Assert Webの更新情報(2024-11-23)

【最近の投稿一覧】
11月22日【投稿】バイデン政権、退任直前の危険な世界戦争拡大への挑発
11月18日【投稿】「103万円の壁」と国民負担率の考え方
11月10日【投稿】トランプ勝利と日本の針路
11月6日 【投稿】米大統領選:バイデン/ハリス政権の敗北
10月30日【投稿】総選挙結果について(福井の事例を含め)
10月29日【投稿】衆院選:自公政権の大敗と流動化
10月29日【投稿】総選挙結果について
10月27日【書評】『大阪市立大学同級生が見た連合赤軍 森恒夫の実像』
10月23日【投稿】戦争挑発拡大と米大統領選--経済危機論(151)
10月12日【投稿】被団協・ノーベル平和賞受賞 vs. 石破首相「核共有」
10月2日【投稿】米/イスラエル:中東全面戦争への共謀--経済危機論(150)
9月28日【投稿】バイデン/ハリスの大量虐殺加担--経済危機論(149)
9月25日【投稿】海自艦の中国領海侵犯と福島第一核汚染水で完全白旗:日中外相会談の内実
9月11日【投稿】支離滅裂:米大統領選討論会--経済危機論(148)
9月3日【新刊】「大阪市立大学同級生が見た連合赤軍森恒夫の実像」が出版されました。
9月2日 【書評】『賃金とは何か―職務給の蹉跌と所属給の呪縛』―濱口桂一郎著
8月25日【投稿】バイデン撤退とハリス指名--経済危機論(147)
8月23日【投稿】福島第一原発の溶融核燃糾(デプリ)取り出し失敗―『廃炉』は不可能・核の呪文から解放され正気に戻れ
8月18日【映画】I AM A  COMEDIAN(アイアム・ア・コメデイアン)・テレビから消えた男
8月13日【投稿】全国知事会での小池都知事の「地方切り捨て」発言と46道府県の批判
8月11日【投稿】根拠なき「南海トラフ地震臨時情報」の発表と岸田首相の中央アジア歴訪中止
8月10日 【投稿】長崎平和式典で米欧「チーム・ジェノサイド」の敗北
8月6日 【投稿】米国株式市場の暴落--経済危機論(146)
8月5日 【投稿】史上最大の暴落「ジャパニック・マンデー」--経済危機論(145)
8月1日 【投稿】世界的規模のシステム障害とサイバー攻撃の可能性を考える
7月30日【投稿】米大統領選:トランプ苦戦への急展開--経済危機論(144)
7月29日【投稿】醜悪なパリオリンピック開会式
7月27日【投稿】日本原電敦賀2号原発は原子炉直下に活断層ありが確定、ようやく廃炉へ
7月14日【投稿】トランプ暗殺未遂とNATOの全面核戦争計画
7月10日【投稿】円安で「五公五民」どころか、今や「六公四民」:岸田政権は天下の悪代官
7月8日 【投稿】フランス「新人民戦線」、1位獲得--経済危機論(143)
7月7日 【投稿】英スナク政権の歴史的大敗--経済危機論(142)
7月3日 【書評】『所有論』鷲田清一著(講談社:2024年1月30日)
7月1日 【投稿】日本はガスライティングから正気に戻れー米大統領選テレビ討論で明らかになったことー
6月28日 【投稿】米大統領選・党首討論とバイデン氏の失態--経済危機論(141)
6月22日 【投稿】再生エネルギー賦課金は官製詐欺商法
6月15日 【投稿】
G7・「不幸な集まり」--経済危機論(140)
5月31日 【投稿】大賀正行氏のご逝去を悼む
5月28日 【投稿】危険な核戦争瀬戸際政策--経済危機論(139)
5月16日 【投稿】バイデン・トランプ共通の謬論--経済危機論(138)
4月27日 
【投稿】米経済:スタグフレーション化--経済危機論(137)
4月15日 【投稿】イラン報復攻撃とバイデン政権--経済危機論(136)
3月31日 【投稿】米・橋梁崩壊事故が示したもの--経済危機論(135)
3月24日 【投稿】日銀の「異次元」緩和解除と巨大な副作用
3月21日 【投稿】米国のTikTok規制法案とSNSの利用
3月19日 【投稿】武器輸出の行き着く先
3月18日 【投稿】バイデン氏の焦りと動揺--経済危機論(134)
3月8日 【投稿】自然を無視した原発に場所はない―志賀原発の地震被害の公開
2月27日 【投稿】株価最高値更新の虚実--経済危機論(133)
2月25日 【投稿】岸田売国政権下の新NISA狂騒曲と株高
2月20日 【投稿】核管理が完全に崩壊した日本
2月15日 【投稿】米政権:ガザ・ラファの虐殺、ゴーサイン--経済危機論(132)
2月12日【投稿】タッカー・カールソンのプーチン大統領インタビューと「トランプ2.0」
2月4日 【投稿】バイデン:中東全域への緊張激化--経済危機論(131)
1月30日 【投稿】能登半島地震1か月―『天災のあとは、すべて人災』
1月28日 【投稿】国際司法裁:イスラエルへの大量虐殺阻止命令--経済危機論(130)
1月23日 【投稿】バイデン:イエメンへの戦争拡大--経済危機論(129)
1月16日 【投稿】志賀原発・能登半島地震で被害ーそれでも再稼働に突き進む政府・規制委・財界
1月14日 【投稿】バイデンの危険なエスカレート--経済危機論(128)
1月9日 【映画評論】『破戒』―監督:前田和男―
1月4日 【投稿】能登半島地震と志賀原発
1月4日 【翻訳】Ukraineの将来は、ドイツやイスラエルの事例ではなくて、朝鮮半島の事例的である。

【archive 情報】
2023年5月1日
「MG-archive」に新しい頁を追加しました。
民学同第3次分裂

2023年4月1日
「MG-archive」に以下のページを追加しました。
(<民学同第2次分裂について>のページに、以下の2項目を追加。
(B)「分裂大会強行」 → 統一会議結成へ
(C)再建12回大会開催 → 中央委員会確立

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【投稿】バイデン政権、退任直前の危険な世界戦争拡大への挑発

<<「戦争の質的に新しい段階」>>
11/19、ウクライナは初めてアメリカ製の長距離ミサイルATACMSをロシアに向けて発射し、ウクライナ当局は、ミサイルはロシア南西部のブリャンスク地方の弾薬庫に命中したと発表している。
 一方、ロシア国防省は、発射された6発のATACMSのうち5発が撃墜され、1発が損傷し、損傷したミサイルの破片が落下して弾薬庫で火災が発生したが、被害や死傷者は出なかったと発表している。
G20会合に出席していたロシアのラブロフ外相は、西側諸国に対し、「長距離ミサイルがウクライナ領からロシア領に対して使用される場合、それは米国の軍事専門家によって制御されていることを意味するため、我々はそれを西側諸国によるロシアに対する戦争の質的に新しい段階とみなし、それに応じて対応する」と注意を喚起すると同時に、「ロシアは核戦争を回避する立場を固く守っており、核兵器は抑止力として機能する」とも述べている。
ここで、「米国の軍事専門家によって制御されている」長距離ミサイルとは、
* 米国製のATACMS は、米軍が提供する衛星ナビゲーション データを使用する
* ターゲットの選択と座標は、米国の軍事技術専門家によって実行される
* ミサイルの誘導ヘッドに飛行ミッションをロードするプロセスは、米軍兵士によって実行される
ものであり、「発射は米国の将校なしでは実行できない」ものであること、米国側の直接の関与・主導権が明らかとなっている。
ウクライナ側は、この米国が供給した長距離ミサイルをロシア領土のさらに奥深くに発射する許可を、3日前の11/17段階で得ていたことが明らかにされている。

<<戦争を「トランプ対策」化する>>
バイデン政権が何カ月もの間、長距離ミサイル攻撃の承認をためらい、他のNATO諸国にも同調を要請していたにもかかわらず、方針転換に踏み切り、世界戦争への挑発拡大、さらには核の瀬戸際政策に乗り出したのである。すでに9月の段階で、ロシアのプーチン大統領は、ロシアへの長距離ミサイル攻撃は「紛争の本質、性質そのものを明らかに変えるだろう」と、そのリスクの大きさを警告していたものである。
そのリスクの大きさにもかかわらず、方針転換に踏み切ったのは、米大統領選に大差で敗北し、今やレイムダック化したバイデン政権が、次期トランプ政権に「ウクライナの代理戦争を終わらせはしない」、戦争の泥沼化・世界戦争化を引き継がせようとしたもの、と言えよう。
トランプ次期大統領が「ウクライナ戦争を3日で終わらせる」などと公言し、来年1月の大統領就任と同時に、ウクライナ戦争終結に乗り出すという選挙公約を反故にさせる、あるいは戦争終結そのものをはるかに困難にさせる事態を意図的に作り出す、ウクライナ戦争を「トランプの脅威から守る」という、いわば、戦争を「トランプ対策」化することなのである。
 そして危険なのは、このバイデンの世界戦争化に加担する、NATO諸国のなかの好戦的で危険な動きである。スウェーデンは核戦争の事態を想定し、国民に500万枚のパンフレットを配布し、備え方を指導している。パンフレットには、核攻撃の際に食料を備蓄し、避難所を見つける方法が記載されている。フィンランドは、人々に備え方をアドバイスする新しいウェブサイトを立ち上げ、ノルウェーは、世界の終わりに備えるためのヒントを記した独自の小冊子を郵送し、1週間自給自足で生活するための準備方法や、核事件に備えて保存しておくべき長期保存可能なアイテムのリストも掲載している。(バイデンが火に油を注ぐ中、ヨーロッパは戦争に備える 11/20 zerohedge

英国とフランスもキエフに提供した長距離ミサイルの使用制限を解除したと報じられているが、ドイツとイタリアは、同調していない。

一方、対するトランプ時期大統領は11/19、世界は第三次世界大戦と核戦争の瀬戸際にいるという厳しい警告を発し、バイデン氏ののエスカレーションによって世界的な対立のリスクが高まり、核保有国が直接の紛争に巻き込まれる可能性があると主張し、さらなるエスカレーション防止の緊急性を訴え、世界規模の壊滅的な結果を回避するために、平和と強力なリーダーシップが極めて必要だと強調している。

<<ロシアの新型中距離極超音速ミサイル「オレシュニク」>>
11/21 プーチン大統領は、新型中距離極超音速ミサイル「オレシュニク」を、ウクライナがロシアのブリャンスク州とクルスク州に対してNATOの長距離ATACMSとストームシャドウを使用したことへの報復として、11月21日の夜に発射された、と公表した。「西側諸国が扇動したウクライナの地域紛争は、世界戦争の要素を獲得した」と述べ、この新型中距離極超音速ミサイル「オレシュニク」は、マッハ10(時速1万2250キロ 秒速約2.5~3キロメートル)を超える速度で飛行するもので、現在の米

国や欧州の防衛システムによる迎撃をほぼ不可能となる。プーチン大統領は、「米国がヨーロッパで構築したミサイル防衛システムを含む、世界中の既存の現代の防空システムは、そのようなミサイルを迎撃することはできない。不可能だ」、これは単なる「戦闘テ

スト」であると繰り返したが、ロシア領土への攻撃に米国と英国製の兵器が使用されたことに対し、紛争を不必要にエスカレートさせようとしているのではなく、脅威とみなされるものには報復するものであると述べている。

この「オレシュニク」は、核弾頭を搭載可能な中距離ミサイルで、射程は約5,500キロ。ロシア西部から発射した場合、欧州全体を射程内に収め、飛行速度はマッハ10(時速1万2250キロ)で、ポーランドのレジコボにある米国のミサイル防衛基地へは8分、英国には19分で到達する。

11/22、米国防総省のサブリナ・シン副報道官は、米国はロシア連邦との紛争を望んではおらず、紛争地域に派兵する考えもない、と述べ、新型ミサイルの発射に懸念を示しつつ、ロシア側の核準備に変化は見られないとし、米国側も核の位置付けは変えない考えを表明した。一方、ロシア大統領府のペスコフ報道官によると、ロシア側は核リスク軽減ルートを通じ、中距離ミサイル「オレシュニク」発射前の30分前に警告を米国側に送信していたとのことである。

今、世界は危険極まりない世界戦争への挑発に、いかに対処すべきかが問われている。緊張激化と戦争挑発を孤立化させ、封じ込める、緊張緩和と平和への闘いこそが要請されている。
(生駒 敬)

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【投稿】「103万円の壁」と国民負担率の考え方

【投稿】「103万円の壁」と国民負担率の考え方

                               福井 杉本達也

1 国家への見方―「慈悲深い専制君主国家」か「リバイアサン国家」か

政府は一体なんのためにあるのか。権丈善一慶応大教授は「政府は国民のことをおもんばかりながら諸施策を展開している慈悲深い専制君主」であるとするモデルと、ホッブスが考えた「政府は国民から可能な限り搾り取る」ことしか考えないというリバイアサン・モデルがあるとし、市場に任せ賃金だけで配分するリバイアサン・モデルだけでは、「支出の膨張や収入の途絶という、生きていれば必ず直面する生活リスクにうまく対応できない欠陥がある」とし、多くの人たちが老後に貧困に陥ってしまわないよう、慈悲深い専制君主のように「強制的な社会保険制度」を整備してきたとする。しかし、政府を「慈悲深い」と信頼するにしては、政府の長い間の「所業」はそのイメージとは乖離しているというのが先の衆院選の結果ではないかとする(福井:2024.11.16)。

2 「103万円の壁」の「財務省の壁」

国民民主党は衆院選挙で「年収103万円の壁」を取り上げ、所得税がかからない基礎控除48万円・給与所得控除58万円の合計103万円を178万円する税制改革を提案した。基礎控除など人的控除は所得のうち「最低限度の生活」を維持する収入には課税しないという「憲法25条の生存権の保障の租税法における現われである」と考えられている(金子宏)。しかし、48万円=月4万円で最低限度の生活を送ることなど不可能である。参考となるのは生活保護費である。68歳の単身世帯は生活扶助費として月に6万8千円~7万8千円程度が受給可能であり、これを基準とすべきであるとする(竹中治堅政策研究大学院大学教授:日経:2024.11.13)。自公と国民民主党の協議が行われているが、与党・財務省サイドは譲歩する気は薄い。

3 「106万円の壁」と社会保険料

現在、パート労働者の厚生年金の適用要件は、月8万8000円以上、年収換算で約106万円以上(労働時間要件:週20時間以上)となっている。106万円を超えると社会保険料が発生し、手取り収入が少なくなるため、パート労働者が年末になると就労を調整するという問題がある。保険料は労使で折半して支払うのが現行制度である。厚労省の案は、手取りの急減を避けるため、働き控えが発生する年収層のパート労働者に限り、保険料の労使の負担割合を現行の折半ではなく、労1:使9(徐々に労2:使8…)というように柔軟な制度として手取り減を回避しようというものである(日経:2024.11.16)。

