Assert Webの更新情報(2020-08-01)

【最近の投稿一覧】
8月1日  【投稿】「本当の懸念」の浮上--経済危機論(27)
7月30日 【投稿】放置される対北朝鮮政策 トランプ、安倍に余裕なし
7月26日 【投稿】新型コロナ危機と野党共闘--統一戦線論(70)
7月26日 【書評】『国境の医療者』 (2019.4.発行、新泉社)
7月25日 【投稿】「健康自己責任論」の押し付けによる医療・公衆衛生の社会的共通資本の破壊で、新型コロナウイルスの対策が迷走
7月8日  【投稿】「イージス・アショア」配備計画の突然の中止を“奇貨”とし、東アジアの緊張緩和策へ
7月6日  【投稿】都知事選の結果をめぐって--統一戦線論(69)
7月4日  【投稿】地方分権の本旨を踏まえたふるさと納税最高裁判決
7月1日  【投稿】敗退に直面するトランプ、危機を激化--経済危機論(26)
6月30日 【投稿】新型コロナウイルス対策で失敗し続ける無責任体制国家:日本
6月17日 【投稿】都知事選を目前に控えて--統一戦線論(68)
6月13日 【投稿】危機の激化とトランプ固有の危険性--経済危機論(25)

【新型コロナ関連投稿について】
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【archive 情報】
「History」・「大阪市立大学ビラコレ1968-1970」に、以下のページを追加   
1970年5月期 米の北爆再開抗議、カンボジア侵略糾弾、外相訪印阻止(6/18)

「MG-archive」「民主主義の旗(第1期)」「民主主義の旗(第2期)」に
「民主主義の旗」23・28・31・32・35・36・37・54・55・56号を追加しました。(5/28)

【準備中】
「民学同第2次分裂(B)」「民学同第3次分裂」のページを準備中です。

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【投稿】「本当の懸念」の浮上--経済危機論(27)

<<二つの報道>>
現在のアメリカを象徴する二つの報道が、7月末、続けざまに大きく取り上げられた。一つは、「米GDP 32.9%減 過去最大・歴史的後退」という、7/30、米商務省が発表した、アメリカ経済急落の現実の深刻さである。
もう一つは、この現実に打ちのめさせられたのであろうか、トランプ大統領が同じ7/30のツィートで、11/3予定の大統領選について「(投票日を)遅らせたくはないが、選挙の不正は見たくない」と、選挙延期論を表明したことであった。支持率をどんどん低下させている自らの政権をなんとか延命させようとする、クーデターのにおいがふんぷんとするいかがわしいツィートである。
GDP急落は予想されていたこととはいえ、1~3月期5.0%減に比して、4~6月期32.9%減 まで急落した責任の大半が、パンデミック危機を見くびり、新型コロナウィルス感染拡大を放置、野放しにしてきたトランプ政権にあることは明瞭である。GDPの急落は、統計が存在する1947年以降、過去最大であり、2008年10-12月期のリーマンショック時の8.4%減の、実に4倍近い急落である。GDPの7割を占める個人消費は、

34.6%も減少しており、設備投資は27.0%減、輸出64.1%減、等々、トランプ氏が期待するV字回復の兆しなどどこにもない惨憺たる実態である。
これでも「予想よりもまだまし」と言われている。それは、一時、失業率の改善か、などと言われていた、失業保険給付申請件数が、7月に入って以降増大、悪化に転じており、実態はより以上に厳しいからである。それは、購買力衰退→需要喪失→投資機会の縮小→資本過剰→投機とマネーゲームという悪循環がいまだに放置されているからでもある。実体経済の悪化とは逆に株価が上昇するという、この悪循環は、規制されるどころか、中央銀行であるFRB自体が、ウォール街・金融資本に野放しに近くヘリコプターマネーを大量に提供しているからでもある。自由競争原理主義が金融資本主義と一体となって、実体経済を掘り崩し、経済危機をさらに深刻なものにさせているのである。

<<準備通貨・ドル崩落の懸念>>
しかし、こんな異常な状態はいつまでも続けられるものではない。野放しの金融資本主義がいよいよ放置できない事態を招きだしている、と、その推進の先頭に立ってきたウォール街の巨大資本自身が警告を出し始めたのである。「世界で最も影響力のある投資銀行」と言われるゴールドマンサックスが、7/28、ドルが世界の準備通貨としての地位を失う恐れがあるという大胆な警告を出し、ドルの支配を終わらせる可能性のある「衰退の恐れ」に言及し、「ゴールド(金)は最後の手段の通貨であり、特に現在のような政府が法定通貨を下落させ、実質金利を史上最低水準に押し上げている環境では」、「準備通貨としての米ドルの寿命に関する本当の懸念」が今日現在浮上してきている(ゴールドマンサックス・投資戦略担当ジェフリー・カリーらのレポート)と、警告を発したのである。事実、ドル崩落の懸念から、金の取引価格はこのところ連日、最高値を更新し続けている。
国際決済通貨・準備通貨としてのドルの圧倒的強さを背景に築いてきたアメリカ帝国の支配構造、やりたい放題の金融資本主義がいよいよ追い詰められてきたのだとも言えよう。
3年ごとに更新される国際決済銀行(BIS)のデータによると、ドルは現在すべての通貨取引の88%で使用されている。 国際通貨基金(IMF)のデータによると、ドルは世界の外貨準備の約62%を占めている。しかし、1970年代のピークには85%を超えていたものである。確実に変化してきているのである。
なによりもロシアと中国が、ドル支配から抜け出す、脱ドル化プロセスを着実に加速させてきており、今年、2020年の第1四半期には、両国間の貿易におけるドルのシェアが初めて50%を下回り、シェアは2018年の75%から46%に低下、非ドル貿易の54%は中国人民元(17%)、ユーロ(30%)、そしてロシアルーブル(7%)と確実にドル離れが進行している。わずか4年前、ドル紙幣は通貨決済の90%以上を占めていたことからすれば、急速な変化である。そしてロシアとユーロブロック間の貿易取引決済も、主たる決済通貨はドルではなく、主としてユーロで行われており、シェアは46%に達している。
さらに、中国の今年6月の銀行による外国為替取引全体の元建ての支払いと受け取りの割合が、2年前の19%から37%に増加し、ドルの使用量が70%から56%に減少している。中国はさらに、世界最大の石油輸入国であることから、価格決定者として行動するべく、石油購入カルテル形成をめざしており、イランとの貿易および経済関係においても脱ドル化を明確にしている。ドルの決済通貨・準備通貨としての役割が、いよいよ衰退する「本当の懸念」が現実化しだしたのである。世界の現実は急速に変化しており、すでに米国政治の指導的役割はトランプ政権の登場によって決定的に低下しているが、米国経済の成り行きいかんでは経済的にもドル支配が一挙に崩壊しかねない事態を迎えていると言えよう。
ゴールドマンサックスのアナリストたちは、こうした事態の背景にある「地政学的緊張の高まり、米国内の政治的および社会的不確実性の高まり、新型コロナウィルス関連感染の第2波を背景にしたインフレバイアス」を警告したのであるが、金融資本規制など事態を克服するニューディールについては、自らの否定的役割からしても、何も述べることができないでいる。
ヘリコプターマネーは、金融資本や1%の富裕層にではなく、彼らの独占支配を規制し、累進課税を復活させ、租税回避を許さないニューディール、実体経済の再建、99%の人々の生活再建、パンデミック危機に打ち克つセイフティネットの構築、社会的・公共的インフラを再建するニューディールにこそ使われなければならないのである。
(生駒 敬)

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【投稿】放置される対北朝鮮政策 トランプ、安倍に余裕なし

コロナ禍が地球を席巻する4月下旬、金正恩重体説が世界を駆け巡った。一時は既に死亡しているのではないかとの情報もあったが、5月2日に朝鮮中央通信が、前日の動静を報道し20日ぶりに健在が確認された。

北朝鮮の最高権力者を巡っては、初代の金日成、2代目の金正日に関しても、時折死亡説が流布されたが、いずれも程なく否定された。

逆に2名とも本当に死去した時は、時を置かずして発表されており、代替わりも重要なイベントである北朝鮮の政治体制を勘案するなら、今回の騒ぎも眉唾ものであったと言える。

しかし、金正恩が様々な健康問題を抱えていることは明らかであり、それをカバーし、硬軟の役割分担するように金与正の露出が増えていることは注目される。

とりわけ、6月16日の南北連絡事務所の爆破は、北朝鮮最強硬派としての金与正の存在感を強くアピールするものとなった。

爆破の口実となった、脱北者団体による宣伝ビラの散布を始め、北朝鮮のこうした姿勢の矛先はもっぱら、韓国、文政権に向けられている。一方トランプ政権に対してはほとんど沈黙を保っており、アメリカ国内の混乱と、大統領選挙の行方を注視しているものと考えられる。

対米政策に関しては、トランプの敗北を前提に対米政策の見直しが進められている。7月10日金与正は「年内の米朝会談は無益」との談話を発表した。

先の無いトランプと話しをしても、事態の進展は見込めないと言うことであるが、トランプ自身もそうした余裕はないだろう。

27日には金正恩が「核兵器によって国の安全と未来は永遠に保障される」と表明し、アメリカ新政権への牽制球を投じた。全ては、11月の選挙結果待ちということとなったが、バイデンではさらに交渉は困難になるだろう。

こうした状況の中、安倍政権は全く関与できていない。北朝鮮のミサイル対策が口実だったイージスアショア計画は頓挫し、軍拡の対象は中国にシフトしている。この間拉致被害者高齢家族の逝去が続いているが、ボルトンの著作では拉致問題軽視が暴露された。

一時、日朝首脳会談を模索した安倍であるが、その動きは現在完全にストップしている。安倍は「国難突破総選挙」などと、これまで北朝鮮を都合よく政権延命に利用してきたものの、コロナ禍に右往左往し、トランプ以上に余裕のないのが現状といえる。

北朝鮮がコロナ感染を認めた現在、東アジア関係国での連携が求められているが、そうした旗振りも安倍政権には期待できないのである。

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【投稿】新型コロナ危機と野党共闘--統一戦線論(70)

