Assert Webの更新情報(2021-02-28)

【最近の投稿一覧】
2月28日 【投稿】中国包囲網の虚構
2月28日 【投稿】露呈された新自由主義の酷薄さ--経済危機論(42)
2月21日 【投稿】バブルがバブルを呼ぶ金融資本主義--経済危機論(41)
2月10日 【投稿】カジノと化す株式バブル--経済危機論(40)
2月1日 【書評】『その後の福島—-原発事故後を生きる人々』
1月31日 【投稿】バブル破裂の前兆続発--経済危機論(39)
1月29日 【投稿】『感染症法』改正を巡る大混乱・コロナ対策はさらに迷走する
1月24日 【投稿】中道主義で逡巡するバイデン新政権--経済危機論(38)
1月24日【投稿】私的権力が「スイッチを切るように」表現の自由を剥奪するクーデター
1月15日 【書評】『新危機の20年―プーチン政治史』
1月10日 【投稿】トランプ騒乱と株式市場--経済危機論(37)
1月3日 【投稿】球磨川水系の治水は川辺川ダム建設に頼らずに―自然観の転換と川との共生を
12月31日 【投稿】「暗黒の茶番劇に幕を下ろすとき」--経済危機論(36)
12月30日 【書評】『日本の無戸籍者』
12月22日 【投稿】原発全面停止で切羽詰まった関電:中間貯蔵施設「共用案」で自治体を振り回す
12月14日 【投稿】2020年=世界経済の93%が縮小--経済危機論(35)
12月11日 【投稿】ミサイル防衛の呪縛と新たな軍拡
12月9日 【投稿】大飯原発3,4号設置許可取り消し大阪地裁判決の意義
12月2日 【書評】『戦後日本を問いなおす-日米非対称のダイナミズム』(その2)
11月29日 【書評】『戦後日本を問いなおすー日米非対象のダイナミズム』(その1)
11月25日 【書評】『ふくしま原発作業員日誌 イチエフの真実、9年間の記録』
11月25日 【投稿】深化する経済恐慌と異常な株高--経済危機論(34)
11月25日 【書評】『働くこととフェミニズムー竹中恵美子に学ぶ』
11月21日 【追悼】小野義彦先生 没後30年に思う
11月16日 【投稿】経産省のエネルギー基本計画の物語で動く菅首相の「温室効果ガス50年ゼロ宣言」
11月10日 【投稿】米国国民も世界もまた「涙の道」を通るのかー米大統領選結果
11月9日 【投稿】維新・住民投票連敗が意味するもの--統一戦線論(71)
11月8日 【投稿】米大統領選の結果が示すもの--経済危機論(33)
11月4日 【投稿】新型コロナウイルス感染対策失敗と「大阪市廃止」の住民投票での再否決

【archive 情報】
「History」に「大阪市立大学 全学自治会選挙の経過(党派別当選数)」を追加(1/30)
「MG-archive」に「民学同 組織内文書リスト」を追加しました。(12/3)
「MG-archive」に「新時代(機関紙リスト)」を追加しました。(9/2)
「MG-archive」に「デモクラート(機関紙リスト)
」を追加しました。(8/25)

【準備中】
「民学同第2次分裂(B)」「民学同第3次分裂」のページを準備中です。

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【投稿】中国包囲網の虚構

中国に対抗する多国間連携として、日米豪印戦略対話(Quadクワッド)がこの間喧伝されているが、しかしその内実は極めて不安定である。
インドはこの間カシミール地方で中国と緊張関係にあり、昨年には両軍の衝突で多数の死傷者が出た。こうしたことから、インドを対中国の尖兵と見る向きもあった。
しかし、両国は紛争のエスカレートを防ぐため、火器の使用を制限してきたし、最近係争地域からの両軍の撤収が始まった。インドの対中包囲網への積極的関与はないだろう。

インドに代わって期待されているのはイギリスである。ジョンソン政権は空母「クィーン・エリザベス」のアジア派遣を決定した。イギリスは香港問題を念頭に中国を牽制するため、こうした動きを見せていると解説されている。
だが、イギリスに限らずNATOの主敵はあくまでソ連―ロシアである。冷戦崩壊後、21世紀初頭まではEUロシア間で協力関係が構築されてきたが、現在は冷戦期の状況に戻っている。
イギリスはウクライナ情勢に関しロシアへの制裁を強化してきたが、2018年にイギリス国内でロシアの元情報員が「化学兵器」で襲撃されて以降、両国関係はさらに悪化している。
また昨年ロシアの反体制活動家に対する毒殺未遂が発生、前事件を想起させる展開に英政府は、一層警戒を強めている。

しかし、軍事的にはロシアはNATOに対して劣勢である。ロシア唯一の空母「アドミラル・クズネツォフ」は改修中であり、数々の事故も有って復帰は2022年以降となる見通しである。
これに対しNATOの空母はアメリカ第2艦隊を除いても、英2、仏1、伊1とロシアを圧倒している。
つまりイギリスの空母戦力は余剰状態であり、ヨーロッパで遊ばしておいては予算の無駄使いと批判されかねないのである。

こうした状況の中、イギリスにとって中国のアジアにおける「脅威」は渡りに船となり、空母派遣はTPP加盟の手土産にもなるという一石二鳥であろう。
したがって今後ロシア空母が復帰すれば、英空母はアジアから撤収するだろう。
さらに今後、計画されているロシア初の原子力空母が就役すれば、中国どころの話ではなくなり、今回恩を売られた形の日本が対露牽制を求められる可能性がある。
フランスが原子力空母や潜水艦をアジア地域に派遣しているのも、こうした背景を抜きに考えることはできない。 続きを読む

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【投稿】露呈された新自由主義の酷薄さ--経済危機論(42)

<<テキサスのブラックアウト>>
この2月12〜17日、冬の嵐・ウリ(Winter Storm Uri)と呼ばれる大寒波が、太平洋北西部で始まり、メキシコ北部から米国南部に移動、その後中西部、カナダにまで至る広範囲な地域、米国だけでも30の州に襲来した。その中で際立って大きな被害を受けたのが米国南部テキサス州であった。他の地域では起こらなかったブラックアウト=電力崩壊が引き起こされ、電力供給がストップ、州内の合計797の水道システムが、パイプの凍結または破損に見舞われ、何百万人もの住民が停電と断水というライフラインの危機に追い込まれ、氷点下の気温の中で少なくとも40人以上の人々が死亡している。バイデン大統領は2/14、テキサス州に非常事態を宣言し、14の州が計画停電を行う事態となった。
その後、ほぼ1週間にわたった停電、さらに水道・ガス復旧はいまだに(2/27現在)ままならず、テキサス州の半分の住民は水を飲む前に沸騰させるようにという沸騰水に関する通知を受けている深刻な状態である。
いったいなぜここまで深刻な事態に立ち至ったのであろうか?
実は、テキサスは独自の電力網を持っている米国で唯一の州であり、米国内の2つの主要な電力網(Eastern(Southwest Power Pool)、Western(Western Electricity Coordinating Council))に接続されていないため、ブラックアウトに至る前に、他の地域からの電力供給を受けられなかったのである。今回の大災害は、その致命的な弱点をさらけ出したものと言えよう。
テキサスは、米国で最大の石油、天然ガス、風力エネルギーの生産州であり、他の州とは異なり、州の大部分にサービスを提供する独自の内部電力網を運営しており、非営利電気信頼性評議会(ERCOT)によって管理されているグリッド(配電系統)が、州の電力の90%を供給し、2,600万人の顧客に電力を供給している。このテキサス州の電力網は、2002年に規制緩和され、テキサスのグリッドが連邦の他のグリッドに接続されていた場合、それによって要請される電力網の安定性と信頼性を保証するインフラ改善の規制を逃れるために、意図的に米連邦の電力網に接続しなかったのである。電力の小売が自由化され、「電気業界での競争は、月額料金を引き下げ、消費者が使用する電力についてより多くの選択肢を提供することで、テキサス州に利益をもたらすでしょう」と当時の知事であるジョージW.ブッシュは、規制緩和法に署名した際に述べている。新自由主義・自由競争原理主義を地で行くものであった。
しかし、この規制緩和と故意のエネルギー隔離によって、利益を最大化するために、保守とアップグレードのコストは最小限に抑えられ、電力インフラは老朽化したまま放置され、「それは、予測可能な状況下で最終的に破綻するまで、過少投資と怠慢に足を踏み入れた。」(ヒューストン・クロニクル)、その結果として今回の事態を招いたのであった。
それでも、ERCOTの指導者たちは、電力危機の責任は、テキサスの規制緩和システム全体ではなく、天候にあると述べている。

この危機のさなか、テキサス州の共和党上院議員テッド・クルーズが、2/16、「今週、テキサスでは100人規模の犠牲が出る可能性がある。どうかリスクを冒さず、自宅待機し、子供を抱き締めてあげて」とラジオで呼びかけていた、その翌日2/17、ヒューストンの空港を出てメキシコのリゾート地カンクンに向かう写真がネットで拡散、ごうごうたる非難を受け、議員辞職を求める声が高まり、旅行を中断、帰国せざるを得ない醜態を演じている。 続きを読む

カテゴリー: 生駒 敬, 経済, 経済危機論 | コメントする

【投稿】バブルがバブルを呼ぶ金融資本主義--経済危機論(41)

<<特別買収目的会社(SPAC)の熱狂>>
超低金利と超金融緩和によって生み出された”行き場のない投機的な資産の急増”が株価を押し上げているが、それに飽き足らず、より投機的でよりリスクの高い新たな金融バブルの商品を生み出しており、その一つがSPACである。「特別買収会社」(Special Purpose Acquisition Company)の略である「SPAC」は、未公開会社の買収を目的として設立される法人であり、上場した時点では、自らは事業を行なっていないペーパーカンパニーそのものである。買収だけを目的に上場し、事業を行わないことから、「空箱」企業、「ブランク・チェック・カンパニー」(Blank Check Company 白地小切手会社)とも言われる。今や300社を超えており、SPACによる合併・買収(M&A)が急増、米M&A市場の3割に達している。上場後に、株式市場から資金調達を行い、2年以内に、調達した資金を使って民間企業を買収する必要があるが、未公開会社の場合、買収されれば、従来の上場のプロセスを行わずに上場することができるのが売りでもある。
大手金融資本の中には、スタートアップ企業を食い物にする手段として、SPACを採用しているとも言われている。出発時点からしてペーパーカンパニーであることから、資産も製品も販売も実態不明のままで、非実体を売買する究極の投機・マネーゲームの手段だとも言えよう。リスクにかける投資家にとっては、「大化け銘柄」でもある。
SPACは以前から存在してはいたが、未公開企業への不信とリスクから敬遠されていたのだが、昨年から急に注目を浴びだし、2020年で820億ドルを調達、それまでの調達額を大幅に上回る事態となった。
2020年6月には、トラック事業の「ニコラ・モーター」(Nikola)がSPACに買収され、ナスダックに上場、一時期は93ドルに株価が上昇、し

