗していることから、一言でいえばロケット工学分野における基本技術の欠如という見方が一般的となっている。
 そもそも、北朝鮮のミサイル、ロケット技術のルーツは旧ソ連にあるが、オリジナルからコピーを繰り返し、弄繰り回すにつれ劣化していったと思われる。
 金正恩政権の門出を祝うはずの打ち上げが、国際的な注目の中失敗したのは北朝鮮にとって痛手であるが、一連の騒動を利用し、一層の緊張政策を進めようとしているのが日本政府である。

小躍りする野田政権
 北朝鮮が打ち上げを予告するや否や、野田政権は勇み立つかのように「迎撃」を決定、弾道弾迎撃ミサイル「SM3」を搭載するイージス艦3隻を基幹とする任務部隊を編制、日本海及び南西諸島海域に出動させ、さらに「中国、ロシアの偵察機の接近を阻止」するため、艦隊にF15戦闘機の直援をつけることも決定した。
 さらに「SM3」が「撃ち漏らした場合」に備え、パトリオット「PAC3」を首都圏に加え沖縄本島、石垣島、宮古島に展開し、「ロケットに積載されている有害燃料(ヒドラジン)が飛散した場合」に備え、特殊武器(化学兵器)対応部隊も派遣するという、陸海空それぞれに出番を与えるという大がかりなパフォーマンスとなった。
 このため、当初は陸自だけで750人という、カンボジアやイラク派兵を上回る規模の派遣が計画されていたが、沖縄の関係自治体はもちろん防衛省内部からも「調子に乗りすぎ」との疑念の声が出されたという。仲井間沖縄県知事も田中防衛大臣に対し「適正規模の派遣」を要請、結果として派遣兵員は半減された。
 そもそも、今回「日本領土に落下する弾道ミサイルを迎撃する」という想定自体、砂上の楼閣と言っても過言ではない。北朝鮮の「ロケット」が正常に飛行すれば南西諸島の日本領土、領海上空を通過する時点で大気圏外=領空外にあり、これを打ち落とすのは技術的に可能であっても国際法上問題があり、見過ごす他はない。
 逆に領土、領海に落下する場合は、トラブル制御不能となった機体、もしくは破片となっているであろうし、こうした自由落下する物体に対して迎撃ミサイルを命中させるのは不可能で、それ以前に大気圏再突入の際にほとんど燃え尽きているだろう。

真の狙いは対中国
 自衛隊も本気で「弾道ミサイル」を打ち落とせるとは考えてはいなかっただろうし、それ以前に日本に危害を及ぼすような可能性はないと判断していたと思われる。実際、海自のイージス艦は打ち上げを探知できなかったし、直後の政府部内の混乱は周知のとおりである。
 すなわち、この間の自衛隊各部隊の動きは、「北朝鮮の弾道ミサイル対処」を口実とした、中国を念頭に置いた南西諸島および同海域への展開演習及び示威行動であった。
 昨年11月には九州を拠点とした大規模な「協同転地演習」が行われたが(408号参照)、今次はさらに一歩も二歩も中国側に踏み込んだ「前方展開演習」ともいうべきものである。
このように波状的に進められる実動演習は、中国から見れば挑発以外の何物でもないだろう。特に今回は「北朝鮮の弾道ミサイル発射」に対応するための措置であると言われれば、中国としても文句のつけようが無かったのである。中国指導部としては、日本に軍拡の口実を与えた北朝鮮を苦々しく思っているだろう。
 ミサイル騒動の余韻を残した4月22日、中国、ロシア海軍の合同演習「海洋協同-2012」が開始された。中国からはミサイル駆逐艦、フリゲートなど水上艦艇16隻、潜水艦2隻、ロシアからは太平洋艦隊のミサイル巡洋艦、駆逐艦など水上艦艇7隻などが参加する大規模なものとなった。