租税負担率と社会保障負担率を合計した国民負担率は2023年度は46.1%である。江戸時代に農民が領主に納める年貢割合を表現した「五公五民」がある。日本の国民負担率は、1979年度に30%台、1994~2004年度までは34~36%台。しかし、高齢化による社会保険料の増加などにより2013年度から40%台、2020年度に初めて47%を超えたが、実質賃金は低迷し続け、中間層は衰退。非正規が拡大し、生活不安が増大している。これに先送りした少子化対策の財源として2026年度にも社会保険料増が加わる。

4 消費税と飲食料品への課税の問題点―エンゲル係数は28.7%に

消費税は、2024年度予算では23.8兆円を見込み、国税+地方税の構成割合では34.9%と最大の費目となっている。逆に法人所得課税・個人所得課税の構成割合は年々低下している。消費税は導入当初は福祉目的を強調したが、実際は法人・所得税減税の原資となってきている。所得税に「1億円の壁」というものがあり、所得が1億円をこえると、税負担は減っていく。「所得税は給与・事業所得などには最高税率45%で累進(総合)課税をする一方、利子・配当・株式謡渡益といった金融所得は一律15%(地方分合わせて20%)で課税される。高所得者ほど金融所得が所得全体に占める割合は高く、所得税負担率が下がることになる。所得税+社会保険料の負担率(2020年)は300万~400万円の所得階層で17・9%、50億円~100億円の所得階層では17・2%と高額所得者の方が負担率が低い」(佐藤主光一橋大教授:「金融所得課税の課題」日経:2024.11.6)。

消費税を仮に国民民主党が主張するように現行10%の税率を半分の5%にするとすれば、1%で2.5兆円として、12.5兆円の減収となるが、二人所帯で月の消費支出が30万円ならば、約1.5万円の減税となる。

消費税の飲食料品税率8%を0にするという案もある。エンゲル係数が28.7と日本では急伸している(日経:2024.11.17)。月の消費支出の平均が30万円とすると、食費は8万円となる。消費税は8%で計算すると、6400円の減税となる。海外では「食料品など生活関連への税率は軽減税率を設けるか、そもそも課税対象にしない」(森永卓郎+泉房穂『ザイム真理教と闘う』2024.11.14)。税金は取りやすいところから取るという発想を改めるべきである。

 

6インフレ税

「インフレ税」という課税項目があるわけではないが、昨今のように円安が進めば。「インフレにより家計から政府への所得移転が進む」。「インフレで通貨価値が目減りすれば、これまで積み上げた政府債務の実質的な負担は減る。実質個人消費が低迷する一方、税収が改善することから『インフレ税』と呼ばれ」家計負担は一段と増す(日経:2024.7.1)。国家が国民が知らない間に国民の財産を没収していることになる。アベノミクスによる黒田日銀による国債の買い入れは、日銀紙幣の増発であり、実質的な円の切り下げであり、米国からのインフレの輸入となる。米国にとっては米国の高いインフレの一部を日本に転嫁させるインフレの輸出となる。日本国民の物価は高くなり負担を強いられる一方、米国民は安い日本製品を手に入れることができる。また、ドル・円の金利差から円キャリー取引で資金が金利の高い米国に向かいウクライナ戦争で傷んだ米国の国家財政を補填している。

しかも輸入物価は高くなるので、石油・ガスなどのエネルギー資源価格が高くなる。これは全ての卸売物価に影響する。政府は、電気・都市ガス代の補助金として、電力需要が高まる来年1 ~2月分については家庭向けの電気で1キロワット時当たり2・5円、都市ガスは1立方メートル当たり10円を検討しているという(福井:2024.11.14)。紙幣を増発して貨幣の価値を下げ、物価を高くし、高くした物価のために補助金を出すという分けのわからない政策を続けている。

7 電気料金という「税金モドキ」

電気料金は滞納するわけにはいかない。滞納が続けば電気を止められてしまう。家庭の設備のほとんどは電気をエネルギー源としており、電気が止められたら生活はできない。電気料金は独占価格であり、「税金モドキ」である。電力料金表を見れば分かるが、「再生エネルギー賦課金」という項目がある。再生可能エネルギーの普及促進を目的とするとして、電気料金に上乗せされており、負担額は年々増える傾向にある。2024年度は3.49円/Kwhとなっている。化石燃料によるエネルギー供給の一部を再生可能エネルギーで賄うことで、燃料価格の高騰に伴う電気代の上昇の抑制するという建前であるが、太陽光・風力発電で保有量が多いのは。豊田通商が157万Kw、パシフィコ・エナジーが90万Kw、米系のグローバル・インフラストラクチャーが90万Kw、ENEOSが65万Kw、Jパワーが58万Kwなどとなっており(日経:2023.12.4)、電力の固定価格買い取り制度(FIT)という官製市場で事実上の大企業への補助金となっている。家庭の電気料金の1割近くを占める。

原発はさらなるブラックホールとなっている。日本原電敦賀2号機は2011年以来、1ワットの発電することなく、原子力規制委から原子炉直下に活断層があるとして不許可処分を受けた。卸電力会社である日本原電には、この間5電力企業から1兆4000億円の基本料金が支払われているが、全く発電していない。これは全て電力料金に転嫁されている。

龍谷大学の大島堅一教授が、東北電力での原発関連経費を計算している。東北電力の自社の原発の減価償却や修繕などにかける費用は年間1,352億円。さらに、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)と日本原子力発電東海第2原発(茨城県)から電力を購入する契約を結んでおり、両原発が停止中で受電量がゼロでも年間265億円を払う。これらの「原発の電気を調達する経費」は年間計1617億円に上り、年間販売電力量で割った単価は1キロワット時当たり2.35円。標準家庭は原発の費用として、月額611円を支払っている計算になる(河北新報:2024.1.27)。

再エネ賦課金と原発関連経費を合わせると家庭は1500円/月の電気料金を余分に支払っていることとなる。さらに、経済産業省は原発の新増設を進めるため、建設費を電気料⾦に上乗せできるようにする制度の導⼊を検討している。福島第⼀原発事故で安全対策費が膨らみ、建設費を回収する⼿段がなくなり、電⼒は投資に及び腰になっており(朝日:2024.7.24)、電気料金は便利な財布である。

 

8 放漫財政と官僚機構の劣化―ガソリン補助金・コロナ補助金など

政府は経済対策の原案にガソリン補助金の継続を盛り込んだ(日経:2024.11.13)。これまで累計で7兆円の巨額の補助金をぶち込んでいる。この補助金の問題点は「政府がガソリンの値下げ目標を設定し、現実との価格差を埋めるように金額を足し込んで計算することにある。『この方式だと、ガソリン価格が高いほど補助金が多く出ることになる。値上げをすれば『ご褒美』がもらえる。逆に、値下げしたら補助金が減る』」ことである。。「値上げで補助金額が上がるってことは、消費者からぼったくって、さらに国からカネをたんまりともらう。」という仕掛けである(金田信一郎・「ヤバい会社烈伝:エネオス」『東洋経済』2023.2.3)。また、半導体の支援に6兆円の補助金と4兆円の金融支援への債務保証を行うと発表した(日経:2024.11.12)。

2020~2021年のコロナ禍においては、緊急事態とはいえ、膨大な予算が投入された。コロナ禍で世界で最も財政支出をした国の1つが日本である。2021年12月29日、NHKは「検証コロナ予算 77兆円」を放送している。例えば、雇用調整助成金は、事業主がコロナ禍で労働者に休業手当を支払う際、その一部を助成する制度だ。雇用維持を目的に2020年4月から2023年3月まで特例措置が設けられた。3年間で約6兆4000億円の雇調金が支給された。コロナ禍で大打撃を受けた外食や飲食、宿泊、小売り、交通インフラ、観光業など、幅広い業種で活用されたが、不正も相次いでいる。これまで不正受給で社名を公表された企業は全国で1437社、不正受給総額は465億7502万円に達する(増田和史:「ダイヤモンドオンライン」2024.11.19)。

コロナ禍で中小企業対策として4兆2千億円の予算を計上した持続化給付金事業では、事務局費669億円を「サービスデザイン推進協議会」という怪しげな団体に委託し、それが「電通」にそのままの金額で丸投げされた。電通はそれを、さらに下請け・再々下請けへと投げ、その資金の一部資金はが電通に還流した。この構図は今も変わらない。資源エネルギー庁は電気・ガス補助金の事務局業務を、博報堂に総額372億円で丸投げしたが、その業務の大部分を子会社に委託し、さらに別の会社に再委託や再々委託していたことを会計検査院に指摘された(毎日:2024.10.6)。今の官僚機構は現場がどうかを全く考えず、頭だけで「政策」ともいわれぬ「政策?」を考え?、それを現場に丸投げする。現場はできないから民間に丸投げする。民間はその甘い汁を吸う。その象徴が「マイナ保険証」である。マイナ保険証の導入のため、国が2014〜24年度に投じた総コストは、少なくとも8879億円に上る。このうち6割は「マイナポイント」などの普及のための費用だった。それでもマイナ保険証の利用率は9月末時点で13.87%にとどまる(東京新聞:2024.11.14)。

どこに在日米軍総司令部を首都のど真ん中の赤坂に置く「独立国家」があろうか(福井:2024.11.16)。そんなことは眼中になく、言われたままに石破内閣改造後の岩谷外相が早速出向いた先はウクライナ。バイデン政権はトランプ氏が大統領就任前に急いでお金を渡すことを日本に命令。ロシアの凍結資産を窃盗して30億ドルを拠出。支援総額は計121億ドル(1兆9千億円)となる。さらに日本は世界銀行を通じて55億ドル(8400億円)を財政援助。ウクライナが返済不能に陥った場合、日本がいわゆる「連帯保証人」として50億ドル(7600億円)分までは現金で債務を負担することとなる(Sputnik日本:2024.11.16)。

財務省は減税すると財源が足りないというが、取りやすいところから税金を搾り取り、大企業や補助金に巣食う電通など社会的寄生虫などの身内に偏った財政支出を行い、財源以上に放漫政策を行っている。米国の属国として長年飼いならされてきた官僚機構の劣化は深刻である。その最たるものが強欲を取り締まるべき裁判官による強欲なインサイダー取引である。税金を湯水のごとく使えば当然「財源」は足りなくなる。「慈悲深い」ではなく「欲深く、無能、しかも放蕩する専制官僚国家」をどう立て直すかが、いま国会で多数を握る野党に問われている。

カテゴリー: 政治, 杉本執筆, 経済 | コメントする

【投稿】トランプ勝利と日本の針路

【投稿】トランプ勝利と日本の針路
                         福井 杉本達也

1 日本のマスコミは米民主党の在日報道部
経済評論家の森永卓郎氏は11月5日のニッポン放送の「垣花正 あなたとハッピー!」において、「私だけじゃないんです。あの8年前にトランプを推した(フリージャーナリストの)木村太郎さんもフジテレビで同じようなことを言ってます」と卓郎氏。『あしたね、やっぱり日本の報道っていうのは中途半端で民主党寄りだったかなっていう空気がまん延して来て、あさって、ああみんなメディア間違えていたんだっていうことになると思います』と続けた。森永氏の予想どおりトランプが大勝した。
ネオコンのジャパン・ハンドラー芸人:パックンことパトリック・ハーラン氏は6日、BS-TBS「報道1930」にコメンテーターとして生出演し、「4年間、思い出して下さい。2回も弾劾されているんですよ?金正恩とラブレターを交換しているんですよ?プーチンともラブラブな状態になっているんですよ?権力を乱用しているんですよ?グローバルサウスを“クソダメ国家”と言っているんですよ?その人の未知数が今、知られているんです。グレーのところが白黒はっきりに見えているんです。僕から見れば真っ黒なんです」と思いをぶちまけ、「その真っ黒な人が、過半数の人に選ばれたことになりそうですね」と涙ぐみながら語った(スポニチ:2024.11.7)。
日経の7日の社説は「正確な情報や言論の自由が脅かされている現状は、その基盤によって立つ民主主義にとって危機的な状況だ。前回の大統領選の結果を否定し、連邦議会占拠事件のような暴動を招く言動をいとわない人物の復権は異常事態と言わざるを得ない。自由や法の支配を尊重してきた米国の民主主義は歴史的な転換点を迎えている。」と書いた。いかに日本のマスコミが米民主党よりの立場であり、民主党有利の情報を流していたかが分かる。我々は毎日毎日、米民主党の広報に洗脳され続けていたのである。

2 米民主党による2度のクーデターの失敗
今回の大統領選は最初からトランプ氏が優位とされていた。それをひっくり返そうと、民主党は2度にわたるクーデターを計画した。1度目は7月13日の米東部ペンシルベニア州バトラーで開かれた共和党のドナルド・トランプ氏の選挙集会での暗殺未遂事件である。
2度目は、バイデン大統領を無理やり大統領選から撤退させ、ハリス氏を選んだ、米民主党内の党内クーデターである。本来の民主党の大統領候補は、各州の予備選挙から勝ち上がってこなければならない。そうした、「党内民主主義の手続き」を一切無視して、バイデン氏を引きずり下ろし、ハリス氏を大統領候補としたことである。6月末のトランプ氏との討論会で、バイデン氏は言葉に詰まり、後4年間も大統領を務めるにはふさわしくないと思われた。民主党大会が行われる前のぎりぎりのタイミングである7月21日、バイデン氏はX(旧ツイッター)上で「大統領選を戦う党の候補者指名を辞退し、選挙戦から撤退すると表明した。後継候補にハリス副大統領を支持すると明らかにした」(日経:2024.7.23)。誰が、バイデン降ろしの背後にいるかは明らかである。イーロン・マスク氏はX上で、ジョージ・ソロス氏の息子で後継者のアレクサンダー・ソロス氏と仲良く写真を撮るハリス氏の写真に対し、「誰が次の操り人形になるか疑いを持たせないでくれてありがとう」と投稿した(Sputnik日本:2024.7.22)。

3 ウクライナ戦争はどうなるか
トランプ氏は「ウクライナ戦争を1日で終わらせる」とし、「ロシアとの関係を改善し、第三次世界大戦への転落を防ぐ」と公約していた。これに応えて「ロシアのプーチン大統領は7日、米大統領選で勝利したトランプ次期大統領と対話の用意があると表明した。トランプ氏も7日、米NBCテレビのインタビューで、『プーチン氏と話すことになると思う』と述べた(福井新聞=共同:2024.11.9)。現在は、冷戦後最悪の米ロ関係のあり、既にウクライナには米国の特殊部隊員も派遣されているといわれ、第三次世界大戦=核戦争の一歩手前までいっている。ここまで対ロ関係を悪化させたのは、NATOによる東方拡大にあり、オバマ=バイデン副大統領の時代に、ネオコンのヌーランドらが暗躍して、ウクライナ・ヤヌコビッチ政権をマイダン・クーデターで転覆したことにある。