かし9月には、「誇大広告」が疑われ、16ドルにまで株価が急落している。この2/9にニコラ株は5%以上下落したが、競合する水素燃料電池電気自動車メーカー(Hyzon Motors)がSPACと合併して公開するという発表に起因している(ニコラ株はなぜ下落したのか Nasdaq FEB 9, 2021)。SPAC同士でつぶしあう構図でもある。
それでもSPACは2021年に入って、1月だけで前年比で実に20倍の242億6000万ドルに急増している。この趨勢、熱狂が続けば、SPACは2021年に数千億ドルを調達する可能性が大であり、これをレバレッジとし最大3倍まで活用すれば、1兆ドル近くのマネーゲーム資本の急増となり、金融バブルがさらに膨らまされることが明らかなのである。今やそれは完全に制御不能になり、歯止めが利かない状態なのである。

<<低格付け社債の急増>>
さらにバブルを象徴する不気味な動きは、低格付け社債の発行が急増していることである。
2021年に入ってからの発行額は世界で1100億ドル(約11兆5000億円)を超え、過去最高ペースを記録している。利回りの低下で投資不適格級の企業が市場での資金調達を増やしており、直近の2月1週間だけでも70億ドル(約7360億円)余りを集めている。パンデミックのコロナ救済による米財務省の融資制度や米連邦準備理事会(FRB)の債券買い入れの対象になるのではないかとの観測や、世界の低格付け債の平均利回りが、2/19時点で4.6%と過去最低となっていることがこの動きを加速させている。超低金利の中で利回りを追求する投資家、金融資本にとっては、たとえ投資不適格級資産であっても、今ならまだいけるとリスクを無視して資金を投じているのである。カジノ場のギャンブラーの心理状況とも言えよう。バブルがバブルを呼び込んでいるのである。
低格付け債は、「ジャンク債」や「ハイイールド債」とも呼ばれ、低格付けのデフォルトリスク(元本償還や利払いの不能リスク)の高い債券である。通常、スタンダード・アンド・プアーズ社(S&P)の格付けで「BB」以下の低格付債券のことを指している。BB以下は、B、CCC、CC、C、Dとなる。
2/9には、CCCクラスの企業が1.5億ドル発行しており(米パーティシティホールディングス)、買い入れ応募は旺盛で、借り手優位の需要を背景にCクラスでも発行可能という事態である。
こうした一連の動きで重要なことは、ほぼすべての金融市場に存在する前例のないレベルの無謀な投機的・ギャンブル的行為の蔓延である。ゲームストップ事件で明らかになったように、多くの個人投資家もそれに巻き込まれているのである。
結果として、今や株式市場を含めた金融市場は、生産的な投資のための資金調達とはほとんど関係がない、という事態である。市場は、その場しのぎの一攫千金の手っ取り早い手段、賭場と化しており、バブルに乗じたギャンブラーが支配する場と化しているとも言えよう。金融市場は病んでおり、FRBをはじめ各国中央銀行がや財政当局がそれを下支えし、市場はただただそれに依存しているのである。
問題は、このような事態は自然でも持続可能でもないということである。この危機から抜け出す方法は、バブル市場と化し、カジノ場と化した投機的市場を徹底的に規制・縮小することであろう。バブル破裂を防ぎ、熱を冷まさせるには、大胆な金融資本規制を導入し、たとえ低率でも一律課税できる金融取引税を導入し、富裕税・累進課税を再構築する、そうしたニューディール政策こそが緊急の課題であることを明らかにしている。
(生駒 敬)

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【投稿】カジノと化す株式バブル--経済危機論(40)

<<ロビンフッド・アプリで自ら命を絶った若者>>
2/8・月曜日に、昨年6月に20歳の学生、アレックス・カーンズ(Alex Kearns)さんが自ら命を絶つに至った株式取引手数料無料のスマホ・アプリを提供するロビンフッド・マーケッツ社を相手取って、両親(Dan and Dorothy Kearns)が息子の死の責任を問い、不法行為による死亡でカリフォルニア州サンタクララ郡の州裁判所に提訴したことが明らかになった。
亡くなったカーンズさんは、投資に興味があり、高校を卒業する前にロビンフッドに口座を開設していた。彼は、母親のドロシーさんに「お母さん、私はまだ自分の人生で何をしたいのかわかりません。しかし、私は人々を助けたいと思っています。」と語る若者であった(2/8、CBSnews ThisMorning インタビュー)。
その彼が、同じ銘柄のプットオプションの売りと買いを同時に行うオプションスプレッド取引をしていて(これは、巨額の損失を被る可能性のあるリスクの高い取引であるが、本人は、オプション売買の何たるかも分からず、その承認さえしていなかった )、昨年6/11、ロビンフッドが730,000ドル(約7650万円)のマイナス残高を通知し、その夜遅く、午前3時26分に、同社はアレックスさんに「即時アクション」を要求する自動メールを送信し、170,000ドル以上の支払いを要求したのであった。借りた覚えもない巨額な請求に驚いたアレックスさんは、その夜遅くと翌朝に3回、サポートアドレスにメールを送信(ロビンフッドにはカスタマーサービスの電話番号がない)、「何が起きているのか理解できない」、「私は、私が持っているべきよりも多くのお金を誤って割り当てられました。私の購入したプットは、私が販売したプットをカバーするはずでした。誰かがこれを調べてくれませんか?」と。それに応えた自動メッセージは「私たちのサポートチームに連絡してくれてありがとう!」、「できるだけ早くご連絡できるよう努めておりますが、お返事が遅れる可能性があることをお知らせいたします。」と。ケース番号06849753が割り当てられたが、それから先はなしのつぶて、「後で折り返しご連絡します」だけ。
カーンズさんがオプション取引で73万ドルを失ったと思い込んで自死した翌日、ロビンフッドは彼のアカウントに自動化された電子メールを送り、問題は解決され、借入金はなく、「証拠金請求に対応し、取引制限が解除されたことを確認するために連絡を差し上げています。」と。
カーンズさんの両親の弁護士は「彼らが彼に提供した情報は、信じられないほど歪曲されていた。そして、おそらく完全に間違っていた。なぜなら、本当に何も借りていないのに、73万ドルを借りているように見せる。それはだれでもパニックになる可能性があります。」「彼らは、電話やライブの電子メールサービスを通じて、質問に対するライブの回答を得るためのメカニズムを提供していません」と告発している。
カーンズさんは自死する前に、両親へのメモで「収入のない20歳の若者に、100万ドル相当のレバレッジを割り当てることができたのはいったいどういうことなのでしょうか?」 「売買したプットもキャンセルされるべきだったのですが、今何をしているのかわからない。これほど割り当てられてリスクを冒すつもりはなかったので、アプリをチェックすると、証拠金投資オプションは私にとって『オン』にさえされていないのです。苦々しい教訓です。F***(ちくしょう)!ロビンフッド。」と書き残していた。
ここで言うレバレッジとは、株式市場で委託保証金で何倍もの借り入れができる、リスクのきわめて大きい、投機的なギャンブルに誘い込む手段、手口である。ロビンフッドは収入ゼロの若者に73万ドルものレバレッジを本人の承諾もなくかけていたわけである。引っかかればしめたものと計算していたのであろう。
彼の両親は、ロビンフッドが若くて経験の浅い顧客をターゲットにし、危険な取引慣行に誘いこみ、不法な死、精神的苦痛の過失、不公正な商慣行、投資家が助けを必要としたときに必要で適切な顧客サポートを提供せず、知識も少ない投資家を食い物にしている、として提訴したのである。


<<イエレン新財務長官の役割は何なのか>>

ロビンフッドは発表資料で「カーンズ氏の死に大きな衝撃を受けた」とし、6月以降にオプションの提供についてさまざまな改善を加え、顧客の「経験要件を改訂」したと説明している。同社の広報担当者は、「ロビンフッドを責任を持って学び、投資する場所にすることに引き続き取り組んでいる」と語り、「私たちの使命は、すべての人の金融を民主化することです。ロビンフッドは、以前は金融システムから切り離されていた全世代の人々にとって、投資をより身近で気が遠くなるようなものにすることを目的として、モバイルファーストで直感的になるように設計しました。より多くの人々が彼らの財政を管理するのを助けるために、投資に対する体系的な障壁を常に打ち破っています。」 と述べている。
しかし今年の2月時点でも、それは、サインアップアンケートの一部として、アプリは「あなたはどのくらいの投資経験がありますか?」と尋ね、「なし」を選択すると、オプション取引はできないが、それを「あまりない」に変更すると、「オプションへようこそ」と、いとも簡単にアプリはオプション取引を承認する、その程度の改訂でしかない。これのどこに、「金融の民主化」や「責任をもって学ぶ」姿勢があるのであろうか。
このロビンフッドをめぐっては、前回取り上げたゲームストップ事件で、この2月18日に米下院金融サービス委員会の公聴会が予定されている。同委員会の議長であるウォーターズ氏(Maxine Waters)は、「ロビンフッドとこれに関与したヘッジファンドの一部との間に共謀があったため、ロビンフッドが取引を制限したかどうかについて懸念している」と語っており、ロビンフッドも召喚されている。
ここでの「共謀」関係を指摘されているのは、大手投資ファンドのシタデルである。ロビンフッドのビジネスモデルは、当然、無料の取引手数料にではなく、シタデルなどのマーケットメーカーへの注文フローの支払いに依存しており、ロビンフッドユーザーの投資活動を含むユーザーデータをシタデル証券に販売することで収益を上げている。収益を上げるためには、常に新しいユーザーを引き付け、獲得し続ける必要があり、なおかつリスクの高い高頻度取引やオプション取引にユーザーを巻き込まなければならない。これを、ロビンフッドのCEO・最高経営責任者ウラジミール・テネフ(Vlad Tenev)氏は「ヘッジファンドではなく、ウォール街に置き去りにされた人々を支援しています。アメリカの金融システムに取り残されたと感じた何百万人もの人々のために。私たちは、この瞬間を自分自身を改善し続ける機会として捉え、すべての人が金融業界全体にアクセスできるようにすることを約束します。」と述べている。すべての人々をマネーゲームのカジノに誘い込みながら、言い終わって舌を出しているような皮肉たっぷりの戯れ言と言えよう。
問題は、ロビンフッドと共謀関係にあるヘッジファンドと、バイデン新政権の財務長官ジャネット・イエレン氏が、密接な関係にあることが疑われていることである。
シタデルは、2018年2月に連邦準備制度理事会・FRBの議長を辞任して以来、イエレン氏に992,500ドルもの講演料を支払っている。もちろんシタデルだけではなく、2019年と2020年のイエレン氏の講演料、現金収入は700万ドルを超え、そのほとんどはウォール街の企業とヘッジファンドからのものであった。ウォール街の金融資本は、様々な違法な金融活動を日常茶飯事のごとく行っており、そのたびにSECやFRBや規制当局と掛け合い、ごまかし、罰金を支払っている。ごく最近でも、シタデル証券は、2020年11月13日、自主規制当局であるFINRAから、650万件の空売り取引に対して18万ドルの罰金を科されたが、シタデルは申し立てを承認も否定もせずに罰金を支払っている。
イエレン氏は近々にも、財務長官としてゲームストップ事件での取引調査に取り掛かると言われているが、本来ならゲームストップ・ロビンフッド・シタデル、そしてイエレン氏の密接な関係からして、関与すべきではないであろうし、関与すればあいまいな調査・決着になろうことが歴然としているのである。
連日、史上最高値を更新する株式市場のバブル破裂、カジノと化している株式市場を抑え込むためには、大胆な金融資本規制、金融取引税の導入、富裕税・累進課税の再構築といったニューディールこそが要請されているが、イエレン新財務長官の役割、バイデン政権の役割が厳しく問われているのである。
(生駒 敬)