中国の「反撃」
 この演習は北朝鮮のロケット発射計画以前から決まっていたものであるが、タイミング的に中露軍事同盟による対日反撃と解釈される向きもあった。中国の一部メディアでは日本海でも、合同演習が行われるかのような報道がされた。これが事実なら相当刺激的な問題になったが、それは誤りで演習区域は山東省沖の黄海に限られていた。ロシア艦隊はウラジオストック地域から対馬海峡(西水道)を通過、青島で中国艦隊と合流した後、演習が開始されたのである。
 この演習の目的は「中露の関係強化、戦略的パートナーシップ及び両国軍の連携の発展」とされ、演習内容も対テロ、海賊対処訓練、洋上補給、救難など多様なものであった。
また同演習の指揮、連絡はロシア語で行われており、練度の面からも外洋型海軍を目指す中国海軍がロシア海軍の教導を受けるという性格が強かったとみられる。(ロシア海軍は中露一辺倒ではなく、6月下旬からハワイ近海で行われるアメリカ主導の環太平洋合同演習「リムパック」にも今年初めて参加する予定である)
 中国海軍の太平洋での活動が活発化しているのは事実で、同演習終了後の4月29日、東海艦隊のフリゲートなど3隻が大隅海峡を通過、太平洋に出た。さらに5月8日には南海艦隊の揚陸艦など5隻が南西諸島沖を通過、南東に向かったのが自衛隊により確認されている。
 中国は外洋型海軍化に伴い、尖閣諸島、スプラトリー諸島、パラセル諸島など日、フィリピン、ベトナムなどと領有権を争う海域で攻勢に出るとされているが、単純に冒険主義的な動きをとると見るのは誤りであろう。

対立煽る日本政府
 現在中国は南シナ海のスカボロー礁(中国側呼称「黄岩島」)近辺の水産資源を巡りフィリピンと対立しており、一時は武力衝突の懸念もあったが、中国は5月16日から2か月間の休魚期間を設定、フィリピンも同様の措置を取りアキノ大統領も外交手段での解決を明言している。
 こうした動きに対し、日本政府は武器輸出3原則の緩和を踏まえフィリピン、マレーシア、ベトナムにODA戦略的活用の一環との位置づけで巡視船の供与を行おうとしている。
 その意図について玄葉外務大臣は4月27日の記者会見で「アメリカの戦略の補完的な役割を果たすことができれば、相当の相乗効果が期待できるのではないか」と明け透けに語っている。
 日本の造船会社は戦前、タイ王国からの受注で軍艦を建造したことがあるが、戦後において巡視船とはいえ武装可能な船舶を、政府ベースでアジアの潜在的な紛争当事国へ供与するのは、外交政策の一大転換である。これはアジア重視と言いながら実効的措置に逡巡するアメリカに対し、日本がその肩代わりに踏み込む第一歩でもある。
 また海上自衛隊は近々、インド海軍との初の2国間合同演習を行う予定となっており、対中包囲網のヘゲモニー掌握へ突き進もうとしている。しかしインド海軍はロシアが「リムパック」に参加するのと同様、中国海軍とも演習を行うという柔軟な対応をとっている。
事あるごとに「自衛隊員の息子」をアピールする野田総理であるが、石原東京都知事や河村名古屋市長のような排外主義を放置し、強硬姿勢以外の選択肢を放棄すれば、日本をアジアにおける真の脅威として浮かび上がらす結果となろう。(大阪O) 

 【出典】 アサート No.414 2012年5月26日

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【投稿】震災の被災地 宮城県を訪ねて(1) 

【投稿】震災の被災地 宮城県を訪ねて(1) 

 昨年3月11日、東北地方をM9.0の大地震による大津波が襲った。さらに、福島原発事故により、深刻で長期に渡る放射能汚染が追い討ちをかけた。あれから1年2ヶ月が経過した。テレビ報道では、繰り返し津波被災の映像が流されてきた。私も、公務員として、一個人として、是非震災復興への手助けをしたいと、職場からの派遣の際にも、手を挙げてきたが果たせず、これまで、被災地を訪れる機会がなかった。
 1年を迎えるころから、被災地に行くべしとの思いが強くなって行った。東北から遠く離れた関西から、今回、宮城県の石巻市・南三陸町・そして気仙沼市を訪ねることにした。5月の連休を利用して、マイカーで全走行距離2400Kmの旅となったが、その報告をしてみたい。


(南三陸町の防災庁舎瓦礫の山と建物基礎のコンクリート)