4 軍産複合体・CIA・FBI官僚組織の一掃
トランプ氏は軍産複合体・CIA・FBI官僚組織を大統領になれば瞬時に一掃すると公言している。第一期トランプ政権の足を引っ張ったのは、こうした軍産複合体・ネオコンなどの組織である。トランプ氏はこれをディープ・スティトと表現している。共和党内の基盤の弱かったトランプ氏はこうした組織に妥協せざるを得なかった。金正恩氏と対話したものの、朝鮮戦争の終結もつぶされた。ハリス支持に寝返ったマイク・ペンス前副大統領や、根っからのネオコン:リズ・チェイニー氏、父親のディック・チェイニー元副大統領、ジョージ・ブッシュ(子)元大統領など軍産複合体を支える人脈は共和党内多々いる。トランプ氏は9日、新政権ではニッキー・ヘイリー元国連大使とマイク・ポンペオ元国務長官を起用しないと明らかにしたが(読売:2024.11.10)、どこまでこうした軍産複合体人脈を一掃できるかに、トランプ政権の成果がかかっている。

5 朝鮮戦争の終結と極東の冷戦構造の解体
11月8日の日経新聞は、「韓国はトランプ氏が安全保障の懸念を無視して、北朝鮮と直接対話に乗り出す事態を警戒する」と書いている。なぜ、今日まで自民党が存在するのか。「逆コース」といわれるが、1949年の中華人民共和国の成立と国民党・蒋介石の台湾逃亡、1950年の朝鮮戦争の勃発によって、岸首相他戦犯・旧支配層の公職追放が解除され、米産軍複合体に身も心も預け「親米保守主義」という名前に変えて今日まで政権の座に居座り続けているのが実態である。もし、「朝鮮戦争終戦」になるならば彼らの居場所はない。そのため、「朝鮮戦争の終戦」に反対すること・極東における緊張を煽ることこそ彼らの目的であり立場を守ることなのである。極東の緊張緩和をさせたくないというのが今日までの日本政府の一貫した姿勢である。韓国は、この間、北朝鮮兵のロシア派遣・ウクライナ戦争への投入という話を何の根拠も示さずに垂れ流し、日本のマスコミもそれに輪をかけるように報道している。トランプ政権が誕生することへの焦りと、米ネオコンらの軍産複合体の圧力である。再登板するトランプ氏が軍産複合体の圧力に屈せず「朝鮮戦争終戦」となるならば、在韓米軍は撤退し、在日米軍の必要性もなくなり、国体としての対米従属も崩壊し、存在基盤を失った寄生政党としての自民党は完全に解体へと向かう。

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【投稿】米大統領選:バイデン/ハリス政権の敗北

<<「よりましな悪」の選択>>
11/5の米国大統領選挙は、「よりましな悪」の選択で、共和党のトランプ前大統領に勝利をもたらした。民主党候補のカマラ・ハリス副大統領がまだ敗北を認めていない段階で、7激戦州すべてでの勝利を確保し、トランプ氏は、「これは素晴らしい政治的勝利であり、アメリカを再び偉大な国にすることができるだろう」、「今こそこの4年間の分断を忘れて団結する時だ」と勝利演説を行った。
女性差別と人種差別、移民差別で分断を煽りに煽ってきた、その意味ではファシストと紙一重の本人が、「分断を忘れて」と言う皮肉

である。
同時に行われた435 の下院選挙、34 の上院選挙でも、トランプ・共和党の優勢が確実視されている。

ハリス候補は接戦でもつれ込むどころか、予想外の大差で引き離され、民主党・バイデン/ハリス政権の敗北が浮き彫りになったのである。
なぜ、こうした事態になったのか。

世論調査によると、投票の際の第一の問題は、経済であり、それはインフレ、不安定雇用の蔓延、レイオフの拡大である。バイデン政権の経済好調という宣伝は、その嘘が見抜かれてしまっており、過去 4 年間のインフレ率の 25~35% 上昇、過去 1 年間の民間部門の賃金と給与の雇用水準の低下、実質週給の 0.4% の低下、終わりのない慢性的な戦争、住宅価格の高騰、金利の上昇が、バイデン/ハリス政権の敗北をもたらした根本原因だと言えよう。

しかし、それ以上に問題なのは、ハリス氏が、バイデン氏に代わって登場し、刷新感もあり、女性候補として、妊娠中絶など女性の人権確立への期待も大いに高まり、支持率も上昇していたにもかかわらず、敗北したことである。ハリス氏は自ら進んで、バイデン氏との違いは何もないと明言し、バイデン大統領の単なる延長にしか過ぎない立ち位置を告白し、自滅してしまったのである。

ハリス氏は、バイデン氏の緊張激化・戦争政策の継続を明言し、より悪いことに元共和党の戦争犯罪者のディック・チェイニーとリズ・チェイニーと一緒に選挙運動をする、つまりは戦争政策の継続に意義を見出し、パレスチナの民間人の犠牲者を最小限に抑えたいと語りながら、「犠牲者を最大化する」政策を支持し続け、さらにはイランとの戦争拡大への道につながる行動を選んだのである。そして、ロシア・ウクライナ戦争について、泥沼の戦争に膨大な援助を行いながら、即時の和平交渉を提案することさえできない、むしろ核戦争の危機に限りなく近づく路線の続行に組みしたのである。
さらに、労働組合や進歩的な市民団体と連携を強化・拡大する代わりに、大企業・大資本の支援に期待し、媚びへつらう政策に同調し、トランプ氏を上回る選挙運動資金確保に精力を傾けたのであった。

<<「鼻をつまんで投票」>>
対してトランプ氏は、「外国での戦争はもうしない」と明言し、「カマラ氏があと4年間大統領を務めれば、中東は次の40年間炎上し、あなた方の子供たちは戦争に行くことになるだろう」と、ハリス氏批判の論点を突き付け、ハリス氏は「他国の戦争」を支援し資金援助し続けたいと考えているため、投票すべきタイプではないと批判し、これにハリス氏は具体的で有効な反論を何一つ行えなかった、行おうとしなかったのである。
トランプ氏の「外国での戦争はもうしない」との発言は、眉唾ものであることは間違いないであろうが、選挙戦においては、一つの重要な判断材料ではある。

 重要な激戦州の一つで、住民の54%強が中東または北アフリカ系であるミシガン州のディアボーン市のアブドラ・ハムード市長(Dearborn Mayor Abdullah Hammoud)は、11/4、米デモクラシー・ナウの番組で、トランプ氏との会談を拒否し、ハリス氏を支持しない理由を次のように語っている。
「私はトランプ大統領に騙されるような人間ではありません。ドナルド・トランプが問題に対してどのような立場を取っているかは、私たちは非常によく理解しています。彼はイスラム教徒入国禁止令を導入した大統領であり、ゴラン高原を併合した人物であり、議会予算からパレスチナの人道的活動と問題への資金提供をすべて排除した人物です。サウジアラビアに武器を提供し、イエメンで3万人以上の罪のない民間人を殺害した人物です。ですから、私はドナルド・トランプ大統領に騙されるためにここにいるわけではありません。ですから、私は原則としてドナルド・トランプとの会談を拒否しました。」
ハリス氏については、「ここ1年以上、私たちは停戦と適切な手段による停戦の実現を求めてきました。これまでの話し合いや停戦の実現方法に関する歴史的知識を踏まえると、大統領が電話を取り、戦争犯罪人ベンヤミン・ネタニヤフとその内閣に停戦の実現を要求する意志がなければなりません。また、武器禁輸措置を講じる意志もなければなりません。」「ハリス副大統領が打ち出した政策から私たちが見ていないのは、彼女がこれを達成するつもりがあるかどうか、あるいはどのようにそれを実行するのかということです。」「ガザ全域で行われ、今やレバノンにまで及んでいるこの大量虐殺を可能にし、資金提供することから目をそらすことを望まないのであれば、私たちが前に出てどの候補者を支持することも望まないでしょう。」と明確に答えている。

また、やはり激戦州のひとつであるペンシルベニア州の、No Ceasefire No Vote PA の主催者、リーム・アブエルハジ氏は、「私はパレスチナ系アメリカ人です。生まれてからずっとフィラデルフィアに住んでいます。18 歳になってからペンシルバニア州の選挙では毎回民主党に投票してきましたが、ガザでの大量虐殺を続けるイスラエルを継続的に支持している民主党候補に投票できないという立場に初めて陥っています。私たちは、ハリス副大統領と民主党、そしてバイデン・ハリス政権が有権者の間で極めて不人気な政策を継続的に支持していることを懸念する有権者の運動を代表しています。」とインタビュー(インターセプト 11/1 苦悩する未決定者The Anguished Undecided)で述べている。
アリゾナ州フェニックスのイスラムコミュニティセンター代表、ウサマ・シャミ氏は、同上のインタビューで、それでもハリス氏に投票するとして、「これは非常に困難でした。私は鼻をつまんでハリスに投票するつもりです。結局のところ、第三党の候補者に投票すると、ハリスは負けてトランプが勝つことになるとわかっているからです。それは起こってほしくないことです。」と述べている。

トランプ氏への投票と、その勝利も、おなじく、「鼻をつまんでの投票」であったと言えよう。こうした事態に追い込んだのは、まさにバイデン/ハリス政権であり、敗北をもたらしたものであろう。「よりましな悪」の選択しか提示しえないアメリカ政治の危機の表現でもある。
(生駒 敬)

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【投稿】総選挙結果について(福井の事例を含め)

【投稿】総選挙結果について(福井の事例を含め)

                            福井 杉本達也

1 歴史的総選挙だったが、投票率は低く

日刊ゲンダイは「想像を絶する自民党の大惨敗だ。自公の与党で計215議席。公示前から64議席減らし、過半数の233を18議席割り込んだ。裏金事件の真相究明をウヤムヤにして、選挙で幕引きにしてしまえ、という姑息に、全国の有権者が怒りの鉄槌を下した形だ。石破首相の変節という裏切り、政治とカネへの反省ナシ、裏金非公認候補への2000万円支給……。日を追うごとに墓穴を深めた腐敗堕落政党の歴史的末路である」と書いた((日刊ゲンダイ:2024.10.29)。

しかし、投票率は小選挙区で53.85%、比例代表は53.84%で、前回衆院選をさらに下回り、戦後3番目に低い水準にまで落ち込んだ。元朝日新聞記者の佐藤章氏は「注目されていたのになぜ投票率が低かったのか? 自民党の集票システムがぶっ壊れたからである。インボイス導入で地方の中小土建業者が塗炭の苦しみを味わい、国内農家を無視したアメリカ農産物の輸入増加によって農家・JAが打撃を受けた。自民党への投票者はもういない!」とXに投稿した(2024.10.29)。また、明治大学の井田正道教授は「自民支持層が自民に嫌気を差して寝る行動に出た。野党にも入れたくないので『政治からの退出』を選択したと言えます」(井田正道:日刊ゲンダイ:2024.10.29)と分析する。立憲民主党は小選挙区で自民に競り勝ったが、比例代表の得票数をみると、立憲支持が広がったわけではない。これは、野田代表が「政権交代」を掲げながら、代表選から2週間あったにもかかわらず、各政党間との具体的提携協議をしなかったことにある。目標が示されなければ国民は動かない。

2 政党としての大義を失った公明党

「下駄の雪」と揶揄される公明党は、9月末に就任したばかりの石井啓一代表(埼玉14区)が落選、維新とすみ分けてきた大阪では、佐藤茂樹副代表(大阪3区)を含む4人全員が小選挙区で議席を失い、佐藤副代表は落選した。選挙区事情を優先して、西村康稔元経産相(兵庫9区)や三ツ林裕巳前議員(埼玉13区)ら35人を推薦した。選挙区が隣接する石井らとの票バーターが目的であり、自民党を上回る腐りきりであった。佐藤章氏は「公明党はすでに政党としての大義を失っている。憲法違反の集団的自衛権を導入しアメリカから高額兵器を買い続けた安倍政権にあれだけ協力し、唯一の存在理由だった『平和の党』を投げ捨てた。創価学会婦人部はやる気を失い戦闘能力激減。無能力・石井啓一の落選は自明の理」と書いた(佐藤章:上記)。

3 他党・他国批判しかない共産党

田村共産党委員長は「裏金を最初に報じたのは赤旗だ」と訴えた。また、選挙中、自民党本部が、裏金事件で非公認になった候補者側に活動費2000万円を支給していた問題をスッパ抜いたのも「赤旗」だった。しかし、こうした行動は共産党の票には結びつかなかった。日本共産党は冷戦時代末期から中国やソ連は社会主義ではないと主張。中国やキューバなどの現存する社会主義国が共産主義社会を目指す方向性とは全く異なる。他国の悪口、中ロを遅れた国と解釈し、西側を高度に発達した資本主義先進国と見立てる。長年にわたり「共産主義」を掲げながら、日本においてどのような社会主義制度を描くのか明確ではない。我々の生活を改善するのかどうか。宗文洲氏は「日本社会における共産主義的所有制度、法治体系及び産業政策について全く研究も言及もせず、単なる自民反対、民主反対、中国反対、ロシア反対…労働せず反対でご飯を食べている」だけだと批判している(X:2024.10.28)。これでは、党員の高齢化とともに衰退するだけである。

4 福井2区では立憲民主党・辻英之氏が当選、1区は同・波多野翼氏が比例復活当選

福井2区は敦賀市(もんじゅ・敦賀原発)・おおい町(大飯原発)・高浜町(高浜原発)を抱える原発銀座である。この原発銀座に長年君臨してきたのが、自民党の高木毅氏である。毅氏の父親の故高木孝一敦賀市長は石川県志賀町の講演会で、「(1981年4月の敦賀発電所放射性廃液漏出事故について)マスコミがなぜ騒ぐのかまったくわからない」「電源三法交付金や原発企業からの協力金でタナボタ式の街づくりができるから(原発を)お勧めしたい」「(放射能汚染で)50年後、100年後に生まれる子どもがみんな片輪(原文ママ)になるかわからないが、今の段階では(原発を)やったほうがよいと思う」等と述べた」(Wikipedia)。こうした関電や日本原電などの原発企業をバックに、高木氏は2021年9月に国対委員長にまで上り詰めたが、裏金事件が発覚し、総額が1019万円あったということで、国対委員長を辞任・党員資格停止となり、今回は自民党非公認で出馬した。

安倍派5人衆の1人ということで、何としても対抗馬を出さなければと模索したが、候補者がなかなか決まらず、立憲民主党県連が辻英之氏(青森大教授・54歳)擁立を決めたのは7月30日である。選挙の2カ月半前であり、ぎりぎりのタイミングであった。福井2区では英之氏の父親である故辻一彦氏が合区前の旧福井3区で旧民主党から当選しており、兄も挑戦していた。知名度不足・準備不足の中ではあったが、選挙事務所に関電副社長が陣取る高木毅氏に2万票以上の大差をつけて当選した。

福井1区はさらに混迷した。それまで、予定候補としていた女性が9月末に党運営を不満として突然離党してしまった。総選挙まで2週間を切る中、10月7日に越前市職員の波多野翼氏(39歳)を擁立するというドタバタ劇であった。候補者の地元は150軒ほどの集落であるが、地元出身でもなく、勤務地が30キロも離れた越前市ということもあり、本人を知るものは誰もいなかった。それでも、自民党裏金への批判とSNSを駆使した情報拡散・自治労や連合の応援もあり、裏金候補・元防衛大臣の稲田朋美氏に1万6千票差まで肉薄した。福井は比例は北陸信越ブロックであり、新潟選挙区では立憲民主党が独占するなどしたため、波多野翼氏は比例で復活当選した。何としても自民党の腐敗政権を倒さなければならないという強い風が、ぎりぎりのタイミングでの候補者擁立と2名の当選に繋がったといえる。