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【書評】『その後の福島—-原発事故後を生きる人々』

【書評】『その後の福島──原発事故後を生きる人々』
             (吉田千亜、2018年9月刊、人文書院。2200円+税)

 福島第一原発事故から10年を経て、政府は「復興の加速化」という言葉を「早期帰還」や「福島再生」とセットで使用している。しかしこの状況を本書は、それは「実態としては原発事故の支援制度や賠償の終了も意味している」。そしてその中で、「『復興』、すなわち政府の思い描く原発事故の収束への流れの中で、被害を受けた一人ひとりが翻弄され続けてきた」と指摘する。
 本書はその一人ひとりの声を届ける。例えば次のように。
 「『私たちは原発事故後に、何度も、大きい選択、小さい選択を繰り返してきたけれど、選びたいと思う選択肢なんて、いつもなかった』と、ある女性は話している。原発事故の被害を受けた者としての実感であろう。それにもかかわらず、『でもあなたが選んだのでしょう』と無理解な言葉を投げつけられることもあったという」。
 またこうも語る。
 「『原発事故後の施策には、(判断を)待つことへの』支援がないんだよ」/原発避難の問題に悩む人に出会うたび、この言葉を思い出していた。まさにその通りだと思うことの繰り返しだったからだ。『待つ(=待機する)ことへの支援がない』ことは避難支持区域内避難者(強制避難者)に対してだけではなく、区域外避難者へも同じだった」。
 すなわち「国の原発事故後の政策はいわば国の方針に従うか、それとも従わずに自力で問題を解決するかを迫るものである。そのうえ、進路の選択は期限を切って決めさせ、待ってはくれない」。「国は被害者に決めさせているのに、住民が自主的に選択したことに仕立てて、必要な施策を打ち切り、選択の責任を被害者に転嫁し、自らの責任を放棄する」のである。
 それ故「被害者たちが追い込まれて仕方なく選択していることは、外からは見えにくい」という現実が生まれている。
 そして同様のことは、「不安」、「不信」という言葉をめぐっても生じているが、その構造を本書は次のように解明する。。
 安全だと散々言われていた原発が爆発し、放射性物質が原子炉から飛び出て放射線量が事故直後、数百倍、ひどいところでは数千、数万倍にまで上がった。ところがこれと同時に、これまでの公衆の被ばく線量限度の年間1ミリシーベルトという基準が、20倍の年間20ミリシーベルトまで引き上げられて、それ以下に地域は「安全」とされた。その後「除染」も行われたが、ホットスポットは点在し、生活環境の中にある。しかも廃炉作業、汚染水問題、使用済燃料プールの問題、デブリ(溶け落ちた核燃料)の問題等が山積していてその危険性や解決に要する期間などについては不確定なままの要素に満ちており、国・行政への「不信」は根強い。
 「では、それを察した国はどうしたか。『不信』に基づいた『不安』の問題を、住民たちの『理解力』の問題にすり替えてしまった。つまり、人々は大したことのない被害に対して過剰に反応するほど、『勉強不足』である、ということだ。これは、『不信』を抱えた被害者を見下す態度といえる」。
 こうして「国・行政側が、放射能汚染に対する住民感情として用いる『不安』という言葉は、『不安を抱える人の側の情報や性格に問題がある』というように、その責任を個人に転嫁する意味で使われている」。
 あるいはまた「健康影響」ということについて、本書は次のように憂慮する。
 「今後起こりうるのが『原発事故の健康影響はない』という主張が『差別』の語と一緒に語られることで、『差別はいけない』という一般的な感覚を持つ人の眼前に、正義の顔をして立ち現れることだ。/つまり、『差別』という言葉が用いられることによって、差別以外の被害すなわち健康影響の側面が隠され、それへの『不安』や『懸念』を示すのは『差別』を助長する『悪』であるという印象づけがなされる」。
 しかし考えてみれば、「『不安』を差別の助長につなげる人々や、開き直りを続ける事故の加害者こそが、悪事を働いているのだ」という批判こそが言われなければならないが、こうした状況は本書の「3 除染の事実」、「4 賠償の実態」、「5 借上住宅の打ち切り」等の各章で具体的で切実な問題として述べられている。
 しかもこのような状況のつくり上げに加担している住民の存在や自治体の対応という現実もまた深刻である。
 ある母親は、「原発事故直後には触ったことのなかったSNSを、情報収集のために使い始めた。そして目についたのが、『放射脳』という言葉だった。それは、放射能汚染を気にする人たちを揶揄する表現だ。そんなひどいことを言う人がいる、しかもそれが、どうやら自分と同じ町の母親のようだと知ったときも、驚き、傷ついた」。
 また別の主婦は、福島県郡山市の説明会場で、除染で出た土の処理について「埋めた場所を表示しないといけないのではないでしょうか」と質問した。ところが尋ね終わる前に「その男性職員は立ち上がって怒鳴った。/『どうしてあなたたちに教えなきゃいけないんですか!風評被害が出たら、どうするんですか。不法投棄されたらどうするんですか』」。その主婦は「呆気にとられ、思わず『すみません』と言って、その場を立ち去った」。
 あるいは原発事故から7か月後の2011年10月、同じく福島県郡山市で町内会による除染事業の説明会で──この頃にはまだ「除染業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガイドライン」(2011年12月)は制定されていなかったが──ある女性が、「若いお母さんやお父さんなどは、できれば被ばくしてほしくないので、年配の方にお願いしたのですが・・・。たとえばお父さんがいなければ、お母さんは子どもをおんぶして除染作業をしなくてはならないかもしれませんよね・・・」という至極当然の質問をした。
 しかしこのとき「会場内は『何を言っているんだ』とザワザワし始めた。/そのとき、壇上にいた市の女性職員がマイクを取り、そのざわめきを制するように言った。『長靴とね、マスクと、合羽を着ていたら、大丈夫なの!みんなでやるの!こんなに大変なときに、みんなで頑張らないでどうするの!』」。質問した女性が「呆気にとられていると、会場のあちらこちらから、パチパチと、拍手が湧いた」。
 この様子を見ていた主婦は後になってこう語っている。
 「私ね、放射能の怖さよりもずっと、こんな風に空気を変えていく人のほうが恐ろしかった。お国のために奉公しない国民は『非国民』だって言われた時代は、きっとこんな感じなんだろうって。そのショックが大きすぎて」。
 かくして「原発事故のこと、放射の汚染のことを語れない、放射線による健康影響に対する不安や、原発避難で引き起こされた生活の苦しさについて語れない」という状況が広がっている。しかし「その語りにくさもまた、政府がつくり上げたものである」。
 本書は最後にこう語る。
 「同じ原発事故被害者であっても、一人ひとりの現在地は違う。『寄り添う』と言いながら、その一人ひとりの抱える現実に、国が真っ先に目をつぶった。国と東電の起こした原発事故が、被害者の『自己責任』にされつつある。明るい、希望のある復興の報道だけを見て、原発事故は過去の話と思わないでほしい、と願っている」。
 一人ひとりの生活を引きずる重い書である。(R) 続きを読む

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【投稿】バブル破裂の前兆続発--経済危機論(39)

<<「急激な市場の下落リスク」>>
米株式市場が大きく揺れ出し、バブル破裂の前兆現象が続発しだしている。
1/22、米銀大手・シティバンクのレポートは「米株式指標はさらに50-100%上昇する可能性があり、バブルがいつ破裂してもおかしくない」と警告を発している。JPモルガン、ゴールドマンサックスなど、事実上すべての主要銀行・投資機関が「記録的な株価上昇の陶酔感が非常に近い将来に急激な市場の下落のリスクを急上昇させる」と警告しだしたのである。ゴールドマンサックスは、それを「米国株式市場の一角にはフロス(細かなバブル)が泡立つ兆しが見えている」と形容している。
1/27、「アマチュア投資家とヘッジファンドの間の激しい戦いにより、ウォール街の取引量は2008年の金融危機の最盛期に設定されたピークを超え、240億株以上、2008年10月の最高値を超え、パンデミックの開始時に設定された4800万の記録をも超えた」と報じられている(1/28 Financial Times)。
「アマチュア投資家が集まるRedditのr / WallStreetBets(ネット掲示板「レディット」)コミュニティのユーザー数は280万人から430万人に増加し、水曜日の60,000人強から、約316,000人がプラットフォームでオプションを購入すると発表している。」と、マネーゲームに集まる投機家の急増の実態まで報じられている(1/28 Financial Times)。そのプラットフォームが、売買手数料が無料のスマホ証券トレーディングアプリ・ロビンフッドである。
そして、「この1週間で株式取引量が急増し、ウォールストリートのオンラインブローカーは追いつくのに苦労しています。最近、Fidelity Investments、E * Trade Financial Corp.、Charles Schwab Corp.、Vanguard Groupのクライアントは、取引の実行が少し遅れたり、重要なアカウント情報に一時的にアクセスできなくなったりしています。」と、取引に追いつけない実態が報じられている(1/26、ウォールストリートジャーナル)。
こうした最中の1/28、米商務省が発表した2020年の米国実質国内総生産(GDP)速報値は前年比3.5%減と、1946年以来の大幅な落ち込みとなった。経済恐慌が進化した実体経済の疲弊を象徴するものであった。202

0年第4四半期の貿易赤字が、史上最悪の状態に陥ったことも明らかになった。
翌1/29の株式市場は乱高下激しく、ダウ工業株平均は3万ドルの大台を割り込み、2万9973.47ドルに急落、S&P500指数も74.61ポイント(1.97%)の急落、ナスダック総合指数も273.58ポイント(2.05%)、1万3063.58に急落、これら3大株価指数、いずれも昨年10/28以降、週間の下げ幅最大を記録したのであった。日経平均株価もリスク回避の売りが急増、534円03銭(1.9%)安の2万7663円39銭への大幅続落となった。 続きを読む

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【投稿】『感染症法』改正を巡る大混乱・コロナ対策はさらに迷走する

【投稿】『感染症法』改正を巡る大混乱・コロナ対策はさらに迷走する

                             福井 杉本達也

1 【懲役刑】で国民を強制収容しようとした政府の『コロナ対策関連法改正案』

自民党と立憲民主党は1月28日、『新型コロナウイルス特別措置法改正案』と『感染症法改正案』『検疫法改正案』の修正を巡り、『感染症法改正案』に盛り込まれた刑事罰を削除することで合意した。入院拒否者に対する「1年以下の懲役か100万円以下の罰金」は、行政罰の50万円以下の過料に変更する。