 初日に夜大阪を出発し、北陸道・磐越道・東北自動車道を通り、翌日昼には石巻市に入る。石巻は海岸部を中心に大きな津波被害を受けているが、内陸部では、比較的「普段の生活」が感じられた。もちろん、そこここに瓦礫の集積場や、仮設住宅が点在している。この日は、徹夜走行の疲れもあり、宿泊地の南三陸町への道を急いだ。
 北上川沿いの道路から横山峠を越えて、南三陸町の海岸部が見えてきた途端、風景が一変する。建物らしい建物は、公立志津川病院とスーパー、3階まで襲った津波の傷跡を残す小学校か、骨組みだけの建物跡。戸建て住宅と思えるものは、ほとんどなく、コンクリートの基礎枠だけが、残っている。
 私には復興と言えるものを見つけることができなかった。ユーチューブの画像などを見ると震災直後は、押し流された建物の残骸や、魚網などの漁業関連の物が町を埋め尽くしていたようだが、さすがに、それらは整理され、数箇所に集められてはいたが。
 
 「さんさカフェ」を訪ねて
 南三陸町にある県立志津川高校と志津川中学校は比較的高台にあったため、間近に津波が押し寄せたが、建物は被害をまぬかれ、被災後避難所となった。この志津川高校の避難所に炊き出しボランティア活動をしてきた私の友人、支援グループと現地の方が、設立したのが、共同食堂としての「さんさカフェ」である。ちょうど、志津川高校への入り口近くに今年の1月末にオープンしている。瓦礫と荒涼と広がる被災地にあって、唯一のホッとする場所であった。コーヒーをいただき、高台移転事業や、ボランティア活動、津波が来た時の話を聞いた。
 NHKの番組で、南三陸町での高台移転事業の特集番組があった。最終的に全額国庫補助事業となるのだが、いろいろな問題で、今年2月の時点では、中々進んでいない、という内容だった。聞いた話では、何とか4月以降には予算の確保もできて、4月を待って動き出した感じがあるということで、数箇所で事業の具体化が進んでいるとのことだった。

堤防から破壊されたままの水門を見る。 内陸部に点在する仮設住宅

南三陸町の入り口に、コンビにが出来ていたが、貴重な物資購入の拠点となっているようだった。日用品から食料を被災地の住民に提供しており、賑わっていた。災害時の物流に貢献しているな、という印象であった。
 この日の宿は、岬のキャンプ場を確保し、とにかく長期ドライブの疲れを取ることにした。そこへの道すがらも、放置されている軽自動車や、内陸まで運ばれたままの漁船、破壊された堤防、舗装道路など、震災から1年が過ぎているとは思えない風景が続いた。
 漁港には、高さ5メートルはあろうかという瓦礫の山があり、仮設テントのような漁協建物が作られ、漁業再建の動きが始まっているようにも見えた。岬の高台にあるキャンプ場だったので、津波被害はなかったようで、震災前の観光マップが管理棟に置かれてあったのが印象に残っている。以後3日をこの地で過ごすことになるが、ここ以外では、見ることができなかったからである。
 翌日は、気仙沼を目指すことになる。(佐野) 

 【出典】 アサート No.414 2012年5月26日

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【日々雑感】つくづく思う 語り部、記念館の重要性

【日々雑感】つくづく思う 語り部、記念館の重要性

 名古屋市長の河村や、その他いろんなメディアの人々の中には、南京大虐殺は無かったことだ、捏造だと歴史をゆがめようとする人も多いが、私は新聞記事の中で、写真入りで、この大虐殺からの生き残りの人の証言を読んだことがあります。この証言者ですら、ここ2~3年の間に亡くなられたかも知れませんが、そうであればある程、歴史を意識的に歪めようとする人々の言いたい放題です。
 語り部、記録、さらには記念館等々の大切さを痛感する思いです。
 前置きが長くなりました。「岸壁の母」という歌が流行ったことがありましたが、先月2012年4月18日(水)の朝日新聞の夕刊トップで、母ならぬ「岸壁の妻願いは今も」という記事が載りました。
 戦争中に外地で消息を絶った夫を待ち続けた「岸壁の妻」。助け合いのために作った組織が18日、54年にわたる活動を休止する。多くは旧ソ連からの引き揚げ船が京都・舞鶴に入るたび、岸壁で夫の姿を探し続けた女性達だ、という記事でした。
 そして「めぐみ会」。1958年2月、夫を待つ10人で発足し、その副会長として運営を支えてきた尾崎利子さん(92)は振り返っておられます。
 夫の勲さんは結婚のわずか20日後に召集された。消息は45年8月12日、中ソ国境付近で途絶えていた。戦時死亡宣告の制度を拒否した尾崎さんは58年3月、消息を再調査するよう国に特別審査請求し、61年に戦死公報を受け取った。でも「どこかで生きている」と信じようとした。
 会員は関西を中心に最多で130人に上り、尾崎さんは機関紙「おとずれ」の発行や戦没者追悼行事、バザー、共済制度の創設など活動を切り回してきた。高齢化が進み、会員は20人ほどに。寝たきりに近い人も多い。会長の近衛正子さん(87)と相談し、活動の無限休止を決めた。尾崎さんは、時折、生き延びた勲さんが地元の女性と子どもをもうけていたらいいのに、と夢想する。「でも本当は戦死して、野ざらしなんだろう。独り取り残されてかわいそうに・・・・」
 18日午前、会の事務局がある京都市下京区の西本願寺で、最後の総会と別れの会食があった。会員や遺族計14名が出席。故人となった会員の遺影とともに、記念撮影に臨んだ。尾崎さんは「活動は終わっても追悼を続けることで会員の心はつながっていけるけれど、若い人たちが戦争のことを忘れてしまっているような風潮が気になります」と話した。
 以上が紙面の記事の概要ですが、私は最後の下線部分で、若い人達が忘れているのではなく、教えられないのだと思いますが、そういうことも含めて、次回に記念館のことを書いてみたいと思います。(2012年5月18日 早瀬達吉) 