<<総花的なあいまいさ>>
7/5の東京都知事選以降も、新型コロナウィルス感染の増大には、一向に歯止めがかかっていない。むしろウィルス感染は東京・大阪など全国各地で拡大しており、安倍政権や東京・大阪両知事をはじめ、日本のパンデミック危機対応政策が完全に破綻していることが明瞭になってきている。都知事選から20日間経過した7/25現在においても、東京都内で新たに295人の新型コロナウイルス陽性者が確認され、7/24には過去最多の366人、陽性者が200人を超えるのは5日連続、100人を超えるのは17日連続、7月に入って200人を超えるのは12回目、7月の合計では4750人と感染拡大は以前よりもさらに危険性と深刻さを増しているのが実態である。
それにもかかわらず、現職の小池百合子氏が圧倒的な強みを発揮し、「感染対策」はしているふりだけで、実際は感染拡大を放置してきた現職知事の圧勝を許してしまったのである。それはなぜなのか。こうした事態を許している野党陣営には、この新型コロナウィルス危機に対する政策対決、政治姿勢における根本的欠陥や問題点が指摘されるべきではないだろうか。
本来、野党陣営が獲得すべき無党派層、支持政党なしの人々の多くを小池氏にかっさらわれたのはなぜなのか、そのことが問われるべきであろう。なにしろ、宇都宮氏が獲得したのは84万4151票で、過去2度の出馬で獲得した票数(2012年96万8960票、2014年は98万2594票)をさえ獲得できなかったのである。共同通信の出口調査によれば、立憲民主党の支持層の31.6%、共産党支持層の18.4%までもが小池氏に投票しているのである。結果として、選挙権を行使した有権者の6割近くが小池氏に「望外の支援」を提供したのである。
前回の投稿では、都知事選に臨む野党共闘、統一戦線のあり方について触れたが、より根本的な問題は、政策対決における、とりわけコロナ危機対策における野党陣営の政策の総花的なあいまいさ、いやむしろ感染危機対策の欠如ともとられかねない、対決点の不明確さである。その一端は、選挙戦最中の下の画像(、ともに宇都宮候補陣営)にも現れている。それぞれの要求や政策は、至極当然でまともではあるが、政策的対決点とはなりえなかったものである。

<<基本的インフラとしての「PCR検査」>>
現職・小池陣営の最大の弱点は、コロナ危機対策としての「PCR検査」拡充の明らかなネグレクトであったし、現在においても多少は拡大されはしたが、東京都の人口比からすれば微々たるものである。それ故にこそ、感染危機が以前にもまして拡大しているのである。
宇都宮氏、山本氏ともども、この最大の小池都政の弱点を都知事選の対決点の焦点に据えることができなかったところにこそ問題の所在があるのではないだろうか。選挙戦終盤になってようやく、「PCR検査の抜本的拡充」などと、言葉では並べられてはいたが、最大の対決点とはなしえていなかったのである。現職・小池陣営はこうした野党側の弱点に乗じて、暗に「PCR検査」拡充は医療崩壊を招きかねないという脅しを振りまき、「夜の街」以外にどんどん感染が拡大しているにもかかわらず、「夜の街」叩きやそれに対する「危機管理」は「私が率先してやっている」のだという、いかにも「やっているふり」で、かろうじて選挙戦を乗り切ったのだとも言えよう。
一時はアメリカで最大の感染拡大地であったニューヨーク州、ニューヨーク市では、7/22には死者がゼロとなり、感染者数も10人前後に抑え込んでいる。その背景には、トランプ大統領のPCR検査抑え込み政策にくみすることなく、ニューヨーク州は750カ所のPCRセンターを整備し、徹底した「PCR検査」の拡大政策を実行した結果が反映されている。検査は無料であり、可能検査数は1日最大約7万件以上にものぼり、希望すれば何度でも無料で再検査が受けられる体制を作ったのである。さらにニューヨーク州では、こうした大規模な検査と同時に濃厚接触者の追跡(トレーシング)調査にもヒト、予算を確保し、この追跡をおこなうための「トレーサー」3000人を新たに投入して、感染拡大を阻止してきたのである。人口2000万人の北京市では、800万人にPCR検査を実行し、感染拡大を抑え込んでいる。対して、東京都では、7/24までの過去7日間平均の検査数は2千人で、7/20に過去最多の検査件数がようやっと約4930件という異常な少なさである。東京都の感染拡大は、小池都政ならびに安倍政権の「PCR検査」を抑え込んできた「不作為」の結果なのである。
今や、「PCR検査」を無料、簡単、迅速、かつ正確にすること、何度でも再検査が無料で受けられること、追跡調査が行われること、これらが、パンデミック危機に対する欠けてはならない基本的インフラと言えよう。野党各党は、共闘が実のあるものとなり、圧倒的多数の有権者を引き付ける、パンデミック危機を克服する、その体制に向けて大胆な政策を早急に提起すべきであろう。
(生駒 敬)

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【書評】『国境の医療者』 (2019.4.発行、新泉社)

【書評】『国境の医療者』
(NPO法人メータオ・クリニック支援の会編、2019.4発行、新泉社、1,900円+税)

2016年にアウンアンスーチーの国民民主同盟(NLD)が政権の座についたとはいえ、ミャンマー(ビルマ)における軍政は維持され、少数民族への迫害と民族間抗争は今もなお過酷さを増している。本書は、ミャンマー東部の少数民族の一つでタイに逃れてきたカレン人の難民や貧困のためミャンマーでは医療を受けられない人びとに対して必要な医療を提供し続けている「メータオ・クリニック」──タイ北西部、ミャンマーとの国境の町メソットに設置された診療所の記録である。
ミャンマーは人口のおよそ7割をビルマ系諸民族(ビルマ人)が占めているが、ほかに大きく7つの民族群が存在している。第2次世界大戦以前、英国はミャンマーを統治下に置き、カチン、チン、カレンなどの少数民族をキリスト教化して徴用し、多数派のビルマ人を支配させるという構造を作った。このため戦後、ミャンマーが独立すると政府は、ビルマ人・仏教徒を優遇し、特に1962年の軍事クーデター以来、少数民族を迫害する政策をとった。──ミャンマー西部、バングラデシュとの国境地帯にすむイスラム系の少数民族、ロヒンギャ人に対する迫害も国際的に大きな問題となっていることは周知の事柄であろう。
カレン人は、ミャンマー南東部にコートレイという自治区を作り、カレン民族解放軍(KNLA)が政府軍と戦ったが、1994年にカレン人中の仏教徒が組織したDKBA(カレン仏教徒軍)が分裂して政府側についたことで壊滅状態になり、抗争期間中に多数の難民が国境を越えてタイに逃れることとなった。この人びとに対してタイでは1984年に難民キャンプが設置され、タイ・ミャンマー国境には、九つの難民キャンプに10万人以上のミャンマー各民族が暮らしている。そして同じくタイに逃れてきた院長のシンシア・マウン医師らが1989年に設立したのがメータオ・クリニックである。
このメータオ・クリニックの医療活動を支援しようと2008年に設立されたのが「メータオ・クリニック支援の会」(JAM、現在はNPO法人)であり、10年にわたっての支援の内容は医療人材派遣・技術支援、院内感染予防・啓発活動、看護人材の育成等々多岐にわたる。また「移民学校の設備支援や文化交流活動など『医療だけでない支援の実現』をモットーにしており」、「『続けられる支援』を行っている」。
医療現場に派遣された歴代の派遣員/医師・看護師・保健師の方々の体験が綴られているのが本書であるが、諸民族間の相違・摩擦、衛生意識のレベルの違いなど次々と語られる。日本ではほとんど見られない皮下膿瘍(のうよう)の患者、陰茎再建術、中でも褥瘡(じょくそう、床ずれ)防止の患者ケアをはじめとする「看護」という概念がないという現実に直面して奮闘する姿が印象的である。そのそれぞれの場面は、本書を読まれたい。
そしてメータオ・クリニックとJAM の活動が、「社会から置き去りにされてきたコミュニティを、クリニック内にとどまらずコミュニティのレベルでも支えていくことに力を合わせて取り組み、これを拡大していく」方向を持ったことは、「現在、日本政府の開発途上国支援は経済的支援が中核となり、保健医療分野の海外支援も常に経済的な視点から考える」という傾向からみれば、「人間の安全保障」という点で評価できるとされる。
しかし現実には、メータオ・クリニックは民族間の複雑な背景を持っており、スタッフも、カレン人が約半数で、ビルマ人、そのほかの民族の人びとがおり、使われる言葉もカレン語やビルマ語その他とさまざまである。カレン人とビルマ人との間にある反発や偏見が、しばしば些細な揉め事を民族間の争いにこじれていくことになる。
そして「こうした民族間の争いが、軍事政権との戦いを複雑なものにしている。『ミャンマーを民主化したい』というかけ声は共通しているが、それぞれの所属コミュニティによってその意味は少しずつ異なり、互いに結束することはない。結果として、軍政はたくさんの小勢力を相手にすることで、その戦いを有利にしているのだ」と現実の状況を語る本書の指摘は的を射ている。
そしてさらに、ミャンマーの裏で働いている経済的諸力にも注目が注がれなければならないであろう。つい先日、2020年7月24日付の「日本経済新聞」は、「ミャンマーでLNG発電──丸紅など2000億円 日本勢巻き返しへ」という記事で、日本企業の同国への投資として最大級、ミャンマーの発電能力の約20%に相当する125万キロワットの液化天然ガス(LNG)発電所の計画を報じた。インフラ事業への投資が社会を発展させるという側面があるものの、他面ではこれが軍事政権を支えていく一翼になっていること、その底には、東南アジアでのインフラ事業に攻勢をかける中国に対する政略的動きがあることが明らかにされなければならない。
こうしたメータオ・クリニックを取り巻く複雑な状況の中での難民の患者や子どもたちの姿を心に留めて本書は語る。
「途上国を旅した人が、たとえ貧しくても子どもたちの元気で無邪気な笑顔に心を打たれた、というのをよく聞く。子どもたちはとにかくエネルギーを補給して使うのが宿命なんだろう。しかし、だから良かった、ではない。無邪気な笑顔は簡単に失われる。笑顔を向けられたということは、その笑顔を守る責任を託されたのだと思った。子供たちが元気なら元気なほど、それを守る大人の責任は重い」。至言である。(R)

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【投稿】「健康自己責任論」の押し付けによる医療・公衆衛生の社会的共通資本の破壊で、新型コロナウイルスの対策が迷走

【投稿】「健康自己責任論」の押し付けによる医療・公衆衛生の社会的共通資本の破壊で、新型コロナウイルスの対策が迷走

                             福井 杉本達也

1 特異な感染症である新型コロナウイルス

新型コロナウイルスには、これまでの感染症とは異なり、感染しても大部分の人は無症状から軽い上気道炎症状だけで終わるが、一部の人のみが重症化する。突然に肺炎を発症し、一部は急速に進行し、重い呼吸不全を起こしてしばしば死に至る。その他、腎障害、凝固異常なども起こる。また飛沫や飲食物などで口から取り入れ、腸管を通じて感染する。したがって冬季ばりか夏場にも感染しやすく、重症化すると回復に時間がかかり、回復しても肺機能がダメージを受けるなど、やっかいな感染症である。

厚労省のボタンの掛け違いは、新型コロナウイルスを第二種感染症にいきなり指定したことから始まる。指定したことで、感染者は軽症者を含め指定病院に隔離しなければならない。ところが軽症者・無症状者が多かった。そのため、約1800床の指定医療機関の病床はすぐ満床となってしまった。病床が著しく逼迫したため、発熱後4日間という強い縛りを設け極端にPCR検査数をしぼった。結果、感染者が地下にもぐり、また、重症化することとなり、東京都や大阪府などでは医療崩壊につながった。