先に政府は、『感染症法』『検疫法』の改正を提案したが、【入院勧告】では、「入院勧告、措置の対象は、病状が重い者などに限定。入院措置に応じない場合や、入院先から逃げた場合は、1年以下の懲役か100万円以下の罰金」。【積極的疫学調査】では、「患者らが正当な理由なく虚偽答弁したり、拒否したりした場合は50万円以下の罰金」としていた。また、『新型コロナウイルス特別措置法改正案』では、知事は、感染状況を考慮して知事が定める期間、区域(市町村単位など)で事業者に営業時間の変更などを要請できる。正当な理由なく要請に応じないときは、命令できるとし、【罰則】を設け、「知事の命令に違反した場合、緊急事態宣言下は50万円以下、まん延防止等重点措置宣言下は30万円以下の過料。知事は事業者への命令麺付のため立ち入り検査と報告徴収ができ、拒否した場合は20万円以下の過料」とする改正案を閣議決定していた(福井:2021.1.23)。

今回の与野党合意では、「保健所の調査を拒否した人への刑事罰『50万円以下の罰金』も削り『30万円以下の過料』にする。緊急事態宣言下で事業者が時短営業や休業の命令に従わない場合の過料は『50万円以下』を『30万円以下』に下げる」。また、知事による「まん延防止等重点措置」の「時短や休業の命令を受け入れない際の過料は「30万円以下」から「20万円以下」に下げることとなった(日経:2021.1.29)。

2 ハンセン病の過去の反省の上につくられた『感染症法』の全面改悪を狙った政府

『感染症法』は、1996年の『らい予防法』廃止の経緯が示すように、過去の感染症対策への反省がある。結核やハンセン病の患者・感染者の強制的な隔離収容による著しい人権侵害、「無らい県運動」など国民の差別を助長する政策、1980 年代にはエイズ患者の個人情報報道や差別が引き起こされたことを深く反省するとして見直された。それまで感染症対策を担ってきた『伝染病予防法』などを廃止して、1998年に制定(1999年4月施行)され、2007年には『結核予防法』を統合している。

『感染症法』前文は「我が国においては、過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である。このような感染症をめぐる状況の変化や感染症の患者等が置かれてきた状況を踏まえ、感染症の患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症に迅速かつ適確に対応することが求められている。」とうたわれている。

ハンセン病は、らい菌による感染症で、その感染力は弱く致死率もごく低いものだったが、戦前は有効な治療法がなく、病気への社会不安が強かった。1942年プロミンが非常に効果のある特効薬であることが確認され、戦後、治療が劇的に変化した。しかし、その後も1996年の『らい予防法』の廃止まで、ハンセン病の強制隔離政策は延々と続けられた。当時、厚生大臣であった菅直人は、法の廃止が遅れたことを謝罪したが、それまでの国の政策の誤りについては一言も言及しなかった。そこで、1998年に九州の元患者らが原告となり、国の誤りを正式に認めさせるため国家賠償請求訴訟を起こした。当初はわずか13名であった。当時の厚生省では医官も事務官も含め国家権力に楯突く「一部の跳ね上がりの元患者が訴訟を起こしたが、無視する存在である」との認識であった。しかし、2001年  5月の熊本地方裁判所の判決は、政府の『らい予防法』と政策による非行を断罪した。厚生労働省、法務省の官僚たちは「国家の無誤謬性」を否定する判決に動揺し、「控訴して当然」という雰囲気があったが、政治家主導で控訴を断念、判決確定後、小泉首相が謝罪、衆参院で謝罪決議が採択された。

今回、政府が提案した『感染症法改正案』における【懲役刑】・【罰金刑】は、この『感染症法』の成立と熊本裁判の経緯を根本から無視するものである。国は裁判では敗訴したものの、戦前から連綿と続く人権無視・強制隔離思想には何の反省もないことが図らずも明らかとなった。

3 「無らい県運動」の過去を反省しない全国知事会の低い人権意識

全国知事会が1月9日に政府に出した『新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言を受けた緊急提言』において、「保健所による積極的疫学調査や健康観察、入院勧告の遵守義務やこれらに対する罰則」を求める文言が入った。しかし、この提言には、過去の「無らい県運動」の反省がすっぽり抜け落ちている。「無らい県運動」は1930年代から1960年代にかけて、すべての「らい病」患者を療養所に隔離・強制収容し、在宅患者等を県内から一掃しようというものであった。運動は徴兵においてハンセン病患者を徹底して排除し、“強力な軍隊”つくろうとしたものであり、内務省=都道府県の官僚組織と警察機構が動員され、官民が一体となって患者を摘発し強制的に療養所へ送り込んだ。ハンセン病患者を市民が発見した場合、警察などへ通報して患者を強制収容することを奨励された。戦後も「無らい県運動」は厚生省の通達により、予防事業を強力かつ徹底的に実施するように求められ、都道府県・保健所を中心に展開された。1958年には療養所の収容人数はピークに達した。

もし、今回【懲役刑】その他の罰則により、隔離・強制収容を行うならば、1998年につくられた『感染症法』のを趣旨を根本的にひっくり返すものであり、「警察権力にくっつく保健師」に戻すということとなり、この間、住民との信頼関係で成り立っている地域の保健活動が、根底から崩されてしまう(橋本英樹東大教授(公衆衛生学)「罰則は、効果がないどころか公衆衛⽣を破壊する」buzzfeed news2021.1.15)。

1990年代~2000年代、各県においてハンセン病元患者の「里帰り事業」というものが展開された。療養所から一時的に各県内の地元に里帰りするという趣旨であるが、もちろん出生地には帰れない。帰れば家族や親戚一同に“迷惑”がかかる。そこで、バスで療養所から各県に1泊2日や2泊3日程度の移動して地元の観光をしてもらうというもので、もちろん宿泊場所も民間旅館・ホテルは受け入れ拒否なので厚労省が所管する社会保険関係の宿泊所を利用する。そこで主催者である県が慰労会を開く。ある時、出席した幹部の1人は、事業を担当する保健師の職員に「○○さん、ところでうつらないんだろうね」と質問した。元患者であると説明しているにも関わらずである。これが、医学的知識のある(?)官僚組織の根強い差別の実態である。熊本裁判後、各県の知事は元患者に「無らい県運動」を謝罪するために療養所を訪れたが、全国知事会の今回の声明を見るかぎり形式的な謝罪に過ぎないことは明らかである。

4 ただただ「罰則」ありきの『感染症法』改正を巡る大混乱で法理論はぐちゃぐちゃ

郷原信郎弁護士は、現行『感染症法』19条は、感染者に対し「勧告」に従わない場合には、都道府県知事として、入院の「命令」が出され、それに応じない場合に、都道府県知事(所管の保健所職員)が入院させることができるとされている。感染症法では、勧告に従わない者は、いきなり「入院させることができる」との規定により「入院措置」をとることができることになっている。現行法で、「入院勧告」に従わない場合に、本人の意思によらない「強制的な入院措置」をとることを認めているのに、「入院拒否」に対する罰則を適用することの意味がわからない。「罰則の導入以前に、「勧告」「入院措置」の制度の関係やその法的性格自体が曖昧であることに重大な問題がある。その点を明確」にすべきであると述べている(郷原信郎:201.1.25)。

「入院勧告」「入院措置」の関係すら明確ではないという法律の体系的な不備があるのに、それに目を背けたまま、政府の感染症対策の失敗の連続を糊塗する目的で、入院拒否等への罰則の導入が行われようとしている。「行政罰としての過料」は、「行政上の義務」に違反した場合に科されるものだが、今回、「入院拒否」「入院者逃亡」に対して科される「過料」の前提となる「行政上の義務」というのは、いかなる法律上の根拠によって生じるのかという点だ。「入院措置」が、本人の意思に関わりなく行われる「即時強制」だとすれば、強制的に入院させられる者には、入院すべき「行政上の義務」は生じない。要するに、行政側が一方的に「入院措置」ができるので、患者には「行政上の義務」が生じないものに過料が科されるのか?与野党の修正協議では、この法律の構造上の問題が議論されていない。

郷原信郎弁護士は「本来、内閣提出の法案については、内閣法制局の審査が行われるはずだ。そして、罰則付きの法案については、そもそも、感染対策の面から全く必要がないどころか、かえって感染拡大のおそれすらある上に、法律の措置体系との関係からも疑問がある罰則導入の法案を閣議決定し、国会提出したこと自体に重大な問題がある。法務省刑事局の「罰則審査」が行われ、改正法の内容、罰則の必要性、罰則の構成要件の明確性、法定刑の相当性などが審査される。今回の感染症法改正案による罰則導入については、一体どのような審査が行われたのだろうか。「入院措置」がどのような場合に、どのような要件で実施されるのかを十分に確認したのだろうか。そもそも、感染対策の面から全く必要がないどころか、かえって感染拡大のおそれすらある上に、法律の措置体系との関係からも疑問がある罰則導入の法案を閣議決定し、国会提出したこと自体に重大な問題がある。感染法を所管する厚労省が、罰則導入の必要性を判断し、検討した上で法案を提案したようには思えない。度重なるコロナ感染対策の失策を挽回すべく、官邸主導で罰則を導入しようとしたのであろうか。」と指摘する(郷原:2021.1.29)。与野党協議を含めてぐちゃぐちゃである。新型コロナ対策は医療体制でも、PCR検査でも崩壊しているが、法理論的に崩壊している。

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【投稿】中道主義で逡巡するバイデン新政権--経済危機論(38)

<<「トランプ騒乱」がもたらしたもの>>
トランプ前米大統領が目論んでいた、政権居座りクーデターの一連の策動は、1/6のお粗末な議会襲撃という「トランプ騒乱」によってことごとく失敗してしまったうえに、次回大統領選に向けたトランプ氏再起の基盤まで大きく損ねてしまった。トランプ氏は前回2016年のの6900万票を上回る7400万票も獲得しながら、バイデン氏の8100万票に700万票の差をつけられ、「票が盗まれた」とするトランプ氏のから騒ぎはことごとく退けられ、身内からさえ見放され、敗退したのである。
経済危機の進行と格差拡大をより一層進行させる自由競争原理主義の破綻が、パンデミック危機と結びつくことによって、1930年代経済恐慌を上回る深刻な事態に直面して、トランプ氏は、今やバブルと化し、マネーゲームと化してしまった史上最高値の株高を自慢するだけで、パンデミック危機を放置、拡散させてしまった、その必然的帰結がトランプ氏の敗北であった。そこに根本的な敗北の要因があったことが第一であろう。しかも、トランプ氏は、この危機を回避し、克服する路線を何も提起できず、代わりに打ち出したのが民族主義的差別感情を煽り立てるアメリカン・ファースト、アメリカ第一主義路線であった。それは、必要不可欠な国際的協力を台無しにするばかりか、アメリカ社会を構成する多様性に富んだ現実を無視した、差別主義に媚びを売る、Qアノン(QAnon)をはじめとする陰謀論を蔓延させ、分断と分裂、暴力を煽る、その底の浅い路線であった。11月の選挙では、数十人の自称QAnon信者が立候補し、2人が当選している。