5 今後の展開

自公は政権維持のため国民民主党の取り込みに躍起である。立憲民主党も具体的な構想を示さねばならない。経済学者の植草一秀氏は、「野党陣営が『消費税率の5%への引き下げ』で足並みを揃えれば政権交代が実現する。」と提案する。野田佳彦氏は2009年総選挙で消費税を引き上げないとの公約したにもかかわらず、2012年に消費税率を10%に引き上げる法律制定を強行し、小沢一郎氏らが離党し、民主党政権を大敗北に導いた「戦犯」である。今回、小沢氏が代表選で野田氏を支持したこともあり、野党結集ができるかどうか。いずれにしても、インフレで実質賃金は連続して下がっており、エンゲル係数は上昇し続けており、生活を守るには、トリガー条項程度の小手先ではどうにもならない。

また、国際的には米大統領選が11月11日に迫っており、共和党・トランプ氏の大統領返り咲きが濃厚となっている。トランプ氏が返り咲けば北朝鮮との関係も大きく変わる可能性がある。韓国からの米軍撤退もあり得る。極東の情勢が大きく変われば、これまで自民党を支えてきた「朝鮮戦争」という中ロなど大陸と無意味な緊張状態を作りだし政権を維持してきた重しもなくなる。「米民主党日本支部」としての自民党はいよいよ再編せざるを得なくなる。いずれにしても歴史的末路は迫っている。

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【投稿】衆院選:自公政権の大敗と流動化

<<「自公過半数割れ」の実態>>
10/27 投開票の衆院選の結果は、投票率53.85%で戦後3番目に低く 低投票率で有利であったはずが、自民単独過半数どころか、自公過半数さえも達成できず、自公政権は大敗した。
主要政党の得票結果をそれぞれの増減でまとめると、以下の通りである。

◆衆院選比例代表の政党得票数の増減
【得票増】
前回 → 今回
立民  1149万票 → 1156万票(7万票増)
得票率   19.9% → 21.1%
国民  259万票 → 617万票(358万票増)
得票率    4.5% → 11.3%
れいわ 221万票 → 380万票(159万票増)
得票率   0.9% → 3.3%

【得票減】
自民     1991万票 → 1458万票(533万票減)
得票率  34.6% → 34.6%
公明   711万票 → 596万票(115万票減)
得票率  12.3% → 10.9%
維新    805万票 → 510万票(295万票減)
得票率 14.0% → 9.3%
共産 416万票 → 336万票(80万票減)
得票率   7.2% → 6.1%
社民    101万票 → 93万票(8万票減)
得票率   1.7% → 1.7%

◆衆院選小選挙区の政党得票数の増減
自民  2781万票 → 2085万票(696万票減)
得票率   48.4% → 38.4%
立民  1721万票 → 1574万票(147万票減)
得票率   29.9% → 29.0%
国民   124万票 → 234万票(110万票増)
得票率     2.1% → 4.3%
維新  480万票 → 605万票(125万票増)
得票率    8.3% → 11.1%

議席を256から191へ大幅減の自民は、比例区で1991万票から1458万票で533万票の減。小選挙区ではさらに696万票の大幅減である。
議席を32から24へ減の公明も、比例区で711万票から596万票で115万票減。公明は、2005年の衆院選では、比例で898万票の最高記録を出していたが、1996年以降の現行制度で過去最少記録となった。党首交代したばかりの石井代表は落選し、辞任する事態である。

小選挙区を含め議席を98から148へ大幅に増やした立憲民主党は、比例の得票数は前回の1149万票から1156万票で7万票の微増であった。小選挙区では、147万票も減らしている。

議席が7から28と4倍増となった国民民主党は、比例で259万票から617万票で358万票の大幅増。小選挙区でも110万票増で、得票率も倍増させている。

議席を43から38へ減らした維新は、805万票から510万票で295万票の大幅減である。ただし小選挙区では、大阪では全選挙区を制覇、125万票の増である。維新の得票率は、比例区では、得票率 14.0% → 9.3%への減少であるが、小選挙区では、得票率 8.3% → 11.1%への増である。

れいわ新選組は、前回の221万票から380万票で159万票増え、議席も3から9に3倍増を獲得している。
対して、共産党は、比例区で416万票から336万票で80万票も減らし、得票数380万票のれいわを下回る結果となった。裏金問題暴露で共産党に追い風が吹いていたにもかかわらず、議席もれいわを下回り、小選挙区を含め10から8への減となった。次々と明らかになった党の非民主的体質への固執、裏金だけの共闘はあり得ないと立憲との共闘を拒否して、野党で唯一議席を後退させた共産党の責任は大である。即刻、指導部は辞任し、党の抜本的改革に着手するべきであろう。

<<石破政権、いつ倒れてもおかしくない>>
石破首相は、勝敗ラインに「自公過半数」を掲げていたにもかかわらず、大敗してなお、辞任どころか、「連立拡大なのか、閣外協力なのか。いろんなやり方がある」と述べ、政権居座りを決め込み、政権維持のための野党取り込みに躍起である。
対する野党勢力は、数の上では過半数を獲得したものの、野党各党はバラバラで、過半数の力で野党連合政権を形成する意志や機運は全く存在しない状況である。
むしろ、国民民主と維新は、“第二自民党”とも言われるとおり、両党とも、いわゆる「部分連合」(パーシャル連合)に色目を使い、それぞれに個別に機会を狙っている、というのが現実と言えよう。

したがって、当面は、石破政権は「少数与党政権」として発足しなおし、局面局面で個別協議、個別取引で事態を取り繕っていく公算が大であろう。

しかし問題は、そうした事態はむしろ政局の危機的状況を次から次へと積み上げ、石破政権はいつ倒れてもおかしくない、何がきっかけになっても危機的局面を迎えてしまう事態を作り出していく、追い込まれていくことが確実であろう。何よりも、避けがたいのは、来年夏の参院選をこのような状態で迎えた場合、自公勢力は再び大敗してしまうという現実に直面することである。

石破首相は、10/28の記者会見で、「結果を真摯に受け止め、心底から反省し、生まれ変わる」と表明しながら、「選挙期間中、中国、北朝鮮、ロシアの軍事活動が拡大、活発化した。日本の安全保障環境がいかに厳しいか訴えてきた。防衛力の抜本的強化に引き続き取り組む」、さらに「憲法改正の発議を目指す」ことまで言及し、「生まれ変わる」どころか、まさに「軍事オタク」路線を前面に打ち出した。
こうした路線に対して、生活諸要求とともに、反戦・反軍拡・軍事費削減、緊張緩和と平和外交の広範な統一戦線を改めて再構築することが求められている。
(生駒 敬)

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【投稿】総選挙結果について

【投稿】総選挙結果について

 10月27日に行われた衆議院選挙は、石破新総裁の下、自民党が歴史的大敗を喫し、立憲民主党・国民民主党が躍進する結果となった。過去であれば「保革伯仲」とでもいう状況が出現したわけだが、どうもそういう雰囲気ではない。
 自民党大敗の原因は、パーティー収入の派閥からのキックバックを収支報告書に記載せず「裏金」として政治資金化した疑惑に対する国民の強い反発であるのは明かであろう。
 自民党の低迷は、公明党にも大きな影響を与え、自公与党の過半数割れを結果し、立憲民主党を中心とする「野党連立政権」の可能性も浮上させている。
 11月11日とも言われる特別国会に向け、自民党の一部野党への連立取り込みの動きと、立憲民主党による他の野党への働きかけが焦点となっている。
 しかし、今回の選挙結果、特に比例区選挙の得票状況を詳しく見ていくと、与党を過半数割れに追い込んだとは言え、野党側にも多くの問題が指摘できる。以下に選挙結果、特に比例投票結果に見られる特徴について考えてみたい。
 (筆者による選挙結果分析は、比例区分析表を基本としている。
  2024年10月総選挙の分析表 2021年10月総選挙の分析表を参照されたい) 
 
<裏金疑惑議員の多くが落選した小選挙区選挙>
 自公与党の過半数割れを生み出した大きな要因は、小選挙区にある。公認を得られなかったり、比例重複立候補も認められなかった「自民党候補」は44人。その内、27人が小選挙区で落選。ほとんどで立憲民主党など野党候補が議席を確保した。
 小選挙区の前回当選と今回の当選者数の比較は以下のとおりである。
 自民党 189 → 132 (57議席減)
 公明党   9 → 4    (5議席減)
 立憲民主党 57 →104 (47議席増)
 維新の会  16 →23   (7議席増)
 国民民主党  6 →11   (5議席増)

 小選挙区では、与党が62議席減少したのに対して、野党3党は59議席を増やした。
自公政権はここで大敗北を喫したのであり、裏金問題に対して国民は明確にNOを突きつけた。

 この結果は、無党派層が自民党から離れたことが最大の要因であり、自民党支持層の一部が投票に行かなかったなども考えられる。一方、自民党支持層に「自民党にお灸を据えたい」という選択もあっただろう。比例区でも、同様の傾向が見られると考えられる。
 
<比例区では、違った特徴が現れている>
 一方、比例区の各党の得票状況では、少し違った傾向が見られるのである。
 比例区の前回当選と今回の当選者数の比較は以下のとおりである。
 自民党  72 → 59 (13議席減)
 公明党  23 → 20  (3議席減)
 立憲民主党 39 →44  (5議席増)
 維新の会  25 →15  (10議席減)
 国民民主党  5 →17  (12議席増)
 共産党    9 →7   (2議席減)
 れいわ  3 →9 6議席増
 参政党  0 →3 3議席増
 保守党 2議席増
 
 比例区では、自公与党が16議席減に対して野党は26議席を増やしている。ただ、野党である維新の会は、10議席減となっている。議席を増やしたのは、立憲民主党、国民民主党、れいわ、参政、保守の各党である。
 比例区の得票数も見てみよう。
 自民党  1985万票 → 1358万票 (627万票減)
 公明党  709万票  → 596万票 (113万票減)
 立憲民主党 1146万票 →1156万票 (10万票増)
 維新の会  793万票  →510万票  (282万票減)
 国民民主党 257万票  →617万票  (359万票増)
 共産党   415万票  →336万票  (79万票減)
 れいわ   221万票  →335万票  (114万票増)
 参政党 → 187万票
 保守党 → 114万票 
 
 自民党、公明党は、合計740万票を失っている。立憲民主党、国民民主党、れいわ、参政、保守は、合計597万票を増やした。維新の会は、282万票を失っている。
 全ての増減数の合計が、前回票と合わないのは、投票率の減少が原因と考えられる。
 自民党は、明らかに「裏金疑惑」の影響を受けて前回より約630万票を失い、比例区議席を13減らし、公明党も113万票を失った。公明党の比例区票は近年減少の一途を辿っており歯止めが掛からない状況が続いている。学会員の高齢化や減少が原因であろう。
 今回の比例区の最大の特徴は、360万票余りを増やした国民民主党の躍進である。マスコミは、SNSを駆使した選挙戦術や、「若者の所得を増やす」というスローガンで、若者の票を獲得できたと解説している。しかし、筆者はむしろ自民党から逃げた票の受け皿の面も否定できないと推察する。さらに、比例区の政党略称問題の影響は、この数字から読み取れない。実は、投票所に掲げられた政党略称名は、立憲民主党も国民民主党も同じ「民主党」であった。各政党から届けられた略称がそのまま記載される。民主党とだけ書かれた票は、2党の得票数に応じて配分される。この影響が国民民主党の獲得票にどれだけ寄与したかは、発表資料がないため不明である、という前提でこの文書はお読みいただきたい。
 そして、旧来の野党に対して、新興勢力でもある、れいわ、参政、保守は、合計で417万票を増やした。自公・立憲・国民という「旧勢力」に飽き足らない層が、新興政党を選択したと言える。
 共産党は、野党共闘路線を方針変更し、小選挙区213選挙区に候補者を擁立した。比例票の積み上げを期待した作戦であったが、効果はなく、比例票79万票を失う結果となった。一部の県では、野党共闘が継続され、全小選挙区で自民党に勝利した。「野党共闘」路線が修正を余儀なくされているとは言え、小選挙区での自公与党との対決の構図を鮮明にして勝利した事実は貴重な教訓であろう。野党各党の事情があるとはいえ、大半の選挙区での野党乱立という判断を行った野党各党には猛省を促したい。この有様では、政権交代などありえないし、国民の信頼も得られないだろう。
 次は、急速に勢いを失った維新の会である。大阪の特殊事情は別として、今回の選挙で野党第1党を目指していたはずの政党だが、比例区票で約300万票を失った。「国民政党」として再起できるのか、予想される大阪万博の失敗と更なる予算投入、兵庫県知事問題、度重なる各級議員の不祥事など、何一つ好材料はない。大阪での「成功体験」は他府県では通用しないという事が理解できないようでは、この政党には「第2自民党」という以外には選択肢は残っていないと思われる。
 
<敵失のみの政権交代は危うい>
 最後に立憲民主党である。比例票では、全比例区で前回総選挙とほとんど獲得票数は変わらない。1150万票前後が、この党のコアな支持層ということになる。比例票では、自民党→立憲民主党への票の移動は少ないという事実。自民党から逃げた票は、国民民主党と参政、保守党、そして投票回避に流れたと見ていいと思う。
 比例区では、政権交代を予測されるような票の流れはなかったということ。自公与党で比例区票は750万票余りが減少し、立憲民主党は前回同様の得票でも獲得議席が増えたに過ぎない。小選挙区では、分かりやすい「裏金候補」から立憲民主党へという流れはあったが、比例区では起きなかったということは、「躍進」に浮かれる立憲民主党関係者には是非とも確認しておいて欲しい。「敵失」のみで政権交代を期待してはいけないのである。
 自民党支持層にとっては今回の選挙で十分に「お灸を据えた」ことになり、次回の総選挙では、何も変わらなければ、自民党に回帰することは確実と見なければならない。ただ、自民党も旧安倍派が勢力を失い、極右勢力が「保守党」となって党外に出たこと。アベノミクスの失敗が明かとなり、「成長戦略」なる幻想が薄れていく中で、新たな保守政策の確立と国民の支持が前提になる。
 立憲民主党にあっては、政権交代などの浮かれ話に乗ることなく、最大野党の役割をしっかり果たし、国民の支持を受ける政策の確立と地方組織の強化、政策宣伝の改善などを通じて、足元を固めることが必要であろう。
 筆者は、敢えて言えば立憲民主党の中道左派支持者とも言えるので、そういう色眼鏡をかけた選挙分析になっていると思う。ご意見をコメント参加でいただければ幸いである。
(佐野秀夫) 

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【書評】『大阪市立大学同級生が見た連合赤軍 森恒夫の実像』