2 結核の減少と国の公衆衛生行政からの撤退

日本における感染症の代表格は結核であるが、「労咳」と呼ばれ、古くから日本に多く見られる病気の一つであった。国民病・亡国病とまで言われるほど猛威をふるい、1950年代まで肺結核は死亡原因の1位を占めるなど、日本における公衆衛生政策の中心であった。特に繊維工場ではたらく女性労働者には感染が多かった。長時間労働や深夜業による過労と栄養不足、集団生活が大きな原因となっているが、工場内では糸を保護するため湿度が高かったことも結核菌の増殖を助けた。国は公衆衛生対策として、各地に病院や療養所を設置し、保健所を配置した。福井県内でも福井勝山総合病院は繊維産業が集中し、女性労働者の結核患者が多い勝山市(当時町)に町立病院として設置され、戦後、国有化された。1960年代までは一般病床107床に対し、37床もの結核病床をもうけていた。

しかし、2000年代、結核などの感染症が減少したことで、国は感染症対策の第一線から撤退し、国立病院の廃止や自治体への移管などを行った。福井県においても鯖江市では国立鯖江病院が公立丹南病院として移管され、若狭町の結核感染症の拠点だった国立療養所福井病院も公立小浜病院に移管、国立療養所北潟病院も重症心身障害専門施設・国立病院機構あわら病院に改組された。医療費削減の流れの中で、“儲からない”感染症病床の削減が進められた。感染症病床の多くは自治体病院が負担することとなった。 続きを読む

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【投稿】「イージス・アショア」配備計画の突然の中止を“奇貨”とし、東アジアの緊張緩和策へ

【投稿】「イージス・アショア」配備計画の突然の中止を“奇貨”とし、東アジアの緊張緩和策へ
                             福井 杉本達也

1 「イージス・アショア」配備計画の突然の中止の発表
6月15日、河野防衛大臣は、新型迎撃ミサイルシステム 「イージス・アショア」 の配備計画の停止を発表した。建造に約4500億円の巨費が見込まれ、 “日本全域を24時間365
日、切れ目なく防護する”という触れ込みだったが、なぜ、計画は突然中止されたのか。自民党の二階幹事長は、党の会合で 「国防の重要な問題を、これまで党と政府がともに進めてきたはずだが、一方的に発表されたことは、表現のしようがない」 と、不快感を示した。

2 配備計画の表向きの中止の理由
表向きの中止理由は、迎撃ミサイルを発射した際に切り離す「ブースター」と呼ばれる推進補助装置の人口密集地への落下の懸念である。「ブースター」は、「イージス・アショア」で運用される迎撃ミサイル「SM3ブロックⅡA」 を、発射直後、垂直に推進させる部品である。住民の理解を確実に得るため、防衛省は地元への説明と並行して、ソフトウエアの改修によって安全な落下を実現すべく、アメリカ側と調整を進めてきた。ところが演習場の複雑な地形を元に、より精緻なシミュレーションを行った結果、「100%、演習場内に落下できるとは言えないのではないか」という疑念が生まれた。防衛省は5月下旬になって、安全に落下させるという 地元への「約束」を守るためには、事実上、新しいものを作るのと同じレベルで、ミサイルそのものの改修が必要だと判断した。河野は12日に安倍と会談し、配備計画は中止せざるを得ない考えを伝えた(NHK特集記事 2020.6.24)というものである。「周辺住民の命に直結する問題」で巨大な防衛計画を中止したのであるから大変な“英断”であるとなるが、これは全くのフィクションに過ぎない。「住民の命」を大切にするなら、沖縄の辺野古基地計画も今すぐ撤回すべきであるし、日米地域協定も改定すべきである。しかし、そのような声は自民党やマスコミからも全くあがっていない。

3 「イージス・アショア」は米国による対ロ・対中ミサイル防衛(MD)システムの一部
政府の表向きの説明は北朝鮮からミサイルだが、それは配備計画を正当化するための虚言に過ぎない。ロシアのラブロフ外相は「米国がミサイル防衛(MD)システムを世界中に展開し、日本がそれに組込まれることはロシアの国益に関することだ」と指摘している(Sputnik:2018.4.2)。同じくSputnikの軍事政治分析局アレクサンドル・ミハイロフ局長は、「日本はロシア国境の直近に強力な軍事力を有する隣国だ。日本は北大西洋条約機構 (NATO)の加盟国ではないが、その重要な同盟国であると世界では認識されている。日本はNATOのグローバル・パートナーシップ・プログラムに入っており、巨大な在日米軍を公然と駐留させている。当然、これはロシアに懸念を引き起こす。」「日本へのMDシステム配備は日本を北朝鮮のミサイルから守るだけでなく、アジア太平洋地域でのロシアの 戦略核戦力を弱めることもできるためだ。」「イージス・アショアが用いるSM-3シリーズの迎撃ミサイルは地上からも艦上からも発射可能で、射程は700キロ。近い将来に『SM3ブロック2A』 に置き換えられ、射程は2,500キロに伸びる。そうなれば、ロシア極東地域は潜在的に『対象下』に置かれる。」(同上)とロシアは警戒感をあらわにしている。また、ガルージン駐日大使は「米国の弾道ミサイル防衛システム「イージス・アショア」は巡航ミサイルを装備可能であり、このことは中距離核戦力(INF)全廃条約に対する違反となる」と指摘していた(Sputnik:2018.3.16)。なおINF全廃条約は米が2019年2月に破棄を通告・8月2日に失効している。同条約は核弾頭を搭載できるかどうかにかかわらず射程500~5,500キロの地上配備型のミサイルの廃棄を求めたもので、1987年に米国と当時の旧ソ連の間で締結され、冷戦期の過熱した核軍拡競争に歯止めをかける転機となった。日本は配備計画当初からINF条約違反と知りつつ、米国の核軍拡戦略に加担していたことになる。こうした事実はマスコミ等でも一切報道されることはない。
一方、朴槿恵政権時代に「北朝鮮から韓国を守るため」と称して地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の韓国への配備は中国の反発を招き、「中国の戦略安全利益を著しく損ねる」(日経:2016.7.2)と猛反発され、韓国への経済制裁に繋がった。同時にロシア国防省も非難声明を出した(同上)。
INF条約は主に欧州正面の事態を念頭に置いて作られたものであり、その失効が今後の軍事情勢にいかなる影響を及ぼすかについても、これまでは、主に欧州を舞台に様々な議論が行われてきた。既に米国は2016年にルーマニアにトマホーク中距離巡航ミサイルの発射に使われうるMK-41ランチャーを配備、また、ポーランドでも2020年よりは、北部・スウプスク市において米軍による「イージス・アショア」の運用が始まっている。韓国へのTHAADの配備と日本への「イージス・アショア」の配備計画は、この欧州におけるロシア包囲網と連携しつつ、東アジアから対ロ・対中核包囲網の形成をめざすものであるが、2019年8月4日付けの中国・『環球時報』社説は「アメリカの中距離ミサイル配備を受け入れる国はすべて中国及び ロシアと直接的間接的な敵となるということであり、戦略的な自殺行為だ。」と日本及び韓国に警告している(参照:浅井基文訳:2019.8.5 「21世紀の日本と国際社会」)。 続きを読む

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【投稿】都知事選の結果をめぐって--統一戦線論(69)

<<「望外の支援」>>
7/5、昨日投開票の東京都知事選で、小池百合子氏は、「366万票という望外の支援を頂いた」と述べている。結果は以下の通りである。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー    得票率
1.小池 百合子  3,661,371     59.70
2.宇都宮 健児    844,151   13.76
3.山本 太郎       657,277   10.72
4.小野 泰輔       612,530     9.99

確かに圧倒的大差である。小池氏の得票率は60%にも及ばんとしている。共同通信の出口調査によると、立憲民主党の支持層の31.6%、共産党支持層の18.4%が小池氏に投票していたという。小池氏に「望外の支援」を提供したのは、立憲民主党、共産党の支持層であるとも言えよう。宇都宮氏を支援した立憲、共産、社民党の基礎票は195万票(2014年、民主、共産、社民票の合計実績)である。宇都宮票は、その半分にも届いていないのである。基本的支持層の半分以上が小池氏や山本氏らに流れたのである。
なぜ、かくのごとき結果になったのであろうか。基本的政策や政治姿勢が問われるべきであるが、それは改めて論じることとして、とりあえず、野党共闘の問題が第一に指摘されるべきであろう。
まず、いい加減な野党共闘の実態が有権者に見透かされていたことが決定的と言えよう。
前回にも触れたことであるが、宇都宮氏は、野党共闘の合意のない段階で、「今回は、どういう候補が出てきても降りるつもりはない」「それ(山本氏が出馬しても立候補を断念しないこと)は、もう当然。(宇都宮氏以外の候補者で)野党共闘ができても、降りないわけだから」と、断言してしまっていたこと。これでは、ただ前回、直前になって立候補を断念したことへの「意趣返し」と受け取られても当然であろう。その配慮のなさによって、自らへの支持の拡がりをあらかじめ閉じ込めてしまった、本来獲得できる支持をさえ手放してしまった、というのは言い過ぎであろうか。
しかも、この時点で共産党は、すぐさま宇都宮支持を打ち出してしまった。いわば「野党共闘拒否宣言」をしてしまった宇都宮氏を、野党共闘を進めるために支持するという自己矛盾を棚上げにしてしまったのである。澤藤統一郎の憲法日記(2020年5月29日)に言わせれば、宇都宮氏の「フライング」に次ぐ、共産党の「フライング」であった。
次いで、立憲民主党、国民民主党側から、山本氏を統一候補として擁立しようとしたが、山本氏側からの消費税5%への減税政策が立憲側に受け入れられず、頓挫してしまい、山本氏は、「私単体でやった方がリーチできない人々にリーチできると思った」として独自立候補に踏み切った。
こうした経過の中で、宇都宮氏は、立憲民主党、共産党、社民党、新社会党、緑の党の支援を取り付けたが、それはあくまでも後付けであり、立てるべき有力な候補者を立てられなかった、やむを得ずの支援となってしまい、本来の野党共闘とは程遠いものとなってしまったと言えよう。
有権者はすでにこの時点で、野党は「この選挙捨てたな」、本気で知事選勝利に取り組んでいないなと判断したと言ってもいいであろう。

<<これでも「大健闘・共闘発展」なのか>>
ところが、7/6付け・しんぶん赤旗は、こんな野党側の大敗にもかかわらず、「宇都宮氏が大健闘 都知事選 市民・野党の共闘発展」の大見出しである。何度も繰り返されてきた光景ではあるが、ひとことの反省も、問題点の指摘も、今後への教訓もない。
志位委員長の談話は「勇気をもって出馬され、大健闘された宇都宮けんじさんに心からの敬意を申し上げます。」とまで述べている。
本来、政党としてあるべき、事態を冷静に見つめ、自己に厳しく評価し、誠実であるべき姿勢がまるで欠如しているのである。大敗の中でも、こんな野党共闘の前進がありました、というならまだしも、従来の基本的支持層の半分も獲得できていない現実とは無関係に、「市民と野党の共闘が、都知事選を通じても発展したことは、今後につながる大きな成果です。」「こうした共闘のたたかいのなかで連帯と信頼の絆が広がったことは、大きな財産です。」と、仲間内だけで通用する言い訳に終始しているのである。共産党支持層でさえ、18.4%もの人々が小池氏に投票していたという現実をどう見るのか、真剣に検討し、再出発に生かすべきであろう。
(生駒 敬)