そうした陰謀論や「票が盗まれた」論の頂点が1/6の「トランプ騒乱」であった。しかし、ペロシ下院議長の机上に土足の足を投げ出して悦に入るなど、その児戯に等しきお粗末さを露呈させてしまったことによって自ら墓穴を掘り、これまでの根強い支持層からさえ見放される事態を招いてしまったのである。
この事態の中での唯一の救いは、トランプ氏が政権居座りのために隙あらばと画策していた対イラン、対中国の軍事的威嚇・挑発行為までが封じ込められてしまい、世界的な軍事的危機へのより一層危険な展開が抑え込まれてしまったことであろう。爆撃機や軍艦を徘徊させはしたが、取り返しの利かない軍事的危機は何とか回避されたのである。
しかし、そうした路線がもたらしたアメリカ社会と国際社会の亀裂と分断を修復することは容易なことではない。事態を転換させ、経済危機とパンデミック危機を克服する根本的な政策転換、ニューディールこそが要請されているのである。 続きを読む

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【投稿】私的権力が「スイッチを切るように」表現の自由を剥奪するクーデター

【投稿】私的権力が「スイッチを切るように」表現の自由を剥奪するクーデター

                             福井 杉本達也

1 SNSの遮断はプラットフォーマーによる公然たるテロリズム独裁

1月6日の連邦議会乱入事件を巡ってのトランプ氏のSNS停止について、日経さえ、「暴力扇動の危険があると8日、ツイッターはトランプ米大統領のアカウントを停止した。ほかの2社も対応は似る。…暴力を避ける緊急措置だったかもしれないが、まるでスイッチを切るように個人や組織SNSから排除できるテック企業の力が明白になった。表現の自由のあり方を企業が決めていいのかとメルケル首相がツイッターの対応を問題にするなど批判の声が上がる。」(村山恵一・日経:2021.1.20)と書かざるを得なかった。より正確にはメルケル首相は「永久停止を表現の自由を侵害する『問題ある行為』と指摘、大手IT(情報技術)企業の決定ではなく法整備を通じて発言を縛るべきだ」(日経:2021.1.13)とプラットフォーマーの独善的行為を非難したのである。

かつて、コミンテルン書記長のディミトロフは「ファシズムは、金融資本の最も反動的な最も排外主義的な最も帝国主義的な分子による公然たるテロリズム独裁」であると定義した。全くの私的権力であり、金融資本の代弁者であるGAFAなどのプラットフォーマーが、法の縛りも何もなく、辞任間近とはいえ米国の現職大統領のSNS発言を、「まるでスイッチを切るように」いとも簡単に排除するのは、公然たるテロリズム独裁以外の何ものでもない。米国では堂々と軍産複合体・金融資本とその代理人が言論を統制する時代に入ったと言わざるを得ない。法的権限を有しないということは、私的権力が国を介さずに直接統治する体制を築こうとするものである。これは、ファシズム体制を目指すクーデターである。

バイデンはネオコンと関係が深く、軍産複合体・金融資本をバックにしている。既にプラットフォーマーは各国政府を検閲の対象にしている。周知のように、検索サイトでは軍産複合体・金融資本に都合の悪い情報は検索結果の上位に来ることはない。まずい情報は検閲で「非表示」となる。スノーデンが指摘したように、メール、チャット、ビデオ通話、ネット検索履歴、携帯電話での通話など、世界中のあらゆる通信経路を通過する情報のすべては検閲されており、NSAやCIAの手元に入る。「情報通信産業は利益の追求という『経済的インセンティブ』に突き動かされながら、いまや世界の軍産複合体の中心部で、この広範な戦争と支配の構造を下支えしている」とスノーデンは早くから指摘していた(小笠原みどり:「スノーデンの警告」:2016.8.2)。

米大統領選中の10月18日、ボリビアでは米主導のクーデターで倒されたモラレス前大統領派のアルセ元経済・財務相が当選したが、SNS上でも、西側のメディアでもほとんど無視された。2019年4月フェイスブックはコレア・エクアドル前大統領のページを閉鎖した。ベネズエラでは2020年5月CIAによるクーデター計画が失敗したが、ほとんどSNS上では話題にもならない。反対に大統領を僭称するグアイドのフェイクニュースがSNSを飛び交う。米軍にとって都合の悪いアフガンでの情報はSNS上に載ることはない。米軍と同盟しアフガンを侵略する豪軍が39名もの民間人を虐殺したと豪国防軍が調査結果を発表したが(日経:2020.11.20)、中国がこの事実をSNS上に掲載すると豪はこれを削除するように要求した。日経社説はこの豪の不当極まりない要求を「中国は豪への威圧を止めよ」と擁護した(2020.12.16)。

2 SNSが軍産複合体・金融資本のプロパガンダの道具であることを明らかにした「アラブの春」

ツイッターは、2007年の全世界の1日ツイート数は約5,000回ほどであったが、イラン大統領選に介入しようとした2009年には1日のツイート数が250万回を超える(Wikipedia)。いわゆる「アラブの春」から今年で10年になるが、その頃から、SNSが盛んに大衆の扇動目的に利用されるようになった。2011年1月にチュニジアから始まり、「体制転換を求めるうねりは…当局が言論統制を試みても、衛星放送やSNSで情報は瞬く間に伝わった」。その後、エジプト・リビア・イエメンでは政権が崩壊したと書いている(朝日社説:2021.1.14)。シリアでは「Amazon.com、Facebook、ウィキペディア、YouTubeのようなウェブサイトへの接続を制限していたが、2011年1月1日以降は全ての国民がブロードバンドインターネット接続を許され、これらのウェブサイトに接続」(Wikipedia)できるようになり、反政府派の武力闘争が強まった。しかし、シリアではアサド政権は持ちこたえた。そこで、2014年6月に突如シリア領内のラッカを「首都」とする「イスラム国」(IS)が発足したとし、2014年8月12日のベイルート発信のロイターは「イラクで国土の約3分の1を制圧するまで勢力を拡大したスンニ派原理主義組織『イスラ ム国』(IS)。当初は国際社会から軽視される存在だったが、2011年にイラクを撤退した米軍に再び軍事介入を余儀なくさせるなど、中東で強力かつ永続的な勢力になろうとしている。」と全世界に配信した。米人惨殺シーンのネットへの画像アップは米国民がイスラム過激派ISを敵視するように仕向けるプロパガンダであった。米人惨殺をIS制圧の口実にし、オバマ政権のイラク・シリア空爆が正当化され、ISは全世界から、残虐なイスラム過激派として宣伝された。当時のSNSにはトヨタ車のピックアップトラックで隊列を組むISの画像が何回も投稿され、それがTVで放送されている。
ところが、2015年9月にロシア軍がシリアの防衛戦に介入することによって、こうしたSNSを利用した大衆扇動とISの正体が暴露されてしまう。2015年12月2日のロシアのテレビ『RT』の動画報道を見て物理学者の藤永茂アルバータ大学理学部名誉教授はこう書いている。「大空の下、ISの大型石油輸送トラックの大集団がシリアの油田とイラクの油田から盗みとった石油をトルコ内へ運び込む有様が詳細明瞭な動画像、静止画像で示され、画面上を動くポインターで適切な説明が行われます。具体的な数字としては、32の精油コンビナート、11の精油工場、23の石油輸送基地、1080台の石油タンカートラックがロシア空軍機によって破壊されたと報告されています。巨大な石油タンカートラックの大集団が蝟集し、蠢き、長蛇の列をなして、シリア、イラクからトルコ国内に流れ込み、逆方向に、武器や物資を運ぶと思われるトラックの大行列を見るのは、誠にショッキングな経験で、どうしようもない虚脱感に見舞われます。一つの映像は、蝟集した3000台のタンカートラックを示します。ISのこの石油輸送に8500台のタンカートラックが動員されているのだそうです。WHAT? WHAT IS THIS!! –– 正気な米国人というものがいるのなら、こう叫ぶに違いありません。」(藤永茂「私の闇の奥」2015.12.9) 続きを読む

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【書評】『新危機の20年―プーチン政治史』(下斗米伸夫著 朝日新聞出版)

【書評】『新危機の20年―プーチン政治史』
(下斗米伸夫著 朝日新聞出版 2020年10月 1700円+税)

                            福井 杉本達也

1月11日、米下院議長のペロシは米議会占拠事件にかこつけてトランプ大統領を弾劾訴追するにあたり、 ‘A Complete Tool of Putin, This President Is’ 7 times Putin, Putin, Putin, Putin, Putin, Putin, Putin,(この大統領はプーチンの完全な道具。プーチンはアメリカと世界の民主主義を破壊しようとしている…。プーチン、プーチン、プーチン)と虚偽を繰り返した。あたかも、世界のあらゆる場所で起こった事件はロシアのプーチン大統領に全ての責任があるかのようにである。欧米ではプーチンを独裁者ヒトラーになぞらえ、崩壊したソ連帝国の復活を目指しているとの批判もある。特に米民主党の軍産複合体・金融資本の影響下にある日本のマスコミなどはプーチンのロシアを非民主的な独裁国家と一方的に報道する傾向が強い。例えば1月13日の日経は坂井光論説委員の「プーチン体制という名の怪物」という評論を掲載している。最近の英調査報道機関発表の野党指導者ナワリヌイ氏の“暗殺未遂事件”を巡っての一方的報道などもその典型である。本書は、こうした日本における一面的なロシア観を正すには最適であり、プーチン政権20年の政治史、遡ってソ連邦崩壊からエリツィン時代も含み、「選書」という体裁ではあるが、かなり専門的な本である。

1 ウクライナ・クリミア問題とNATOの東方拡大

ロシアと欧米の関係を決定的に冷却させたのはウクライナ・クリミア問題である。著者は「2008年4月のNATO首脳会談で米国ブッシュ政権が、NATO東方拡大をウクライナやジョージアへ広げることを決めたことが8月のジョージア紛争、14年2月のウクライナ紛争の理由になった…つまり米国はロシアに対し旧ソ連圏でもヘゲモニーを承認することを求めた」。当時、メドベージェフは妥協的であったが、プーチンはこれを拒否した。そして、「多分に米国内政上の理由から拡大したNATOが、しかも『革命の輸出』というかつてのソ連的やり方で、ロシアにとっては譲れないクリミアにまで到達した地点で、ハードなやり方で対抗した。それはユーゴ崩壊、コソボ紛争、ジョージア戦争をへて米国が進めた展開の延長ではあったが、従来とは異なってロシアにとって引き下がれなかった。こうして協調から対抗を含む秩序へと国際社会は変わった」という。ウクライナのマイダンクーデターを担ったのは、米CIAが訓練したネオナチであるが、それを指揮したのがネオコン派のビクトリア・ヌーランドである。「ヌーランド国務次官補は米国ウクライナ協会の講演で、ソ連崩壊後約50億ドルを関係NPOに支払ったと述べている。…クリントン国務長官に近い彼女は同年1月にクッキーを持ってキエフのマイダン派を激励」している。そのヌーランドをバイデン次期政権は国務次官に任命するとしている。マイダンクーデターをホワイトハウスから指揮したのはバイデン副大統領であった。