【書評】『大阪市立大学同級生が見た連合赤軍 森恒夫の実像』伊福達彦編著

                            福井 杉本達也

コラムあり、新聞あり、党派機関紙・ガリ版あり、外伝あり、自伝あり、年表ありで、どこからどう読むべきか、なかなか難しい一冊である。「コラム8」において関連資料の豊富な大阪府立中央図書館を紹介しているが、コピーは1万ページを超え、コピー機が壊れ、買い替えたと書いており、散逸した資料集めの苦労が推察される。しかし、本書の構成が最初にグラフティから始まるのはいかがなものか。60年前の当事者でなければほとんど理解不可能である。むろん、全てに解説をつけるなどということは野暮でであるが、冒頭にこそ著者の意見が欲しいところである。

学生運動は70年安保闘争やベトナム反戦運動もあり高揚したが、連合赤軍のあさま山荘事件と、その後公安から暴露されることになったリンチ殺人事件は当時の日本社会に強い衝撃を与え、運動が退潮する契機となった。

編著者の伊福達彦は、「まとめ」において「日本の左翼の伝統である批判と自己批判は、下部統制の手段であった。自己批判の成否の判定権は上部に独占されている。基準がないのだ。…同じことが何度も繰り返されることとなる。…連合赤軍連続粛清の事件は、共産主義組織の査問、粛清体質の縮図である。ブントでは指導部の絶対権限への服従が当たり前とされた。赤軍派の無責任体質が、逃亡3カ月の森を指導部に押し上げた。…森恒夫の『査問』『総括』『共産主義化』は継承することはできない」と書き、「査問とは何か」において、「森だけでなく。マルクス・レーニン主義を看板とする党派は自分たちが前衛だと信じていた。前衛がいるなら中衛、後衛もいることになる。聖職者のような知識人がすべてを代行するという理論だ。前衛という心地よい言葉はエリートの心をくすぐる。…倒錯した世界であった」「その組織論からは当然党の指導者は下部を統制でだけでなく査問の権利も有すると理解された。…森の粛清を他人事としてみている同じ目が、自分たちの組織で有事に査問、粛清に転嫁する」と書いている。

「聖職者のような知識人がすべてを代行する」というのは何も「日本の左翼」だけの専売特許ではない。荒谷大輔は、ルソ―の「自由」は、共同体の一般意志に従うことにほかならないとする。共同体が定めるルールに従うのが「自由」だと。「近代社会」に参加する人は、社会契約において共同体の一般意志を自分自身の意志にしなければならない。理想の社会を作るためには共同体の「一般意志」をみなで共有しなければならない。一般意志は唯一のものでなくてはならず「ある人々はこう考えるが別のある人は違う意見をもっている」などと分裂した状態になってしまうと上手く機能しない。結果、「一般意志」は「独裁」を導き、フランス革命においては、ルソーの「平等」思想を真摯に追求したロベス・ピエールは、「かつての盟友を含め反対者を次々にギロチン台に送り続け…妥協を許さない『平等』の追求は、その意志を共有できない人間を『正義』のために殺すことを厭わないものになった」。その後、「マルクスの『プロレタリアート独裁』は、レーニンによる革命の実践の中で共産党の『一党独裁』へと結実…共産党が『労働者階級』を代表し、労働者を『指導』する立場に立つことになった」と書いている(荒谷大輔『贈与経済2.0 GIFT ECONOMY』2024.4.15)。

また、鷲田清一は『所有論』において、イタリアの思想家:ロベルト・エスポジトの『自由と免疫』の論攷を紹介し、近代社会が西洋でたどった過程は、「『自由』を各個人の『安全』や『保護』に結びつけ…個人を他者たちから隔離する過程」であるとし、「個人が彼が属する共同体の安定性と存続を脅かすもの…境界線を揺るがせ侵犯してくるものへの防御」であり、反汚染=「内に異物、つまり不純なものを含まないこと…内部の純粋性」であるが、「そのもっとも危ういところは、それが異他的なものの排除にとどまらず、自己自身をも排撃する」と述べている(鷲田清一:『所有論』:2024.1.30)。「伝統」は神の権威を否定し「神のような超越的な第三項を導入しない」、「人民の人民による統治」、「主権者(たち)の『自己自身との契約』」(鷲田:同上)という西欧近代の「社会契約論」にまで遡る。

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【投稿】戦争挑発拡大と米大統領選--経済危機論(151)

<<イスラエルの「イラン核施設攻撃計画」の漏洩>>
10/18、Telegramチャンネル「Middle East Spectator」で、米国防総省と国家安全保障局(NSA)から漏洩された極秘の米軍諜報文書が暴露された。同時に、米国家地理空間情報局(NGA)が10月16日に出した2つ目の文書も暴露され、NGAのアナリストらがイスラエル軍のイラン攻撃準備を探知できたことにどれほど自信を持っているかが記載されている。Axiosは、今週「イランと関係がある」とされるTelegramアカウントが、イスラエルのイランへの差し迫った攻撃計画の詳細を記した米国の諜報文書2件を漏洩した、と報じている。

 この漏洩文書が明らかにしているのは、イスラエルがイランの核施設を標的にすることを計画しているが、「イランへの攻撃の規模と範囲を明確に予測することはできないし、そのような攻撃はGEOINT(地理空間情報)によるさらなる警告なしに発生する可能性がある」と文書は述べている。さらに、「10月16日にはジェリコII中距離弾道ミサイル(MRBM)のいかなる活動も観測していない」と述べ、「イスラエルが核兵器を使用する意図があるという兆候は観測していない」とも述べている。
そしてこの文書が明らかにしている重大なことは、イスラエルの核兵器配備能力について具体的に言及されており、その「核兵器を使用する意図」に言及し、事実上、イスラエルの核兵器の存在をも確認していることである。
これまで米国政府は、イスラエルが核兵器を保有していることを公に認めることを拒否しており、公式には、イスラエルには核兵器計画や核兵器備蓄は公表されていない。しかし、これは公式の見解であり、イスラエルと米国政府はどちらも存在を認めたり確認したりしないという協定を結んでいるのである。
この文書の漏洩の性質と動機はいまだ不明であるが、米国政府は、内部調査を行っていると主張しているが、下級職員による意図的漏洩であろうとも、報じられている。

 いずれにしても、イスラエルはイランの核施設を標的にすることを計画しており、その結果、イランがイスラエルの核施設に対して報復の反撃を繰り返す可能性があり、核兵器の使用を伴うイスラエル対中東の大規模戦争が勃発する可能性さえ現実化しかねない段階である。核戦争をも招きかねないきわめて危険な段階、大規模な中東戦争に直面していると言えよう。

10/21、イラン外務省は、「核施設を攻撃するとの脅迫は国連決議に反しており、非難されるべきである」との声明を発表している。

<<ハリス、イランこそ米国の「最大の敵」と発言>>
問題は、このイスラエルの対イラン報復攻撃計画に、バイデン/ハリス政権が深く関与していることである。
すでに、10/13、米国は、バイデン大統領の指示により、終末高高度防衛(THAAD)砲台(Terminal High Altitude Area Defense (THAAD) system.)と関連米軍要員をイスラエルに派遣すると、国防総省報道官が発表。ニューヨークタイムズへのフォローアップ声明で、THAADシステムがイスラエルに送られ、約100名の米軍がそれを操作することを確認している。
 このTHAAD砲台は、貨物車両に搭載された6台の発射装置、48発の迎撃ミサイル(発射装置1台につき8発)、およびそれを操作する95人の兵士で構成され、さらに、各砲台には移動式監視レーダーと管制レーダー、戦術射撃管制および通信装置がある。すでに、続いて2回目のTHAADシステム派遣も明らかにされている。このシステム 1 台あたりの費用は、約 8億ドルから10億ドルと言われている。そして、このシステムが依存するレーダー AN/ TPY -2 は、実際にはすでに 2008 年からイスラエル南部に配備されており、米軍によってすでに運用されてきたのである。今回、THAADシステム総体として、直接、米軍が運用する事態へと突入しているのである。バイデン大統領はイスラエルのネタニヤフ首相に対し、対応は「釣り合いの取れた」ものでなければならないと述べ、米国はイスラエルに対し、イランの油田や核施設を標的にすべきではないと伝えた、と言うが、完全な二枚舌である。
国防総省は、議会の承認なしに、米軍が直接激化する海外の戦争地帯に外国防衛のために入っているという明白な事実をこれまでは避けようとしてきたのであるが、「米軍は今や、この戦争に直接的に深く関わっている。ネタニヤフは、米国にイスラエルに代わってイランと戦わせるという究極の願いに、これまでで最も近づいている」段階に到達しているのである。
イラン側がすでに、敵対行為がエスカレートすれば、米軍要員が多数派遣されるイスラエルにあるこの対空砲台が攻撃を受けると警告していることからすると、これは明らかに米軍が紛争でより直接的な役割を果たすことを示している。

 そしてこうした事態に照応するかのように、ハリス副大統領は、トランプ候補との激戦の最中にある米大統領選の候補者として、イランこそ米国の「最大の敵」だと発言している。10/7のCBSN EWSの60 Minutes のインタビューで、米国の「最大の敵」はどこだと思うかと聞かれたハリス氏は、「明らかに頭に浮かぶのはイランだ」と答えた。これまで、米国はロシアと中国を米国の最大の敵だと見なしていたはずであるが、この答えである。
ハリス氏はさらに、「イランは米国の血を流している。そして、イスラエルへの今回の攻撃、200発の弾道ミサイルに関して我々が目にしたように、イランが核保有国になる能力を決して獲得しないようにするために我々が何をする必要があるか、それが私の最優先事項の1つだ」とまで述べている。これでは、米国の対イラン戦争である。
バイデン/ハリス政権は、今や11/5の大統領選で、トランプ氏に支持率で劣勢に立たされ、「最優先事項の1つ」として、危険な戦争拡大への賭けに身をゆだねている可能性が大なのである。

そして、実際にイスラエルがイランを攻撃すれば、即刻、ホルムズ海峡の混乱が経済崩壊の第一波となる可能性が大である。世界の石油輸送に不可欠なこの戦略的な水路が封鎖され、石油価格が急騰し、広範囲にわたる経済混乱を引き起こすことが明らかである。インフレ、サプライチェーンの混乱、軍事紛争のさらなる拡大など、世界市場は動揺し、一挙に世界的な政治的経済的危機が激化するであろう。
こうした危険な事態をストップさせる広範な闘い、包囲こそが要請されている。
(生駒 敬)

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【投稿】被団協・ノーベル平和賞受賞 vs. 石破首相「核共有」

<<「論外。怒り心頭だ」>>
10/12、2024年のノーベル平和賞に選ばれた日本原水爆被害者団体協議会は、東京都内で記者会見を開き、田中熙巳代表委員(92)は、米国の核兵器を共同運用する「核共有」に石破茂首相が言及していることについて、「論外。怒り心頭だ。核の恐ろしさを知っているなら考えなさいと言いたい」と批判。首相からの面会の申し出に応じたという田中さんは「会って徹底的に議論してあなたは間違っていると説得したい」と語気を強めた、と、報じられている。

和田征子事務局次長(80)も「日本政府は『唯一の戦争被爆国』といつも言うが、核共有をして米国の指示で使うことになれば、被害国であったのが加害国になるかもしれない。私たちは許すことはできない」と訴えている。

また和田さんは、「これまで核兵器が使われてこなかった。核の抑止力ではなく、私たちの行動こそが抑止力だ」と強調している。

石破茂首相は、首相就任直前に米シンクタンク・ハドソン研究所への要請に応じた寄稿文で、米国との「核共有」や「核持ち込み」を主張 、石破氏は持論の「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」創設に合わせて、米国の核兵器の共有やアジア地域への持ち込みを検討する必要があるとの見解を披露している(9/27)。
その中で日本の「非核三原則」そのものを踏みにじる、米国の核兵器の持ち込みを検討すべきだと主張し、「アジア版NATOの創設」で、中国とロシアと北朝鮮の「核連合」を抑止する必要があると主張、「アジア版NATOで米国の核シェアや持ち込みも具体的に検討しなければならない」とまで主張しているのである。

<<平和賞 vs. 核軍事演習>>
このノーベル平和賞受賞発表と同じ日の10/11、石破氏が持ち上げるNATOは、10/14から開始予定の核兵器軍事演習を発表している。
その2週間の軍事演習「ステッドファスト・ヌーン」は、8つの空軍基地から2,000人の兵士と、西ヨーロッパ上空を飛行する「核兵器搭載可能なジェット機、爆撃機、戦闘機護衛、給油機、偵察および電子戦能力のある航空機」60機以上が参加すると発表されている。
NATO事務総長マーク・ルッテ氏は、「核抑止力は同盟国の安全保障の要である」述べ、「ステッドファスト・ヌーンは同盟国の核抑止力の重要なテストであり、NATOがすべての同盟国を保護し防衛するという明確なメッセージを敵国に送ることになる」と声明で述べている。この軍事演習に反対する軍縮推進派のベアトリス・フィン氏は、平和賞受賞の日に実に「タイミングが悪い」ニュースであり、「この演習は「都市を破壊し、生存者を毒殺する」兵器で「数十万人の民間人を抹殺する」ための訓練であると強く抗議している。

平和賞受賞が発表された最初の報道で、広島県被団協の箕牧智之理事長は「本当に夢の夢です」と喜ぶと同時に、「今、世界は複雑な情勢だ。私たちもさらに磨きをかけてやっていかなければならない。戦後、原爆孤児で育った子どもたちがたくさんいる。ガザで子どもが被害を受けている」と訴え、涙を流しながら「ガザでは、血を流す子どもたちが(親に)抱きかかえられています。80年前の日本のようです」と続けて語り、10/11 の米デモクラシー・ナウでこの場面が放送され、被団協の「代表が、現在のガザを原爆投下後の日本、そしておそらくイランの核施設を爆破するというイスラエルの脅迫と比較したと発言したのは、非常に興味深いことです」と紹介されている。

核戦争の危険性が迫る中、まさに、「軍事オタク」とまで揶揄されてきた石破氏の危険な本質が、今回の被団協・ノーベル平和賞受賞で浮き彫りになったと言えよう。
(生駒 敬)

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【投稿】米/イスラエル:中東全面戦争への共謀--経済危機論(150)

<<「正義の尺度」>>
9/28、バイデン米大統領は、イスラエルがレバノン南部の人口密集地帯の高層ビルを米提供の強力なバンカーバスター爆弾で重爆撃し、6棟のアパートを破壊し、抵抗武装勢力ヒズボラの最高指導者ハッサン・ナスララ師を爆殺したことを、「当然の報い」「正義の裁きだ」だとしてイスラエル擁護し、「正義の尺度」(Israeli airstrike is a measure of justice)として称賛する声明(Statemen from President Joe Biden on the Death of Hassan Nasrallah)を出すに至った。さらに声明は、「米国は