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【投稿】地方分権の本旨を踏まえたふるさと納税最高裁判決

【投稿】地方分権の本旨を踏まえたふるさと納税最高裁判決
                             福井  杉本達也

1 ふるさと納税で一方的な規制を押しつけた総務省の「全面敗訴」
6月30日、泉佐野市をふるさと納税の対象自治体から除外したことは違法であるとする最高裁判決が出された。2019年3月に地方税法を改正し、ふるさと納税への返礼品の割合を3割以下とするなどの規制基準を定めて対象自治体を指定する新制度を納入したが、過去の泉佐野市らの返礼品の取り扱い状況が不適切だとして、泉佐野市ら4市町をふるさと納税制度から除外した。判決では地方税法に「(新制度)移行前の募集実態も判断材料とする規定はない」として、総務省のルールを 「違法で無効」と判断した。総務省幹部は「国がここまで負ける訴訟は聞いたことがない」と落胆した。総務省の「全面敗訴」である。国の官僚の指示に従わない自治体は制度から外すというのでは地方分権もなにもあったのではない。確かに、泉佐野市の寄付金集めのやり方は派手ではあるが、 あくまでも法律の範囲である。地方分権は制度の具体的運営を自治体に委ねるべきものであり、あれこれと国が上から目線で指示を出すべきものではない。千代松泉佐野市長は判決後「紙切れ一枚で地方自治体の頭を押さえつけてきたやり方は納得いかない」とインタビューで答えた。実にすっきりとした判決である。

2 そもそも「ふるさと納税」とは
納税者が国や自治体・NPOなどに寄付した場合、所得税や住民税が軽減されるが、ふるさと納税ではさらに優遇され、住民税が軽減される。子供のいない夫婦で年収700万円の給与所得者の計算例では、3万円を自治体に寄付した場合、一般の寄付では所得税・住民税の軽減額は8,400円であるが、これに加えて19,600円が住民税からさらに軽減される。計28,000円が控除されるため、実質の負担額は2,000円となる。ところが、喉から手が出るほど一般財源が欲しい自治体としては、寄付金は多ければ多いほどよい。そこで2,000円を上回る金額の特産品を提供し寄付金を募ることとなる。例えば1万円相当の和牛肉や果物を寄付者に送れば、寄付者は10,000円―2,000円で8,000円の得となり、寄付された自治体には30,000円ー10,000円=20,000円の財源が集まることとなり、両者Win-Winとなる。ところが、国と寄付者の住所地の自治体は税収が減ることとなる。個々の自治体にとっては、高額の返礼品を提供してでも寄付金を募ることは合理的な行為である。しかし、他の自治体も同じような高額の返礼品を提供し、自治体間で過度の寄付金争奪競争が起きると全国の自治体の総体としては確実に税収が減少することとなる。本来の制度の理念は、自らがまれ育った故郷、世話になった地域を応援するための寄付だった。ところが納税先はどこでも 良く、高価な返礼品も得られるとなって本質を見失った。自治体は豪華な返礼品競争で寄付金集め、寄付者も返礼品目当てでの寄付が常態化した。 続きを読む

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【投稿】敗退に直面するトランプ、危機を激化--経済危機論(26)

<<トランプ大統領弾劾条項の更新>>
6/29付け米紙ワシントンポストは、オピニオン編集エディターのフレッド・ハイアット(Fred Hiatt)氏が「トランプ弾劾条項の更新」と題して、今年の1月、下院が送付した弾劾判決を上院が否決し、無罪としたが、それ以降、今日に至るまでの新たな弾劾条項の更新がなされるとすれば、として、以下の4項目の追加弾劾条項を上げている。
1.新型コロナウィルスへの対応の過失 : トランプは、利己的で政治的な目的のために、また株式市場が沈滞することを怖れて、故意に危険を認めることを拒否して、多くの人々を死に至らしめた。
2.法執行機関の権限の乱用 : トランプは、ビル・バール司法長官に、大統領と彼の仲間の一部を捜査していたD.C.とニューヨーク南部の米国弁護士を解雇させ、さらには、連邦法執行官に、平和な抗議者の修正第1条の権利を侵害させた。
3.任命権の乱用 : 2月以来、トランプは昨年の秋に下院捜査官に真実を語った誰彼をとわず大量の報復に乗り出し、内部告発者の苦情を議会に転送した諜報機関の検査官であるマイケルK.アトキンソンを解雇し、国防長官ジョン・ルード、国家情報局長代理ジョセフ・マグワイアおよび欧州連合ゴードン・ソンドランド大使を追放、コロナウイルスに対する政府の不十分な対応について報告した、または他の場所での説明責任を確保する立場にあった検査官を解任または置き換えた。
4.外交における権力の乱用 : トランプは、自らの大統領再選を支援するために、中国の習近平国家主席に、イスラム教徒強制収容所に承認を与え、米国の農産物を購入するように頼んでいた。
以上の4項目(要旨)により、トランプ大統領は明らかな弾劾罪を犯していると主張している。

<<同時に直面する5つの危機>>
この論説に先立ち、6/25付けニューヨークタイムズ紙は、「アメリカは同時に5つの巨大な危機に直面している」と題するオピニオンを掲載している。筆者はコラムニストのデヴィッド・ブルックス(David Brooks)氏である。氏は、「現在、アメリカでは5つの大きな変化が起こっている」、として要旨、以下のように述べている。
1. 新型コロナウィルスとの戦いに負けている : アメリカ人は世界中を見渡して、他の国がこのウィルスを打ち負かしていて、そして私たちが失敗している現実を見ている。
2.すべてのアメリカ人、特に白人のアメリカ人は、アフリカ系アメリカ人が毎日負担している負担について急速な教育を受けている : この教育は継続しているが、すでに世論は驚くべきスピードで変化しつつある。
3.アメリカは、政治的再編の真っ只中にある : アメリカの国民はドナルド・トランプの共和党を激しく拒否しつつある。
4.準宗教的な社会的正義が、真実の探求ではなく、権力構造における地位を維持するために支配的なグループが使用する武器となり、言葉が規制されるべき暴力の一形態となり得ることを示している。
5.アメリカは経済不況の危機に瀕しているが、それは長引く可能性がある : 州および家計の予算は落ち込み、企業の多くは危機に瀕し、健康不安への緊急事態が続くと、経済活動を完全に再開できなくなる可能性がある。
ブルックス氏は、「これらの5つの巨大な変化の相互作用が、いくつかのきちんとしたイデオロギーの物語に収まると思うなら、あなたはおそらく間違っている。人種格差に対処し、軍事化した警察を改革し、文化戦争を一段上のものにすることで、現在のコロナ危機と長引く経済不況に対処できると思うなら、あなたは間違っている」と述べ、連合を作り上げ、立法化する「ニューディールの実用的な精神」こそが、今後数年間のより適切なガイドであろうと、主張している。
とりわけ、1で指摘されている現実は深刻である。6/29、ニュース専門放送局のCNBCは、米国疾病予防管理センター(CDC)の主席副局長であるアン・シュチャット博士が「コロナウイルスは急速に広まりすぎており、制御するには広すぎ、米国が他の国々のようにこのパンデミックを制御することができる事態ではありません」、「このところ、1日あたり30,000を超える新しい感染が報告されており、ピークに達していると考えた4月の毎日の感染を上回る事態であり、ウイルスが循環しています」と、半ばさじを投げ、「人々が社会的距離をとり、マスクを着用し、手を洗うことによって感染の拡大を抑えるのを助けることができますが、ワクチンができるまでウイルスを止めるためにどんな種類の救済にも頼るべきではありません」と付け加えた、と報じている。事態の深刻さは、トランプ氏らの根拠のない楽観主義を厳しく弾劾しているとも言えよう。 続きを読む

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【投稿】新型コロナウイルス対策で失敗し続ける無責任体制国家:日本

【投稿】新型コロナウイルス対策で失敗し続ける無責任体制国家:日本
                             福井 杉本達也

1 「日本モデル」とは前例にしがみつき、失敗に目を塞ぎ、過去の経験に全く学ばないこと
安倍首相は日本の新型コロナウイルス対策を、「日本モデルの成功」と自画自賛したが、「日本モデル」が具体的に何を意味するのか全く意味不明である。6月24日の日経のコラム『春秋』も江戸時代の著名随筆家:松浦静山の言葉「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議のの負けなし」を引用して、日本における新型コロナウイルスの第1波の感染者数の“少なさ”を評している。また、小林よしのり氏は『エコノミスト』(2020.6.16)において、「新コロは『日本では』そんなに恐れるほどのウイルスではない。…マスコミが『日本では』インフルよりも大したことのないウイルスを 『恐怖の大魔王』のように仕立て上げたのだ。…原因については諸説あるが、清潔感と自然免疫の強靭さが一番の理由だろう」と書いている。そもそも、対策の陣頭指揮を執るべき厚労省すらが「『日本の感染者や死亡者は欧米より桁違いに少ない』技官はコロナ危機での善戦ぶりを強調する」(日経:2020.6.9)というのではあきれるばかりである。
小林よしのり氏は新型コロナウイルスをインフルエンザや風邪と同一視しているが、新型コロナウイルスには、これまでの医学の知識では説明できない不思議な特徴がある。感染しても大部分の人は無症状から軽い上気道炎症状だけで終わるが、一部の人のみが重症化する。感染者の8割は、軽微な上気道炎症状のみで(無症状の人もいる)、通常は抗体が産生されウィルスが駆逐される時期、7日目くらいに終結する。ところが一部の患者において、7~10日目くらいに突然に肺炎が発症する。その一部は急速に進行し、重い呼吸不全を起こしてしばしば死に至る。その他、腎障害、凝固異常なども起こり、死因は肺炎による呼吸不全を中心とした多臓器不全である(徳田均『日経メディカル』:2020.5.14)。また飛沫や飲食物などで口から取り入れ、腸を通じて感染する。したがって冬季ばりか夏場にも感染しやすく、重症化すると回復に時間がかかり病床が埋まった状態が続き、また回復しても肺機能がダメージを受けるなど、やっかいな感染症である。
本庶佑京大名誉教授は「日本は政府はたいしたことはやっていないが幸運なことに感染爆発は起こらなかった。これは世界の共通認識」と「日本モデル」論をズバリと切り捨て、「8割接触削減にしても妥当かどうかすらわからない。検証しようがない。なぜならデータが情報公開されないから」だとし、ワクチンへの淡い期待についても、「フェイズⅢ(多数例での無作為対照試験)で安全性を担保できず失敗した新薬は山ほどある。国が主導するのは無謀」と述べている(2020.6.29:「報道1930」)。
2009年の新型インフルエンザ流行時にも、厚労省は疫学調査を優先したが、いつのまにか国内で感染が広がり、関西の病院では人々が殺到した。厚労省が2010年にまとめた報告書において「死亡率が低い水準にとどまったことに満足することなく、今後の対策に役立てていくことが重要だ」と反省点を記したが、今回も全く顧みられることはなかった。「失敗を認めれば自らに責任が及びかねないという組織としての強烈な防衛本能」が働いている。「前例や既存のルールにしがみつき、目の前の現実に対処しない…20世紀型の官僚機構を引きずったままでは日本は世界から置き去りにされる」と日経は書く(同:2020.6.9)。厚労省医官や感染症“専門家”は、失敗の原因を追究しない、失敗に目を塞ぎ、経験に学ぶことは永遠にない。