2 対米関係―トランプ政権のロシア・ゲートとはなんだったのか

著者は「トランプ共和党政権は90年代から米国政界の『超党派的でネオコン・リベラル的な介入主義』コンセンサスがもたらした中東やロシアなどでの対外政策の挫折や隘路を修正し、『国益』に基づいたEUやロシアを含めた対話と『取引』をもたらそうとした。共和党の古い伝統に基づいたバランス外交の復活である。ロシアとの対話復活はその中心でもあった」。しかしトランプのこうした政策は米ロの緊張を緩和するもので、軍産複合体・金融資本にとっては好ましくない。そこで「退任予定のオバマ大統領は大統領選挙に外国政権が関与したとして捜査当局に調査させた。…この結果深刻化したのがロシア・ゲート事件である」「その政治的効果は明確で、就任直後の対ロ打開は国内圧力で挫折」してしまう。結果、2019年12月の『米国家安全保障戦略』において「ロシアが中国と並んで、米国の『国益と価値観の対極にある修正主義勢力』であると位置づけられ」米ロ関係は冷戦終結後最悪となっていると書く。 続きを読む

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【投稿】トランプ騒乱と株式市場--経済危機論(37)

<<自ら、墓穴を掘る>>
1/6、「集会に来てくれ、ワイルドになるぞ!」と自ら呼びかけたワシントンでの「ワイルド・プロテスト」・❝荒々しい❞抗議集会でトランプ大統領は、この集会に引き続く一連の事態の中でまったくそのお粗末な姿を米国内はもちろん、全世界にさらけ出してしまった。ホワイトハウス近くの集会の壇上から、文字通り程度の低いワイルドさで、大統領選の結果を民主党・バイデン氏に最終的に確定する議会を威嚇し、「盗まれた選挙」を取り返すために、議会に行って選挙の手続きに抗議せよと叫び、議事堂への行進を呼びかけ、自らも共に議事堂に向かうことを示唆したのであった。ところが、自らはホワイトハウスに逃げ込み、一方、暴徒と化した参加者がやすやすと議事堂に導き入れられ、審議を中断させ、南軍の旗やトランプの旗を振り回し、上下両院を我が物顔にまるで物見遊山のごとく占拠したのであった。その上、ガラス窓をぶち壊し、備品やパソコン、書類を盗む事態の中で、催涙弾が発射され、死傷者が出だすや、トランプ氏はうろたえる。ホワイトハウスのスタッフがこんなことはやめさせるべきだと助言すると、「彼らを非難したくない」と駄々をこね、結局はツイッターで「平和的な行動を。暴力はなしだ!」「あなたたちが怒っているのは正しい。選挙が盗まれたのです。 しかし、今は家に帰りなさい、私たちはあなたがたを愛しています」とサポーターに呼びかけたのであった。規制を受けるツイッターに代わって、内容検閲なしの保守系SNS・パーラーでトランプ・サポーターに「1/6、ワシントンに向かうすべての愛国者たちよ、武装せよ!」と拡散させ、銃や火炎瓶、こん棒、爆弾まで用意させ、ワイルドな抗議を呼びかけていた本人が、いまさら、何をかいわんや、まったくの恥辱と大失敗の醜態と言えよう。
1/5の南部ジョージア州の決選投票で共和党現職2議員が当初は優勢であったにもかかわらず敗退し、自らの足場であった上院多数支配をも明け渡さざるを得なくなったのも、トランプ氏自身が招いたものであった。トランプ氏の巻き返しは、自ら、墓穴を掘ることによって、あらゆる段階で破綻し、失敗したのである。
1/20のバイデン新政権就任式まで残された日々はわずかであり、トランプ政権居座りのために、就任式ぶち壊し行動や、対イラン、対中国の軍事的威嚇・挑発行為に乗り出すことが懸念されているが、高官が次々と辞任する政権、与党共和党の事実上の分裂という事態の中では、それももはや封じ込められてしまっていると言えよう。 続きを読む

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【投稿】球磨川水系の治水は川辺川ダム建設に頼らずに―自然観の転換と川との共生を

【投稿】球磨川水系の治水は川辺川ダム建設に頼らずに―自然観の転換と川との共生を

                              福井 杉本達也

1 熊本・球磨川支流の川辺川ダム建設再開へ

2020年7月豪雨で氾濫した熊本県・球磨川流域の治水対策として、蒲島郁夫知事は11月19日、球磨川支流の川辺川ダム建設(流水型ダム:下部にある水路から常に放流する。一定量を超える水がダムに入ると水位が自然に上昇し、川の流量を制限することで治水機能を発揮する)を容認すると表明、2008年にダム建設に反対して以来の看板政策であった「ダムによらない治水」を転換した。7月豪雨では65人が死亡、流域で6千戸超が浸水している。今後、国交省と県は流域治水の中心にダムを据えた具体策を検討することとなる。長年止まったままであった大型公共事業が復活するのは異例である(福井:2020.11.20)。川辺川ダムをめぐっては、地元の漁⺠、住⺠は長年にわたり建設に反対し、2001年には球磨川漁協が⼆度にわたって国交省が提⽰した補償案を否決している。2008年には地元・ダム建設予定地の相良村⻑、⼈吉市⻑、県知事が川辺川ダム建設反対を表明し、2009年に国が中⽌を表明していた。

2 川辺川ダムがあれば浸水面積を6割減らせたという国交省の大嘘

10月6日の西日本新聞によると「国⼟交通省九州地⽅整備局は6 ⽇、球磨川流域の氾濫により同県⼈吉市付近であふれ出した⽔量が5200万トンに上るとの推定結果を公表した。併せて、11年前に建設が中⽌された川辺川ダムが 存在した場合のシミュレーションを発表。ダムの貯⽔によって氾濫の⽔量は約 600万トンに抑えられ、同市付近の浸⽔⾯積が6割程度減少するとした。」(2020.10.6)。

しかし、このシミュレーションはダム建設ありきの付け焼刃的に作られたものである。大熊孝新潟大学名誉教授は洪水後の早い段階で「今回の洪⽔位は過去最⼤といって過⾔でない。⾬量や⽔位・流量の変化状況を⾒ると、ほぼ同時刻の7:00頃に全川で急激な⽔位上昇があり、狭窄部下流ほど豪⾬があり、激しい⽔位上昇に⾒舞われている。川辺川ダムがあったとして、そこへの流⼊のピークは五⽊宮園の⽔位から7:00頃であり、その時すでに球磨川本川では上流から下流まで⽔位が急激に上昇し、⼤きな被害を発⽣させていたのである。⼈吉では、4⽇10:00頃に最⾼⽔位に達したようであるが、7:00頃にはすでに河道の流下能⼒約4000㎥/sを超 え、洪⽔流量は5000㎥/sに達し、堤防を越流して、⽔害が発⽣していた。川辺川ダムからの洪⽔流下時間 を考慮すれば、川辺川ダムは存在していたとしても、⽔害軽減にはほとんど役⽴たなかったと考えられる。ダムサイト下流の四浦 で404㎜の降⾬量を記録しており、川辺川ダムサイト下流域の出⽔も⼤きかったと考えられる。」(大熊孝「2020・7・4 球磨川⽔害覚書 −川辺川ダムがあったとして⽔害を防げたか?」2020.7.20)と指摘している。

国交省九州地方整備局の資料:「氾濫を考慮した河道内の再現流量」(2020.10.20)においても、川辺川合流後の球磨川本流:人吉地点で、AM6時には4,600㎥/sを超え、7時には5,000㎥/sを超えており、人吉地点の計画高水流量4,000㎥/sを大幅に超過し氾濫が始まっていたことがわかる。一方、球磨川本流合流地点を2.27km遡った川辺川:柳瀬地点では6時現在で2,600㎥/sであり、3時間後の9時に3,404㎥/sのピークを迎える。検討委員会資料では川辺川ダムがあったと仮定して、4時前後から洪水をダムに貯蔵する計画をたてた。人吉まで流下に2時間かかるとすれば、氾濫する6時に間に合ったのかどうか?しかも、4時前後にはダム予定地点で60.4㎜/時を記録している(国交省九州地方整備局『第2回令和2年7月球磨川豪雨検証委員会 説明資料』:2020.10.6)。ダム操作員はさらに豪雨が酷くなると考えたとしてもおかしくない。4時時点においては洪水をダムに貯留せずに放流を続けた可能性もある。

また、人吉市街で球磨川本流に合流する「山田川からの越水による浸水開始時刻は、証言などから6時頃と想定される。」7時半頃には「山田川からの氾濫水が住宅地へ激しく流入すると共に、球磨川の氾濫開始も確認され、青井阿蘇神社付近等での急激な水位上昇も確認される。」(『検討委員会資料』2020.10.6)。つまり、球磨川本流からの氾濫よりも前に支流である山田川からの氾濫が起きていたのである。山田川は川辺川とは水系が異なる。国交省のウソも極まれりである。国交省は事後的にダム建設に都合の良いように数字を拾い上げ、全ての災害被害を「川辺川ダムがあったら」という話にもっていこうとしているのであるが、時間的にも、地域的にもつじつまがあわない。まさに後出しジャンケンである。

大熊氏は球磨川⽔系の特徴について「⼤きな⽀川としては川辺川、万江川(まえがわ)があるぐらいで、あとは⼩さな川が本川に直⾓に合流する形態をしている。どの⽀川からも同じように洪⽔が本川に流れ込むため、本川では上流から下流まで同時に⽔位が上昇し、同時に最⾼⽔位に達し、その最⾼⽔位は⻑い時間継続する。⼈吉盆地の下流から⼋代の河⼝付近まで、⻑い狭窄部が続く。」(大熊:上記)と書く。もし、流域面積470㎢の川辺川水系よりもさらに広い604㎢の流域面積の球磨川本流上流部において、今回豪雨よりも多い雨が降った場合にはどうなるのか。ダムサイトの豪雨のピークが8時前後だった場合はどうなのか。検討委員会ではそのような議論は一切なされていない。今回のような1965年7月の豪雨をはるかに超え、江戸時代の1669年(寛文9年)の豪雨(青井阿蘇神社の楼門が約1m浸水。死者11人、浸水家屋1432戸)以上の豪雨災害の検討にあたり、わずか3か月で結論を出すというのはあまりにも杜撰である。 続きを読む

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【投稿】「暗黒の茶番劇に幕を下ろすとき」--経済危機論(36)

<<1月5日か、1月6日か>>
12/28付け米タブロイド紙ニューヨーク・ポストは、1面トップにトランプ氏のうつむく写真を掲げ、「Mr. President STOP THE INSANITY」(大統領 狂気を止めなさい)と太文字を配した。同紙社説は、「敗北を受け入れよ」と題して、「暗黒の茶番劇に幕を下ろすときが来た」と断じている。
そしてトランプ氏に対して、来年の1月5日について考えるべきで、1月6日について考えるのをやめなさい、と諭している。1月6日は、上下両院合同会議で選挙人投票の結果が正式承認される日であり、それに異議を唱え、覆そうと呼びかけるのは「非民主的な政変を後押しする行為だ」と厳しく批判、むしろ共和党の将来に重要なのは、同党が上院の過半数を確保できるか否かを左右する1月5日の南部ジョージア州での上院選2議席の決選投票だと強調し、上院選に関心を集中させるべきだと諭している。民主党が両議席を制して上院の過半数を奪回した場合、共和党でのトランプ氏の影響力が消滅してしまう、との警告である。
ジョージア州では現実に、共和党の現職2候補が12/27時点で「投票総数で全般に4ポイントリードしていたが、大統領のおかげで消え去った」と報じられる事態を招いている。1月5日の再選挙結果は、民主党のバイデン新政権にとっても上院過半数をめぐる決定的な重要性を持つことは間違いない。