ヒズボラ、ハマス、フーシ派と、その他イランの支援を受けるすべてのテロ団体に対するイスラエルの防衛権を全面的に支持する」ことを明確にした。
大統領選を闘っている、カマラ・ハリス氏も「ハッサン・ナスララ氏は、アメリカ人の血を流したテロリストだった。何十年にもわたり、彼が率いたヒズボラは中東を不安定にし、レバノン、イスラエル、シリア、そして世界中で無数の罪のない人々の殺害につながった。今日、ヒズボラの犠牲者たちは一定の正義を得た」と述べている。
だが、両者とも、人口密集地域でイスラエルの爆撃で殺害された1,000人以上のレバノン人の男性、女性、子どもたち、これら「無数の罪のない人々」については一言も語っていない。もちろん何十万人ものレバノン人が避難を余儀なくされ、街区全体が破壊されたことについても一言も語ってはいない。この住宅密集地を巨大爆弾で破壊することのどこに「正義」があるというのであろうか。完全な無差別爆撃であり、国際法にも違反するジェノサイド攻撃である。
バイデン氏とハリス氏は「休むことなく停戦に取り組んでいる」のではなく、大量殺人と大量虐殺に加担し、今や明確な共犯関係に至っている。

<<戦争で儲ける企業の株価が急騰>>
そして10/1、イランの限定的と言われる報復・反撃行為が実行され、急激に中東全域への戦争拡大が懸念される事態に突入している。
イランはイスラエル南部と中部に約400発以上と推定される弾道ミサイルを発射、イランの革命防衛隊(IRGC)は公式声明で、この攻撃はイスラエルによるハマス政治局長イスマイル・ハニヤ、ヒズボラのハッサン・ナスララ事務局長、IRGC司令官のイランのアバス・ニルフォロシャン准将の殺害に対する報復であると述べている。IRGC

は、イスラエルが攻撃に反応すれば、さらに破壊的な攻撃が続くと警告し、イスラエルが報復したり「さらなる悪意ある行為」を行えば「徹底的な対応」をすることを明確にしている。
イスラエルのメディアは、イスラエルがヒズボラ指導者ハッサン・ナスララを暗殺したことに対する報復攻撃として、500発以上のミサイルがイスラエルに向けて発射されたと報じている。しかしこの報復攻撃から約45分後、イスラエル国防軍はイスラエル全土で防空壕や避難所から出るのは安全であると発表。イランは強硬姿勢を見せつつも、限定的な反撃にとどめている可能性が高いと言えよう。
しかし、イスラエルにとっては、イランとの全面戦争、中東全域への戦争拡大への転機となる可能性が高く、バイデン/ハリス政権がこれに加担・共謀する危険性も増大している。

10/2、WTI原油は、中東の緊張が高まり紛争が広がるとして、直ちに反応、4%上昇している。
特徴的・象徴的なのは、戦争で儲ける企業の株価が急騰していることである。「今日は市場全体が下落している」にもかかわらず、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマン、RTX(旧レイセオン)の株価が急騰している。そして要注意なのは、「少なくとも50人の議員またはその家族が防衛請負業者の株を保有しており、これらの企業は議会が作成した国防総省の歳出法案から毎年数千億ドルを受け取っている」「連邦議員や防衛関連企業による株式保有総額は1090万ドルに達する可能性がある」現実である。彼らは、バイデン/ハリス政権が戦争拡大に突き進むことを期待していることはは言うまでもないであろう。
しかし、戦争拡大は、政治的経済的危機打開を破綻させるものでしかない。緊張緩和と平和への努力こそが要請されており、それ以外に危機打開の道はないのである。
(生駒 敬)

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【投稿】バイデン/ハリスの大量虐殺加担--経済危機論(149)

<<ネタニヤフ「すべての住宅が軍事目標である」>>
9/27、イスラエルのネタニヤフ首相は国連総会の演説で、レバノンのヒズボラは「学校、病院、アパート、レバノン市民の個人宅にロケットを保管している。彼らは自国民を危険にさらしている。彼らはあらゆる台所にミサイルを、あらゆるガレージにロケットを置いている」と強弁し、「事実上、すべての住宅が軍事目標である」ことを確認し、レバノンには民間人居住地などなく、「イスラエルにはそれをすべて破壊する権利がある」と主張、「事実上、すべての住宅が軍事目標である」として、レバノンへの大量無差別爆撃を合理化するに至った。これは、明らかな100%大量虐殺、ジェノサイド犯罪である。
 この演説に抗議して、ネタニヤフの演説中に大量の各国代表が退場し、「バイバイ、ビビ(ネタニヤフ)」の意思を示した。アメリカ・イスラム関係評議会のニハド・アワド事務局長は声明で、「極右であからさまに人種差別主義を掲げるイスラエル政府がガザでの大量虐殺を続け、レバノンの民間人にも国家テロ活動を拡大する中、戦争犯罪者ベンヤミン・ネタニヤフ首相の国連演説中に行われたこの大規模な退席は、国際社会が大量虐殺を拒否していることを示している」と強調している。

イスラエルはレバノンをこの1週間連日、大量爆撃しており、イスラエル国防軍(IDF)はこれを「北の矢作戦」と呼んでいる。レバノンのアビアド保健相は、9/26夕方時点で、このイスラエルの爆撃作戦で1,300人以上が死亡、約7,000人が負傷したと語っている。同保健相によると、イスラエルは通信機器の爆発から始まり、爆撃作戦を続けるなど「民間人に対する無差別攻撃」を続行しており、「これらの無差別攻撃の主な目的は、恐怖の雰囲気を広め、大量脱出を引き起こすことだと思う」と述べている。

 ニューヨークでは、9/26、ネタニヤフ首相の国連総会演説を前に、同首相の車列の予定ルートを妨害したとして、20人以上のパレスチナ人とユダヤ人の活動家と支持者が逮捕されている。抗議活動を共催したユダヤ人平和の声(JVP)は、「我々はネタニヤフ首相のレバノン攻撃とガザでのパレスチナ人虐殺を強く非難する」、「米国政府がイスラエルへの武器供与をやめ、パレスチナ人が当然の自由と尊厳を持って暮らせるようになるまで、我々は反対の声を上げ続ける」ことを明らかにしている。

一方、イスラエルに加担するアメリカに関しては、Axios は同日、「情報筋によるとバイデン氏は内心ネタニヤフ氏に怒っている」と言う記事を配信し、停戦提案の拒否とエスカレーションの激化をめぐって、大統領はイスラエル首相に対して「苛立ち」、「屈辱」、「激怒」といった形容詞を感じている、と報じている。しかしこれも、バイデン/ハリス政権が実際上は、この虐殺行為を承認し、自発的に参加している実態を覆い隠すものであることは言うまでもない。「休戦に向けて精力的に取り組んでいる」と言いながら、大量の武器・弾薬を供給し、こうした流血行為に進んで加担していることは、彼らの「心優しき言葉」やねじまげ、見せかけのホワイトハウスのプレスリリースではなく、実際の行動そのものが立証していることである。本当に戦争を止めたいのであれば、軍事援助や軍艦派遣・軍事支援を直ちに停止すれば、イスラエルは戦争継続が不可能なのである。
カマラ・ハリス大統領候補が、現政権が「休戦に向けて精力的に取り組んでいる」と保証する一方で、イスラエル国防省は米国からさらに87億ドルの軍事援助を新たに確保したと発表しているのである。これが大量虐殺への加担ではなくて、何なのであろうか。すでに有権者からは見透かされているであろう。

<<「バイデンは何度も騙されているだけ」>>
9/26、イスラエル国防省は、ガザでの大量虐殺とレバノンでのイスラエルの劇的なエスカレーションを意味する「進行中の軍事活動」を支援するために、米国から87億ドルの軍事援助を確保したと発表。このパッケージには、すでにイスラエルに送金されている「必須の戦時調達」のための35億ドルと、防空のための52億ドルの助成金が含まれている。その大部分は同国の枯渇した防空兵器の補充に充てられるとイスラエル国防省は9/26の声明で述べている。

そしてこの最新の軍事支援パッケージ発表から1日も経たないうちに、米国のロイド・オースティン国防長官、英国のジョン・ヒーリー国防長官、オーストラリアのリチャード・マーレス国防相は、イスラエルとヒズボラの21日間の停戦を共同で呼びかけている。
「我々は今、全面戦争、新たな本格的な戦争のリスクに直面しており、それはイスラエルとレバノンの双方に壊滅的な打撃を与える可能性がある」とオースティン氏は述べている。
続いて、同じ9/26、米国、欧州連合、サウジアラビア、アラブ首長国連邦などの首脳は、イスラエルとレバノンの国境で即時21日間の停戦を求め、同時に、イスラエルとレバノンは、この取り組みの枠組み内で合意には至っていないことを明らかにした。
フランスのマクロン大統領は「この21日間で首相が和平を約束し、チャンスを与えることができる時間は、まだあると私は信じている。米国は今、イスラエル首相にそうするよう圧力を強めなければならないと信じている」、「イスラエル軍がレバノンで地上作戦を行うことは大きな過ちであり、エスカレーションの大きなリスク」になると指摘している。また、マクロン氏は、ヒズボラが停戦の用意があると表明しているため、全世界がネタニヤフ首相の決断を待っていると付け加えている。

ところが、イスラエルはレバノンへの爆撃作戦の拡大を止める意志などさらさら持ち合わせてはいない。米当局者らは、ネタニヤフ首相は公式にはこの計画を「歓迎する」と述べると理解していた、しかしネタニヤフ首相はニューヨークに到着すると方針を変え、戦闘は続くと述べた、と弁明している。ネタニヤフ首相の事務所は、停戦が進展しているという報道を否定する声明をわざわざ発表し、レバノンへの激しい攻撃を継続し、ガザへの猛攻を続けることを明らかにしている。「停戦に関する報道は誤りだ。これは米仏の提案であり、首相はこれに対して反応すらしていない」と声明は述べている。
ホワイトハウスは、「レバノンの一時停戦に関する発表は、イスラエルと調整して発表された」ものであると述べているが、そもそも、米国はイスラエルへの軍事援助を継続しており、イスラエルは新たな87億ドルまで獲得し、状況が悪化した場合はイスラエルを守ると請け合ってくれており、ネタニヤフ首相には中東戦争拡大を止める動機がないのである。9/26、ネタニヤフ首相はレバノンで停戦はないと断言したことで、こうした停戦案は吹き飛んでしまったのだと言えよう。
こうした事態について、シンクタンクのクインシー研究所のトリタ・パルシ氏は「ネタニヤフがバイデンを騙しているわけではない。バイデンがネタニヤフに何度も騙されているだけだ」と、述べている。今回に限らず、これまで大いに

宣伝されたガザ停戦に関しても一貫したパターンであり、停戦は一度も実現していない。

中東戦争の危険な拡大は、直ちに石油価格の急騰をもたらしている。バイデン/ハリス陣営は、戦争・経済両面での危機解決政策を提示できず、苦戦に陥らざるを得ないであろう。

(生駒 敬)

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【投稿】海自艦の中国領海侵犯と福島第一核汚染水で完全白旗:日中外相会談の内実

【投稿】海自艦の中国領海侵犯と福島第一核汚染水で完全白旗:日中外相会談の内実

                            福井 杉本達也

1 深圳・日本人児童刺殺事件で反中意識を煽るマスコミ

9月24日のニューヨークでの中国・王毅外相との日中外相会談で上川外相は「中国で日本人学校の児童が襲われ死亡した事件について、一刻も早い事実解明や再発防止を求めました。」とTBSは報道している。23日のテレビ朝日の羽鳥モーニングショーでは児童刺殺事件を取り上げ、日本財団の柯隆研究員は盛んに中国の脅威と中国からの日本人の撤退を煽っていた。また、中国の反日教育が今回の事件の背景にあると叫んでいた。同様の報道は各TV局でも行われ、24日も1日中同様の反中国扇動が行われていた。れいわ新選組の長谷川ういこ氏もXにおいて「深圳の事件、襲われ亡くなった男の子は上の子と同い年。胸が締め付けられます。心からご冥福をお祈りします。国家が極端なナショナリズムと他国への敵対感情を煽ることは、悲惨なヘイトクライムを引き起こします。中国政府には、相次いでいるヘイトクライムへの対応を強く求めるべきです。」と述べている(長谷川ういこX: 2024.9.20)。マスコミ・野党を含めての自民党総裁選での電波ジャック以上の反中扇動の過熱ぶりである。

しかし、中国は反日教育などをしているわけではない。日本軍がいかに中国を侵略したかという史実を教えているだけである。事実無根のことを教えているなら問題であるが、侵略した事実を変えることはできない。それをやめろというのは他国への内政干渉も甚だしい。

では、いまなぜ大々的な反中扇動が行われているのかが問われる。

2 7月の海自艦の中国領海侵犯で艦長を更迭

9月23日の共同通信(福井新聞)の報道は「中国領海航行は誤侵入、海自艦艦長更迭、位置把握せず」という恐るべき見出しが飾った。北京発共同の記事は「海上自衛隊の護衛艦『すずつき』が7月に中国領海を一時航行したことについて、艦長が正確な位置を把握せず誤って領海侵入したと日本政府が中国側に伝達したことが22日分かった。海自は重大なミスがあったとして艦長を事実上更迭した」と書いた。領海侵犯したのは7月4日・台湾の北・浙江省沖であり、「すずつきは中国軍が新型ミサイル発射実験を行うとの情報を受け、警戒監視に当たる任務を負っていた」としており、「中国軍艦が繰り返した退去警告を無視」している。すずつきは、「自艦位置を把握できず誤って中国領海に侵入していた」とするが、そのような言い訳が通用するはずもない。

そもそも、海自艦が浙江省沖まで接近することは日本の防衛とは全く関係ない。米軍の指示による中国の軍事訓練の偵察行為であり、領海侵犯による挑発行為である。これが、自衛隊と在日米軍による『統合作戦司令部』と『統合軍司令部』を軸に、部隊間の指揮統制の連携を深め」ていくことの(日経:2024.9.22)中身である。米軍が直接行えば、米軍の能力が知られてしまい、米中間が極度に緊張することを恐れたからであり、その役割を海自艦にやらせたのである。結果、日本側は艦長を更迭することにより、中国側に詫びを入れたのであり、当分は『統合軍司令部』などというものは動かさないことを約束させられたのであろう。

3 福島第一原発放射能汚染水の海洋放出は国際的監視の下で

岸田首相は、「日中両政府は20日、東京電力福島第一原発の処理水海洋放出を巡り、中国が全面停止してきた日本産水産物の輸入を再開する方針で合意したと発表した。しかし、その中身は、国際原子力機関(IAEA)のモニタリング(監視)の下で、中国が海水などの試料採取を実施後、規制を段階的に緩和する)(福井:2024.9.21)というものであるが、中国の水産物輸入禁止措置について、昨年8月24日の最初の放射能汚染水海洋放出時に岸田首相は禁輸の即時撤廃を求め、『料学的根拠に基づき専門家同士が議論していくよう強く働きかけていく』と述べ(日経:2023.8.25)、その科学的根拠の裏付けとして、IAEAは「海水と混ぜて国の安全基準の40分の1未満の濃度に薄める日本の放出計画を『国際的な安全基準に合致している』と評価」したとしていた(日経:同上)。しかし、それは強引な我田引水の「科学的根拠」であり、それが、今回の合意で根本的に崩れ去ったことを意味する。日中間で発表された合意はIAEAの「枠組みの下、国際的モニタリングに参加し、独立サンプリング活動を実施した後、科学的な根拠に基づき『一歩一歩』という意味である」(日経:2024.8.23)。中国は当初より、国際的モニタリングに参加させるよう要求しており、誰がサンプリング調査しても同じ結果がでるならば、「科学的」であるが、日本だけが都合の良いデータを出しても国際的安全基準に合致しているかどうかは定かではないことは当然である。「科学的」とはだれがやっても同じ結果が出るという再現性が重要である。