2 なぜ専門家会議は廃止させられたのか
6月24日、西村経済再生担当相は(そもそも、「感染症対策を保健(厚労)大臣が指揮しない国など何処にもない。『日本の厚労相は無能な者がなるのか』 と、世界から元厚労相の私まで馬鹿扱いされる。マスコミも大本営発表を垂れ流すのみで、調査能力もなく、政府を批判することもない」(舛添要一:2020.6.30))、コロナ対策をリードしてきた専門家会議を廃止すると突然表明した。同時刻に開かれていた専門家会議の記者会見で、尾身副座長は廃止は知らされていなかったと答えた。表向きは、コロナ特措法と整合性のある分科会に衣替えということになっているが、本音は、専門家会議に頼ったコロナ対策は大失敗だったとの判断である。当初は、PCR検査結果を独占したい感染研と、この間の医療体制を再編・合理化により感染症への対応が脆弱となっている医療体制に負荷をかけられない政府が、PCR検査を極端に絞るということでの同床異夢から出発し、その後も給付を絞りたい政府と、権限を拡大したい感染研らの専門家との間で続き、「自粛」要請にあたっても、西浦北大教授の「人と人の接触を8割減らさないと、日本で42万人が 新型コロナウイルスで死亡する」との見解をフル活用し、「ウイルスの恐怖」をまき散らし国民を恫喝しまくった。しかし、 6月28日夜のBS朝日『日曜スクープ』において岡田晴恵白鴎大教授は、専門家会議の押谷東北大教授が、専門家が「いよいよ政府の決定の主導権を持つようになった」との趣旨の発言を岡田教授にしていた事実を紹介し、これが政府に嫌われたこと暴露した。24日の専門家会議の記者会見での提言の中で「あたかも専門家会識が政策を決定しているような印象を与えた」とこれまでの対応を省みた。同床異夢が続いた政府と専門家会議の関係は、緊急事態宣言の解除後から亀裂が拡大する。西村担当相は専門家会議のメンバーに竹森俊平慶大教授ら経済の専門家を入れる予定でいたが拒まれた。25日、西村担当相は、経団連の中西宏明会長と東京都内で会談し、新型コロナウイルスの影響から冷え込んだ経済活動の再開をめぐって意見交換した。中西氏は段階的な出入国制限の緩和など「国を開く」政策を要請した(時事:2020.6.25)。経済活動を再開するとなれば専門家会議は邪魔となる。政府は専門家会議をあっさりと切り捨てた。「われわれは、この先、誰かにとって都合の悪いすべてのものを隠蔽し、曖昧にし、忘却し、廃棄し、改ざんしながら、寄ってたかって歴史を推敲して行くことになるはずだ。」(小田嶋隆「荒れるアメリカがうらやましい理由」2020,6.5『日経ビジネス』)。のど元過ぎれば全てを忘れる。変わり身の速さ。何事もなかったかのように、“日常”?が戻りつつある。

3 政府は経済再開に前のめり――第2波・3波に向け地方自治体はどう対応すべきか―
迷走を重ねたた無能の安倍内閣に代わり、各自治体のコロナ対策への期待が相対的に高まっている。特に注目を引くのは和歌山県であり、愛知県である。愛知県では、2月末からスポーツジムや高齢者施設を中心に大きなクラスターが見つかった。また、大型クルーズ船の陽性患者を藤田医科大学に受け入れている。感染者の受け入れ病院を探すのに苦労している。しかし、東京や大阪のように感染者数が急増することはなく、第1波を切り抜けた。「論座」(2020.6.21)において、大村愛知県知事と保坂世田谷区長が対談しているが、対談の中で今後、予想される新型コロナウイルスの第2波、第3波への対策を ①PCR検査強化によって患者を早期発見すること ② 医療機関の収容可能人数などを調整し、可能な限り早く適切な医療につなげること ③医療機関内で院内感染を起こさないための対策を徹底すること ④ 軽症患者に対してはホテルなどを用意し、感染拡大と医療崩壊の両面を防ぐこと ⑤情報公開を徹底し、現状を住民に伝えること ⑥コロナ禍で経営難に直面する医療機関を金銭的に支えることをあげている。
一方、東京都の小池知事は、恣意的な「東京アラート」と自警団で都民を威圧し、自己責任論を押し付けて都民を見放している。「夜の町の集団検査の次は、会食による感染だという。濃厚接触者と会食時の感染とは何が違うのか?自粛に対する補償はしたくないが、夜の町や会食は危険なのでやめて欲しいという言葉のすり替えだ。不思議の国のアリスが、欺瞞の国ジャパンになった。正義と正直さ、誠実さはどこに行った?」(中村祐輔:2020.6.16)と。「東京都、感染者24日56名、25日48名、26日54名。小池知事『東京アラート』基準発表した時には新規陽性患者20名未満で緩和目安、50名で再要請目安。今再要請の段階なのに対応無し。『対応無し』を肯定する表現として『ウイルスと共生』=公的対応なし。」(孫崎亨:6.27)。こうした中、6月30日、東京都は新たなモニタリング項目を取りまとめた。新たな項目には、警戒を呼びかける基準となる数値は設けられていない。厚労省の目安では人口10万人あたりの新たな患者数が1週間の平均で2.5人を超えた日を「基準日」とし、自粛要請を行うとしている。東京都の新たな感染者数は、6月29日までの1週間では2.61と、「基準」を超えている。都合の悪い数字が続くから、見直すというのはインチキである。6月29日、埼玉県の大野知事は、この2週間の感染者のうち、半数以上が東京都内で感染した疑いがあるとして、都内での大人数での会食や繁華街に出かけることをできるだけ避けるよう呼びかけた。このままでは東京都から日本列島全体がクルーズ船化する恐れが強い。こうした国民の不安を解消するため、児玉龍彦東大先端研教授は、感染症対策の基本は感染者がどこに集まっているかを把握し、感染集積地と非集積地を分ける。さらに、非感染者の中で感染したら危険な人を選り分けることだとし、検査、診断、陽性者の追跡を精密に行う。包括的かつ網羅的な検査体制をつくり、感染実態を正確に把握することから始める。まず、抗体検査で感染集積地を網羅的に把握し、集積地でPCR検査を徹底する。学校や会社、病院、高齢者施設などで抗体検査を実施してある程度あたりをつけ、症状のある人や抗体陽性者が多いエリアをPCR検査にかける。これを春に予定されていた定期健診に今後組み込んで行っていくという「安全安心のシステム」の構築を提唱している(「デモクラシータイムス」2020.6.24)。

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【投稿】都知事選を目前に控えて--統一戦線論(68)

<<野党共闘の混沌>>
7/5・投開票の東京都知事選は、6/18の告示を直前にしてようやく、選挙の構図・輪郭が見え始めるという、争点、対決軸、勢力配置がきわめて不明瞭、とりわけ野党共闘の一致した対決姿勢が見えてこないという事態の進展である。
6/15になって、れいわ新選組の山本太郎代表が立候補を表明した。山本氏は「東京オリンピック・パラリンピックの中止」や新型コロナウイルスで困窮する都民に向けた総額15兆円の経済政策の実現を掲げ、都知事就任後に「都に必要な8つの緊急政策」を実施すると宣言している。その1つ目には以前から自身が開催反対を訴えてきた東京オリンピック・パラリンピックの「中止」である。2つ目には総額15兆円の「コロナ損失」対策を掲げ、具体的には「全都民への10万円給付」「(高校・大学など)授業料の1年間免除」「中小企業・個人事業主の事業収入のマイナス分保障」などを実施するとした。また、今後のウイルス再拡大にともなう「コロナ自粛」に備え、都民に対してさらに10万円、全事業者に対して迅速に100万円を給付するとしている。さらに、就職氷河期世代(ロストジェネレーション)とコロナ失業者計3000人を都の職員として採用する雇用対策や、空き家や都営住宅の空き部屋を活用しやすい家賃で住めるようにする住宅政策を掲げた。
山本氏の立候補表明によって、他に日本維新の会推薦の小野泰輔・元熊本県副知事らが立候補を表明しているが、野党として現職・小池百合子知事に対決するのは、先に5/25にツイッターで、5/27に記者会見で出馬を表明し、すでに走り出していた宇都宮健児氏と山本太郎氏、この二人の候補者が相争う構図となった。嘆かわしい限りである。野党共闘の混沌である。
こうした事態の中で、宇都宮氏の支援を決定していた立憲民主党所属の須藤元気参院議員が、山本氏出馬表明の数時間後に「立憲としては宇都宮さん支持ですが個人的に山本さんを応援しています!」と山本氏支援の方針をツイートしていたことが明らかになった。6/16、福山哲郎幹事長は須藤氏と話し合いを持ったことを明らかにした上で「今後のことについては、また話し合う機会があるかもしれない」とも説明している。須藤氏は6/16、「都知事選で支持する候補者の違いを党と僕との間で再確認しました。今後どうするかもう一度考えてみます」とツイートしている。
立憲民主党ではさらに、小川淳也衆院議員が「何とか野党候補を一本化できないか」として、「山本太郎さんの気概に心から敬意を表しつつ、しかし早急に宇都宮さんと話し合い、何とか野党候補を一本化できないか。もちろんより勝てる候補に。いつも野党陣営は分断し相手を楽にさせてしまう」とツイートしている。
こうした事態がどこまで進むかは不明であるが、野党候補の一本化は、公示直前という差し迫った事態の中では、到底不可能であろう。
何よりも、宇都宮氏はすでに5/27の記者会見で「私が立候補(表明)するまでに政党との関係はないし、今まで政党に支援要請はしていない」「今回は、どういう候補が出てきても降りるつもりはない」「それ(山本氏が出馬しても立候補を断念しないこと)は、もう当然。(宇都宮氏以外の候補者で)野党共闘ができても、降りないわけだから」と、断言してしまっている。始めから共闘や一本化の意図などまったく持ち合わせてはいないのである。 続きを読む

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【投稿】危機の激化とトランプ固有の危険性--経済危機論(25)

<<「米国は戦場ではない」>>
現在進行中の深刻な経済危機とパンデミック危機が結合したこと、その中で差別と格差拡大の象徴ともいえる米黒人男性ジョージ・フロイド氏殺害事件が発生。これに対する抗議運動「Black Lives Matter」=「黒人の命は大切だ」が、その規模と多様性においてかつて見ないほどの拡がりと深まりを持って全米を席巻し、多民族のデモとして広がり、世界にも波及している。とりわけ米国においては、トランプ政権固有の不安定性と結びついて、パンデミック危機と経済危機が全社会的・政治的危機へと拡大・発展しつつあると言えよう。
問題は、トランプ大統領を頂点とする米政権が、もはやこうした事態に正常に対処する能力を持っていない、建設的な反応を示すことができないことが歴然としてきており、11月の大統領選を待たずに、政治的危機が、それと相呼