同社説は、「大統領、あなたが失ったことに腹を立てていることを私たちは理解しています。しかし、この道を進み続けることは破滅的です。私たちはこれをあなたを支持し、あなたを支持した新聞として提供します。あなたがあなたの影響力を固めたいなら、将来の復帰のための準備さえしたいのであれば、あなたはあなたの怒りをより生産的な何かに向けなければなりません。」と結んでいる。
アメリカの主要紙をフェイク報道と断じて購読を停止し、ニューヨーク・ポスト紙を愛読していたトランプ氏にとっては痛撃と言えようが、同紙の言う「狂気の沙汰」に陥っているトランプ氏にはもはや聞く耳もなしであろう。

<<「ワイルド・プロテスト」>>
さらにこういう事態に追い込まれているからこそ、より一層危険で破滅的な、一触即発の挑発行為が危惧されている。警戒を強める国防総省と米軍幹部は、「1月20日の大統領就任式まではどんな命令があるかわらない。その時のための秘密の対応策が作られている」と報じられ、「トランプが民兵組織や親トランプ派の自警団を動員して、政権移行の邪魔をさせたり、首都ワシントンに暴動を引き起こしたりする可能性」、それに乗じた戒厳令導入まで論じられている。実際、大統領恩赦を受けたトランプ政権の最初の国家安全保障担当大統領補佐官を務めたマイケル・フリン氏は、「軍を使って選挙のやり直しを」直接トランプ氏に提案してさえいる。トランプ氏は1月6日にワシントンDCでの「荒々しい」大抗議(’wild’ protest in DC on January 6 )集会への期待ををすでに表明している。危なっかしい思惑がむき出しである。
そして、国内にとどまらず、対イラン、対中国に対する軍事的威嚇・挑発行為は、より一層事態を悪化させ、一気に世界的な危機に拡大させかねない可能性さえある。国内、国外、いずれの危険な道をトランプ氏が選択したとしても、徹底的な孤立化は避けがたいし、それは自滅の選択と言えよう。
これまで「二期目」政権を公言して居座りを画策してきたトランプ政権ではあるが、もはや共和党自体がバイデン新政権誕生を認めざるを得ない事態に追い込まれており、一縷の可能性はあるとはいえ、巻き返しは封じられ、敗退を余儀なくされるであろう。まさに、「暗黒の茶番劇に幕を下ろすときが来た」のである。
トランプ政権がここまで追い込まれたのは、昨年来の経済危機の進行に対して、打つ手が1%の富裕層・大独占資本を優遇する減税と野放しの自由競争原理主義、アメリカンファーストの貿易戦争、社会的セーフティネットの縮小・削減政策でしかなかったこと、これが第一。そして決定的なのは、パンデミック危機に対して無防備な傍観主義で新型コロナウイルスの蔓延を野放しにさせ、経済危機をより一層広範かつ深刻なものとさせたこと、にあったと言えよう。
(生駒 敬)

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【書評】『日本の無戸籍者』(井戸まさえ、2017年、岩波新書、840円+税)

【書評】『日本の無戸籍者』
   (井戸まさえ、2017年、岩波新書、840円+税)

 2020年12月24日(木)産経新聞の記事である。
 「大阪府高石市の民家で9月、住人の高齢女性が餓死していたことが24日、分かった。
女性は40代とみられる息子と2人暮らしで、いずれも無戸籍だった。息子も衰弱し
て一時入院し、『無戸籍だったので助けを求められなかった』などと周囲に話してい
るという。(略)」
 何とも痛ましい事件であるが、本書はこの記事にある「無戸籍」問題を取り上げ、その背景を探る。本書はこう語る。
 「人が生きるうえで必要な権利は、出生に始まり死亡により消滅する。日本人にとってはその権利能力形成を行ない担保するのが、『戸籍』である。
 無戸籍者が存在するということは、まさにその担保にアクセスできない国民がいる、ということだ。かれらの多くは本来持つはずの権利も、それを行使する機会も奪われたまま生きざるを得ない。声をあげることすらおぼつかないため一般の国民より弱い立場に追いやられ、本来保護やケアがより必要な存在であるにもかかわらず、むしろ逆に『行政的にはそもそも存在しない』、福祉の対象外として扱われているのが常である」。
 なぜ無戸籍者が生まれるのか、本書は六つの理由をあげる。
 ①「民法七七二条」が壁となっているケース・・・民法七七二条の摘出推定の規定により、前夫を子の父とすることを避けんがために出生届を出さない/出せないケース。
 ②」「ネグレクト・虐待」が疑われるケース・・・親の住居が定まらなかったり、貧困その他の事情で、出産しても出生届を出すことまで意識が至らないか意図的に登録を避けるケース。
 ③「戸籍制度」そのものに反対して出生届を拒むケース。
 ④「身元不明人」ケース・・・認知症等で家を出てしまい身元の確認ができないケース。
 ⑤戦争・災害で戸籍が減失したケース・・・空襲や津波で戸籍原本と副本がともに破損し、復活ができないケース。
 ⑥天皇および皇族・・・天皇・皇族には戸籍がなく、皇室典範・皇統譜令に定められた「皇統譜」に記される。
 このうち最も問題になるのが、①の「民法七七二条」の摘出推定の規定のケースである。
 「1 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
  2 婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取り消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。」
 この規定によって生まれた子どもの「父」が誰であるかが推定される。つまり「『父』は国が決める」。
 しかし現代医学では子どもの懐胎期間は最終月経日から40週、懐胎していない2週間を含めて280日を基準としている。予定日に生まれても受胎から266日ということになる。ところがこの規定では300日で、1カ月以上の差がある。つまり極端な場合「離婚して1ヵ月後に別の男性との間に受胎し、出産予定日に生まれた場合、その子は『前夫の子』となる」。
 このケースの場合出生届は「前夫の子」としなければ役所では受け付けてくれず、戸籍で「事実上の父」を「父」とするためには必ず調停・裁判を起こさなければならない。そしてこれは前夫を巻き込んだ調停・裁判となり、DVやその他の理由で前夫とは関わりたくない気持ちを持つ女性にとって、離婚後もなお前夫と関係を持たなければならない状況となる。だからそれを避けんがために出生届を出さない人びとが出て来るのは当然のことと言えよう。
 そしてさらに深刻なことは、このような調停・裁判は年間3000件前後起きているが、そのうち「調停不成立」や「取り下げ」をしたケースが毎年約500件あるという事実である。つまり毎年500人の無戸籍児(者)が出ているということである。これらの人びとは、住民基本台帳への記載拒否から、国民健康保険、児童手当、児童扶養手当、母子健康手帳等の法施策、保育所、就学、生活保護等々の対象から除外される。まさしく無権利状態に置かれることになる。
 この状況に対して無戸籍者を救う運動は一歩一歩ではあるが、進んではいる。しかしその運動の過程で最大の障壁として見えてきたものが、実は現民法のあちこちに密かに隠されている明治民法の「家」制度であったということを本書は指摘する。即ち「戸籍」制度は今なお「家の尊厳」、「氏(うじ)の尊厳」を守る保守派の一大根拠であり、制度に無理が生じていることが明らかになっているにもかかわらず、抜本的改正が行われないままである理由ともなっているのである。
 さらにこの問題は、民法に残されている祭祀(さいし)条項(「墓」の継承権)や天皇と皇族の戸籍問題(現在マスコミをにぎわしている皇族の結婚問題もしかりである)にも深くかかわっている。
 本書は、われわれ日本人にとっては当然すぎると考えられてきた戸籍制度に対して、改めてその存在意義を根本的に問う必要を知らしめる書である。
 なお同著者には、『無戸籍の日本人』(2018年、集英社文庫。原著は2016年)というノンフィクションもある。併せて読まれたい。(R)

(追記)年末の12月28日、2021年度から始まる「第5次男女共同参画基本計画」の案か
 ら「選択的夫婦別氏」という文言が消えた、というニュースが流れた。選択的夫婦別
 姓を盛り込んだ法制審議会の民法改正案の答申から早や4半世紀であるが、いまだに
 自民党保守派の反対があると聞く。ここにも民法の「家」制度にしがみつく古い体質
 が見えている。これについては『日経』でも「制度に反対する自民党保守系議員は『日
 本の伝統が壊れる』というが、同姓制度は1898年の民法制定以来、100年余りの歴史
 しかない」と批判している。

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【投稿】原発全面停止で切羽詰まった関電:中間貯蔵施設「共用案」で自治体を振り回す

【投稿】原発全面停止で切羽詰まった関電:中間貯蔵施設「共用案」で自治体を振り回す

                              福井 杉本達也

1 切羽詰まった関電がぶり返したむつ市使用済み核燃料中間貯蔵施設「共用案」

電事連は12月18日、東京電力と日本原電の専用に建設されたむつ市の使用済み核燃料中間貯蔵施設の「共同利用案」を青森県とむつ市に説明した。森本関電社長はあたかも第三者であるかのように「高い関心があり、積極的に参画したい」と述べ、12月21日に福井県に報告するとしていた。杉本達治福井県知事も了承していた。しかし、関電社長と知事の面談は見送られた。青森県とむつ市の反発が強く、地元理解が得られなかったためである。電事連が説明した際、宮下むつ市長は「むつ市は該のごみ捨て場てはない。全国の燃料を引き受ける必然性はない」と強く反発。三村申吾青森県知事にも「全くの新しい話で、聞き置くだけにする」と突き放された。関電と福井県知事の面談も、こうした経緯から経産省側からのストップがかかったと思われる(福井:2020.12.22)。

関電の使用済み核燃料は保管するプールにたまり続けており、5年後には美浜原発で89%、高浜原発で98%、大飯原発で93%になる。運転開始から40年を超えた原発の再稼働を巡り、福井県からは県外の中間貯蔵施設の候補地を示すよう求められており、その最終期限が2020年12月末であり、関電を支援するのが実質的な狙いであるが、2018年にも同様な案が浮上したが、地元の反発で関電は断念している。今回は、関電単独ではなく、電事連という電力業界全体の意向として「共用案」を提示するものであったが、またまた同様の経緯をたどりそうである。

2 福井県における使用済み核燃料の「県外立地」“計画”の経緯

関電の使用済み核燃料の中間貯蔵施設候補地選定は1997年、福井県の栗田幸雄知事(当時)から「県外立地」を要望されて以来の課題である。特に、福島第一原発事故後、それまで全国すべての原発が停止していたが、民主党・菅直人政権下で、大飯3・4号機のストレステストを実施し、再稼働させようとしたもので、当時の原子力安全・保安院は「妥当」とする審査書を発表、2012年5月、当時の民主党・枝野経産相(現立憲民主党党首)が大飯3,4号機の再起動を福井県に要請、それに応じた西川福井県知事(当時)が「福井県だけで対応する訳にいかない事もある。中間貯蔵施設は消費地を含め痛みを分かち合う事もお願いしなければいけない。」とした。こうしたことを受け、国はアクションプランを作り、関電は2015年に「福井県外で理解活動、可能性調査等を計画的に進め、2020年頃に計画地点を確定」するとした。