 【出典】 アサート No.414 2012年5月26日

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【投稿】増税翼賛・原発再稼動の危険をよそに

【投稿】増税翼賛・原発再稼動の危険をよそに東西の愚劣・挑発首長にへつらう愚かさ


4月21大飯原発再稼動を許さないデモ・関電本社前
(写真は、4/21「大飯原発再稼働を許さない!」(呼びかけ:止めよう原発!関西ネットワーク)・関西電力本店前)

<<「面白い話だろ」>>
4/16、東京都の石原知事はワシントン市内の保守派シンクタンク・ヘリテージ財団(日本の防衛族・憲法九条否定議員と関係が深いことで有名)で「日米同盟と日本のアジアでの役割」と題して講演し、現憲法について、「アメリカが戦争中に3日か4日で作って、英語から日本語に訳した非常に醜い全文でできているあの憲法」と現憲法を全否定し、「日本がサンフランシスコ条約で独立後も、有効な法律としてその国を支配しているばかな事例はどこにもない」、「国民は権利意識は強いが、自分の責任は意識しないという、非常にいびつな国民のメンタリティーを作ってしまった」、「日本も核のシミュレーションをすべきだ」などと自説を開陳、その後に「日本人が日本の国土を守るため、東京都が尖閣諸島を購入することにした」と述べ、尖閣諸島の魚釣島、北小島、南小島を個人所有する地権者と交渉を開始したことを明らかにした。
石原知事はさらに「ほんとは国が買い上げたらいいと思う。国が買い上げると支那が怒るからね」、そこで「東京が尖閣を守る。どこの国が嫌がろうと、日本人が日本の国土を守る。日本の国土を守るために島を取得するのに何か文句ありますか。ないでしょう。やることを着実にやらないと政治は信頼を失う。まさか東京が尖閣諸島を買うことで米国が反対することはないでしょう。面白い話だろ。これで政府に吠え面かかせてやるんだ」と、どうだと言わんばかりの笑みを浮かべながら、インタビューに答えている。わざわざ米国で現憲法否定発言を声高に叫び、悪意と侮蔑と差別感情をを込めて中国を「シナ」呼ばわりし、対中強硬姿勢をひけらかし、領有権を主張する中国や台湾の反感を意図的に煽り立て、物議を醸すことを承知の上で、突出した刺激的で挑発的な発言を繰り出し、「面白い話だろ」と悦に入っている姿は、あきれるばかりか、その時代錯誤ぶりは愚劣、醜態でさえある。