応する経済的危機が爆発しかねない段階にさしかかっている兆候がいくつも現れだしていることである。抗議運動は、すでに「トランプはファシストだ!」「辞職せよ!」と、トランプ弾劾に動き出している。
失業と貧困、生活の悪化が拡大する中で、危機の中でこそ、共感と連帯、責任と協力、参加と民主主義が求められているにもかかわらず、トランプ大統領はこれらを片っ端からぶち壊しているのである。「法と秩序」を前面に掲げながら、警察の暴力を公然と礼賛し、ウソを平然と垂れ流し、衝動的で予測不可能な行動に何の責任も負わず、自ら意図的に政治的危機の拡大に乗り出しているとも言えよう。トランプ氏によって解任されたジェームズ・マティス前国防長官は「トランプ氏は私の人生の中でアメリカ人を団結させようとしない最初の大統領です。しようとするふりさえしません。代わりに彼は私たちを分断させようとしています」と厳しく糾弾する事態である(6/3、アトランティック誌への声明)。
その典型が、軍隊をこうした運動弾圧の前面に押し出そうとして、すでに失敗しているにもかかわらず、執拗にその機会を伺っていることである。
首都ワシントンでのデモに対して軍部隊を配置したが、エスパー国防長官が反対の意思を明らかにし、ミリー統合参謀本部議長は「米国は戦場ではない」「連邦軍は戦場にしか投入できないと決まっており、市民に対して連邦軍を動員することなど許されない」と発言し、さらに催涙ガスでデモ隊を排除してホワイトハウス前の教会で意図的なパフォーマンス撮影をするために「トランプ大統領に同行して、あの時、あの状況下で私がいたことは、米軍が国内政治に関与しているとの認識を作り出してしまった。私はそこにいるべきではなかった。誤りであった。」と断言(6/11)するに至り、政権内部の深刻な危機的状況までさらけ出されている。動員された州兵が、抗議運動の人々の要請に従って集団で、盾を降ろす事態まで発生している。(下、テネシー州の州兵が抗議者の要請で盾を降ろす

しかしトランプ氏はあきらめてはいない。最後の州兵部隊がワシントンDCから撤退せざるを得なくなったわずか数時間後、トランプ大統領は、アメリカの主要都市、今度はシアトルに対して、軍事的暴力の新たな脅迫を行っている。6/10夜のツイッターでの声明で、トランプ氏は、ワシントン州知事のジェイ・インスリー氏とシアトル市長のジェニー・ダーカン氏(ともに民主党)に対し、”国内のテロリストがシアトルを占拠した “、”あなたがやらないなら、私がやる “、”これはゲームではない”とツイートし、”LAW & ORDER!”「法と秩序」と付け加えている。デモ隊がシアトル市内のいくつかを「キャピトルヒル自治区」と宣言し、占拠したことに対して、ここぞとばかりに軍事介入の機会を狙い、挑発しているのである。抗議運動が圧倒的に非暴力的であるにもかかわらず、暴力的・軍事的弾圧の機会を虎視眈々と狙っており、機会を逃すまいとしているのである。
さらに機会を待つだけではなく、作り出そうともしている。6/19に予定されているトランプ陣営のコロナ危機後の最初の選挙キャンペーン集会が発表されているが、この日付と場所の選択が、軍の使用を「正当化する」意図的な策謀とみなされているのである。今やトランプ再選がおぼつかなくなってきた政権の永続化を狙った一種のクーデター、軍事政権への歩みでもある。対中国、対中東でも何をしでかすかわからない危険性を全身から発散させているのがトランプ政権である。
共和党議員に動揺が広がってはいるが、多数はトランプ氏に従っており、予断を許さない事態が進行していると言えよう。

<<「恐怖指数」、48%上昇>>
トランプ氏が頼みの綱とする経済危機脱出も今や風前の灯火である。実体経済の悪化とかけ離れていた株価の上昇もついに化けの皮がはがれだしている。
6/11のニューヨーク株式市場は、1861ドル安の痛烈な急落に見舞われたのである。優良株で構成するダウ工業株30種平均は前日終値比1861.82ドル安の2万5128.17ドルで終了。下落幅は今年3/9の2013ドルに次ぐ過去4番目の大きさで、一時1900ドル超安となった。S&P500種株価指数は約6%下落し、時価総額がたった一日で2兆ドル(約213兆円)も吹き飛んでいる。
この日、すべての主要なウォール街の銀行が水没した、とまで表現されている。シティグループは13.37%、バンクオブアメリカ10.04%、最大手JPモルガン・チェースも8.34%の損失を出す事態であった。
ここで全く皮肉なことは、この銀行が水没した同じ日、6/11の午後、FRB・連邦準備制度理事会のジェローム・パウエル議長が記者会見で、米国の銀行制度について述べ、米国の銀行は「非常によく資本化され、非常に強力で、リスクをよりよく認識し、リスクの管理に優れ、より流動性の高い銀行システムを持っています。それは現在の状況における強さの源」であると保証し、請け合ったその日に、マネーゲームに明け暮れる金融資本の弱さを露呈させてしまったことである。共犯者はFRB自身であり、彼らに超低金利のマネーゲーム資本を提供してきたのである。何が「リスクをよりよく認識し」、「リスクの管理に優れ」、「強さの源」であるのか、こうしたウソもトランプ氏と全く同罪と言えよう。実はFRB自身がこうした金融資本の脆弱さを周知しており、だからこそ昨年2019年9月17日、数千億ドルの資金を調達、提供し、共犯関係を維持してきたのである。
以前にも紹介した、投資家の不安感を示す「恐怖指数」として知られる米シカゴ・オプション取引所のVIX指数は、6/11の終値は40.79となり、前日比47.95%の急上昇であった。
あるべき、「恐怖」を克服する、提起されるべきニューディールの政策は、トランプ政権の退陣を迫ると同時に、こうした中央銀行と金融資本の腐れ切った関係を断ち切ることこそが求められていると言えよう。そうでなければ99%の圧倒的多数の人々の切実な願いは実現されないのである。経済危機とパンデミック危機の結合は、そのことを一層切実なものとしている、と言えよう。
(生駒 敬)

 

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【投稿】根拠なき「緊急事態宣言」の解除と今後の新型コロナウイルス対策

【投稿】根拠なき「緊急事態宣言」の解除と今後の新型コロナウイルス対策
                             福井 杉本達也

1 根拠もなく「緊急事態宣言」の解除
政府は5月25日夜、新型 コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言を全面解除した。継続中だった北海道と東京など首都圏4都県も対象から外した。解除理由は①直近1週間の新規患者数が人口10万人あたり0.5人以下、②医療提供体制、③検査体制をあげたが、何の根拠もない。そもそも、PCR検査をしぼり、感染者数を少なく見せてきたのであるから根拠ある数字など出しようがない。政府専門家会議の尾身副座長自身が、「5月11日の参院予算委員会において『症状が軽い、ない人が多くいる。(実際は)10倍か15倍か20倍というのは誰にも分からない。』と述べ、10日現在で約1万6 千人との報告数を大きく上回る可能性があるとの見方を示した」(福井:2020.5.12)と居直り、あまりにも「素直」・かつ「無責任」な証言をしている。哲学者の内山節は「正体不明のウイルスの気持ち悪さ」とともに、「もうひとつ、コロナウイルスの蔓延とともに展開している現代社会の気持ち悪さがある」として、「政府の発表が真実に基づいているとはいえない…私たちは、真実を伝えられないままに、政府の指示に従うという実に気持ちの悪い世界でくらしている」と述べている(『新型コロナ19氏の意見』(農文協ブックレット:2020.5.10)が、全く「気持ちの悪い」解除である。

2 PCR検査をしないことを「日本型モデル」と自画自賛した能天気の首相
安倍首相は緊急事態宣言解除の会見において「我が国では、緊急事態を宣言しても、罰則を伴う強制的な外出規制などを実施することはできません。それでも、そうした日本ならではのやり方で、わずか1か月半で、今回の流行をほぼ収束させることができました。正に、日本モデルの力を示したと思います。」「日本の感染症への対応は、世界において卓越した模範である。」と自画自賛した。
今回の新型コロナウイルス対応の失敗は①新型コロナウイルスを第二種感染症にいきなり指定したことにある。第二種感染症に指定したことで、感染者は軽症者を含め指定病院に隔離しなければならない。ところが軽症者・無症状者が多かったのである。中国などからの多数発表される論文などをチェックしていればこうしたことは把握できたはずであるが、現場を全く知らない厚労省の医官にはそのような能力はなく、感染症法の机上プランをいきなり実施してしまった。そのため、約1800床の指定医療機関の病床はすぐ満床となってしまった。②クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号に多数の乗客・乗員を監禁し感染を広めてしまった。このため、さらにに指定病床に負担がかかった。③病床が著しく逼迫したため極端にPCR検査数をしぼり、患者数が顕在化しないように抑えた。そこで感染者が地下にもぐることとなった。また、発熱後4日間という強い縛りを設けたため、患者が重症化し、また家庭内感染なども多発することとなった。④結核などの感染症が減少したことで、国が感染症対策の第一線から撤退し、2000年前後から国立病院の廃止や自治体への移管を行い(例えば、福井県鯖江市では陸軍病院の流れをくむ国立鯖江病院が公立丹南病院として移管された)、医療費削減の流れの中で、“儲からない”感染症病床の削減を進めた。⑤国が医療の第一線から引いたにもかかわらず、厚労省→感染研→保健所の古い体制を残し、自治体に財源も含めた医療の権限移管を行わずに来た。⑥社会的環境が大きく変化してきているにも関わらず、感染症対策に保健所という公権力を背景として私権を制限し感染者をあぶり出す人海戦術による古いシステムのままで対応しようとした。⑦大都市部においては公権力の行使がうまく進まない中、「ライブハウス」・「歌舞伎町」・「パチンコ」・「8割削減」などというマスコミなどを利用した何の疫学的根拠もない恫喝を多用した。
「マスク2枚も、10万円も何もできない。検査ももちろんできない。」、「 海外と比較するのがいいとは思わないが、それでもここまで無能ぶりをさらけ出してくれると、どうしようもない」、「ここまで研究者、専門家が腐っているとはさすがに想像さえしてなかった」(小野俊一Twitter)。「かつての重要分野が文明の発展で当たり前のことになり、やがて忘れられた分野になって予算が減り、人の質が下がって大トラブルになり、当たり前が崩壊する。とにかくダメな専門家ばかりなので何もかも対応に失敗する。日本はこれを繰り返しながら急速に衰退して行くのだろう」(手塚一佳Twitter)というのが政府に対する一般的な評価であろう。
こうしたあまりにもお粗末な国の体制ではあるが、国の指示を無視してPCR検査を大規模に行った仁坂和歌山県知事や愛知県の大村知事などの一部の知事の行動が、欧米のような危機的状況にまでは至らず、日本を救った。大村知事は5月26日、安倍首相の能天気な自画自賛を無視し、見識ある会見を行った。「病院で受け入れ困難だった感染者数や救急件数などの情報公開、検証が全国で必要との考えを示した。特に首都圏や大阪圏に対して、『大きな課題だ』と強調。『ひと山越えてめでたしではない。検証しないとまた同じことになる』と述べた。大村氏はこれまで東京と大阪で医療崩壊が起きていると繰り返し指摘。11日の記者会見では『病院に入れない、救急を断るのは医療崩壊で東京と大阪で起きた。医療崩壊を起こしたら行政としては負け。何を言いつくろっても結果だ』としていた。」(朝日:2020.5.27)もっともな見解である。今後強力な2波・3波が襲ってきた場合、住民は知事の“能力”によっては殺されかねない。 続きを読む