「日本語と中国語の対比確認が十分だったのか疑問も残る」(日経:同上)と公的媒体としての新聞にあるまじき愚痴を書いているがお粗末である。IAEAの監視下で国際的モニタリングを行うことが正式決定であり、日本の一方的な放射能汚染水の海洋放出策は完全に行き詰ったといえる。外交的完敗である。

マスコミによる深圳事件を利用した反中扇動は、この日本の重大な外交的敗北を国民の目から誤魔化すことと、日本側がこれを機に「日米統合軍司令部」構想から離脱するのではないかという、米金融寡頭制・軍産複合体=米民主党側の焦りと圧力を代弁している。「もしトラ」が囁かれる中、このまま米国に従って行けば自滅への道しかないとして、日中の水面下での外交修復が始まったのかもしれない。

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【投稿】支離滅裂:米大統領選討論会--経済危機論(148)

<<「歴史、事実、数字をいい加減に扱い、ビジョンなし」>>
9/10、夜9時(日本時間9/11、10時~)から、予定の90分を超える米大統領選討論会は、米ABCニュースで放送され、コマーシャル2回を挟み、ABCニュースライブ、ディズニー+、Huluでストリーミング配信され、フォックスニュースを含む他のネットワークも討論会を生中継し、圧倒的に多くの視聴者を釘付けにしたと、言えよう。なにしろ、81歳のバイデン大統領が78歳のトランプ氏と対決した6月以来、バイデン氏撤退・59歳のハリス副大統領登場で、攻守逆転、初めてテレビで放映される大統領討論会として、その論戦が大いに期待されたのであるが、まったくの期待はずれであったことが明らかになってきている。
 終了後、SSRSリサーチが実施した調査によると、討論会視聴者605人のうち82%が影響を受けなかったと回答し、14%は討論会で考え直したが考えは変わらなかった、4%は討論会後に投票先を変えたと回答している。
「トランプ氏とハリス氏は昨夜、自分たちには独自の外交政策ビジョンがまったくないことを実証しただけでなく、お互いについて不可解なほど漫画のような言葉を使い、歴史、事実、数字をいい加減に扱い、ウクライナとガザで何をすべきかという議論全体をまったく支離滅裂にしてしまうような、パントマイムをするのが一番心地よいと感じていることを証明した。」と酷評される始末である。

その典型として、司会者からハリス氏に、ガザ地区で4万人以上のパレスチナ人が亡くなった件についてどうするのかという質問が投げかけられた際の、二人の反応である。
ハリス氏は、「私たちが知っているのは、この戦争はすぐに終わらせなければならないということ、そして終わらせるには停戦協定が必要であり、人質を解放する必要があるということだ。だから私たちは2国家解決の道筋を描かなければならないことも理解しながら、24時間体制でそのことに取り組み続ける。その解決にはイスラエル国民とイスラエルの安全、そしてパレスチナ人に対する同等の措置が必要だ。しかし、私が常に保証できることが1つある。私は常にイスラエルに自衛能力を与える。特にイランとの関係、そしてイランとその代理勢力がイスラエルにもたらすあらゆる脅威に関してだ。」と、まったくバイデン氏と同様、従来通りの展望なき回答である。
全世界が注目しているのは、ジェノサイドを禁止しているジュネーブ条約を無視し続けるなら、もはやイスラエル・ネタニヤフ政権を援助したり支援したりすることはできない、という新政権の明確な姿勢、ビジョンである。そんな姿勢は、これっぽちも示せない、ハリス氏の空虚さである。
これに対してトランプ氏は、「(ハリス氏は)イスラエルが嫌いだ。ネタニヤフ首相が議会で非常に重要な演説をしようとしたときも、彼女は会おうとしなかった。彼女は女子学生クラブのパーティーにいたため、そこにいることを拒否した。彼女は女子学生クラブのパーティーに行くために出かけた。彼女はイスラエルが嫌いだ。もし彼女が大統領になったら、私はイスラエルは今から2年以内に存在しなくなると思う。私はかなり予測が得意だが、その点については間違っていることを願っている。」と、ハリス氏がネタニヤフ氏と会談している事実をも無視し、「得意な予測」を披歴する軽薄さである。

<<ハリス氏「戦闘任務に就いている米軍兵士は一人もいない」>>
次いで、トランプ氏は、ハリス氏はウクライナで失敗したと発言し、「念のため言っておきますが、彼らはこの戦争が始まる前に彼女を和平交渉に派遣しました。3日後、プーチン大統領が介入し、戦争を開始しました。なぜなら、彼らの言うことはすべて弱々しく愚かだったからです。間違ったことを言いました。あの戦争は決して始まるべきではありませんでした。彼女は使者でした。彼らは彼女をゼレンスキーとプーチン大統領との交渉に派遣し、彼女は交渉し、3日後に戦争が始まりました。それが彼女の才能です。私の意見では、彼女はバイデンよりも悪いです」と強調した。
 トランプ氏は、「バイデン氏とハリス氏の政策は、これまで米国納税者に2500億ドルの負担を強いているが、欧州諸国はわずか1000億ドルしか負担していない。欧州諸国も負担すべきだ。」と従来の主張を繰り返したが、「あの戦争は決して始まるべきではありませんでした」と言うトランプ氏の指摘は、正鵠を得ている、と言えよう。
ウクライナに膨大な軍事支援を続けている現状について、今後の和平への展望について、ハリス氏はまともに答えられず、逆にNATOを「世界が知る史上最高の軍事同盟」と呼んでたたえる一方で、ハリス氏は、「今日現在、世界中のどの戦争地域でも戦闘地域で現役任務に就いている米軍兵士は一人もいない。今世紀初めてだ」と、まったくのウソ、でたらめの主張をしてしまっている。
実際は、中東地域に大規模な艦隊を派遣し、イラクとシリアに配備された米軍兵士は、戦闘作戦に積極的に参加し、2週間足らず前には、米軍兵士7人が負傷し、シリア国境にあるヨルダンの秘密基地タワー22がドローン攻撃を受け、ジョージア出身の米陸軍予備役兵士3人が死亡している。
さらには、紅海を航行する国際船舶や商船、海軍艦艇に対するフーシ派の継続的な攻撃に対処するためだとして、今年の1月以降、米海軍は、過去10か月間紅海に駐留し、大規模な艦隊を派遣し、イエメンへの空爆を何度も繰り返している。ハリス氏がいくら否定しようが、これが現実なのである。

この討論会の最大の問題は、圧倒的多数の人々が、ほぼすべての世論調査で、米国経済が最大の課題であることに同意しているにもかかわらず、それについてほとんど語られなかったことであろう。両氏から、経済状況に関する議論はほとんど聞かれず、解決策についてはさらになしであった。 物価が30%上昇、家計債務(カード、自動車、学生、住宅ローンなど)が限界に達し、年間2兆ドルの赤字と35兆ドルの国家債務、失業率8%、保険料、家賃、住宅費が数千万人分、戦争支出の暴走などについては何も語られなかったのである。
これまでの累積赤字と債務はバイデン政権下で7.2兆ドル、トランプ政権下では7.8兆ドルであるため、どちらも「そこへ言及したくなかった」のであろう。両者とも、それが厄介な問題を引き起こし、2025年新政権は、社会支出の大規模な緊縮財政削減を行う必要性が生じる懸念にに立ち向かう政策を提起しえていないことが明らかである。ここにこそ、アメリカが抱える最大の政治的経済的危機の根源が横たわっているのである。
米国経済は最近、製造業、建設業、産業活動、貿易がすべて縮小し、雇用市場がここ数カ月で急速に軟化しているため、明らかに減速の兆候を見せている。しかし、どちらの候補者も、こうした新たな懸念すべき傾向については何も言及しなかった、出来なかったのである。緊張緩和と平和政策が、経済と密接に結びついていることについては、なおさら両者とも、無知・無関心であり、ここのこそ有権者側の悲劇がある。
(生駒 敬)

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【新刊】「大阪市立大学同級生が見た連合赤軍森恒夫の実像」が出版されました。

1960年代大阪市立大学学生運動史を通して、
連合赤軍森恒夫の実像に迫る書籍が出版されました

書名 「大阪市立大学同級生が見た連合赤軍森恒夫の実像」
著者 伊福 達彦 (1963年大阪市立大学文学部入学)
編集協力 佐野 秀夫 (1972年大阪市立大学入学・アサート編集委員)
出版元 NPO法人働く者のメンタルヘルス相談室

「連合赤軍森恒夫の実像」表紙

「連合赤軍森恒夫の実像」表紙

★1963年市大に入学した著者は、民主主義学生同盟に加盟。社学同から自治会運動の主導権を奪い返す。全学自治会中執を経験し、66年には市大民学同の責任者、民学同全国委員となる。民学同の第1次分裂では民学同左派(後のプロ学同)を選択した。
★1960年代市大学生運動の歴史を振り返りつつ、民学同が果たした歴史的意義を明らかにする。
★著者の同級生に連合赤軍事件の森恒夫がいた。社学同から自治会選挙に立候補することもできず、学生運動経験の希薄な森が連合赤軍事件・同志殺害の首謀者となったのはなぜか。同級生の著者が、森恒夫の実像に迫る。
★大学卒業後も共労党(共産主義労働者党)に所属し職場・地域運動に従事するも、女性差別を捏造され、共労党の査問・除名を経験。連合赤軍の「総括」・左翼の査問に共通する前衛党の負の歴史に迫る。
★佐野秀夫は大阪市大学生運動年譜の作成、民学同論等を執筆した。
★価格は、税込み1650円。
★東京:模索舎、名古屋:ウニタ書店 等で販売されています。

【本書の構成】
第1章 市大学生運動グラフィティ
第2章 市大民学同外伝
第3章 市大民学同年譜
第4章 市大入学後の森恒夫
第5章 なぜ12人もの仲間を殺したのか
第6章 赤軍派とは
第7章 共産党、民青、共労党の査問の実態
第8章 まとめ <失敗を引き受ける>

【著者略歴】
伊福 達彦
1 9 4 4 年  中国大連て’生まれる。父は満州鉄道職員
I 9 6 3 年  大阪市立大学文学部入学( 森恒夫の同級生 )
      民主主義学生同盟に加入
19 6 5 年・ 6 6 年 全学自治会執行委員 市大民学同の責任者となる
1969 年  泉大津市役所に就職。
1993 年 東京管理職ユニオン結成まもなく、同労組に加入。
      (設立者の設楽清嗣氏は元共労党、顔見知リだった。)
1997 年  管理職ユニオン関西設立に参加
2 0 0 6 年  N P O 働く者のメンタルヘルス相談室設立。
      『自死遺族パネル展』 を全国で 5 0 回開催。
2 0 2 3 年 「4 人の自死遺族が分かち合いの会I 5 年を語る」 出版。

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【書評】『賃金とは何か―職務給の蹉跌と所属給の呪縛』―濱口桂一郎著

【書評】『賃金とは何か―職務給の蹉跌と所属給の呪縛』―濱口桂一郎著 朝日新書
                       福井 杉本達也

著者は「はじめに」において、「60年というのはほぼ二世代分に相当します。池田首相の職務給導入論を若年期にリアルタイムで聴いていた世代は、今ではすべて超高齢世代です。言い換えれば、岸田首相の職務給導入論をリアルタイムで聴いている現役世代にとって、かつて政府や経済界が職務給導入論を掲げていた時代というのは、お爺さんの思い出話のような歴史の彼方の時代になってしまっています。そのため、かつて職務給をめぐって政労使が侃々諤々論じ合った経験が全く伝わっておらず、なにやら新しげな商品を売りつけようという人事労務コンサルタントの商売ネタとして消費されるだけという状態が続いているのです」と書き始めている。50~60年前にさんざん議論されたことを、“なんでまた”という妙な既視感がある。
なぜ日本の賃金は上がらないのか。そもそも、2000年以降、ベースアップがなくなり、定期昇給のみになっている。賃金体系の大幅な改変でもない限り、労働組合員はおろか労働組合幹部も賃金体系についてまともな知識を持っているものは皆無であろう。
本書は著者の前著『ジョブ型雇用社会とは何か』(岩波新書)で展開された賃金論を、歴史的に戦前期・戦時期・戦後期・高度成長期・安定成長期・低成長期と分けて解説している。こうした賃金論の歴史的背景は、現在の組合幹部にとっては全く思考の外にある。たぶん、言葉そのものが通訳不能となっている。おそらく今の組合幹部は本書で戦後期の賃金制度として1節を設けている「電産型賃金体系」も知らない。さらに第Ⅱ部の第1章でわざわざ「船員という例外」にふれている。「ジョブ型雇用社会では、労働組合は産業・職種別に結成され、産業レベルで団体交渉を行い、労働協約を締結します。そこで決められるのは企業を超えた職種や技能水準ごとの労働の価格であり、このジョブの値札を一斉に書き換える運動が団体交渉です。そういう労働組合、団体交渉、労働協約は、日本にはほとんど存在しません」と書き、それに続けて「ごく例外的には日本にもそういう労使関係が現実に存在している…船員の世界です」。海員組合は「船員個人加盟の産業別単一組織であり、今日に至るまで産業ㇾべル団体交渉により賃金を決定してきている日本でおそらく唯一の純粋ジョブ型労働組合である」と書いている。この章は他の章と比較すると全く異質であり、ほとんどの組合幹部は海員組合なるものも知らないであろうことを予想してわざわざ紹介している。
ところで、最近の経済情勢と関係するものに、「消費者目線のデフレ推進論」がある。「1990年代初頭を彩ったあるイデオロギーの影響を見ておく必要があります。それは、日本の最大の問題は物価が高すぎることであり、物価を下げることこそが労使双方にとって最重要課題である考え方です」「この消費者目線のデフレ推進論に…結成されたばかりの連合が見事に乗せられていきます」「『安い日本』は、労働者にとっては必ずしも嬉しいものではないのではないか、という(労働組合本来の)疑問を正面から呈することなく、デフレ推進論に押し流されていったように見えます」と書いている。「名目賃金どころか実質賃金も下がり続け…日本の経済力の劇的な収縮に大きく貢献」したと、その後の失われた30年の責任の一端を著者は鋭く指摘している。
著者も「これで終わりにしてしまったら、いくらなんでも希望がなさすぎるのではないか」として、日本における賃金引き上げの処方箋について、何点かを挙げている。「一般職種別賃銀と公契約法案」・「公契約条例」・「派遣労働者の労使協定方式による平均賃金」・「個別賃金要求」・「特定最低賃金」(産業別最低賃金)など、職種別の賃金システムを拡げていく手がかりを挙げているが、いずれも50~60年の既視感はある。
著者は最後に、“官製春闘”といわれるような「国家権力の力を借りなければ賃金を支えられないなどというのは労働組合として恥ずかしいことなのです」とし、北欧諸国の産業別労働組合の最近の事例を挙げ、「イーロン・マスク率いるテスラ社のスウェーデン工場で2023年11月、金属労組IFメタルが労働協約締結を拒否する同社に対して行ったストライキに、港湾労働者や郵便労働者などが同情スト(テスラ車だけ荷下ろし拒否、テスラ車のナンバープレートだけ配達拒否など)で協力した」と述べ、「公共性とは国家権力への依存ではなく、産業横断的な連帯にある」と締めくくっている。