<<共鳴・絶賛しあう東西の挑発知事・市長>>
ところがこの石原発言について、4/17、大阪市の橋下市長は事前に構想を聞いていたことを自慢げに明らかにしたうえで、「石原知事がこのような行動を起こさない限り、国はこの問題にふたをしたままで積極的な動きはなかった。すごい起爆剤になった」「普通の政治家ではなかなか思い付かないことだ。石原氏しかできないような判断と行動だと思う」とへつらい、ほめあげ、絶賛したのである。同類、相共鳴しあう図である。
石原氏は「東京が尖閣諸島を守る」と声を張り上げたが、買うのは石原氏個人ではなく、価格は「10~15億円になる見込み」で、都が税金から買うのである。しかもどういう方法で「尖閣を守る」のかは明かにしなかったが、これまた巨額の税金支出を必要とするであろう。「都の予算は都民のために使うのが大原則では」と問われて、石原知事は「大原則は国のためだ」と弁明したが、橋下市長もこれを褒め上げた以上、協力・協賛・同調するのであろう。都政や市政にかかわる物件でもないものに支出をしてわざわざ緊張を激化させ、その物件を守るためにまた支出をする、まったく都政・市政に無関係、有害無益でくだらない支出である。こんな挑発行為を大げさに取り立て、褒め上げ、媚びへつらう日本の政治状況、メディアの報道姿勢こそが問題だといえよう。
橋下氏はすでに「日本では、震災直後にあれだけ『頑張ろう日本』『頑張ろう東北』『絆』と叫ばれていたのに、がれき処理になったら一斉に拒絶。全ては憲法9条が原因だと思っています」と述べ、憲法9条は「他人を助ける際に嫌なこと、危険なことはやらないという価値観。国民が(今の)9条を選ぶなら僕は別のところに住もうと思う」と、現憲法の根幹を露骨に否定する、石原氏とまったく同一の路線を表明しており、危険極まりない時代錯誤的な国家主義者の、日の丸・君が代を強制する東西の挑発者コンビが、期せずして偏狭なナショナリズムを煽る、その低劣な本質を自己暴露したのである。憲法9条が嫌いなお二人さんは、とっとと「別のところ」に住んでいただいたほうが、国際平和に立派に貢献できよう。しかし現今日本の政治・メディアの状況は、この二人にこびへつらい、持ち上げ、体制翼賛化しかねない状況が作り出されている、と言えよう。

<<「都ではなく国が買うべきだ」>>
問題は、石原氏個人の勝手な自己陶酔の、無責任な酔っ払い発言の類でしかないものが、公職である都知事発言として一人歩きし、外交的挑発発言として緊張を激化させる格好の道具立てに仕立て上げられ、政権が無責任な言辞の毅然たる批判もできず、むしろそれに引きずられていることである。
折りしも、朝鮮ミサイル騒動をめぐって迎撃ミサイル発射命令が発令され、日米ミサイル共同作戦が進行し、これを好機として首都圏から沖縄、先島までPAC3配備が大手を振ってまかり通り、軍事優先・緊張激化・冷戦志向の新たな段階が画され、次なる先島諸島への自衛隊配備の地ならしが既成事実として着々と進められ、東シナ海での軍事的緊張が人為的に形成されつつあることである。わざわざ緊張を煽り立てるまったく大迷惑な、客観的にも主体的にも本来そのような必要性などまったくない、一触即発・緊張激化の事態の進行が画策されているのである。
石原氏の尖閣諸島購入発言について問われた藤村官房長官は「必要があれば東京都にも情報提供を求めていきたい」と述べ、尖閣諸島を国が購入することについて「必要ならそういう発想のもとにすすめることも十分ある」と述べ、野田首相までが4/18の衆院予算委員会で「あらゆる検討をしたい」と述べ、尖閣諸島の国有化も選択肢とする考えを示唆し、前原政調会長が「都ではなく国が買うべきだ」と応じて、石原・橋下発言に媚びを呈し、尻馬に乗ろうとする姿は、崩壊寸前の政権の付和雷同する哀れな姿を象徴していると言えよう。こんな挑発路線に引っかかり、かかわっておられるような政権の状況ではないはずである。
もはや政権交代の意義をまったく失ってしまったといえる民主党政権にとって、最後の汚名挽回の切り札は、このような緊張激化路線と決別し、危険極まりないさらなる原発震災の危険性を回避する、原発再稼動を一切認めない脱原発路線への全面転換と増税翼賛路線からの脱却である。自公前政権の市場原理主義・弱肉強食・規制緩和・社会保障切捨て・緊縮経済路線からの決別を約束したからこその政権交代、そして福島原発震災が明らかにした原発震災の全地球的・全人類的犯罪路線からの決別、この二つと復興経済を結び付けるニューディール政策への全面転換こそが、日本が直面し問われている最大の課題なのである。期待すべくもないかもしれないが、現政権主流派に反旗を翻す多数派の結集と決起こそが問われていると言えよう。
(生駒 敬)

写真は、4/21「大飯原発再稼働を許さない!」(呼びかけ:止めよう原発!関西ネットワーク)・関西電力本店前

【出典】 アサート No.413 2012年4月28日

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