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【投稿】大企業の超過内部留保132兆円を、国民に還元せよ

【投稿】大企業の超過内部留保132兆円を、国民に還元せよ

             名古屋・高木浩司(愛知県議会議員・立憲民主党)

 「デフレ脱却」を旗印に、安倍政権はこの7年間で赤字国債の大量発行を続け、その大半を日銀に引き受けさせてきた。「財政ファイナンス」そのものであった。そのデフレ脱却も達成できぬうちに、本当の未曽有の危機がやってきた。今回のコロナ禍である。こんな時こそ、国民の命と生活を守るために、百兆円単位の大胆な公的支出の出番なのだが、財政、金融にその余力は極めて厳しい。平時のアベノミクスで、その伝家の宝刀を使い尽くしてきたからだ。
 しかし、こういう危機のために百兆円単位のカネが日本経済内部に貯めこまれていたことを、思い出すべきだ。企業がこの20年間でためにため込んだ「内部留保462兆円」である。問題は、企業会計内部にふ頭にため込まれたこのカネを、どのようにしたら国民に還元できるのか。その論理と手法を、わが友人の水野和夫法政大教授が提起してくれた。
 次に引用するのは5月18日の毎日新聞に、水野教授が寄稿した提起の一部である。教授は、この論稿の前段で、中世に始まる資本主義の「蒐集」という本質がグローバリズムに行きつき、そして招き寄せた結果の一つが今回のコロナ禍だと分析し、その解決のためにこそ、「蒐集されすぎた」内部留保金の国民的活用が必要だという政策を導き出す。ぜひ、全文をじっくり読んでいただき、これが国民的提案となるよう拡散をお願いしたい。

   
内部留保463兆円
 日本の富は21世紀以降、企業に集中するようになった。企業の内部留保は19年3月末時点で463兆円に達している。企業が内部留保を重要視するようになったのは1990年代後半の金融危機や08年のリーマン・ショックで資金繰りに窮したからである。企業経営者はまさかの時に備えて増やすのだと説明していた。現在の危機はそれらを上回るのであって、今が「まさかのとき」に他ならない。
 内部留保が企業の固定資産に比べて急増し始めたのは、未曽有の金融危機に陥った98年の翌年からである。90年代は固定資産に対して内部留保は低下したので、89年までの上昇傾向を現在まで延長すると、内部留保は200兆円となる。企業が緊急事態に備えた内部留保263兆円(=463-200)は、将来の生産力増とならないので、生活水準の向上につながらない。
 
資本家の本質あらわ
 「主権者とは非常事態についての決断者である」(カール・シュミット)。日本の緊急事態宣言は飲食業などに休業を要請するが、補償はしない。その代わり罰則規定を設けていない。だからといって、この緊急事態に国民に布マスク2枚や10万円を支給することが「主権者」の決断ではあるまい。「主権者」である安倍晋三首相が決断すべきは、中西宏明経団連会長に対して首相の職を賭して132兆円の減資を要請することだ。
 経団連会長が拒否する理由はない。本来従業員と預金者に支払うべき賃金と利息を不当に値切った金額が累計で132兆円であり、緊急事態に即返還すべき性格のものであるからである。不当だというのは、労働生産性の上昇にもかかわらず賃金を減少させたり、利子と利潤の源泉は同じであるにもかかわらず、企業利潤率(ROE)に比例させて利子を支払わなかったりして、「救済」の経済理論に違反しているからである。緊急事態に備えた(Save)263兆円のうち132兆円は個々の企業と当該企業の従業員を結びつける必要はない。日本人全員の危機なのだから「日本株式会社」として全就業者と全預金者を含めた1億2596万人に還元すべきものであるからだ。
 減資に対しては株主が所有権の侵害だと訴えることが予想されるが、減資に反対する株主を公表すればいい。休業要請に応じない企業に対して企業名を公表するのは弱いものいじめである。休業要請に応じた企業に対しては、263兆円から132兆円を差し引いた131兆円が補償財源となる。不動産賃貸料は18年度で27兆円、資本金1億円未満の小売業および宿泊・飲食業の売上高は123兆円であるから、おおむね1年の休業に対応できることになる。
 もちろん、企業が早急に内部留保263兆円を減資するのは無理である。20年かけて緊急事態に備えて内部留保を積み増してきたのだから、20年かけて減資をすればいい。国は企業の内部留保を償還原資とする263兆円の新型コロナ国債を発行する。もし、この案に反対するというのであれば、企業はまさかのときに備えて内部留保を蓄積してきたということも、会社は社会的存在で顧客や従業員、仕入れ先などの利害関係者を重視しなければならないと株主に言っていたこともうそだったことになる。
 「例外は原則より興味深い。正常は何物をも証明せず、例外がいっさいを証明する」(シュミット)。まさに企業と株主と主権者が試されているのである。減資に応じないというのであれば、マルクスがいうように地球が太陽に吸い込まれて人類がどうなろうと資本増殖をやめないのが資本家の本質だということになる。
 
「共生」は経済重視
 263兆円の減資が「出口戦略」であるが、同時に「新たな入り口」も必要だ。それではじめて「不正」を「有用」と偽ってきた20世紀に終止符を打ち、我慢した代償としての成果を享受することができる。ケインズは1930年に「自分自身に対しても、どの人に対しても、公平なものは不正であり、不正なものは公平であると偽らなければならない。なぜならば、不正なものは有用であり、公平なものは有用でないからである」と指摘した。資本は人類の救済のためにあるから、不正な資本蓄積も大目に見てきた。内部留保に課税する方法では不正を「有用」だと認めることになるので、減資によって返還すべきだ。
 このケインズの言葉は、シェークスピアの「マクベス」からの引用である。そうであるとすれば、ケインズとシェークスピアは近代を偽りの時代だと見抜いていたことになる。だから、「ベニスの商人」で法学博士に扮(ふん)したポーシャは慈悲をシャイロックに求めるが、契約を重視するシャイロックは拒否し、最終的に財産を没収され喜劇として幕を閉じた。シェークスピアや「利子生活者(資本家)の安楽死」を予言したケインズは資本主義の終わり方を提示していた。
 もし、新型コロナ収束後においてグローバル化(全地球化)は不可逆的であるとの立場をとり続ければ、次々と襲ってくる新しいウイルスに無防備となり、減資は何度も使えない。我慢の先に「ウイルスと共生する社会」と「新しい生活様式」を要請するのは、感染症対策よりも経済を重視する姿勢が透けてみえる。共生すれば、仕事の性格上テレワークができない人の命をウイルスにさらすことになる。26兆円の補正予算はすべて感染症対策など医療体制の充実に回すべきである。

「より近い」秩序へ
 本来あるべき「新しい生活様式」とは「より遠く、より速く」そして「もっと多く」を求めず、「より近く、よりゆっくり」する生活様式に改めることである。そうしなければ、いつ感染するかもしれないと明日を心配して生きていかなければならない。
 新たな入り口にはケインズのいう次の原則が掲げられていなくてはならない。貪欲は悪徳であり、高利の強要は不品行であり、貨幣愛は忌み嫌うべきものであり、そして明日のことなど少しも気にかけないような人こそが徳をもった人であるという原則である。この原則は資本を過剰に保有するゼロ金利社会でないと実現できない。
 資本が過剰であるからゼロ金利となる。能力増強の新規設備投資と純輸出が不要となり、労働時間が節約でき、余暇が増える。そこで初めてケインズのいう人間にとって真に恒久的な問題、すなわち「余暇を賢明で快適で裕福な生活のためにどのように使えばよいのか」という問題に取り組むことができる。そして国際秩序も当然変わる。EU(欧州連合)程度の小さいサイズを単位とした「より近い」単位での地域秩序が形成されていくだろう。日本の近隣外交も問われているのである。

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【投稿】迫る破産の津波--経済危機論(24)

<<ハーツの破産>>
5/22、レンタカー業界・世界最大手のハーツレンタカー(Hertz)が米国の裁判所に対して、約190億ドル(約2兆円)の負債により、日本の民事再生法にあたる連邦破産法11条の適用を申請、破産を申請した。新型コロナ関連倒産では最大規模の倒産が表面化したのである。同社は、生き残りを図るため、売却可能なレンタカーを中古市場で販売し、空港外の営業所を統合し、設備投資を据え置き、すでに3月下旬には12,000人の労働者を削減、4,000人の一時帰休を進めていたが、さら

に雇用労働力の50%削減、20,000人の従業員削減を発表している。アメリカではシェア第1位であり、アメリカ国内で約1,900店、世界で約5,100店、日本では1999年4月からトヨタ自動車、トヨタレンタリース(TRR)と業務提携している。同社の稼ぎ頭は空港でのレンタカー事業であったが(上図)、航空機の運航停止が相次ぎ、需要が❝蒸発❞、同社は4月に車両リース代の支払い不能に陥り、債権者との協議に入っていたが、5/22が支払い猶予期限であった。経済危機の進行が、パンデミックの危機と結合したことによって、ありきたりの対策では追い付かない、予想外の急激な展開が容赦なく押し寄せてきているのである。
そしてこうした投資不適格な破産企業のジャンク債券を購入してきたFRB(米連邦制度準備理事会・中央銀行)が「今や、破産したハーツ債の誇らしき所有者」となったのである。
FRB議長・パウエル氏にとってのさらなる問題は、FRBが保有するこうした投資不適格なジャンク債発行企業が、数週間あるいは数ヶ月以内に破産申請をする企業が、実に数十社、あるいは数百社にも及ぶかもしれないことである。
5/20に公表された、FRBの米連邦公開市場委員会(FOMC)が4/28、29両日に開いた会合の議事録要旨は、「尋常でない不確実性」をとりわけ強調し、金融不安の懸念を重視、「パンデミックによる影響は、中期的に経済活動に対し、尋常でない不確実性と顕著なリスクを生み出している」との見解で当局者が一致した、「幾人かの参加者は金融安定への潜在的リスクについて言及し、市中銀行がより大きなストレスにさらされる可能性を参加者は懸念した」という。米経済で最も打撃を受けた部門の消費支出が「より正常な水準に早急に戻る公算は小さい」とし、多くの中小企業が破綻する、ないし新たな事業モデルにうまく適応できない可能性についての懸念も表明された、という。迫りくる破産のツナミをFRB自身が想定せざるを得ない事態の到来だと言えよう。 続きを読む