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【投稿】バイデン撤退とハリス指名--経済危機論(147)

<<抗議、迎合、歴代大統領、しかし政策なし>>
8/19~22、シカゴで開催された米民主党全国大会で、辞退を余儀なくされたジョー・バイデン氏に代わって、カマラ・ハリス副大統領が大統領候補指名受諾演説を行った。ハリス氏は、自身を「現実的で実務的で常識があり」、米国を「新たな前進の道に」導くことができる候補だと強調した。
しかし、ハリス氏は同時に、基調講演で、米軍の最高司令官として果たす役割について言及し、「私は最高司令官として約束する。米国は常に世界で最強かつ最も高い殺傷能力の軍隊を持つだろう」と断言し、ウクライナとNATOを「強力に」支援すると約束し、「大統領として、ウクライナとNATO同盟国とともに強く立ち向かいます」と誓い、イスラエルの自衛権を常に支持するとし、これに必要な全ての手段を提供することを明言した。
つまりは、ハリス氏の「現実的で実務的な常識」とは、バイデン路線の核心=対ロシア・対中国緊張激化、イスラエルのパレスチナ・ガザ虐殺政策への加担、戦争挑発政策そのものの継続なのである。そこには、緊張緩和と平和政策への関与など、文字通り、一言もなしである。バイデン氏への迎合あれど、「新たな前進」の政策など、なしである。

唯一の例外は、ハリス氏は、ガザでの苦しみの「悲痛な」規模を認め、バイデン政権は「この戦争を終わらせるために取り組んでいる」と、見せかけ、口先だけの停戦へのアプローチを称賛したが、イスラエル政権への膨大な武器・弾薬の提供には完全に沈黙してしまったのである。オカシオ・コルテス氏は「カマラ氏は休戦のために精力的に働いている」と迎合したが、ハリス氏自身が、大統領候補指名を受け入れて以降だけでも、政権はイスラエルへの200億ドルの武器売却を無条件で承認しているのである。

 何万人もの反戦・反虐殺加担の抗議デモ参加者に対して、何千人もの武装警官に守られて、周囲には高さ8フィートのフェンスとコンクリートの障壁でさらに防備を固め、完全に外界から遮断された大会会場。そこでは、歴代大統領や、夫人が次から次へと登壇、そこにバイデンの「口先停戦」支持・迎合の「左派」バーニー・サンダース上院議員やオカシオ・コルテス下院議員も加わったが、肝心のパレスチナ系アメリカ人の代表者・代議員の声は一人もなし。それどころか、登壇を拒否されたのである。ミシガン州などの重要な激戦州で、親パレスチナの50万~100万票以上の代償を払う可能性があるにもかかわらず、拒否したのである。

著名な映画監督マイケル・ムーア氏は、「ただ一つ欠けていることがあります。それは、アメリカ人である私たちが、4万人以上のパレスチナ人(その半数以上が子供と高齢者)を殺すための爆弾の費用を支払い、提供していることについて一言も触れられていないことです。そして、この悲劇に対する党の耳をつんざくような沈黙は悲しいほどにがっかりさせられます。」と怒りを込めて述べている。

 さらに、ハリス氏を支持する主要労働組合である全米自動車労働組合は、民主党全国大会の最終日に、米国が支援するイスラエルのガザ地区攻撃について、「ガザでの戦争を終わらせたいのであれば、目を背けたり、民主党内のパレスチナ系アメリカ人の声を無視したりしてはならない」と述べ、「もし我々が平和を望み、真の民主主義を望み、そしてこの選挙に勝ちたいのであれば、民主党は今夜、民主党全国大会の舞台からパレスチナ系アメリカ人の演説者を招かなければならない」との声明を出している。

だが、大会会場内の親パレスチナグループが「イスラエルへの武器

供給を止めろ」と書かれた白い横断幕を静かに広げるや、すぐに民主党全国委員会の職員に取り押さえられ、「私たちはジョーを愛している」という旗で妨害され、横断幕が引き剥がされ、「彼らは『We Love Joe』のプラカードで私たちの頭を殴りました」と、ハリス氏を支持しているハリス派の代議員が語っている。まさにトランプ陣営と同じファシスト的行動がまかり通っていたのである。

125の反イスラエル・親パレスチナ団体が「民主党全国大会2024」集会“March on the DNC 2024” を組織し、「ジェノサイド・ジョー」がもはや候補者ではないとしても民主党を甘く見るつもりはない、「我々の標的は民主党であり、党の指導部であり、『キラー・カマラ』‘Killer Kamala’もその一人だ」と指摘する事態である。

<<ウソ、でたらめの雇用統計>>
ハリス氏は、国内政策について、「私は労働者、労働者、中小企業の経営者、起業家、アメリカ企業を結集して雇用を創出し、経済を成長させ、医療、住宅、食料品などの日常的な必需品のコストを下げる」「中小企業の経営者、起業家、創業者に資本へのアクセスを提供し、社会保障とメディケアを保護する」「1億人以上のアメリカ人に利益をもたらす」中流階級の減税を可決し、国境警備法案を可決し、中絶へのアクセスを保護すると述べている。
これらの提案は、新政権を特徴づける象徴的提案には程遠い。「トランプが社会保障とメディケアを削減しようとした時に戻るつもりはない」として、反トランプ政策としては重要ではあるが、ハリス氏は指名演説で、「我々は後戻りはしない」と言うとおり、現状維持政策でしかない。育児控除は新生児のみ、住宅控除も初めて住宅を購入する人のみ、食品価格つり上げに関する詳細がなく、不明瞭、医薬品価格は10品目のみで2026年まで、等々、すべてが漠然としている。ハリス氏は、現職副大統領として過去3年半の間、バイデン政権で一体何をしていたのか、具体的政策を持ち合わせていないのはなぜなのかと問われても、ただ現状追随していただけではないか、怠慢以外の何ものでもないであろう。

 決定的なのは、大会開催期間中の8/21、ハリス氏が「雇用創出」を語っている最中に、バイデン政権下の米労働統計局(BLS)が、過去15年間で最大の下方修正を行い、米国経済は当初報告よりも81万8000人少なかった、「BLS は 2023 年 12 月までに 80 万人の雇用者数を過大評価していた (データ シリーズを 2024 年まで延長するとさらに増える)」と結論付け、米国経済は過大評価されていた、と明らかにしたことである。これは、バイデン政権が実際には存在しなかった雇用が創出されたと主張した100万近くの雇用である。BLSは雇用の定義を歪曲し、データを操作し、意欲を失った労働者を除外し、過去の報告書を改訂して、政権の政策に合う物語を作り出してきたのである。隠し切れなくなった結果が、これである。改定前の当初の雇用統計では、3月までの1年間で合計約290万人、月平均24万2000人の雇用増加が示されていたのだ。
この下方修正は、「ホワイト ハウスがバイデノミクスのメリットの直接的な証拠として何度も主張する 2023 年の雇用者数の平均月間増加数 23 万人という驚異的な数字が、ウソ、でたらめであり、2023年、毎月平均21万8千人の雇用が追加されるのではなく、むしろ15万人、31%の減少となっていたこと、を明らかにしたのである。この衝撃的なニュースは、米国経済は、すでに深刻な不況局面に入っていたことを明らかにしているが、バイデン・ハリス陣営は一言も触れられず、逃げ回ったのである。

11月の米国大統領選挙は、「よりましな悪」の投票を迫っている、とも言えよう。危険なのは、民主・共和両党が、それぞれの相違点をあぶりだす一方で、両党とも合意する危険な腐敗した政策、独占資本と金融寡頭制を支え、世界経済を破壊する戦争政策で一致することである。平和と経済が、今ほど密接に絡み合っているときはないのである。
(生駒 敬)

 

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【投稿】福島第一原発の溶融核燃糾(デプリ)取り出し失敗―『廃炉』は不可能・核の呪文から解放され正気に戻れ

【投稿】福島第一原発の溶融核燃糾(デプリ)取り出し失敗―『廃炉』は不可能・核の呪文から解放され正気に戻れ

                            福井 杉本達也

1 福島第一2号機のデブリ取り出しに失敗
福島第一原発は2011年3月に1号機から3号機まで3つの原子炉がメルトダウンし、核燃料は原子炉圧力容器を突き破り、格納容器の底の部分に溶け落ち固まった。これが「燃料デブリ」と呼ばれ、3つの原子炉を合わせると880トンあると推定される。東京電力は2号機で、当初の計画から3年遅れての「燃料デブリの試験的取り出し」作業を行うこととした。採取する量は3グラム以下、耳かき1杯程度で。2週間かけて取り出し作業を行う予定であった。8月22日、福島第一原発2号機で「溶融核燃糾(デプリ)の取り出しに向げた準備作業を開始したが、約1時間半で中断した。回収装置を押し込むパイプの取り付け順を間違え…廃炉の最難関とされ、2011年3月の事故後初めてのデプリ採取は、スタートラインの手前でつまずいた」(福井:2024.8.23)。
(図:まさのあつこ:2024.8.22)

(まさのあつこ 東電資料のまさのによる訂正版2024.8.23)

NHKの報道によると「取り出し装置は伸縮する細いパイプ状のもので、格納容器の中まで後ろから別のパイプで押し込む仕組みになっていますが、装置を格納容器内につながる配管の手前まで進めたところで、5本ある押し込みパイプの順番が誤っていることに作業員が気づき、午前9時前に作業を中断したということです。5本のパイプは、装置と直接つながる1本目だけ構造が異なっていますが、現場では本来1本目につなぐべきパイプが4本目につながれていたということです。これらのパイプの中には取り出し装置先端のデブリをつかむ器具からのびた遠隔操作などに使うケーブルが通っていて、現場ですぐに順番を変えて作業を継続することはできませんでした。パイプを並べてケーブルを通す作業は下請け企業の作業員が先月28日に行っていたということです。」(NHK:2024.8.22)。
東電はあくまで下請け企業のミスであると強調するが、60人が作業にあたり、直接現場には48人の作業員がいたが、東電職員は立ち会っていない。下請けの三菱重工が作業を主導していたが、押し込みパイプは長さ1.5m、直径16㎝、重さ95kgもあり、放射線の高い現場では作業は困難を極める。1班6人体制で、8班の交代制で作業を行うが、大量の被曝を避けるため1班当り、数十分程度の作業時間で行わなければならず、まともな作業ができるとは思えない。 続きを読む

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【映画】I AM A COMEDIAN(アイアム・ア・コメデイアン)・テレビから消えた男

【映画】I AM A COMEDIAN(アイアム・ア・コメデイアン)・テレビから消えた男

                             福井 杉本達也

いくらお盆休みの人が多いとはいえ、平日のPM1時開演の映画に、階段に入場待ちの人があふれた。マイナーなドキュメンタリー映画であり、普段は5~10人しか観客がいない劇場は100人以上の鑑賞者で溢れた。
「テレビに居場所を失った村本大輔は劇場、ライブに活路を見出し、…世間から忘れ去られた芸人の真実に『東京クルド』の新鋭ドキュメンタリスト日向史有が迫った3年間の記録。…テレビから消えたお笑いコンビ“ウーマンラッシュアワー”村本大輔。テレビに居場所を失った彼は、劇場とライブに活路を見出し、自分の笑い”スタンダップコメディ”を追求する。ニューヨークでコメディ修行に打ち込む村本大輔は、アイデアを思い付くと道端に座り込んでメモを取り…」
村本大輔は福井県おおい町出身である。おおい町といえば、大飯原発であり、現在4基の原発がある。映画でもテレビ局からの電話で、ネタの「原発」について、「もんじゅ」(現在は廃炉)は「原発」ではない、数時間後のネタを直せという電話シーンがでて来る。「高速増殖炉」という建前であるが、「商業化」という建前もあり、28万キロワットの発電をすることとなっており、原子力発電所(=原発)に間違いない。もちろん、県も国も「もんじゅ」は「原発」と認識していた。いかにテレビ局が無知のまま、「言葉」だけでお笑いネタに圧力をかけて来るかを示すシーンである。
2013年のNHK漫才コンクールで「ウーマンラッシュアワー」として優勝してブレークし、一時期は、毎年250本のテレビに出ていたが、「大麻」のことをSNSに書いたことをきっかけに、番組降ろしがはじまり、遂に1年に1本しかテレビに出られなくなった。そこで、村本は、活躍の舞台をニューヨークに求めた。まったく英語ができなかったが、猛勉強と友人による英漁表現のアドバイスでトークショーをやっている。こうしたニューヨークでの武者修行は実に面白い。思いついたネタをまず日本語でメモ帳に書き、それを翻訳ソフトで英訳し、友人に見せて、笑える英語表現に直してもらう、そのメモを手元に様々なライブハウスで、スタンダップコメディに挑戦するのである。常にネタを考え、それを英語に直す。コーヒーハウスであろうが、街頭の木陰であろうが必死にネタの表現を考えるのである。それは、彼がこれまでの日本での下積みで経験してきたことであり、こんなことは当然のことだと語るシーンがある。日本のテレビ局のお笑い芸人が、売れだすが、努力せず教養のない芸人は「パワハラ、セクハラ、イジリ、下ネタ」でしか笑いが取れなくなり、金がなく、企画力も全くなくなり、歌番組やドラマ、ドクメンタリーなども制作できないテレビ局の駒としてバラエティなどに出演せざるを得なくなる。そこは芸とは全く無縁の世界である。村本はこうした芸人とは全く対照的な生き方を試みている。
映画後の舞台挨拶で、村本はアメリカに行った理由を聞かれ、アメリカのお笑い芸人はホワイトハウスの晩餐会に招待されて、そこで、大統領や閣僚が目の前にいるのに、時のの大統領をボロカス言う。それでも、芸人が毎回そこに呼ばれて、時の政権批判をして笑わせる。アメリカの芸人は実体験をもとに話をして現実を突きつけるが日本の芸人は逃げている。だからアメリカで勝負してみたいというような話をしていた。
コロナ禍でトークショーが相次いでキャンセルになるなどストレスもあり、映画の村本はかなり太って、いつも焼酎瓶を片手にラッパ飲みをしているシーンが多かったが、舞台挨拶では細りした体形に戻っていた。

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