大飯3,4号は再稼働後、2013年9月には定期検査で停止したが、2014年5月には福井地裁(樋口英明裁判長)において運転差し止めの仮処分があった。福島第一原発事故後につくった規制委の新規制基準に合格したとして、2017年11月27日、西川知事(当時)は、大飯原発3、4号機の再稼働に同意した際、県外保管施設について「2018年中に具体的な計画地点を示す」と関電は約束していた。2020年には候補地を確保、30年頃操業という計画であった。しかし、回答期限の2018年12月16日に関電は、候補地提示を断念したが、20年に確保の計画には変わりないとした。記者会見で西川知事(当時)は、原発停止などは必要ないとした。この回答期限の直前に、東京電力と日本原電が共同運営するむつ市の施設への相乗りを検討していると報道された。しかし、宮下宗一郎むつ市長が「地元への相談がない」と反発。結局、候補地を示せず、岩根茂樹社長(当時)は福井県に謝罪、「20年を念頭に」と先延ばしした。

2019年には関電役員らによる高浜町元助役からの金品霊問題が発覚し「信頼関係が崩れている」(杉本知事)状況の中、2020年10月、杉本知事は、関電が再稼働を目指す美浜原発3号機(同県美浜町)、高浜原発1、2号機(同県高浜町)計3基の老朽原発に関し、地元同意の「前提」として、年内に候補地を示すよう求め、関電としては後がない状態だった。 続きを読む

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【投稿】2020年=世界経済の93%が縮小--経済危機論(35)

<<「金融の崖の危機」BISの悲惨な警告>>
12/7、世界各国の中央銀行相互の決済を行う組織であるスイスのバーゼルに本拠を置くBIS(Bank for International Settlements、国際決済銀行)は四季報(Quarterly Review)の中で、「新型コロナウイルスの経済的ショックは、現代の平時において経験された最大かつ最も特異な世界的ショックです。これは、パンデミックと同期した封鎖によって引き起こされ、その結果、機能しなくなり、世界的なサプライチェーンが混乱し、総需要が急激に減少し、深刻な景気後退につながりました。」と述べ、「世界的なパンデミックと同期した封鎖によって引き起こされた現在の景気後退は、通常、銀行危機に続くものとは大きく異なります。それでも、銀行のバリュエーションは、金融市場のストレスと景気後退の影響を反映して、圧力を受けています。」、「金融セクターもショックによってストレスを受けています。多くの国で、銀行の株価は2020年の第1四半期に急落し、他の企業の株価よりもさらに下落し、依然として危機前の水準をはるかに下回っています。一部の国では、株価の下落は30%を超えています。」とし、さらに「私たちは危機の流動性から支払能力の段階に移行しています」と警告している。世界各国の金融機関の支払能力そのものが問われるという、深刻な事態への警告である。
この警告の記者会見の中でBIS金融経済局の責任者であるクラウディオ・ボリオ

(Claudio Borio)氏は、「今後さらに破産が予想されるはずですが、過去の基準では信用スプレッドは非常に低く、実際、銀行はリスクの価格設定をより慎重に行っていますが、資本市場では同じことは見られません。」、「見通しはかなり不確実であり、(緩和マネー・ヘリコプターマネーの異常さについて)少なすぎるというよりも、多すぎるという側面」に不安を表明しながらも、それを認めざるを得ない苦渋の立場を吐露している。事態を打開するなすすべを提起できない、その勧告や警告が各国中央銀行や政府によって無視されてきた、それでも金融危機の崖に立ちすくみ、警告せざるを得ないBISの悲惨な警告である。 続きを読む

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【投稿】ミサイル防衛の呪縛と新たな軍拡

新型イージス艦で決着

 菅政権は、新型イージス艦(イージスシステム搭載艦)2隻の建造、長射程ミサイルの開発などを、12月18日の閣議で決定することが明らかとなった。
これとは別に安倍の「遺言」である「敵基地攻撃能力保有」は先送りされたが、「敵基地攻撃能力」を持つ兵器の開発は、菅政権による新たな軍拡の開始である。
今回の決定の柱であるイージス・アショア計画の代替手段としては、①新型イージス艦(建造費約2500億円)②商船規格イージス船(同約2000億)③「海上要塞」(同約2800億)④「海上発射台」(同約2600億)の4案が検討されてきた。
このうち②~④は戦時には標的になるだけで、①の選択を誘導、正当化するための、非現実的オプション、当て馬であった。
しかし、新型イージス艦については当の海自が「現場の負担が重たくなる」として難色を示していた。 続きを読む

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【投稿】大飯原発3,4号設置許可取り消し大阪地裁判決の意義

【投稿】大飯原発3,4号設置許可取り消し大阪地裁判決の意義

                                                                      福井 杉本達也

1 裁判の争点はなんであったか

12 月4日、大阪地裁(森鍵一裁判長)において、大飯原発3、4号機の「基準地震動」が過小評価であるとし、設置許可を取り消せとの判決が出された。

訴訟の最大の争点は「基準地震動」の設定が安全性を担保する適切な値として定められているか、そして、国の規制機関である原子力規制委員会(以下:規制委)がその「基準地震動」を認めるにあたって、適切な審査をしたか否かにあった。国が定めた「地震動審査ガイド」には、基準地震動を定めるにあたって、経験式から導かれる数値は「平均値としての地震規模を与えるものであることから、経験式が有するぱらつきも考慮されている必要がある」と規定している。ところが国の反論では「強震動評価におけるパラメータの重畳の論点に 収れんされる」、「原告が主張するようなパラメータに対して やみくもに重畳して安全側に上乗せした評価となるような評価方法を求めることは,地震学等の科学的,専門技術的知見に基づかない独自の考え方である。」として、標準偏差は考慮したものの、今度は、逆に現行の「不確かさ」の考慮をとり払い、現行より低い 812 ガル(ガルは加速度の単位)にしかならないと主張した。本判決はこうした国の愚論を否定した。地震が過去の平均値で起こるとは限らない。しかし、これまで、すべての原発について「ぱらつき」は考慮されず、したがって、「基準地震動」は過小評価されていた。判決は、この「基準地震動」の過小評価と、それを見過ごした設置許可処分を違法として取消を命じたものである。2011年3月の東京電力福島原発事故以降で、国の設置許可を否定する司法判断は初めてである。

2 原発の「基準地震動」とは

原子炉設置許可基準規則第4条3項(地震による損傷の防⽌)によれば、「耐震重要施設は、その供⽤中に当該耐震重要施設に⼤きな影響を及ぼすおそれがある地震による加速度によって作⽤する地震⼒に対して安全機能が損なわれるおそれがないものでなければならない。」と書かれている。「基準地震動」は想定される最大級の揺れであり、それに対して重要設備が損傷しないことが設計の前提であるということである。大飯原発の「基準地震動」は原発そばの陸海域を走る3断層の連動などから計算している(福井:2014.10.30)。大飯原発の数キロ以内には長さ60キロ を超える断層(FO‑A~FO‑B~熊川断層)が存在する。これは西日本に多いタイプの活断層、すなわち断層傾斜角が垂直の横ずれ断層である。関電は「入倉・三宅式」の計算によって、基準地震動を最大856ガルと想定している。この最大856ガルは、「入倉・三宅式」で算出した数字に不確定要素を加える目的で1.5倍した数字である。規制委は、この地震動を前提に大飯3、4号機の地震津波対策が十分かどうかの審査をした。

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【書評】『戦後日本を問いなおす-日米非対称のダイナミズム』(その2)

【書評】『戦後日本を問いなおす-日米非対称のダイナミズム』(その2)

      (原彬久著 ちくま新書 2020年9月発行 880円+税)

                              福井 杉本達也

―社会民主党の解党と日米安保-

1 なぜ社会民主党は解党することとなったのか

社民党は11月14日、「東京都内で臨時党大会を開き、立憲民主党に合流するため国会議員や地方組織が党を離れることを容認する議案を可決した」、党には国会議員では福島党首のみが残留し、吉田幹事長ら3人は立憲民主党に合流する見通しである(福井:2020.11.15)。敗戦直後の1945年、戦前の非共産党系の右派の社会民衆党系、中間派の日本労農党系、左派の日本無産党系などが合同して結成された日本社会党(1996年に社会民主党へ改名)の事実上の解党である。

冷戦崩壊後の1993年の細川連立政権への参加は社会党の日米安保、憲法、自衛隊に関する基本姿勢の転換を迫ったが、これまでの外交防衛政策は踏襲するということで合意した。細川・羽田政権崩壊後の1994年の自社さ政権において、社会党の村山富市氏が首班指名され、村山首相は、就任直後の国会演説で、安保条約肯定、原発肯定、自衛隊合憲など、旧来の党路線の180度の変更を一方的に宣言した(後に1994年9月3日開催第61回臨時党大会で追認)。この結果、社会党の求心力は大きく低下した。

著者はそれを「従来の自衛隊『違憲』の方針を『合憲』に変更し、『反安保』を『安保堅持』へと大転換し、かくて『反米』から『親米』へと宗旨替えをします」、「反体制であった左派主導の日本社会党は、政権獲得とともに突然体制側と同一線上に立ったのです。かつての反体制社会党の首相が自衛隊閲兵をするという、およそ想像もできなかったあの光景は、逆に日米非対称システムなる歴史的構築物がいかに牢固なものであるかを示すとともに、戦後日本の構造そのものがこれまたいかに堅牢なるものであるかを表すものでもあります」と表現している。

村山政権成立後の翌年(1995年)、沖縄で米兵による12歳の少女へのレイプ事件が起こった。沖縄県民の怒りは頂点に達し、「日米地位協定」を改定せよとの積年の主張に火がついた。村山首相も「見直し」に意欲をみせ、米国防総省でさえ「見直し」に肯定的だったとされる。しかし、河野洋平外相はじめ外務省はガジガジの現状維持を主張した。これについて著者は「外務省が『現状維持』になるのが問題ではありません」とし、「仮に村山政権が、すなわち政治家である首相・外相があのとき現状変革(地位協定改定)の主導権を、それも歴史的見識と強力な指導力に裏打ちされた外交力を果敢に駆使できたなら、『地位協定改定』は何らかの進展をみたはずです。なぜなら、『不動の地位協定』を変革していく条件があのときほど揃った時期はなかったからです。日本外交の脆弱性はここでも明らかです」と述べ、「政党が保守であろうと革新であろうと、政治家が現実主義者であろうと理想主義者であろうと、彼らが『力不足』の日本外交をどれほど強化してきたかは、極めて疑問であるといわざるをえません。日米非対称システムをこれほどまでに強固かつ長期に延命させた『理由』の一半が、やはり『弱者日本』のなかにあったことは否めない事実です」と書く。

さらに著者は別の個所において、「野党が説得力ある現実的・具体的な安全保障政策をもつことができない」こと、「いつでも政権を獲る態勢にあるべき野党第一党が、国民にとって何よりも重要なこの安全保障政策を明確に提示できないということであれば、同党がそもそも政権担当の能力も使命感もないのだ、と受けとられてもしかたがない」とし、「あたかも自民党政権を助けるかのように、『政権』から遠ざかる方向に進んでしまい」、「大局を見失って多くの小党が再び『わが道』を歩みはじめ」ることに対して、「結局は政権側に“閣外協力”」することになると、厳しい苦言を呈している。 続きを読む

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