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【要請】原爆の図丸木美術館の緊急募金にご協力を

原爆の図丸木美術館の緊急募金にご協力を
                            東京 和田三郎

 「原爆の図丸木美術館」が運営資金難に陥り、緊急募金を求めています
5月5日、開館記念53周年を、丸木美術館は困難の中で迎えました。閉館と巡回など館外活動の中断で、無収入になっています。丸木位里・俊夫妻が苦難を乗り越えながら始めて半世紀の歴史を途絶えさせないために、緊急募金にご協力ください。
この状態は、創世期に苦難を共にした私たちにとっても、見過ごせないことです。愛読者や知り合いの方々のご協力を、心からお願いいたす次第です。急ぎで200万円、年間2500万円があれば乗り越えられるでしょうか。
 美術館のこと、現況のこと、目指すことなどは、HPに詳しく載っています。
HP検索エンジンで『原爆の図丸木美術館』を開き⇒『臨時休館・緊急支援ページ』⇒『寄付をする』で、クレジットカードで支払いができます。
 ゆうちょ振替口座なら、記号番号「00150-3-84303」、加入者名「公益財団法人原爆の図丸木美術館」です。

以下に、HPから抜粋しました。


https://congrant.com/project/marukigallery/1587

原爆の図丸木美術館」という場を残すために

……「原爆の図」をはじめとする丸木位里、丸木俊の絵や、位里の母である丸木スマの絵には、命への深いまなざしがあります。感染の収束後にも、こうした絵を、誰でもいつでも見て、ものを思うことのできる場所は、必要とされ続けるでしょう。芸術や文化における大切な役割のひとつが、この丸木美術館にあると考えます。
……丸木美術館は、行政主導ではなく、「原爆の図」を中心に、市民の力によって50年以上の歳月をかけて築き上げられてきた大切な「場」です。…この小さな灯火を消さないよう、ご協力いただけると幸いです。
……今回のことは、丸木美術館にとってとても大きな「危機」ですが、この緊急募金を通して、丸木美術館についてもっと多くの人に知っていただける「機会」だとも考えています。……

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【投稿】果てしなき消耗戦「出口戦略」なき緊急事態宣言の延長-新型コロナウイルス対応

【投稿】果てしなき消耗戦「出口戦略」なき緊急事態宣言の延長-新型コロナウイルス対応
                               福井 杉本達也
1 「出口戦略」なき緊急事態宣言の延長
5月4日、新型コロナウイルスへの対応を協議する政府対策本部が開かれ、緊急事態宣言の対象地域を全都道府県としたまま、医療提供体制の逼迫などを理由に5月31日まで延長すると決定した。安倍首相は同日夕方の会見で、①感染者が減っているのか具体的数字は示せないが、② 引き続き外出を控えろ、③ 経済は大幅に悪化するが、④生活の補償はしない、というのである。全く説得力のない無責任極まりない居直りであり、客観的データが示せず、今後もだらだらと「出口戦略」なき「自粛」要請が続く空恐ろしい会見である。
そもそも、4月7日の宣言以来何をしてきたのか。PCR検査は極端に少なく、感染者がどれだけいるのかも把握できない。医療用防護具も供給できず各地の病院で院内感染が起きている。学校は3月初めから休校で、5月まで休校なら3か月間も休校となる。「小1」の実態は「園児」のままである。どれだけ学力が低下してきているのか想像もできない。アルバイト先のない大学生・専門学校生の2割が学業を継続できず退学せざるを得ないと回答している。サービス・小売業・旅客運送業を始め日本経済は瀕死である。エコノミストは2020年度通期のGDPはマイナス5.9%になると予測している(日経:2020.5.5)。5月末まで現状の「自粛」が続けば過半数の中小零細企業は持たないと回答している。非正規労働者やフリーランスなどは新型コロナウイルスに感染する前に無能の安倍政権に殺される。国民にいい加減な「消耗戦」を強いることは許されない。「食事では料理に集中、おしゃべりは控えめに」・「筋トレやヨガは自宅で動画を活用」などと余計なお世話の「新しい生活様式」を“提言”する専門家会議にはあきれるしかない(『専門家会議の提言』2020.5.4)。仕方なく、各県はバラバラに解除の議論を始めた。全く統治能力を欠く政権である。 続きを読む

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【投稿】危うし・米中対立激化に逃げ込む米政権--経済危機論(23)

<<焦りから、責任転嫁へ>>
4/30、米トランプ大統領が会見で、「(新型コロナウィルスの)感染拡大は、中国の責任だ」と声を高らめ、「中国はウイルスを封じ込めることができたはずだ。能力の問題でできなかったのか、あえてしなかったのか、そのどちらかで、世界が非常に苦しんでいる」と語り、中国武漢の研究所が新型コロナウイルスの発生源となった可能性を確信していると述べ、ウィルス流出が故意であった可能性をほのめかし、賠償請求を示唆し、報復として、「より直接的な方法もある」と述べるに至った。危険な事態の到来である。
これは、明らかな責任転嫁である。今年の1月から2月、まだパンデミック危機の早い段階で、トランプ氏は中国の習近平国家主席と彼の政府がウイルスの取り扱いについてわざわざ取り上げ、しかも繰り返し褒め称える発言をしてきたことは周知の事実である。2/25には、トランプ氏はツイッターで、「米国では新型コロナウイルスはかなりコントロールできており、各方面や関係国とも連絡を取っている。米疾病予防管理センター(CDC)とWHOは非常に努力しており、非常に賢明だ。自分の目には、株式市場も好調に推移し始めていると映っている」とまで述べていたのである。
それが豹変である。氏の移り気、精神的・情緒的不安定さは今に始まったことではないが、自らのパンデミック対策を真剣に取り組まなかった犯罪的な不作為、油断と怠慢の結果として、新型コロナウイルス感染者は累計100万人を超え、アメリカが最大の感染国となり、死者数は米軍のベトナム戦争中の戦死者数を上回る事態を招いてしまった。11月の米大統領選を控え、トランプ氏の支持率はどんどん低下しだし、焦りだしたのである。挙句の果てにトランプ氏は、4/23の会見では、「体に紫外線や、とても強い光を当てたらどうなるか。あるいは光を体内に持ち込めないか」「消毒薬は1分で(ウイルスを)やっつける。体内に注入して同じことはできないか」などと致命的ともいえる無責任で恥知らずで愚かな発言、グロテスクな提案をまでしでかし、消毒薬メーカーが急遽「どんな状況でも飲んだり注入したりしないように」と声明を発表せざるを得ない事態に追い込まれ、あれは「皮肉のつもりであった」と弁解に追われる始末である。
2019年12月、350人のアメリカのメンタルヘルス専門家が、トランプ大統領の「悪化するメンタルヘルス」が「私たちの国の安全への脅威」を構成すると述べた議会への手紙に共同で署名した、その危険で憂慮すべき事態への警告が現実化しているのである。
ここまで追い込まれたトランプ政権にとって、反撃に必要不可欠となったのが、WHO(世界保健機関)と中国であり、彼らをスケープゴートとして非難と制裁の対象としたわけである。まずはWHOへの拠出金をストップさせた。 続きを読む

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【投稿】マイナス原油価格の警鐘--経済危機論(22)

<<史上初の異常事態>>
4/20、世界の3主要原油市場の一つである米国産WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油市場で、5月物の先物価格が大幅に値下がりし、値下がり幅が300%を超え、1バレル当たりマイナス37.63ドルで引けるという異常事態が発生した。マイナスということは、買い手側から原油代金を受け取るのではなく、売り手側が、1バレル当たり37.63ドルを支払って、買い手側に原油を引き取ってもらうという、前代未聞の取引となったのである。5月物の締め切り直前であったため、マイナスを受け入れざるを得ず、翌日からの5/19に期限が切れる6月物はプラスに転じているが、それでも先物6月限は10.97ドルへの大幅下落であり、今後さらに波乱が待ち構えていると言えよう。金融取引ではなく、実体経済の実物取引で、マイナス取引が実行されるという、史上初めての異常な事態の勃発である。貯蔵スペースと輸送そのものにかかるコストは、需要が減少しても不変である以上、原油の売り手は、買い手にお金を払ってでも買ってもらわなければならない状況に追い込まれたのである。

すでに、米国で最大の原油の荷主の一つであるプレーンズ・オール・アメリカン・パイプラインは「パンデミックに対応して石油生産を削減するための対策を講じるよう、サプライヤーにこの積極的な要請を送っている」ことを明らかにし、同社は別の書簡で、顧客に購入者または出荷する原油を降ろす場所があることを証明することまで求める事態となっている。原油供給が貯蔵タンクとパイプラインをオーバーフローさせているのである。
あわてたトランプ米大統領は、「マイナス価格は金融市場の状況を反映したもので、原油市場の状況の反映ではない。原油価格の下落はごく短期的なもの。今は原油を購入する絶好のチャンス。目下、石油最大7500万バレルを戦略石油備蓄に積み増すことを検討中だ。」と強がってはいる。しかし実態はそんな生易しいものではない。
景気の大幅な後退が新型コロナウィルスのパンデミック危機と結合することによって、原油需要は大幅に後退、減少している。すでにこの4月の世界の石油需要は1日あたり2千万バレル減少し、過去最大の減少幅を記録することが確実視されている。この4月にサウジアラビア、ロシア、およびOPEC +内の他の石油輸出国が、市場から供給過剰の一部を取り除くために、過剰供給は現在、1日あたり約900万バレルと判断し、6月まで1日あたり970万バレルの石油生産を削減することに合意している。しかしそれは現実の減少幅2000万バレルの半分にも満たない。過剰生産で石油がだぶついているのである。減産にもかかわらず、価格は上がるどころか、下がる一方である。4/21の米ニューヨーク原油先物6月限は1バレル=11.57ドルと43%急落し、北海ブレントは21年ぶりの安値、1バレル=16ドルを割り込む事態である。西カナダでは3月末に、5ドル台をつけている。(上図参照)
原油先物市場の主要な買い手は、石油精製工場と航空会社、交通・運輸など実際に石油を大量に使用する実体経済である。しかしこうした企業・機関の石油貯蔵施設はすでに需要減少で満杯で、備蓄する余地もない。そこで現在、貯蔵スペースが不足しているため、1億6千万バレルの石油が出荷港の外の大型タンカーに貯蔵されていると、報じられている。最大200万バレルを保持できるスーパータンカーとも呼ばれる約10の超大型原油運搬船(VLCC)が、従来の石油施設の代わりに海上で石油を貯蔵するためにチャーターされているのである。この数は4月の初めに25から40に増加し、現在60に達している、という。その費用も膨大である。もちろんより小さなタンカーや施設も貯蔵に使用されている。 続きを読む

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